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妖刀『送塩』VS魔刀『鋼八手の団扇』

 『スタッフからの情報ですが、場外負けになったカンニングマン選手とハクビ選手の無事が確認されました。

 特にハクビ選手の方は、匿名希望の少女の方が彼を介抱してこちらまで送ってくださいました。この場をお借りして感謝を述べさせて頂きます。

 さて・・・・・・! 長らくお待たせいたしました。本選第五回戦を開始したいと思います。

 ウォールナッツ選手とサルタヒメ選手、準備はいいですか・・・・・・?』


 バトルフィールド中央まで足を運んだ二人は、司会の言葉に頷く。

 

 『では、第五回戦改め準決勝一回戦開始!!』

 同時に刀を鞘から抜く剣士二人。


 「すぐにでもフランクと戦いたいからさ・・・・・・悪いけど、俺初っ端から本気出させてもらうわ・・・・・・・」

 構えらしい構えを取ってない直立姿勢のウォールナッツは、申し訳なさそうな顔をしている。


 「傲岸不遜な言動。相変わらずだなタツミ。まあ鞍馬族らしいと言えばらしいが・・・・・・」

 サルタヒメからの馴れ馴れしい口ぶりに、彼は軽く動揺した。


 「え・・・・・・・・・・・・何で俺の本名知ってんの?

 もしかして君、俺の知り合い・・・・・・?」


 はっ? と信じられないような顔を見せる彼女。

 「流石に冗談だよな・・・・・・まさか同じ里に生まれて同じ寺子屋で勉学に励み同じ道場で修練を積んだ幼なじみであるこのわしの顔を忘れたとでもほざくのか貴様!?

 確かに今は、とれーどまーくの翼は隠している。しかし里のみんなから可憐と評されたこの顔は、いっさい弄ってないぞ!?

 頼むから冗談の類であってくれよ! なあっ!!」


 「あ~もちろん冗談だよ! 安心してくれ、覚えてっから! ほら、え~とねえ。

 そうだサルタヒメ! 君の名前はサルタヒメだ!! 合ってるだろ?」


 冷や汗を流しながら必死な様子で答えるウォールナッツに、頭を抱えて険しい顔をするサルタヒメ。

 「確かに合っているが、司会殿からのさっきの音頭を聞けば誰でもわかるわ、たわけっ!!」


 ルイス「たじたじになってる~彼なんて、すごく珍しいのよ~♪」


 ヤマネ「いや、まじで幼なじみの事忘れてんなら、ただの屑野郎じゃねえか」


 「忘れたなら思い出させてやる。わしのことを・・・・・・そして貴様が武者修行と称して鞍馬の里から勝手に旅立ったことを・・・・・・!!」

 

 「いや忘れたことは、謝・・・・・・何してんだお前!?」

 ウォールナッツを始めとした他選手達・観客達・ウラヌンタイス・ライフラインが度肝を抜かれた。

 なぜなら、サルタヒメが躊躇無く袴を残して結い袈裟と鈴懸すずかけを着崩すよう脱いだからだ。

 今の彼女の上半身に晒されるのは、胸元に巻いたサラシ、艶やかな肌そして・・・・・・。


 チャールズ「着やせするタイプなんだ・・・・・・けっこうおっぱいあるじゃん!」


 ヤマネ「そうだけど違うだろ!? 背中見ろ背中・・・・・・」


 そして背中から黒い翼が一対生えてあるのだ。今は折り畳んでいる状態だが、広げたら地球の単位で翼長1m位伸びるだろう。

 造り物を肌に貼り付けただけの張りぼてには、見えない程自然・・・・・・それは、まるで最初からサルタヒメに具えられているみたいに・・・・・・。

 彼女は、大衆から自分のあられもない姿を注目され、赤面して急いで両手で胸を隠した。


 『おおっと!? 何という事だ~変身魔術を発動して生やしたと言うのか~?

 それともサルタヒメ選手は、人間では、無いと言うのか・・・・・・!?』


 司会の疑問に正直に答えるサルタヒメ。

 「ああ、変身や幻影の類ではない。正真正銘わしは、人間ではないのだ・・・・・・わしは」


 『まさか彼女は・・・・・・・・・・・・堕天使だとでも言うのかっ!?』

 その場で盛大にずっこけるサルタヒメ。

 「天狗だ天狗っ!? 結い袈裟着て極東刀振るって風を操れるのが何よりの証拠だろっ!!」


 天・・・・・・狗? と首を傾げるウラヌンタイスにヤマネは苦笑した。

 「そういやトガルポル国で、東洋の魔物の事詳しい奴少ないんだっけ」


 自分の正体を教えた彼女に、ウォールナッツは気怠そうに文句を言う。

 「おい何て事してくれたんだ・・・・・・お前が自分の事を天狗だとばらしたことで、馴れ馴れしく話しかけられた俺についても周りに怪しまれてしまうじゃねーか・・・・・・っ。

