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昼飯を終わらせて、いざギルドへ。
冒険者たちの始まりの場所というだけあって、とても賑わっている。
向かうは依頼書が貼り出されているボード。
「どの依頼にしようかな……」
AからEまでの依頼書があり、Aになればなるほど難易度が高いが報酬も莫大になるシステムだ。
最上級はSだが、ボルヤンでは取り扱わないことになっている。
「なあ、これにしようぜ!」
そう言って錠が持ってきたのは赤板だった。
赤板とは、報酬と難易度が見合っていないのに出され続けている曰くつきの依頼書のことだ。
「お前な、赤板だけはやめとけ」
「なんでだよ、S級やるより赤板やる方がカッコいいだろ!」
「生活費が稼げない」
「冷たい男だな!レティスさんも赤板の方がいいですよね!?」
「そうですね、この街ではこれ一枚だけみたいですし……助けれることなら助けてあげたいと思いますね」
「分かった、ただ無理と判断したらすぐ逃げるからな!?」
この世は多数決、無情にも俺の意見は無かったことになった。
「どれどれ、回復薬の素材を集めてきて下さい。報酬は回復薬の作り方、か」
依頼内容は一見普通に見えるが、ならなぜ赤板に……?
「とりあえず依頼人に会いにいこうぜ」
「そうだな」「そうですね」
場所は暗黒の森近くの街はずれの方向だった。
暗黒の森はボルヤンの近くにあるが、冒険初心者は決して入ってはならないとされている。
生態系が目まぐるしく変化していて、入る度にどうなっているか分からない不思議な森だからだ。
あそこで迷って死んだ勇者が何人いたことか。
嫌な予感がしつつも足を運ぶ。
「ここが依頼人の家か」
「すみませーん!誰かいますかー!?」
「あっ、はい、少々お待ち下さい!」
古びた家から出てきたのは10代後半くらいの少女だった。
「あっ、その依頼書……冒険者の方ですね!依頼内容お話ししますので、どうぞこちらに」
「お邪魔します……」
少女に案内されるまま家の中に入り、居間の大きなテーブルを囲んでいる椅子に座る。
少しして人数分のお茶を持ってきた少女が俺たちの目の前にお茶を置いて、空いている椅子に座る。
「依頼内容は見ていただいたように、回復薬の素材を取ってきてもらう依頼内容なのですが……詳しくは言えませんがちょっと特殊な製造方法の回復薬なので素材も特殊なんです」
少女が言うには、暗黒の森の奥地に咲く鮮やかな赤い花が必要らしい。
しかし暗黒の森は危険で入ることができないし、店に出回っているものではないから採取できずに困っているそうだ。
「親がいた頃は親が取ってきてくれたのですが、ある日から帰ってこなくて……」
「それは大変でしたね……でも自分が来たからには安心してください!必ず取ってきますから!」
そんなできるかも分からないことを簡単に言うなよ、と思いながらも引き受けたからにはできる限りのことはしようと思った。