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モーニングメテオVS魔鏡『サイバーホール』

 「永らくお待たせ致しました! ただ今より第三回戦を始めさせていただきます!

 プラネテウス選手。ミーミル選手。どうぞ位置に着いて下さい・・・・・・!!」


 フィールド中央まで鉄球を得物にしているのほほんお姉さんと、円形鏡を脇に抱える燕尾服の男が、歩み寄り、そしてお互い距離を取って見合う。


 『では、第三回戦・・・・・・始め!!』


 頬に手を添え、軽く首を傾げてほんわか雰囲気を醸し出して対戦相手に話しかけるプラネテウス。

 「今日は~、お互い悔いの無いようベストを尽くしましょうね~。よろしくお願い致しますね~ミーミルさ~ん。あれ~?」

 臨戦態勢を取る前に、握手しようとするプラネテウス。だが、その手をミーミルは、一瞥いちべつもせずウラヌンタイスらの方に駆け寄る。


 『な・・・・・・何ですっちょっとそれ私の杖・・・・・・!?」

 審判であるはずのウラヌンタイスが持っていたロッドを強奪し、それを口元に寄せる彼。


 『レディースアンドジェントルメーン! 手前は、SステータスSソーシャルWワーカーのミーミルと申します!

 端的に申し上げますと情報魔術『ステータスウィンドウ』の調整・管理を生業としています。

 では、お客様の方々には、今からそのステータスウィンドウの魅力を実践(実戦?)形式で紹介させて頂きます。もしご興味頂けたなら、大会後に是非!! 手前にお申し込み下されば幸いです。

 本来なら授業料銀貨一枚必要ですが、な な な なんと大会終了後から13日の間だけ銅貨一枚で契約を取ることができますよ! ご清聴ありがとうございました!!』


 彼の宣伝活動にヤマネは、顎に手を添え、興味津々に聴いていた。

 「ステータスウィンドウ・・・・・・俺が、生前読んでいたファンタジーノベルに頻繁に出てくるものじゃねえか!? いいなぁあ~。あたしも修得してぇな~・・・・・・」


 チャールズ(生前・・・・・・? それにさっき偽善野郎から俺っていう言葉が聞こえたような・・・・・・?)


 それに対し、意外な方面からヤマネを制止してくる存在が。

 『いや、何か怪しいよすごく怪しい・・・・・・あの男から滲み出すどす黒い野望のオーラ・・・・・・絶対何か企んでいる顔だよ。狡猾な企みを。

 ぺちゃパイ君は、もう少し警戒するということを学ぼうか?』

 彼女の脳裏に潜む獣型の堕天使アンドリューだ。


 (何だよ良いじゃねえか? あといい加減ペちゃパイと呼ぶのを止めろよ!!)


 『高次元生命体の言う事は、素直に聞いた方が良いよ?』


 (高次元生命体って・・・・・・お前、堕天使じゃねえか!)


 脳内で喧嘩するヤマネ達に、隣に座っているチャールズ達は気づけない。

 

 フィールド端にてロッドをウラヌンタイスに返却するミーミル。

 『マイクの杖を拝借させて頂きました。ありがとうございます」


 「もうしないで下さいよ・・・・・・あと、プラネテウスさんが待ちぼうけをくらっています。

 さっさとこの場から離れて臨戦態勢を取って下さい』


 慌てて対戦相手の元まで駆け寄るミーミル。長い間ほったらかされたはずなのにプラネテウスは、暖かな笑顔は崩れていない。


 「お待たせいたしました」


 「いえいえ構いませんわ~。時間を下さってありがとうございます~。おかげで頭の中で戦闘のシミュレーションを組み立てることができました~。

 では、早速・・・・・・あら?」

 口元に指を添えて驚くプラネテウス。なぜなら彼女を囲う形で文字や数字が記載されている板型のホログラムが瞬時にそして複数に展開されたからだ。


 「ステータスオープン」

 右手の人差し指を伸ばして意気揚々と語るミーミル。

 「皆様方これがステータスウィンドウでございます。

 先程の合言葉『ステータスオープン』と口にするだけであら不思議!