 タワラに滅茶苦茶叱られるじゃねえかっ!!」


 「タワラ・・・・・・っ!! やはりあの女狐がタツミをかどわしたのかっ!?」

 一人の女性の名前に過敏に反応したサルタヒメ。ただその名前に釣られたのは、彼女だけでなく。


 「今さっきタワラさんの名前が聞こた気がするのだけどっ!?」

 カール気味の緑の短髪が特徴的な医者・・・・・・アスクレピウスが、バトルフィールドに出入口から乱入してきたのだ。

 「まさか君も彼女を狙っていたと言うのか!! 嘘だと言ってくれないかなぁあ!?」


 痴話喧嘩じみた二人からの質問攻めに、両手で頭を掻きむしり絶叫するウォールナッツ。

 「ああぁああああああっもうっ!! 別に俺は、タワラなんか好きじゃねぇよ。

 あの禿げとかと付き合ってんじゃねえの?

 ってか、そもそも何でお前は、俺を執拗に絡むんだよ!?

 用は? 鞍馬の里からトガルポル国までは、めっちゃ遠いんだぞ。俺を追ってきたんなら相応の理由があるはずだ・・・・・・」


  あの絶世の美女のタワラさんを『なんか』呼ばわり? 前言を撤回してくれないかな? あと決してストゥムさんが彼女とできているなんてボクは、絶対認めませんからね!! と必死にまくしたてるアスクレピウスの発言を聞き流す二人。


 サルタヒメは、体をもじもじさせながら再び赤面しては、返答しようとする。

 「そ、それ聞くか? なぜわしが貴様を固執するのかと言うと、わしは、貴様のことがす、好・・・・・・」


 「堕天使よ・・・・・・ここは、人間の領域だ。出ていってもらいましょうかっ・・・・・・!!」

 彼女が告白をする前に、隻腕の騎士を筆頭に大会の警備を任された騎士達がぞろぞろと入場する。


 舌打ちをして逃げる準備をするサルタヒメ。

 「ちっ・・・・・・面倒なことになった。今回は退こうか・・・・・・あとわしは、堕天使じゃないわっ!!」


 槍を構えた騎士達が、標的目掛けて一斉に突進する・・・・・・も、失敗する。

 彼女の前を遮るようガラスみたいな壁、もとい結界バリアが瞬時に張られたからだ。それを繰り出したのは、もちろん。


 『ライフラインさんっ!?  まさかのサルタヒメ選手に意外な所から助け舟が・・・・・・さあ、ライフラインさん、なぜ彼女を庇うのでしょうかっ・・・・・・!!』

 

 純白のローブを身に着けている少女は、(擁護する理由知ってるくせに)と心の中でウラヌンタイスに毒づき、高らかに意見を述べる。

 「騎士の皆さん。なぜサルタヒメ選手に矛先を向けるのでしょう・・・・・・?

 彼女は、民間人に危害を加えていないし、危害を加える様子すら見えない。

 まさか、人外だからという理由だけで、危険人物として見なしているのですか・・・・・・?

 魔物差別は、タイガ様の教えに反します・・・・・・どうかその物騒な物を仕舞い、平和的な対応をして下さいませんか・・・・・・?」


 冷めた目をしているライフラインの説得に対して、感情のままに怒鳴り散らす隻腕の騎士。

 「黙ってくれませんかタイガ教神官! 存じていますぞ。神官とは名ばかり。

 崇拝されているタイガの種族は、神仏天使の類でなく実は魔族であることを・・・・・・悪魔崇拝しているお主だからこそ堕天使を庇おうとするのでしょう・・・・・・っ!?」


 「直接拳を交えた私自身だからわかります!! サルタヒメさんは、いたずらに人間を襲うような悪人では、ありませんっ!!」


 「知ってるか・・・・・・? 天狗ってのは、中には人間に剣の稽古をつけたり、迷子を送り届けたりする良い奴も混じっているんだぜ。あたしの勘が言っている・・・・・・その人は、信用できる奴ってな!!」


 医務室からは、回復したナンディンと観客席からは、ヤマネがフィールドに乱入しては、ライフラインを援護する。


 真っ赤になった顔を両手で塞ぐチャールズ。

 「何やってんだよバカご主人様・・・・・・!!」


 「ぐぅううううううっ被害者が出てからでは、遅いのにぃぃいいっ!!

 それとポニーテールのお客さん! 君は先程ハクビ選手をケンタウロスだと決めつけ、『何か企んでいるに違いねえ。魔物が人間の大会に参加していいってのかよ!?』などと口にしたではないですか!? 矛盾が過ぎますぞ・・・・・・!!

