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ラティス法第二条 ラティスから離れた際、弟子は戦闘を避けて撤退する事

 ※ドラゴンは、一応魔物の中でも他の有象無象と比べて、一線を画す程戦闘能力が高いです。

 銀髪の幼い少女は、草原の丘の上空を等速直線状に高速で飛んでいた。

 巨大で超重量の得物と共に。

 別に彼女は、自力で飛行する術を持っているわけではない。敵の罠にまんまとはまっただけである。


 (念力とも違う・・・・・・恐らくボンバーバンボーが繰り出す『あの力』と同系統の・・・・・・。

 早くラティスを引き寄せる奴を潰してから、急いで弟子ヤマネを助けないと・・・・・・)

 ラティスは、鮮やかな緑と透き通った青い空を呑気に眺めながら長考していた。


 十数秒後にて、竹林地帯の元まで綺麗に着地するラティス。

 どうやら下手人は、彼女を目的地まで案内し終えたようだ。


 地に散らばる笹の葉を踏みしめながら、ラティスは注意深く見渡す。

 なんてことはない、ここまで呼び寄せた奴は、隠れもせずに彼女の目の前に岩の上で構えていた。


 姿は、顔にくまどりみたいな茶色の模様を持つ白毛の小柄なイタチ。しかしただの獣では、断じて無く、奴の両前足には、鎌のように長くて鋭い漆黒の爪を誇っている。


 「タワラが前に話してた魔物・・・・・・鎌鼬かまいたち?」


 「よく存じているのう。しかし儂は、ただの旋風つむじ怪異にあらず。

 斬撃を飛ばすだけで済むなどと温い予測は、ゆめゆめ捨てることだ」


 人間の言葉で返答するイタチに、ラティスは驚愕するでもなくため息をついてメタルハンマーを前に突き出す。

 「可愛らしい姿に似合わずじじくさい喋り方だね。悪いけど原型をとどめたまま死ねるなんて甘い考えは、さっさと捨てた方が良いよ?」


 小柄な猿が、生意気なことを申しおって! と吐き捨てた鎌鼬は、乗っていた岩から飛び降りた後すぐにラティスの周囲を縦横無尽に跳び回った。

 まさしくその動きは、そよ風のごとく身軽で、突風の様にはやく、真空刃といって差し支えない程鋭い。

 動体視力が高いヤマネですら、目で奴の動きを捉えるのは、至難だろう。


 それに対し、ラティスがとった行動は、単純明快。

 掴んでいるメタルハンマーを、自分の頭上に振りかぶり、即勢いよく振り下ろす。

 その得物が、大地に激突した瞬間に、そこから強い衝撃波が発生した。


 歪曲した竹の幹に体をのせている鎌鼬は、体重が軽い事が仇となり、その大気の波に抵抗できずに呑まれて地に転がってしまった。

 ラティスも、自身が繰り出した衝撃波をもろに受けていたが、飛ばされることなく両足を足場にしっかり踏ん張っている。


 予想だにしていない攻撃に、鎌鼬は急いで体勢を取り直そうとするも、彼女がそれを見逃す訳は無かった。

 メタルハンマーをもう一回振りかぶったラティスは、標的目掛けて力強く幅跳びして距離を詰め、容赦なく振り下ろす。

 もはやその凶器とそいつとの距離は、文字通り目と鼻の間。


 「・・・・・・!!」


 しかしその追撃が決定打になることは、無かった・・・・・・。

 なぜなら彼女のメタルハンマーが見えない力で遮られたからだ。


 「ふう、危なかったのう。さすがに先程三途の河を見かけましたぞ」


 軽口を叩く鎌鼬に対し、ラティスは、後方に跳んで距離を稼ぐ。

 眉をひそめる彼女。

 「磁石の力・・・・・・?