 自分の情報は、もちろんのこと他人の知りたいデータがまるわかり!」


 攻撃を仕掛けようとしたプラネテウスだったが、ステータスウィンドウのホログラムを見るのは初めてか、手を止めて興味津々に触れようとする。しかしそれらは、魔力の光で投影されただけの存在なので触れることができない。


 ヤマネ「何それ!? 勝手に他人のプライバシーばらして良いと思ってんのかよ!! ネットマナーは、どうなってんだ!!」


 「外野がうるさいな・・・・・・素晴らしいでしょうステータスウィンドウ!

 自他のスキル・スペックを調査するだけではなく、現在の健康診断・商品の在庫確認・勘定の計算・物品の鑑定を始めとして場合によっては、メモ帳代わりに手軽に文字を書けたり、同じステータス使いの相手にのみメールを送るなどの機能も搭載されております!!

 どうです? 便利でしょう? では、手始めに失礼ながらプラネテウスさんのデータを拝見させて頂きますね?

 ふむふむ現在は、一人暮らしで実家に父母と十代の弟が住んでいらっしゃるのですね?

 おお、天体観測が趣味とは、育ちがよろしいのでしょうね。

 育ちと言えば、カップ数は、驚異のGで身長は、33ロングフィンガー・・・・・・おやおや?

 ついこの間、体重測定器で自分のを調べた時は、冬に調べた時より10ヘビーポイント位増えたと・・・・・・」


 ライフライン「・・・・・・あ」


 サルタヒメ「身長だけでなく体重まで。正気か・・・・・・?」


 フランク「ご愁傷様~」


 頼まれもしないのにべらべらと対戦相手の個人情報を嬉々として述べるミーミルは、唐突に空気の流れが変わったことに気付いた。

 視線をプラネテウスの方に戻した彼は、あまりの恐怖に絶句。


 なぜならプラネテウスの方から、溢れんばかりの殺気が溢れ出して場を支配したから。その体から魔力ではないどす黒いオーラが吹いているという幻覚が、口を滑らした彼だけでなく観客・他選手達まではっきり見えてしまったのだ。


 ただ一つだけ、彼女のほほ笑みが変わることは無かった。逆にそれがすごく不気味だったと後のヤマネは、語る。


 やっと臨戦態勢を取るプラネテウス。得物にしている鎖付き鉄球を自分の頭上に振り回し始めた。

 ただ妙な事に、回転する鉄球の軌道の形が、真円ではなく楕円。


 (まずいまずいまずい。まず対戦相手の戦闘能力を調べるべきだった・・・・・・!!)

 全身に脂汗を流しながら、急いで距離を稼ぎながら、脇に抱えた鏡を持ち直すミーミル。


 「ミーミルさ~ん? 『明けの明星』をご存じですか~?」


 「『明けの明星』・・・・・・? 我らが良く知る恒星の一番近くを周る岩石系の惑星のことですか・・・・・・?」


 「流石の博識~♪ その通りですよ~是非堪能して下さいな。えい♪」

 超重量の鉄球を軽々と投擲するプラネテウス。筋肉質とも思えないようなその細腕で。

 

 すぐさまその攻撃が危険極まりないものと判断したミーミルは、さらに背後に跳んで避ける。

 (あの武器は、フレイルタイプのモーニングスター・・・・・・! 鎖が着いているかぎり、砲丸とは違って飛ばすリーチが限られている。離れさえすれば・・・・・・!!)


 その予測通り、彼の目前ぎりぎりまで掠める形で地面に着弾する鉄球。ただ衝突する際、深いクレーターができ、衝撃波が生じ、土埃が舞った。

 (助かった・・・・・・もう少し退くのが遅かったら、この一撃で負けてました。

 降参を・・・・・・いえ、彼女が次の攻撃に移るためには、その鉄塊をひとまず手元まで手繰り寄せえぇえええええええええええええええっ!?)


