1/2
辻々の徒花たち 紫陽花
紫陽花
私に引き止める勇気はない
その魅力もなかった
雷とともに降り出す雨
一瞬で水たまりを作る程の雨足
あの人の手を取り握って縋り付きたい
でもこの恋は私が手を離せば終わる恋だった
繋ぎとめられるものは何にも無い
向こうからこっち側には絶対に来ない
あの人に大切な人がいるのは知ってた
知ってて欲しがった
だから承知の上での関係
それでも束の間の逢瀬だけで充分に
満たされていた
病弱なその人の代わりでも良かったのに
少しくらいは愛されている
その思い上がりが自分の首を絞めた…
独占欲に支配され始め
独り占めにできないなら、いっそ…
私は手を離した
あの人が離れて行ってしまうのは
判りきっていたのに止められなかった言葉
「もう、会わないでおこう」
止められなかったのは、あの人が戻らなければならない理由を作り出すこの雨のせい
……きっと雨のせい
この雷雨のせい