 ラティスをここまで呼び寄せたのもそれの能力だよね」


 「ご名答。賢竜殿から、貴殿を始末せよと頼まれたのでな。

 そしてご察しの通り・・・・・・」


 鎌鼬が構え直したタイミングで、またもやラティスは、いや彼女の持つ金槌は、見えない力に引っ張られる。

 今度は、爪を突き立てたそいつの元まで急速に。


 (やば・・・・・・)

 そいつが操る磁力は凄まじく、身体強化の魔術が得意なラティスでさえ翻弄される程強力であった。

 薙ぐ斬撃を繰り出す鎌鼬。鋭い風切り音が鳴った。


 幼い少女の体が地に転がる。

 「・・・・・・痛いんだけど」


 「磁力を操れる儂と金属の塊を得物にする貴殿とでは、相性は悪い」


 頬に裂傷ができたラティスは、明らかに不機嫌そうに、立ち上がる。

 その後彼女は、自分の服に張り付いている笹の葉を左手で叩き落とした。

 先程の凶刃に首筋を狙われたラティスは、とっさに屈んで致命傷から逃れたのだ。


 「王手。いやこの国では、チェックメイトと申し上げた方が、よろしいかのう?

 貴殿が攻撃を仕掛けようとも金槌ごと遠ざけ、逃げようとしてもこちらまで引寄せる。

 つまり詰みなのだよ」


 勝ち誇る鎌鼬に対し、黙るラティス。

 三度、自分の間合いまでラティスの得物を彼女ごと引き寄せる。

 

 (今度は、あ奴の懐深くまで爪を突き立て、確実にる・・・・・・!)

 前屈みになり、後ろ脚を引き締めジャンプのための体勢をとった鎌鼬であったが、すぐに呆気にとられる。


 なぜならラティスは、磁力に従うメタルハンマーの柄から手を離し、右腋を引き締め、そいつ目掛けて突撃したからだ。


 「使い物にならない得物を捨て肉弾戦を選ぶか! あわよくば、虚を突かれた儂が、引力を解くのを忘れ、金槌に自分の頭が潰されるなんて間抜けな展開でも狙っているのだろう。

 浅はかな。磁界を意のままにできる儂は、ただ金物を引寄せたり排斥したりするだけとお思いか!?」

 

 鎌鼬に見えない力で急接近するメタルハンマーは、突如空中に停止したかと思えば、すぐに逆戻りした。

 それは、使い手であるはずのラティスの頭部めがけて容赦なく落下する。

 重い衝撃をもろに受け、頭に血を零す彼女であったが、怯むことなく竹林を駆け抜ける。

 

 (な・・・・・・! 足止めすらならないだと!?)


 迫真の彼女の殺気に気圧されて萎縮してしまった鎌鼬だが、すぐに自身の根本のアイデンティティをとっさに思い出した。

 名刀に違わない程切れ味を有するつむじ風を短時間で自身の周囲に展開する鎌鼬。

 

 「かっかっかっ!! 儂が風を操れる旋風怪異だということを、忘れてないか?

 これで殴れまい。触れた瞬間切り刻まれると思え!

 属性魔術でも繰り出して物量勝負でも持ち掛ければ、勝機は見えたかもな!! 出来たらの話だg」


 「あ、その手があった」


 煽り染みた鎌鼬のアドバイスに対し、思い出すよう呟いて立ち止まるラティス。


 「・・・・・・は?」


 唖然とするそいつの上空に、剛健の石造塔と同じ体積と重量を誇る石塊(鉄分は含んでない)が瞬発的に生成され、そして次に重力に逆らわず落下した。

 そしてその石塊は、鎌鼬を纏っているつむじ風ごと大地に突き刺さるよう叩き潰したのだ。

 もちろんこの岩の魔術を繰り出したのは、ラティス。

 陥没した大地と岩の塔の隙間から、粘度の高い赤い液体が零れる。

 あの鎌鼬は、ラティスが武術ばかり披露したせいか、彼女は属性魔術が使えないと思い込んでいたのだ。

 

 「・・・・・・ふぅっ。

 まさか自分から墓穴を掘ってくれるとは・・・・・・フフッこの岩を墓に見立てたら、言葉通りだね」

 自分の足元に転がっているメタルハンマーを拾い上げるラティスは、その後呆れのため息をつく。


 

