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マスクが外付けの性感帯という世界で

 未知のウィルスによるパンデミックは我が国にも大きな混乱をもたらした。誰も彼もがマスクをし、密を避け、カバディも禁止された。


 通りを歩く清楚そうな女性。長い黒髪を一つにまとめパンツスーツ姿の彼女も、新しい生活様式の只中にいた。

 クライアントとの待ち合わせの為に急いでいた彼女は歩調を早めた。その拍子に唾が喉にひっかかりむせてしまう。


「ゴホッ、ゴホッんほぉぉぉぉおおおお!!!!」


 絶頂を迎えた。何故ならこの世界のマスクは外付けの性感帯だからだ。

 彼女が特に感じやすい訳ではなかった。近年マスクの品質も上がり、ミクロのウィルスも通さないが、同時に感度は3,000倍になった。特に内側は弱い。呼気で常に湿っており、粘膜との距離も近い。清楚で堅物そうな彼女もゴホンと咳き込んだだけでフライハイ。


「ハッ……ハッ……ハックんほぉぉぉぉおおおお!!!!」


 今度はあっちで男子高校生がくしゃみをして絶頂に達した。花粉のシーズンが過ぎたのがせめてもの救いであったが、これから寒くなり風邪も流行るかもしれない。天気予報ではオーガズム指数なんてのも知らせる様になった。


 世界はすっかり変わってしまった。

 今ではゴミ箱にも気軽にマスクを捨てられなくなってしまった。

 それもそうだろう。その上からキムチでも捨てよう物なら地獄どころの話ではない。老いも若きも布マスクを求め、清潔に努めた。


「はい、じゃあ今からマスクを洗っていきましょ~!」


 街頭のビッグモニターでは女子アナがマスクの手入れ方法を実演していた。意外に皆、マスクの洗い方を知らない。


「まずこうやって水で軽く洗い流んほぉぉぉぉおおおお!!! 次にハンドソープで構いません。ハンドソープをワンプッシュつけてもみ洗いんほぉぉぉぉおおおお!!!! んほぉぉぉぉおおおお!!!! んほぉぉぉぉおおおお!!!!!」


 異常な光景が繰り広げられているが、これは普通の日常なのだ。

 何故なら、マスクをつけるのがもう当たり前なのだから。



 その上で、あえて私は問いたい。


 それでもあなたはマスクを着けますか?



答え 


 蜂蜜を塗ってアリの巣の前に置きまんほぉぉぉおおおおおおおお!

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