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ラティス法第四条 ラティスによそう料理にキノコは、入れてはいけない

 『あのモンスター』とラティスがキャラ被りしてしまった!

 ヤマネ一行が去って少し時間が経ったベルディア町。

 そこの外側めがけて、魔物共が芳ばしい匂いを頼りに列をなして群がって来た。

 ワイバーンや、毒蜂や毒蛾にゴブリンおまけにオーク達だ。その中にスマートドラゴンの姿は、なかったが。

 もちろん人食い魔物を寄せ付ける体臭を放つヤマネが立ち寄ったせいで、奴らに嗅ぎつけられてしまったのだ。彼女は、今回はそれについて完全に失念していた。


 「クンクン・・・・・・臭いが濃くなってきやがったぜ」

 急ぎ足気味に翼を羽ばたかせているワイバーン。襲撃の手を止める選択肢は、奴の頭には全く無いはずだが、すぐに蝙蝠型の翼を徐々にだが止めることになる。

 「お迎え早すぎだろ・・・・・・ったく」

 この町の城壁門から、ぞろぞろと駐屯騎士や冒険者達が現れて臨戦態勢を取っているからだ。


 「ニンゲン共も鼻が利くみたいだな。だが、俺様みたいな立派な顎は、ねえだろっ!?」

 大口を開けて低空飛行に移るワイバーン。

 こちらに迫り来る鋭い牙を前にし、低ランクの冒険者や騎士達が、あまりの恐怖で腰が抜けてしまっている。


 「大丈夫かっ!?」

 一人の影が、城壁の上から颯爽と跳び出し、今まさに人々に牙を立てようとしているワイバーンの頭に、重くて硬い正拳を降ろしたのだ。

 鎧の如き重厚な鱗を持っているはずのそのワイバーンは、あっけなく例の影の一撃で沈んでしまった。

 その竜は、鼻と頭頂部から血が流れ、白目を剥いて息絶えている。

 自分達より遥かに強いはずのワイバーンが、あっさりやられた所を目撃してしまったゴブリンやオーク達の方が、次に慄きだして走る速度を緩めたのだ。

 その隙を見逃さなかった人間の兵共は、一斉になだれ込むよう攻撃を仕掛ける。

 何者かがドラゴンを壮快に撃破したことにより、人間の兵共の士気が異様なまでに高まったのだ。そのおかげか、今回の魔物の襲撃は、人間側に犠牲者を出すことなく無事終息される。


 活躍した一人の影に感謝を述べるため、この町の冒険者ギルドの受付嬢が、笑顔で話しかける。

 「お手柄でしたね。あなたのおかげで、この町は、無事護られました。

 ここの町長が、感謝の辞を述べたいと申されたので会食に是非ご参加を・・・・・・って、ええっ!?」

 ただその顔は、会話の途中で驚愕の表情へと歪んだ。


 「な・・・・・・何だ? 俺様なんか問題でも起こしていたか? 受付嬢さん」



 

 


 「サツマさん何でここにいるのですかっ!? たしかユミル山脈で遭難しているはずではっ!?」

 受付嬢の瞳には、筋肉隆々で短足で寸胴の冒険者・・・・・・サツマ オーガニック が映ってあった。

 ちなみにさすがに寒冷地にいるせいか、今の彼は、タンクトップ姿だけでなく毛皮の防寒具を着用している。


 「え? 遭難!? どういうことだ。たしかにユミル山脈には、登ったが迷子になった覚えがねえっ!」


 焦る受付嬢に、困惑するサツマ。

 彼がここまで降りてきた理由は、物資が少なくなってきたので一旦それを補給する為である。

 

 「王都で、緊急依頼が受理されているんですよ。あなたが遭難したって・・・・・・いや、でも確かにこちらのギルドが緊急依頼を発されているのを私は知らなかったし。てっきり、同僚がホウ・レン・ソウを怠っただけかと・・・・・・」


 「俺様は、たしかにあの山に九日間程登山する許可を得ているはずだ。俺様を救援するための依頼は、その許可日数を越えてからが原則じゃないのか? というか、その緊急依頼受けた人いるんだよな!?」


 「は、はい。・・・・・・たしか受理された方はポニーテー」


 「こうしちゃいられねえ。俺様のせいで面倒や危険に巻き込まれるんじゃあ目覚めがわりぃ。

 早速行くぜ」

 受付嬢との会話を一方的にきり上げて一目散にユミル山脈へと駆けるサツマ。


 「ちょっ、サツマさーん!? まだ例の依頼を受理された方について説明するの終わってませんよーっ!!