 「ねえラティスを・・・・・・高位冒険者舐めているのです? 相性が不利になっただけで手も足も出なくなる程度なら、Bランクなんてたどり着ける訳ないっ!!」




 ※次からは、魔物達の方へと視点を変えます。


 火炎を吐くフレアドラゴンや氷点下の息を吹くアイスドラゴンを始めとした魔物達が、じっと大穴の奥を見下ろして見張っている。

 実は、奴らはスマートドラゴンやワイバーンの隊とは、別の群れ。


 「なあ、本当においしい餌を、あいつらに任せてよかったのか?」


 「黙って監視しなさい。賢竜さんが、十中八九の確率でかのじょがモグラ穴を通って逃げる予想をしていたのですよ。

 もしかのじょが、この穴から現れれば、袋のネズミで確実に始末できる。

 見かけたら、咆哮攻撃が得意な私達で、ハチの巣にすればよろしい。最悪なケースは、標的を逃がすことです」


 退屈そうに不貞腐れているフレアドラゴンに対し、アイスドラゴンが諫める。


 「十中二一で、通らないってことだろ。あ~やっぱりインテリの口八丁なんてのらなければ・・・・・・・」

 例の穴に顔を寄って片目で覗き込むフレアドラゴンは、動かしてた口を妙なタイミングで閉じる。


 「フレアドラゴン・・・・・・?」


 「ムームーッ!!」


 何事かと尋ねるアイスドラゴンに、奴は勢いよく例の穴から顔を離し、身をよじらせ首を激しく振った。

 暴れ始めたフレアドラゴンの口元には、光沢感のある緑の粘液が。


 「何やってんですか口でも開けれないんですか。地中に住んでたスライムに絡まれたのね。凍らして取り除いてあっ!?」

 奴に張り付いているスライムに注視していたアイスドラゴンは、虚を突かれた。

 

