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魔導書『並呪万病の巻』VS妖刀『送塩』

〇円形闘技場の詳細。コロッセウムみたいに天井は存在しないが、来賓者や王侯貴族が座る席には、日と雨除け用の簡易的な天幕が用意されている。

 〇東側には、本選まで勝ち残れた選手専用の観客席が用意されている。

 〇この大会のルールとして、予選のみ、選手達は、待合の時に別のブロックのバトルロイヤルを観戦しては、いけないものがある。

 本選時にて相手の手札をどう、アドリブで切り抜けるのかを見るのもこの大会の醍醐味の一つであるためだ。

 「ケンタウロスのおっさん!! よくもぬけぬけと人間の町に侵入してきたなっ!?

 見事な人間の変装をしていたってなぁあ~あたしの前じゃ無駄なんだよ!! やいっ、一体何を企んでいる!?」


 「ちょっ、ご主人様どうしたの!?」


 だいぶ前に故郷を襲った下手人であるハクビの姿を一目見た瞬間、ヤマネは、自分の膝に座っているチャールズを一旦脇に優しく立たせた後、勢いよく席から飛び出し、一目散に戦闘舞台であるグラウンドめがけて駆ける。

 ただ、彼女の怒号は、最高潮に興奮した観客達によって、かき消された。


 さあ待ちに待った大会の初戦に水を差そうとしたヤマネの前に立ち塞がるのは、隻腕の騎士だ。

 今回の武闘大会での警備に駆り出されたその人は、彼女を制止する。

 「止めて下さいお客さん。せっかくの大会を台無しにしたいんですか?

 事情は、分かりませんが、荒事は、止めて頂きたい!」

 

 「そうもいかねえ。さっきグラウンドに立っていた白眉毛のおっさんはな・・・・・・春中期の時あたしの故郷を襲ったケンタウロスだ! 今回も何か企んでいるに違いねえ。魔物が人間の大会に参加していいってのかよ!?」

 荒れているヤマネを前に、隻腕の警備員は、ため息一つ。


 「証拠は、あるんですか? それにもしお客さんの言っていることが真実だとして、ただ単に、ハクビ選手は、お客さんの言うケンタウロスと似ているだけの別人という線もありえるのでは?」

 警備員の淡々とした言葉に、ヤマネは、口をすぼみ納得しかけてしまう。

 それに彼女とてみんなが楽しみにしてた大会の邪魔なんてしたくない。冷静さを徐々に取り戻す。


 駄目押しにと、警備員の放った次の言葉に、ヤマネは何も反論できなくなった。

 「例えハクビ選手が何かしら悪事を企んだとしても・・・・・・。

 Aランクのウォールナッツ選手とSランクのフランク選手もここにいらっしゃいますから、問題が起きてもすぐに対処できるのでは・・・・・・?」


 「もう、何やってんだよご主人!? 恥を晒すなよさっさと戻ろう」

 論破され項垂れているヤマネの手を、チャールズ達は自分達の席まで引率する。


 

 『さあ長らくお待たせしました。本選一回戦のはじまりです!!

 カンニングマン選手とウォールナッツ選手。どうぞ位置に着いて下さい・・・・・・』

 司会であり審判であるウラヌンタイスが、音響増大の効果を持つ杖に口を添えて叫ぶ。

 一回戦の選手二人は、闘技場中央にて向き合う形で対峙する。地球基準でお互い3メートル程距離が取られている。

 ウラヌンタイスと神官少女のライフラインは、彼らの戦いの余波に巻き込まれないようグラウンド端へと寄る。


 少しの間、闘技場であるグラウンドと観客席が静寂が支配した。

 それも、司会の一声で喧騒へと戻る。


 『第一回戦 開始!!』


 初めに仕掛けたのは、カンニングマン。

 彼は、持っている魔導書を広げた。途端その本から桜吹雪みたいに全てのページが舞い上がる。その本を綴った糸が滑らかに解けたのだ。次に宙に舞っているほとんどの紙束が見えない力に従うよう不自然に術者の右手に殺到し、集まり一振りの形を成したのだ。


 上記の出来事にかかった時間は、一秒程度か。


 形作られたその正体は、長尺のハリセン・・・・・・持ち手は、表紙で構成されており、刀身(?)である部分には、びっしり文字や魔方陣などの記号が並んである。

 残りのページの方は、ゆったりした彼のローブの袖口に入っていった。


 『おおっと! 何という事だ~グリモワールが瞬く間に分解したと思ったら、ひとりでに刀みたいに変化したぞぉ~?