 それと礼状と会食は、どう町長に説明しましょうっ!!」


 

 ※次からは、ヤマネ達の方へと視点を変えます。


 所々紫に発光している水晶が点々と生えている銀世界にて、ピッケルをついて道なき道を登る二人組がいた。

 ヤマネとラティスだ。


 「うわっ。深いな、落ちたら助からないだろうな。雪山怖えぇえ」

 雪渓の割れ目・・・・・・クレバスの近くまで歩み寄って、その底を覗き見ようと屈むヤマネの頭を、ラティスは軽くピッケルの柄部分で小突いた。

 もし金属製である刺部分で殴った場合、高確率で金属アレルギーが、ヤマネに発症してたであろう。

 「本当にそう思うなら、迂闊に近づかないで」


 痛ってぇと自分の頭をさすって相方の方へと睨みつけるヤマネに、ラティスは呆れたようにため息をつく。

 「君雪山舐めてるね。これだから新人は・・・・・・それと雪山の怖さはこんなものじゃないです。

 ホワイトアウトや吹雪なんて悪天候に遭遇したら、こんなうららかに登山なんかできない」


 ラティスの小言に、微かにはらわたが熱くなったヤマネは、立ち上がり不用意に歩いた。

 「分かってるよ。でも今雲一つない星空じゃねえか。

 ラティスのクリスタルの光を頼りにしてれば、わかりやすくバッカリ割れてる裂けた大穴なんて、見逃すわけねヒャイッ!?」

 その瞬間、彼女の表情が不満から間の抜けた喪失へと変わる。

 なぜなら自分の足元が、硬くて重くて分厚い雪の足場が、突拍子も無く崩れ落ちたからだ。

 彼女は、一瞬だけ疑似的な浮遊感を受けた後、重力に抗えず砕氷へと共に暗い穴へと吸い込まれる。

 ラティスに助けを求めようとする余裕すらなく、発狂する様に手足をばたつかせるヤマネ。

 声にもならないような絶叫を喉の奥から出す今のヤマネに、この場のピンチを乗り越えるための魔術の呪文を唱えることなんて無理そのもの。


 「・・・・・・やれやれ」


 そして彼女の全身が、クレバスの奥に満ちる闇に飲み込まれた。

 もうヤマネは、潰れて死を待つだけの存在になったのか・・・・・・?


 「う・・・・・・ぐ、うぁ」

 そのクレバスの壁から反対側の壁まで瞬時に架けられた柔らかい土の橋が、ヤマネを受け止めたのだ。

 もちろんラティスが繰り出した魔術。


 崩れたことで穴が広がったクレバスを覗くラティスが、呼びかける。

 「大丈夫です? 聞こえてる?」

 対するヤマネは、動揺するも元気に 大丈夫だっ! と返事した。

 少し時間が経った時に、ヤマネがラティスの降ろしたロープを頼りに地表まで這い上がる。

 落下によってクレバスの壁に肌が擦ってしまい、掠り傷を負ってしまった彼女だが、命に別状はない。


 「あ~助かった・・・・・・足元には、注意したはずってのにいきなり穴が・・・・・・」


 「ヒドゥンクレパスだね。クレバスの穴の表面に雪が蓋をするよう覆ったんだ。目だけで全ての危険を察知することは、できないよ。重々気を付けてね?」


 「うーす・・・・・・」


 「本当に反省してよね。ラティスがいなければ今頃割れ目の奥で血だまりになって腐ることも無い冷凍された屍になってたところだよ? 全く君は、ラティスがいないと何にも出来ないんだから・・・・・・」

 

 「そんな生々しい末路を淡々とした口調で言わないで欲しいっすよ。ただでさえまだ生きた心地してねぇんすから」


 「心身疲労気味だね。長時間ぶっ通しで登ってもあれですから、今から晩御飯を食べるの?」

 ラティスの提案に、ナイーブ気味のヤマネのテンションが、分かりやすく上がった。


 ここから近くにある魔力のクリスタルの傍で腰を下ろしたヤマネは、自前のバッグから、土鍋と食材を取り出した。

 その食材は、干し肉とカブとほうれん草と食用キノコと塩・香辛料と鶏ガラ・・・・・・そして長粒米である。


 「お米? タロッタービルァ町とかから取り寄せたの?」


 不敵に笑うヤマネ。

 「ご名答・・・・・・ダンジョン探索の依頼クエストを達成した後、買っておいたのさっ!

 今晩の献立は、雑炊水炊きだよ」


 (確かに米は、この国では珍しい食材だけど。そこまで自慢げに言うこと?

