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「ここが暗黒の森かぁ~」
「あまりウロウロして迷子になるなよ」
「なんだか不気味なところですね」
昼過ぎというのに太陽の光が差し込まず薄暗い森、どんな魔物がいるかも謎な場所だから気を引き締めないと。
【情報】にマッピング機能があって帰りは心配していないが。
「敵襲察知のために広範囲に風の結界を張っておきますね」
「風魔法はそういうこともできるんだな」
「街中みたいに生物がたくさんいるところでは大きな反応が多くて使い物になりませんが、こういった人気がなく静かな場所では役に立つんですよ」
「へぇ~、これで奇襲されるのは避けられる訳ですね」
このパーティー、バランス良いのでは……?
この依頼がどのランク相当なのかは分からないが、結構高いランクでも受けることができそうだな。
「右側から大きな反応、恐らく敵性生物がこちらに真っ直ぐ向かってきます!臨戦体勢を!」
「「了解!」」
「結界を縮小して壁を作ります!カウンター頼みます!」
勢い良くこちらに大型生物が突進してくるが、レティスさんの結界により弾かれ警戒態勢を取る。
その姿はライオンに良く似ているが、爪や牙に毒がある凶悪な魔物だ。
「【情報】!弱点はあそこだ!あそこを狙って攻撃しろ!弱点属性は炎!」
【情報】でマーキングされた弱点は額辺りを指し示していた。
「了解!剣に炎属性を付与!狙ってくぜ!」
「待って下さい!私の矢に氷属性を付与してくださいお願いします!」
「わ、分かりました!」
錠が今にも切りかからんとしていた瞬間、レティスさんが叫ぶ。
動揺しながらも付与をする錠。
「少し結界を解きます、各自自衛をお願いします!」
ライオンとのにらみ合いが続く中、レティスさんは静かに弓を引き矢を放った。
その矢は逃げる隙を与えず、ライオンの額に命中する。
ライオンは倒れ、一瞬で勝負がついた。
「レティスさんすごい!鮮やかな一発でしたね!」
そんな錠の言葉が聞こえていないのか、レティスさんは倒れたライオンに向かい歩き出す。
「すごい、こんな損傷が少なくライオンを倒せるなんて……これは良い値がつくわ……」
そしててきぱきと解体を始めた。
死体が地面につかないように風魔法で浮かしながら、器用に皮を剥ぎ取る。
「あ、あの、レティスさん……?」
「いったいどうしたんだ?」
俺と錠の困惑をよそに、肉を部位ごとに切り分け初めてあっという間に解体が終わる。
「やりましたね!これはすごいですよ!」
レティスさんはとても満面の笑顔でこちらを振り返ったが、俺たちはついていけずに困惑するばかりだった。
「あっ、えっと、あの、その……エルフの国ではライオンはとても貴重で、衣服としても、ご馳走としても、ありがたがられているんですが……えっと……」
我に返ったようで、この奇行の説明をしてくれたものの顔が真っ赤だ。
「こんなに綺麗に仕留めることができたのは初めてだったのでつい舞い上がってしまって……申し訳ありませんでした……」
「いや、気にしなくて大丈夫。後でそれ食堂に頼んで調理してもらおう」
「そ、そうですよ!後で毛皮も綺麗に加工して保存しておきましょう!」
「あ、ありがとうございます……」
レティスさんの意外な一面が見れたなと思いつつ、用途別アイテム保存袋にそれぞれ解体したものを入れて探索を続けた。