 これは、一体・・・・・・?』


 「いやバトルロイヤル時で発動したの見ましたよね貴方!?」

 司会をしている審判に向かって、先程造り出したハリセンで素振りするようツッコミするカンニングマン。


 『知ってるわボケっ!! 初見である本選時からお越しになられた観客の方々に合わせて白々しく実況してるだけだっつうの!! そんくらい察しろ辻ツッコミ!!』


 神官であるライフラインは、一選手と司会の喧嘩を前に、呆れのため息をついて冷ややかな視線を送った。


 ツッコミをしただけなのに司会から悪口を言われ、頭に血が上っているカンニングマンに、軽く肩を二回叩く者が・・・・・・。すぐに後を振り向く彼。

 髭が生えてないすべすべのほっぺたに人差し指が優しく突かれた。


 「いや何試合開始してすぐに審判と喧嘩してんだテメェ・・・・・・お?」

 もちろん肩を叩いたのは、対戦相手であるウォールナッツだ。

  

 即、無言のまま得物であるハリセンで相手を薙ぎ払おうとするカンニングマン。

 何の殺傷能力も無さそうな攻撃に対し、ウォールナッツの方は、両手をズボンのポケットに突っこんだままその場を移動せず上体を後方に仰け反って回避。ハリセンが彼の腹を掠めるか掠めない位ぎりぎりの所で虚空を通り過ぎた。

 ウォールナッツの優れたバランス感覚や安定した大幹によって、ブリッチじみた仰け反りの姿勢が崩れることは、ない。


 「問答無用で不意討ちとは、感心感心。そのグリモワールのハリセン・・・・・・大方、毒を塗った刃物みたいに掠っただけでアウト系の奴だろ? おう、怖いねぇ~」


 「怖いと仰るなら、抜刀したらどうですか?」


 「ハンデだよハンデ。しばらく武器使わないから、その内に俺を倒してみろや・・・・・・?

 無理だろうけどねぇ」


 「では、お言葉に甘えてボクを舐め腐るAランクをどつき回すとしましょうか!!」


 軽薄な雰囲気と挑発染みた口調・舐め切った態度にしびれを切らしたカンニングマンが、アンバランスな状態のウォールナッツの胸に容赦なく激しく得物を振り下ろす。


 「りきみすぎだバーカ」

 ハリセンに触れる直前にウォールナッツは、真横方向に体を捻らせ、錐もみのごとく低空に跳ねて難なく回避。

 転ぶことも無く両足で着地した彼に、カンニングマンは、思いっきり踏み込み、相手の頭部目掛けて深く叩きに入るよう仕掛ける。

 速攻で上体を元まで上げたウォールナッツは、何度も軽く後方に跳んで相手の連撃を紙一重で避ける。

 「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ・・・・・・!」


 「・・・・・・くっ!」

 真面目に戦っているカンニングマンが、彼に舐め切られ遊ばれていることを、傍から見てもわかるよう深く痛感した。

 「くそ! ・・・・・・当たりさえすれば・・・・・・っ!!」


 「当たりさえ・・・・・・ねぇ・・・・・・」

 そのまま後退りを続けたウォールナッツは、数十秒後にて闘技場端・観客席前列に沿う壁に背をつけた。


 「ハァッハァッ・・・・・・追い詰めたぞ・・・・・・」

 慣れない運動によって疲労困憊になっているカンニングマンは、これ以上背後に逃げれない相手を見て、苛立ちに歪んでいる顔が、不敵の笑みへと変わる。

 次に彼は、標的の懐までおもいっきり踏み込み、得物であるハリセンを高らかに掲げ、おもいっきり振り下ろした。


 観客席全体から、オオッ!? という驚嘆が轟いた。

 それは、カンニングマンがはるか格上であるはずのウォールナッツに、見事一撃をお見舞いできた・・・・・・からではなく。


 「そ、そんな・・・・・・」


 「こんなあからさまに今から、唐竹割り行きますよ☆ みたいに高らかに得物を掲げるなんて、敵に防いで下さい! って、言ってるようなもんだぞ・・・・・・驚かれたら、逆にこっちがバカにされてるみてぇでムカつくわ」