 先程の一撃を何とか回避したかと思えたが、なぜか、その鉄球から目に見えない強い力で引っ張られるミーミル。

 一秒後に動かぬそれに前半身を激突した彼。

 「ぎえぇええええええええええええっ!?」

 さらに一秒後、それから放出される突風で投げ飛ばされる。

 地面に転がるミーミルは、意識が混濁する中、プラネテウスの扱う魔術を考察する。

 (まずあの鉄球に引っ張られたました。十中八九重力系の魔術ですね。次に吹き飛ばされた・・・・・・何だ、鉄球に触れた部位が・・・・・・)


 「あ、熱い熱いぎゃぁああああああああああああああああああっ!?」

 燕尾服の一部が、燃えてただれている。

 もちろん耐え難い激痛が、彼を襲ったのは、言うまでもない。ライフラインの魔術が無ければ、死体が一つ出来上がっていただろう。

 「重力、強風スーパーローテーション、灼熱、強い酸・・・・・・そして『明けの明星』これから導ける答えは、まさか貴方の使う魔術は元素系では無く・・・・・・!?」


 「よっと。ミーミルさんの考えた通りだと思いますよ~? 

 私の得意な魔術は、自分の得物に呼び寄せた高純度の星の精霊さんを宿らせる事でございま~す♪ 

 惑星だけでなく恒星・衛星・彗星も対象内で~す。

 先程は~、『明けの明星』に属する精霊さん達をお呼びしたのでございま~す。

 端的に申し上げれば~この鉄球に特定の惑星の特徴を付与する・・・・・・と、申し上げれば良いのでしょうか~」

 ※もちろんプラネテウスが鉄球に付与したスペックは、本物の惑星よりも滅茶苦茶の無茶苦茶弱体化マイルドさせたものになっています。


 隻腕の見張り騎士(成程・・・・・・系統は違うかもしれないが、ハリセンを通して相手に呪詛を送るカンニングマンと近衛騎士団長の紋章記載を条件とした軍事力の再現をする魔術と似通ってるものがあるな・・・・・・)


 ヤマネ「ふむふむ・・・・・・鉄球を星として見立ててんのかよ? 得物をリズムよく振り回す行為は、狙いの精霊をおびき寄せるための罠?」

 

 チャールズ(一丁前に考察したふりして賢さをアピールする糞主人♪)

 

 会話してる途中で、鎖を引っ張り鉄球を手元まで戻したプラネテウス。

 「さて次は、どのような星を再現いたしましょうかね~」


 「させますか!!」

 相手からの追撃を恐れたミーミルは、左腕に得物である鏡【高重力の影響でヒビが入っている】を抱え、右手の先からレーザーを射出。

 おや・・・・・・?と首を傾げるプラネテウス。なぜならそのレーザーは、彼の持つ鏡の奥へと吸い込まれたからだ。


 「一体何を・・・・・・ん!?」

 唐突にプラネテウスの全身が、明後日の方向から飛来したレーザーに焼かれる。


 「サイバー魔術『0001』

 電脳サイバー空間スペースをご存じですか・・・・・・? この現実の世界の裏に存在するとされるデータのみで構成された仮想世界の事です。

 手前の主な攻撃手段は、アナログである弾を一旦データ化して電脳空間に送り、相手の元まで到達したタイミングで元のアナログな存在に戻して命中させるものです。

 この攻撃の前では、如何なる防御も回避も意味を成しませんよ!!」

 

 「まあ、なんと興味をそそられるような魔術だ事~。戦闘後に詳しい話を伺えますかね~・・・・・・」

 再びプラネテウスは、鉄球を頭上に回す。

 「そう、私が勝った後でじっくりとね~・・・・・・」


 相手の闘志に気圧されたミーミルは、再びレーザーを繰り出し、鏡に吸い込ませる。前よりも持続時間が長い攻撃だ。

 だが、タフさも具えているのかプラネテウスには、ダメージを受けている実感が無くピンピンしている。

 (クソっ! そもそも手前は、高火力の魔術が苦手なんですよ。

 大変だ・・・・・・彼女から繰り出される一撃をもろに喰らうだけで負け確定だ。逃げないと!)


 ミーミルは、攻撃の手を止め、後方に慌てふためいて逃亡する。

 距離さえ稼げば、彼女からの攻撃は、防げると考えたからだ。しかしすぐにその考えは、浅はかだと痛感することになる。

 物凄く重いであろう鉄球を振り回しながら、プラネテウスは、軽やかに飛翔した。

 今彼女は、ミーミルの真上まで追いつき、降下している。


 (やはり彼女は、がれき上の淑女・・・・・・ラティスと肩を並べる程の身体強化魔術の達人か!!)


