ランキング小説「単語とその後に続く助詞の音が同じだった場合一発ギャグに聞こえる方言ランキング」
★第5位 愛知県三河弁 「~じゃん」
雨が降り止まず、洗濯物が乾かない日が続いた紫陽花の季節のある日。勇作は着ていく服がなく困っていた。夏は雨雲のすぐ先にあるが、この日はまだ肌寒く、上着があった方がいい。透明の衣装ケースをひっくり返して大捜索だ。
「……まいったなあ。長袖は先週まとめてクリーニングに出したばっかなんだよなあ。あ、この長袖の服は……」
ちょうど羽織るのにピッタリな上着を発見した。紺色のデニム生地で作られたジャンパー、それは……
「Gジャンじゃん!」
【第5位 三河弁 「Gジャンじゃん」】
選評
・リズムがよく、脳内で爽やかにリフレインする
・Gジャンに限らず、「おじゃんじゃん」「麻雀じゃん」など汎用性が高い
・三河地方から江戸へ持ち込まれた言葉の為、東京でも「じゃん」は使われる事から地方性が若干薄いのが残念
★第4位 山梨県国中弁 「~ずら」
「寂しい……でもマンションじゃペットは飼えないし……」
新築のマンション。その上層階の窓から小学3年生の涼子は地平線を眺めた。憧れの高層マンションに家族で引っ越したのだが、ローンの支払いの為両親は共働き。毎日残業で帰りは遅く、休日出勤も多く家を空ける事がほとんどだった。まだ引っ越してきたばかりの涼子には友達もおらず、寂しい日々を過ごしていた。
「ただいまー、涼子! 涼子!」
父親が帰ってきた。どうかしたのだろうか、嬉しそうに娘の名前を呼んでいる。
「なーにお父さん……わあ! それって……」
出迎えた涼子に、父親はドヤ顔でそれを差し出した。
「ああ。涼子が寂しく無いようにって買ってきたんだ」
父親が涼子にプレゼントした物、それは……
「ウツボカズラずら」
【第4位 国中弁 「ウツボカズラずら」】
選評
・ウツボカズラという一般には非日常的な物がギャグ感を高めていて好印象
・山梨の山奥に生い茂っているウツボカズラが目に浮かぶ
・と思わせつつ残念ながら山梨どころか国内のどこにもウツボカズラは自生していないので減点
★第3位 三重県伊勢志摩弁 「~やに」
「いい加減吐け! 自白するまで帰さねえぞ!」
ドンと強く机を叩き、刑事の山本は声を荒げた。しかしそんな大声にも屈せず、被疑者の中村は否認し続ける。
「だから危ねえ薬なんてやってねえし、買った事もねえよ!」
中村は薬物所持の疑いで取り調べを受けていた。朝から執拗な尋問は続き、中村の体力と精神は消耗しきっていた。
「シラを切るな! ブツは挙がってんだ!」
「ブツ?」
「ああ! 知らねえって言うんならお前の部屋から出てきたこの粉は何だ! 答えろ!」
バシッと白い粉の入ったビニール袋を叩きつける。一見ヤバい物に見えるが、その白い粉の正体は……
「松ヤニやに」
【第3位 伊勢志摩弁 「松ヤニやに」】
選評
・非常にシンプル。一種の開き直りの様な厚かましさがギャグっぽい
・松ヤニは松脂と漢字で書く事が多く、同じ音だと気付きにくい
・野球ではロージンバッグと呼ばれ、松脂という呼び名自体がマイナーになっており、業界に逆風が吹いていると言わざるを得ない
★第2位 沖縄県沖縄弁 「~さー」
玲奈は妊娠5カ月目。安定期に入り悪阻も落ち着いてきたが、用心してあまり動かずソファに座っている事が多かった。
それに、家の事は義母が献身的にやってくれる。結婚前は嫌味を言われる事もあって疎ましく思ったが、やはり孫は特別なのか妊娠を告げてから甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる様になった。玲奈もすっかり義母に甘えている。
「玲奈さん、何か食べたい物はある?」
この日も義母がお昼ご飯を作りに家に来てくれた。遠慮なく食べたい物をリクエストする。
「酸っぱい物が食べたいなあ。前に作ってくれたマグロのカルパッチョ、お酢が効いてて美味しかったです」
妊娠すると酸っぱい物が欲しくなると言うが、玲奈も例外では無かった。
「あれね、実はお酢を一切使ってないの」
「ええ? お酢じゃないんですか?」
「そうなのよ。あれはね、フルーツを絞ったのよ」
「フルーツ?」
義母はお酢の代わりに柑橘系の果汁を使っていた。そのフルーツとは……
「シークワーサーさー」
【第2位 沖縄弁 「シークワーサーさー」】
選評
・沖縄民謡の様なゆったりとしたリズムが南国にマッチしている
・「シーサーさー」も候補に上がったが、県外の人間には掛け声にしか聞こえなくて却下
・地域の特産と響きも合わさって高ポイントだが、「さー」自体は沖縄県の他に、宮城県、静岡県、長野県などでも使われるため2位となった
★第1位 福岡県博多弁 「~たい」
とある博多弁教室。この日も多くの生徒で賑わっていた。講師の後に続いて生徒達が博多弁を復唱する。
「ばり好いとーと」
「バーリトゥード」
「なんでルール無用の殺し合いするんだよ! ばり好いとーと、は大好きだよという意味です。一番有効な博多弁ですから必ずマスターしてくださいね!」
「やー!」
「やー!は体育の時だけでいいんだよ! 日常じゃ使わねえよ! せからしか~」
「せからしか~!」
博多弁を使う女の子は人気が高い。京都弁を抑えぶっちぎりの一番人気だ。最近では婚活女性がこぞって博多弁を習いに来ているという。
「じゃあ最後に、博多名物の名前を皆で言って終わりにしましょう。皆さんわかりますね? いきますよ~、せーの!」
「博多めんたいたい!」
【第1位 博多弁 「博多めんたいたい」】
選評
・名物の宣伝も兼ねた上に地名まで仕込めるなんてチートにも程がある
・これは卑怯
・博多めんたい自体が既に一発ギャグっぽい
・っていうか一発ギャグ以外に使い道がない
・「富士山!」みたいな感じのポーズを取りながら言ってほしい
いかがでしたか?
あなたの地元の方言はランクインしていたでしょうか?
こんな時代だからこそ郷土を大事にしていきたいですね。皆も恥ずかしがらずにレッツ方言!