 不機嫌そうに呟いているウォールナッツの左手には、カンニングマンの右手首が握られている。それも強めに。

 真剣白刃取りみたいに、彼は振り下ろされたカンニングマンの右手首をキャッチしてハリセン攻撃を防いだのだ。

 

 カンニングマンは、少しの間唖然としたが、その後。

 「・・・・・・まあ、Aランクと戦ったらそうなるか・・・・・・」

 諦観したか、ため息をついて寂しそうに項垂れた。


 対してウォールナッツが敵の手首を握ったまま呆れた口調で語る。

 「あのなあ・・・・・・お前『当たりさえすれば・・・・・・っ!!』とか言ったがよぉ」


 「な・・・・・・何ですか?」


 「だったら籠手こてや足狙って浅く斬りかかってこいやぁあああっ!!

 何だてめぇさっきから正統派剣士みたいに深く踏み込んで急所ばっか狙いやがってえぇええええええっ!!」

 

 「え? ・・・・・・え!?」

 唐突に激怒して説教し出した彼に、カンニングマンは軽く狼狽えてしまった。


 「どこにでも掠ったら勝てるんだろぉ? 当たりさえすれば効力発揮すんだろぉ? だったら敵にとって警戒の薄い部位を攻撃すんのが定石だろうがっ!!

 威力関係ない攻撃仕掛けんなら、間違っても敵の懐に飛び込むな! 相手から反撃されてもすぐに対処できるように逃げ腰及び腰でいやらしくヒットアンドウェーしろ!!

 そんなバカ正直みたいな戦い方して良いのは、正々堂々タイプの正統派剣士だけだっつうのっ!!」


 偉そうに講釈垂れたウォールナッツの言葉に、不意にも納得してしまうカンニングマン。

 やっと刃の真ん中が折れてる刀を鞘から抜いた彼は、おまけのアドバイスを送る。


 「それにさぁあ、お前・・・・・・実は この闘いでどうせ負けても良いか とか思ってんだろ?」


 「え!?」

 図星を突かれて大口を開けるカンニングマン。


 「気持ちは、分かるよ? 本選残れた時点で賞金も手に入るし、それにまさかまさかのトーナメント初戦で相対したのは、最強の剣士である俺様だからな・・・・・・諦めたくもなるよなあ。

 でも舐めプ癖が抜けない俺が言うのも何だがな・・・・・・」



 「ファイターなら、全身全霊で勝ちを取りに行けっ!! 弱ぇえんだったら、なおさら勝ちに飢えろっ!!

 俺は、舐められることが一番嫌ぇえんだからよおおぉっ!!」

 

 ウォールナッツの独善的な説教が終わった後、グラウンド・観客席がしばしの間静寂に包まれる。

 それを解いたのは、カンニングマンの乾いた笑いだ。


 「ふ・・・・・・確かにその通りですね。有意義なご指摘ありがとうございました」


 「そりゃあ、良かった。改心してすぐで悪ぃが、この刀で・・・・・・って、おい!?」

 ウォールナッツが、いや司会らや観客達が驚愕する。

 何を思ったのか、カンニングマンは、自分の左手で彼の折れた刀の刀身を力強く握ったからだ。

 ライフラインの魔術の効果により、その左手に傷は出なかったが、彼に激痛が走るのには、変わりなかった。

 いきなりの敵の自傷行為により、虚を突かれたウォールナッツを前に、したり顔をしているカンニングマンは、苦痛に耐えながら呟く。

 「貴方の妖刀『送塩』の特殊効果は存じていますよ。

 それは、『斬りつけた相手に、自分の魔力を与えてパワーアップさせる』という利敵行為を極めたものですよね? 強者なことで有名である貴方。だからこそ使う武具や扱う魔術も周りからばれている!