 なんでこんなテンション高くなってんの・・・・・・怖)

 

 早速調理に取り掛かる彼女。

 可燃性スライムを少々生成した後、火を灯す。

 燃え盛るそれの上に、少量の水と鶏ガラを入れた土鍋を置く。

 黒曜石のナイフで干し肉や野菜、キノコを豪快に切り分ける。

 土鍋内の水が沸騰し出したタイミングで、切られた食材を投入。

 塩や香辛料をいて土鍋の蓋を閉める。


 「ふう、ちょっと魔力使っちゃったな。あとは、待つだけっすよ」


 鼻で笑うラティス。

 「ふん。たかがこんなちっぽけな魔術発動しただけで、へばっちゃってるの?」

 それに対し、歯ぎしりするヤマネであるが、反論せず辺りを見渡す。

 (ぐぐっ・・・・・・このメスガキが! だがこの山にいたるところにある水晶を生み出したのがコイツだ! しかも涼しい顔のまま繰り出しやがって魔力貯蔵庫が。

 こんな超やべえ魔術、仮にあたしが発動しようもんなら、二十回程魔力欠乏症を引き起こしてバタンキューだぜっ・・・・・・!!)


 そう光も無しに夜間で雪山を登るのは、危ないとの事で、ラティスが、上述の魔術を発動したのだ。ちなみに例の魔の水晶は、地脈に流れる魔力を吸い上げて発光する特徴を有している。実は彼女は、光属性の元素エレメント魔術が使えないのでこの術で代用しているのだ。


 米が炊き上がるまでの暇つぶしに、峰々の景色を見渡すヤマネ。

 視線先には、フェンリル山、そしてさらにその奥の奥には、オドロオドロしい紫色の荒れた大地が広がっているのが微かに分かる。


 「危険区域か・・・・・・魔王の根城があると言われている」


 「懐かしいね曇天原野。一年前くらいに行ったよ」


 ラティスの爆弾発言に、軽く仰天するヤマネ。

 「え? 危険区域に入ったことがあるんすか・・・・・・?

 さすがBランクすね」

 

 「まあそうだけどね。ちなみにその時は、一冒険者ではなく、騎士(荷物持ち)として遠征しに行ったんだけど。

 行方不明になった辺境伯を捜索するためにですね」


 「え? 元騎士だったんすか」

 (もしかしてその辺境伯って、タワラさんが言っていたウィリなんとかさん?)

 

 「元じゃないよ騎士爵はまだあるの! ただ冒険者ギルドに登録してある理由は、武者修行に励むためだとお父上に伝えてあるよ」


 もっとラティスの話を聞きたくてワクワクするヤマネ。

 それに対し、ラティスの機嫌は、どんどん悪くなる。

 彼女の脳裏にこびりついた、取り除きたくても取り除けない負の記憶が、表へ次々と浮かび上がる。


 巨大な柱と綱によって並べられるよう天日干しされた巨大ドラゴンの死肉ら。

 亡骸に囲まれた妖しげな石像。

 裏次元へと続いている空間の切創。

 上位魔族や天使ですら捕食する食人植物。

 そして『流石近衛騎士の娘だな』『君なら危険区域でも怖いものなしだな』という重く輝かしい期待。


 「・・・・・・これ以上ラティスが話すことは、ないよ」


 眉をしかめる彼女に、ヤマネは、残念そうに、だけど優しく微笑んで「そっか・・・・・・」と答える。

 再び周囲を見渡すヤマネ。

 ふと頭上を見上げた彼女の目に、城程の大きさを有する黒い三角柱が止まった。

 「この山初めて見てから思ってたんだけど、頂上に建てられているあれって、なんすか?

 見張り塔や山小屋とも思えないんすけど」


 暗い表情をしているラティスが、瞬時に勝ち誇ったように変わった。

 「そんなことも知らないの・・・・・・?

 ユミル山脈の頂に突き刺さっているそのモニュメントは、巨人達が何百年前かに設置された氷の巨人の墓標って、言われてるんです。

 この国では、常識のはずなんですけどねぇえ!?」


 (くそっ! 水を得た魚の様にいきいきに見下しやがって!

 話題を変えようかな。おっ! ご飯の芳ばしい匂いが!)