 ヤマネがモグラの穴から飛び出してそいつの首元まで駆け寄ったからだ。

 彼女を再び目にしたフレアドラゴンは、自分のデリケートゾーンに触感が最悪な粘液を叩きつけられた怒りが爆発し、反射的に鼻で勢いよく深呼吸した。

 火炎の咆哮を繰り出すつもりだ。

 大きな屋敷を灰と炭へと変える程高熱で広範囲に広がる危険な炎。


 しかしそれは、失敗に終わる。たしかに火の粉はそいつの鼻の穴から噴き出てるが、口元がスライムで塞がれているので仇敵めがけて放てないでいるのだ。

 行き場をほとんど失った灼熱の息は、そいつの喉に溜まってきている。


 アイスドラゴンがとっさにヤマネを前足で今まさに踏み潰そうとするタイミングで、彼女は短い呪文を唱えて、フレアドラゴンの口を縛っている魔術のスライムを解除した。

 その後地に転がるよう踏みつけ攻撃を掠めるよう回避。


 「・・・・・・え? フレア!?」

 ヤマネの傍にいるアイスドラゴンが、絶句した。

 フレアドラゴンの口が勢いよく開き、その喉奥から拡散された炎がこちらめがけて一気に放出されたからだ。


 広範囲に散らばる火炎に呑まれたアイスドラゴンの青白い鱗が焦げる。


 「・・・・・・何しているのよ!?」

 しばし呆然としたアイスドラゴンが、反撃とばかりにこちらも湖を丸ごと凍らすような高度な冷気の息吹きをフレアドラゴンにぶつけた。


 「ああ゛っ!? 標的の傍に立っているのが悪いだろうが!! 邪魔なんだよ!!」


 仲間割れを始めた二頭のドラゴンに、一瞥もくれずに近場の山めがけて遁走を繰り広げるヤマネ。

 しかし、ここに立ち塞がっているのは、そいつらだけでは無かった。


 ここの大空を旋回しているヒッポグリフの群れの内の一頭が、天を掛けるよう急降下し、宙に漂う巨大クラゲが神経毒を忍ばせた触手を伸ばす。


 それに対しヤマネは、牙の剣を抜刀し、そのクラゲの触手を切り落としてすぐに納刀する。

 ヒッポグリフの翼から鳴る風切り音を耳にしながら、地に散らばった触手を急いで拾う彼女。

 次に再び走り出す。


 地面すれすれで飛行して標的の背中を狙うヒッポグリフに対し、ヤマネは空中バック転を披露した。

 身体強化時でのジャンプだ。跳んだ彼女は周囲の木々の頂程の高さまで届いた。

 ヒッポグリフの方は、いきなり標的が自分の上空に移動したので、駆けるのを止めて見上げる。


 しかしその行為が行けなかった。


 「狙い通りだぜっ!」


 落下したヤマネは、立ち止まっているヒッポグリフの背中に飛び乗った。

 すかさず拾ったクラゲの触手をそいつの首に巻き付けるヤマネ。ちゃっかりと触手端の神経毒を打ち込むことも忘れない。


 背中に強い衝撃と首筋に痺れる激痛が広がったヒッポグリフは、激しく驚いては錯乱し、暴れまわる。


 「ハイドウハイドウ。思う存分やっちまえっ!!」

 乱れるよう考え無しに走り回るヒッポグリフは、この辺りに陣取っているゴブリンやオークの群れを意図せず文字通り蹴散らしていく。


 ヤマネの方は、そいつから振り落とされないように触手の手綱を離さないでしがみついている。

 しかし実は、彼女は・・・・・・。


 「しまったっ!! 乗馬苦手だったんだあたしっ!!」


 触手の手綱は掴んだまま、暴れまわるヒッポグリフの脇腹までずり落ちるヤマネであった。


 (くっ・・・・・・振り落とされそ、やべっ!?)


 上空を飛来しているライトニングドラゴンの喉奥から、大電流高電圧の雷が吐き出される。


 それを見かけたヤマネは、焦る。

 走り回るヒッポグリフの勢いを利用するようわざと遠距離まで振り落とされた彼女は、急いでこの場から離れる。

 雷鳴と轟音がこの場を支配した。

 雷に着弾されたヒッポグリフは、哀れ、炭の塊へと変貌したのだ。


 草むらに匍匐前進するヤマネは、呪文を唱える。

 

 『聖なる大木に潜むドライアドよ 我は乞う 雷を招く長尺の針の枝を生やせ

 方位は赤霧座の元 数は単 精霊の猛威を 我が前に示せ

 植物属性魔術『大木ウッド避雷針ライトニングロッド』』


 呪文を唱え終えた瞬間に、彼女の遥か後方先・・・・・・魔物が密集している箇所の地中から、鋭くて長い木製の針が生えて急速に伸びたのだ。

 これは、もちろん敵を串刺しにするためのものでは無く・・・・・・。


 再び雷をまき散らす雷竜。しかしそいつが放った雷撃は、狙ったはずのヤマネの向きから逸れ、たった今生えた木製の針の先へと着弾した。

 瞬間、その雷は大木に通電し、大地に迸る。

 この場近くにいた魔物共が、電撃を浴びることになった。


 「成功! 魔物こいつらがバカで助かったぜ。人間相手ならこうもいかない。

 こんなあからさまな雷対策に引っ掛かるのは、学がねえ奴だけだからな」

 黒煙を吐いて地に転がっているたくさんの炭の塊を、振り返って眺めるヤマネ。

 しかしそれは油断の行為に他ならない。今だ彼女は、敵地の中心部にいるはずなのだから。

 