 それに、今はあ奴が大人しくても、いつ無辜な民を襲うか分からないではないでしょうか!

 その可能性を考えないのですかっ!?」


 にやりと不敵に笑うヤマネ。

 「そこは、大丈夫だ。おっさん、前に言ったよな?

 『例えハクビ選手が何かしら悪事を企んだとしても・・・・・・。Aランクのウォールナッツ選手とSランクのフランク選手もここにいらっしゃいますから、問題が起きてもすぐに対処できるのでは・・・・・・?』って・・・・・・。

 Sランク様がいるんなら、大丈夫なんだろ?」


 そう言われた隻腕の騎士は、彼女に何も言い返せなかった。

 「・・・・・・・・・・・・分かりました。お客さんの言う通りですね。

 今回我ら警備員は、サルタヒメ選手を魔物ではなく魔物に変身している民間人として扱います。

 ただし!! 何か怪しげな素振りをすれば、フランク選手を筆頭に我ら騎士達が対応させて頂きます。

 この町にサルタヒメ選手が出るのを確認するまでは、フランク選手の監視下に置かせてもらいます。

 あと民間人が騎士に逆らうのは、お止めください。今回は、不問にしますが普通にこの行為は、公務執行妨害ですよ」 


 フランク「何勝手に決めてんの? 私にそんな義務無いし」


 隻腕の騎士の提案によって手打ちになった。

 下手したら乱闘になってたであろう、一触即発の論争の原因である二人の方まで振り返る一同。

 彼らの瞳に映った光景は・・・・・・。




 頭にでっかいたんこぶができてうつ伏せになって気絶しているサルタヒメと凶器を持ったウォールナッツの姿が・・・・・・。

 いけしゃあしゃあと言い訳になってない言い訳をのたまう彼。


 「いや・・・・・・すぐフランクと戦いたいからさ。あんたらが言い争っている内にもう決着着けちゃった。

 待ちくたびれたんだよ~。告白は、後で聞いてやるからさあ・・・・・・」


 もちろんそんなたわけたことをほざいた彼を庇う人なぞ一人も居なく・・・・・・。


 「・・・・・・勇気を振り絞って告白しようとした幼なじみを容赦なく手にかけるなんて・・・・・・タイガ様以外の者達に見捨てられるほどの屑だね」


 「うわぁあああああっ信じらんねー!? タワラさんにこの事言いつけてやるからなっ!! きっついお灸据えられて反省してろバカっ!!」

 

 「流石にひどすぎますっ!! サルタヒメさんは、ウォールナッツさんに出会うためために遠路はるばるここまで来たんですよ!?」


 「彼女には、頭のコブだけでなくメンタルのケアもしなくてはなりませんね」


 「もしかしたら魔物よりも人間の方が、醜悪で恐ろしい存在やもしれん・・・・・・」 

 

 『おおっと! 各方面からバッシングの嵐・・・・・・!! 今回の大会本選の男子は、ミーミル選手といいウォールナッツ選手といい、女心を踏みにじるような糞野郎ばかりかっ!?

 観客達のみなさんからもヘイトが溜まっているようでブーイングしてます・・・・・・さあ彼は、この逆境を超えるほどの好印象をみんなに稼いで、糞野郎という汚名を本大会で返上できるのか・・・・・・?

 それともフランクかナンディン辺りにボコボコにされてスカッとされる展開が起こるとでもいうのかっ!?』


 「だああああああもぅうぉおおおおおおおおっうるせぇえええええええええっ!!

 それより審判!! 判定言ってくれよ」

 

 『おおそうでしたね。勝負あり! サルタヒメ選手失格。

 勝者・・・・・・ウォールナッツぅうううううううううぅうううううううっ!!』


 しばらくの間、観客席から【ウォールナッツ敗けろ】コールが合唱となって闘技場内を響かせていた。


 ※それから、少し時間が経った後の円形闘技場の医務室にて。


 「もう、あんな屑男・・・・・・こっちから捨ててやればいいんですよ」


 「あとでルイスっていうあたしのパーティー仲間からあのずぼら男の弱点聞き出してやっからな!!

 ぎゃふんと言わせてやろうぜ」


 「サルタヒメさんは、美しく可憐ですから、他にもっと良い殿方といくらでも出会えますよ」


 「ははは・・・・・・ありがとう。でもわし疲れたから、少しそっとしてくれないかな・・・・・・?」


 意識を取り戻してベット上で座っているサルタヒメ相手に、ライフライン・ヤマネ・ナンディンが囲んで励ましていた。

 アスクレピウスが苦言を呈する。


 「君達。他の患者さんもいらっしゃいますから静かにしていただけませんか・・・・・・?

 あとライフラインさんは、早くバトルフィールドへ・・・・・・貴方がいないと準二回戦が何時まで経っても始まれませんよ・・・・・・」


 

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