 ・・・・・・アドバイス通り全力で勝ちを取りに行きますよ!!」


 彼の魔力や活気が前より格段に上がった。『送塩』の効果により、ウォールナッツの魔力が送られて自動で身体・魔力が強化されたからだ。

 

 それだけでは、終わらない・・・・・・。


 唐突にウォールナッツの膝に紙片が触れた感覚が起きる。視線を下ろした彼は、驚愕した。

 均された地面に一つの手裏剣が転がっている。それの材質は、金属ではなく紙製だ・・・・・・怪しげな文字や魔方陣がびっしり描かれていた。


 実は、カンニングマンが、得物である魔導書から大量の紙を宙にばらまいたタイミングで、数枚のページを自分のローブの裾内に忍ばせておいたのだ。

 ウォールナッツの説教中にそれを操って手裏剣の形になるよう魔術で折っておいたのだ。


 「お・・・・・・お前・・・・・・」


 カンニングマンの得意魔術『呪詛転写』が発動する。

 それは、『魔導書に触れている相手に、それに書かれた全ての魔術・呪術が一気に流れ込む』もの。

 例えば、320種の攻撃魔法が記載された魔導書をその術者から殴りつけられた相手は、320種の攻撃魔法が同時に着弾するのと同じダメージを受ける事になる。



 ヤマネを予選時で倒したチンピラ・・・・・・ウルマーフェルト パウィースが、彼の扱う魔術を見て舌打ちをした。今彼は、観客席最後尾の背後で腕を組みながら立ち観戦している(立ち観戦ならチケットは不必要)

 「あの若造・・・・・・負けたな。俺もあれにやられたんだ。どんな防御力で受けようが意味がねぇ。

 当たった時点で負けるんだ。ったく・・・・・・生意気なガキだぜ」


 「よくやったぞ! カンニングマン」

 革エプロンを身に着けたドワーフのグラナダは、相棒の活躍に喜んでいる。

 

 先程、ウォールナッツに着弾した紙手裏剣には、状態異常付与・呪い付与系の魔術が12種類ほど記されている。

 つまり、今の彼には、12種類の呪詛が押し寄せるよう同時に襲い掛かっていることになった!

 眩暈・意識混濁・極度の寒気・魔力漏洩・筋肉弛緩・吐き気・激痛・下痢症・魔術発動阻害・動悸・発熱・アレルギー。

 いっきに流れ込む不調の濁流に、実力者であるはずのウォールナッツは、膝から崩れ落ち、口から泡を吹き、痙攣を始めたのだ。


 ヤマネ「お、おいウォールナッツ先輩やばいんじゃねぇのか・・・・・・?」


 ルイス「彼がここまで弱っている所を~♪ 見るなんて~♪ とても久しぶりだよ~♪」

 ウォールナッツの友人であるルイスが、焦っている所を見ると、本当に彼は、未曽有の危機に陥っていると見て良いだろう。

 

 観客席達から戸惑う声がちらほら聞こえる中、病と呪いに蝕まれてもなお不敵の笑みを浮かべるウォールナッツ。


 「やればできるじゃねぇかてめぇ!! 見直したぜ。

 っていうか、ページ飛ばせんなら初めから遠距離から飛ばせよ!!」


 「できますけど、大風吹くだけで手元から離れたものは、制御しづらくなるんですよ紙操作というものは!!

 ・・・・・・でもこれで形勢逆転ですね?」


 「逆転・・・・・・? 何がだ。俺の優位は、未だに崩れてないぞ・・・・・・ゼェゼェ・・・・・・」


 「息も切れ切れでどう見ても弱っていますよ? もう諦めて降参してみたらどうです?