 「えい♪」

 二度目の飛来する鉄球。何とか直撃だけは避けようと、自分の身体を強引に捻って跳ぶ。

 結果、もろに受ける事は、無かった。わずかながら掠っただけで済んだのだ。

 投擲された鉄球から酸とは違う液体が、蒸気みたいにまき散らされた。

 

 その液体を、つい鼻を通して吸引してしまったミーミル。

 (ぐうっ!? すごい引力!! 抵抗するだけで一苦労だ。・・・・・・もう宣伝は、充分だろう。

 降参を・・・・・・)

 

 「手前は、もうこうひゃんでひゅ・・・・・・ありぇ!?」

 舌のろれつが上手く回らなくなった彼。


 口達者な選手が、いきなり活舌が悪くなったことによって、観客席からちらほら笑いが湧きだしてくる。

 「何にゃ!? にゃんでいきにゃりかつじぇつがわるくなったのじゃぇ・・・・・・まさかしゃっきのみじゅ・・・・・・!?」


 「こちらも正解ですね~。『酒彗星ラウジョイ』・・・・・・アルコールを放出するとても変わった彗星でございますよ~。その特徴を、鉄球に付与したのです~。

 それにしても貴方は、下戸なのですね~・・・・・・まあ~口にしなくても皮膚に浴びるだけで効果は、てきめんですけどね」

 その時笑みを零したプラネテウスの目元は、深い闇を秘めていた。

 「もうこれで『あるキーワード』が言いづらくなりましたね~」


 (こ、この女ドエスだっ!?)


 ヤマネ「『酒彗星ラウジョイ』・・・・・・? 何か、だいぶ前に聞いたことのある単語だな」

 

 「さて、戦いが長引けば~観客の皆様方を~退屈にさせますから~・・・・・・とどめを刺せていただきますよ~?」


 (まずい! 早く逃げなければ・・・・・・)


 「とっておきを披露させて~頂きますわ~。『クエーサー』という天体は、ご存じでしょうか~?」

 そうプラネテウスが呟いた後に、鉄球の傍に一つの黒い球体が生じた。それの淵辺りにある光景は、魚眼レンズみたいに歪み出していた。


 (ま、まさかあの黒いのは、ブラックホー・・・・・・!?)

 「ひゃぁああああああああああああああああっ!?」


 『明け明星』や『酒彗星ラウジョイ』の時に発生したものよりも格段に強い引力に、フィールドの土砂ごと吸い込まれそうになるミーミル。もちろん引力を起こしているのは、その黒い球体。

 だが、彼女のとっておきの効果は、吸引だけでは、済まされない・・・・・・ここからが本番。


 鉄球から唐突に眩い光が輝きだしたかと思えば・・・・・・。


 チャールズ「うわぁあ・・・・・・綺麗だなあ・・・・・・」


 そこから、莫大なエネルギーの塊がぶちまけられたのだ。

 まさしく威力も範囲も規格外。

 炸裂された絶大的な一撃をもろに浴びたミーミルは、力なく倒れる。

 それを確認するウラヌンタイス。


 戦闘前では、清潔感溢れた彼の燕尾服の一張羅は今、土埃にまみれ、ところどころ焼き切れていた。


 『・・・・・・生きてますよね? よし息がある。勝負あり。ミーミル選手失格!!

 よって第三回戦勝者・・・・・・プラネテウぅスウぅぅうううううううううううううっ!!』


 もちろん、ブラックホールもどきの黒い球体は、現在消失しており、鉄球にかけられた付与も解除されている。

 

 白目を剥いて泡を吹いている敗者を見下ろすウラヌンタイスは、ロッドを通さずボソリと呟いた。

 「悪魔みたいに独りよがりで強欲な選手ですけど、今回ばかりは、同情します・・・・・・」



  

 


 


 

 ※1ロングフィンガー・・・6センチメートル

 ※1ヘビーポイント・・・0・5キログラム

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