 手袋を着けているヤマネは、土鍋の蓋を取る。

 その中から、湯気と沸騰音が一気に溢れ出した。


 「うわっ、うまそ~!」

 (あれ・・・・・・なんか変な臭みが)


 「ほお! これはなかなかですね」


 受け皿は、ラティスの土魔術で陶器の小皿を二つ造りだし、ヤマネは、スプーンを二つ用意する。

 水炊きをよそう役は、ラティスだ。ただキノコは、ヤマネの皿に押し付けて自分の方は干し肉を多めにとっている。 


 「では・・・・・・いっただきますっ!!」

 お腹が空いている二人。早速水炊きを口に運んだ。


 「ん? うまいです。ガサツなDランクでも料理は、優れているみたいですね。お粥と呼ばれる料理なのこれ?

 とっても気に入った!」

 ラティスの方は、満面の表情でスプーンを早く動かしている。


 対してヤマネの方は。

 「・・・・・・・・・・・・」

 一口食べた途端、手と顎を止めた。



 (なんだこれなんだこれ。俺の知っている炊き立てのお米と違う!? すごいパサパサしている。

 なんでだ? 特に調理法を間違えたわけでもねぇえのに・・・・・・くそまじぃ)


 そう、彼女は知らなかったのだ。

 日本人の舌にとって、粘り気が少ないインディカ米の味は、慣れてないのだ!

 ましてやその種類の調理法には、白飯の炊飯が向いていない。

 チャーハンみたいに炒めたり、香辛料などで濃くしたソースと混ぜて食べるのが主流。


 生前あさまの頃の味覚や嗜好を引きずっているヤマネにとっては、その料理を美味しく頂くことは、できなかった。自分が調理した米料理を思う存分食べるのを、楽しみにしてたのに・・・・・・。

 (やべえ・・・・・・まずすぎて、これ以上喰いたくねえ・・・・・・・しかしサツマのおっさんを助け出すには、腹ごしらえしなきゃ話にならん・・・・・・)

 涙目で水炊きを自分の口にぶちこむ彼女であった。 


 「美味しいですね」

 雑炊をかきこんでいるヤマネを見て、ラティスは嬉しそうに呟く。

 大自然広がる銀世界の食事会では、彼女だけが本心から堪能していた。



 鍋を囲っている二人の耳に・・・・・・。



 (おおい俺様は、遭難してねえぞ! 救助する必要は、無くなった。ってかラティスとヤマネっ!?

 お前達だったのかっ!!)


 「あれ? どこからかサツマのおっさんの声が、ほんの微かに聞こえる気が?」


 「近くで助けを呼んでいるかもです。これ食べたらまた探しに行きましょう」






 ※次からは、フェンリル山中腹へと視点を変えます。 

  

 「はあ熱々の料理が食べてぇ。こんのクソ寒い中鶏ガラのスープとかを口にしたら最高だったかもな」


 「これ以上文句をおっしゃらないでくれ。高カロリーの味気ない固形携帯食しか持ってきてないことを詫びるから」


 「いやいやまさか近衛騎士団長様直々に頂いたぱさぱさクッキーに対し、ただのしがない雑魚の私ごときが文句を言えるわけないでしょう?」


 「・・・・・・この山を下りたら、ベルディア町で何かおごらせていただくから・・・・・・」


 「いやっほうっ!!」

 ブレイゾンの言葉に、コモドは喜びのジャンプを披露する。


 そんな時に、辺りに決して軽くない地響きが起きた。


 「おっ何だ地震か? 珍しいな。自然災害かそれともAランク以上の何者かが起こした人災か」


 「後者の方であっているようだ。あれ見てくれコモド君」

 ブレイゾンの示す先を見上げる彼。

 視線先には、きれいな花が咲き乱れている大木を片手でつまんでいる男がゆっくり歩いていた。


 「ああ、てっきり誰かの土属性の魔術かと思ったら、まあ・・・・・」


 「何を許可なく見上げている。小人共」

 野太い声が広範囲に轟いた。

 その男は、筋肉粒々で腰に巨躯ティタンベアーの毛皮をまとっている・・・・・・そして小さな丘を見下せれるほど体が巨体であった。

 巨人族。

 凶暴なドラゴンすらもトカゲ扱いできるほど体躯と強さに恵まれている種族だ。

 奴は今、フェンリル山の麓を進んでいる。


 「そこの巨人族の貴方。氷巨人のユミルの墓参りを控えてくれないか?

 貴方がここの近くを歩くだけで、雪崩が発生する恐れがあります。

 その場合、あそこの山の麓に住んでいる方々が、被災されてしまうでしょう」


 「なぜ低級で脆弱な種族のニンゲンの戯言などに耳を傾けないといけないのだ?