 フフフ・・・・・・強者を見下ろすのは、意外と気分が良いものですね」


 弱り切って項垂れているウォールナッツは、握る力も残ってないのかカンニングマンの右手から手を離した。

 そして彼が次にとった行動は、さらに姿勢を低くし、膝立ちになる。


 ずっと実況をさぼっている司会のウラヌンタイスは、真摯な表情に変えライフラインに言う。

 『ライフラインさん。ウォールナッツに『手加減イージー付加エンチャント』を与えてください。最大限! すぐに!!』

 彼女は、首を傾げながらも素直に聞く。


 「えっいや、ちょっと・・・・・・うわぁあああああああああああああああああああっ!?」

 フィールドから突如、衝撃波と暴風が迸り満たし暴れ回り支配した。悲痛な声が円形闘技場の外側から微かに聞こえた。

 しばしの間闘技場から土煙がもうもうと立ち込める。

 そこの視界が晴れたタイミングで、ヤマネが驚く。

 「え? あれ、・・・・・・ウォールナッツ先輩しかいねぇっすよ!?」


 『おおっと~どういうことだ~!! フィールドどこを探してもカンニングマン選手の姿が見えないぞお・・・・・・これは一体』

 久しく実況を再開したウラヌンタイスに、ライフラインは、(しらじらしい・・・・・・知ってるくせに)と思いながら、ぽそりと呟いた。

 「結界が破られた。せっかく長い呪文詠唱をして透明インクで面倒な魔方陣を描いて発動したのに・・・・・・自信作だったのに」


 「カンニングマンならここにいないぜ? 今頃『蜂針蟻顎流』の剣道道場辺りにでも墜落してんじゃねえの・・・・・・? ゼェゼェ・・・・・・」


 この戦いを選手専用席から観戦していたミーミルが困惑する。

 「『蜂針蟻顎流』の道場・・・・・・? ここから5ワゴンロード(約3.5キロ)も離れているんですよ・・・・・・?」


 なぜ彼が、遠く離れた場所へ? 答えは、単純ウォールナッツが薙ぎ飛ばしたから。

 ①ウォールナッツが自前の刀を強引に振る。

 ②あまりの勢いに左手で握っていた刀身を離してしまうカンニングマン。

 ③そのまま彼は、フィールド端に張られた結界に衝突・貫通し、観客席上空を通過。

 ④円形闘技場から脱出。

 ⑤数多の家屋や道路や用水路の上を通り越して遂に例の道場までたどり着いた。


 「・・・・・・やれやれ体調不良で本来の10分の1の実力も出せねぇや・・・・・・ハァッ」

 息を切らしたウォールナッツが、調子に乗っていることを呟いた。


 戸惑うヤマネ。

 「え? これウォールナッツ先輩の勝利っすか?」


 それを耳にしたのかしてないのかウラヌンタイスは、杖に口を寄せ大声で宣言する。

 『勝負あり! カンニングマン場外負け! 勝者・・・・・・ウォールナッツぅうううううううううっ!!』


 歓声がそこらじゅう上がる。



 ルイス「演台~も無いのに~♪ 場外判定~って概念~あるんだね~♪」


 『待機しているスタッフの皆様は、アスクレピウスさんと同行してカンニングマン選手の安否確認及び治療をお願いいたします。

 観客の皆様方・・・・・・申し訳ございません、ライフラインさんが結界の補修を終わらせるまで待機をお願い申し上げます。どうかご理解ご協力お願い致します・・・・・・この場を借りて謝罪致します』


 ちなみにグラナダの方も慌てた様子で、アスクレピウスと共に、彼の行方を追った。


 「その結界、観客を護るためにあるよね? 何、その低品質なの。

 これじゃあ防御壁のていを為してないよ。チケット代を払ったお客様を不安にしていいの?

 タイガ神官か何か知らないけど、未熟な魔導士に人命がかかるような重要な仕事を任せないでよね」

 退屈そうに傍観していたチャールズが、嬉々として批判を述べる。


 「おい、やめろってチャールズ!!」


 (別の選手の魔法があのうさ耳糞坊主めがけて飛んできたら、結界と手加減付加を解除しよ)

 地獄耳のライフラインであった。


 選手専用席にいるプラネテウスが、ぽつりと呟く。

 「あら~、やはりウォールナッツさんお強いですね~?

 これ以上迫力のある試合を、皆様に魅せるのは、至難の業です事よ~?」


 彼女の言葉を耳にしたフランク以外の選手達は、圧し掛かる重圧プレッシャーによって、一斉に項垂れ脂汗を流して胃が痛くなった。


 木造建築の剣道道場『蜂針蟻顎流道場』にての会話。

 師範である老婆「剣技も体術も極めた・・・・・・あとに残ったのは、魔術か。

 だれか、教えてくれんかのう・・・・・・」


 師範代「ここに在籍していたコヨーテさんを先生として招待致しますか・・・・・・?」


 師範「いや、あやつの扱う魔術は、どうも癖が強すぎる・・・・・・。

 はぁ・・・・・・誰か己に魔術を教えてくれんかね? 代わりと言っては、何だが格安で道場入門を認めるというのに・・・・・・」


 弟子「大変です! うちの門の前に、ローブを着た男が倒れています!!」


 師範「落ち着くのじゃ見苦しい・・・・・・介抱して寝かせてやれ。後で医者も呼ぶように・・・・・・」


 

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