 ユミル様ほどの偉大さをも知らぬ愚か者たちよ。これ以上我の邪魔をするのなら容赦はせぬ」


 にやにや笑うコモド。

 「脆弱ねえ・・・・・・? それは試しにやってみなきゃわからないでしょうに」

 その挑発に、巨人の男は我を忘れたかのように激高し、得物にしている巨大斧を大空に振り上げた。


 「そんなに血の雫になりたいのかっ!! では、望みどおりにしてやろう!!

 巨人族が繰り出す通常の一撃を冥途の土産として目に焼き付かせろっ!!」


 「コモド君」


 「俺が相手しろって・・・・・・? お断りっす。

 もう奴は、すぐにでも攻撃してきますよ。今から装填準備しても間に合わないっすよー。

 ふがいない俺の代わりにやっちゃってください」


 頼ろうとするも一蹴した彼に対し、溜息を一つつくブレイゾン。

 (どんな銃器の類でも弾を込めるのに、一秒もかからない国一のスナイパーのくせに何をほざいているのか。白々しい。どうせ私の術見たさに適当なことをおっしゃっているのだ)

 得物である旗を振り上げるブレイゾン。

 彼の旗のマークが、複数の貝殻からひげもじゃの戦士の顔へとひとりでに徐々に変質した。


 「巨人族の貴方。『ヨトゥンナイト』と呼ばれた昔の騎士団についてご存じか・・・・・・?」


 「愚弄しているのか貴様っ!? 古今東西最強とうたわれた『ヨトゥンナイト』を知らぬ迷妄無知な巨人などこの世にもあの世にもおらぬっ!!」


 「そう、構成員が全員戦闘経験豊富な精鋭の巨人である軍隊。普遍歴紀元前約二万年に世界の八割を支配した大国の騎士団だと伝えられている。

 日和ニュートレイタ族の攻勢によって滅ぼされる前の構成人数は、おおよそ二千人程・・・・・・」


 「そんくらい常識だろうがっ!! 貴様一体さっきから何をぼそぼそほざいておるっ!!」

 

 旗を一回のみ勢いよく振り下ろすブレイゾン。

 「今から、『その部隊』の全盛期の軍事力をすべて再現させて頂く。

 巨人族が繰り出す通常の連撃を、是非目に焼き付かせてくれ給え」


 「なっに・・・・・・を??」

 彼の動作の後の刹那、巨人の男は幻惑を見た。

 二千人程の戦士が、いっせいにこちらめがけて攻撃するものだ。

 

 ある者は、斧。

 ある者は、魔法杖。

 ある者は、弓矢。

 ある者は、炎の剣。

 ある者は、拳。

 ある者は、大槌。

 ある者は、槍。

 ある者は、魔導書。


 攻撃手段は、まさしく多種多様。

 彼らは、もちろんこの世に存在してない幻影。ブレイゾンが生み出した仮初の姿。

 しかし・・・・・・彼らから繰り出される攻撃は・・・・・・。




 「あぁ・・・・・・戦士様。我は、何百年も前から貴殿らのことを焦がれるほど慕っておりm」


 紛れもない本物の殺傷能力を宿していた。


 死ぬ寸前の奴は、唐突に現れた幻に恐怖したりすることはせず、恍惚な表情をしていた。

 肉がひしゃげた生々しい音が、山脈に鳴り響いた。

 プレートがひっくり返るほどの地響きが起こるほどの衝撃波が、この大地にさく裂した。


 もしかしたらブレイゾンが繰り出した攻撃の時間は、一秒にも満たないだろう。

 そんな文字通りの瞬きの間に、巨人の男は二千回も連撃を受けてしまったのだ。

 

 深く広いクレーターとそれに溜まった大量の血だまりを見下ろして口笛を吹くコモド。


 「いやあ、何回見てもブレイゾンさんの魔術は、恐ろしいっすね。見た感じBランクであろう相手に肉片も残さずこの圧倒。

 さすがSランク」


 「一人の巨人相手にやりすぎた。やはりあなたの狙撃の方が、スマートに荒事を片付けられる」


 「もしかしてあいつが今日墓参りすると勘づいてたから、俺を誘いました? あっ!?」


 「どうかしました・・・・・・?」


 顔を青ざめているコモドを見て、彼の視線先を急いで向くブレイゾン。

 すぐに彼も、自分の軽薄な行動に悔いることになる。


 そこには・・・・・・ユミル山脈の八合目あたりから大量の雪の波が、中腹めがけてなだれ込んでいた。


 つまりは、雪崩。

 ヤマネの土鍋は、運ぶ際、彼女の衣類で包んでいます。緩衝材代わりにしています。

 食材は、土鍋の中にしまってました。

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