 自分の腹部にぬめりを感じた。

 「え・・・・・・?」

 急いでヤマネが確認するとピンク色のひも状の何かが、自分の腹に巻き付かれていたのだ。


 その紐の先を目でたどれば、牛一頭を丸呑みできそうな程巨大なカエルが見える。

 そう、それはそいつの伸ばした舌そのものであったのだ。

 思いっきり自分の舌をヤマネごと引っ張る巨大ガエル。


 「うおっやべ!?」

 彼女に呪文を唱える隙も与えずに、巨大カエルは一気に獲物を呑み込んだ。

 何とも呆気なく、ヤマネはそいつの腹の中に収まってしまったのだ。

 そいつの胃の中は、余分な空気など無く、消化器官の締め付けが凄まじいので呪文など長い言葉を詠唱するのは、不可能である。

 そしていくら魔力で身体強化したといえど、奴の体内はまさに強靭そのもので、ヤマネが力任せに暴れてもびくともしない。


 しばらくその巨大カエルは、美味たる獲物の味を堪能。

 その後強い電流を浴びてひっくり返った。


 ライトニングドラゴンの仕業ではない。


 帯電しているそいつの口から、胃液まみれのヤマネが脱出した。

 彼女の首筋の一点に、小さいつまようじが刺さってあったのだ。


 「タワラさんから・・・・・・教えてもらってよかったぜ。エスパーの経穴ツボ・・・・・・」

 ヤマネは、自らの首筋に刺激を与え、一時的に超能力を発動。

 発電系エレクトロによって電気を操った彼女は、巨大カエルを体内から感電させて討伐した。

 しかし・・・・・・。


 「やべ・・・・・・眠」

 次に彼女は、崩れ落ちるよう倒れて昏倒する。

 ⑦超能力を始めとした魔術以外の特殊能力を行使した後、必ず地球基準で2分程度対象者が失神する タロットの祟りを受けたからであろう。


 行動不能になったヤマネに、魔物達の残党達が一斉に群がる。


 「やってくれたなてめぇ・・・・・・」


 「我らドラゴンを、あまり舐めないでいただきたいですね」


 「よくも自分に仲間殺しをさせてくれたね」


 表皮が凍り付いているフレアドラゴンと黒煙を纏うアイスドラゴンとライトニング竜が怒りを表し、ゆったりと歩み寄る。


 「さあ、ただの餌よ。こんな絶望的な状況をどう乗り越える?

 ヒーローでも呼ぶk」

 余裕そうにふんぞり返るフレアドラゴンは、妙なタイミングで並べた言葉を閉じる。

 なぜ閉じたのかと言うと、強固な鱗に覆われた自分の頭部が、どこからか飛んできた大岩の塔に呆気なく潰されたからだ。


 慌てて後ろを振り向くアイスドラゴンら。

 「・・・・・・鎌鼬の方は、やられたみたいですね・・・・・・」


 「晴れなのに雷の音が聞こえてみれば、・・・・・・大丈夫? 弟子」


 二頭の竜の視線先には、メタルハンマーを構えた銀髪の幼女・・・・・・ラティスが立っていた。


 ライトニングドラゴンは、自分の恐怖を隠すため虚勢を張る。

 「金属の武器を扱う者に、自分は負けない。感電してくれ」

 そいつは、自分の口から限界ぎりぎりの渾身の電撃を、一気に放った。


 それに対し、ラティスはライトニングドラゴンの頭部目掛けて自分の得物をオーバースローで投げる。

 向かってくる雷を、投げられたメタルハンマーが受け皿になり、そのままそいつの頭部を叩き潰した。


 (な・・・・・・何ですか!? あんな重そうな金属塊を、木の棒みたいに軽々と投げて・・・・・・しかもドラゴンの私ですら目で捉えきれない速度で。

 思い出した。私は、彼女に都で容易く殺された・・・・・・)

 あまりのラティスの強さに、恐慌状態に陥ったアイスドラゴンは、一心不乱に空に舞い上がり、飛行で逃亡しようとする。


 「逃がさないよ」

 血まみれのメタルハンマーを拾い上げたラティスは、自分の眼前に、石造塔程の質量を秘めた岩の塊を魔術で短時間に地中から隆起させた。

 次に彼女の取った行動は、

 「チャーシュー・・・・・・メン!」

 ゴルフみたいな構えを取り、次に勢いよくその岩の塊をフルスイングしたのだ。


 殴られたその塊は、音速よりも遥かに速く飛来し、そして雲上に逃げ惑うアイスドラゴンの頭部に的確に命中した。


 「よし! ナイスショット」

 空に零れ落ちる肉と骨の粒を遠目に眺めながら喜ぶラティス。

 「さて、残りはさっさと片付けますか」

 周囲を見渡す彼女であったが、そこに残っていたのは、死体らと失神しているヤマネだけであった。


 あんな蹂躙劇を見せつけられては、下級魔物なぞさっさと退散するに決まっている。


 ため息を一つついたラティスは、横たわるヤマネに歩み寄り、不機嫌そうな顔を隠さずに彼女の額を軽く指で突いた。



 「もう。Dランクは、ドラゴンに出会ったら一目散に逃げてBランクのラティスに助けを求めないとダメなんだよ」


 




 ※次からは、冒険者ギルド内へと視点を変えます。



 シャルルは、前にヤマネから返してもらった魔道具『レンズクリスタル』の腕輪をカウンター上に置き、操作している。

 現像作業だ。

 球体のクリスタル部分と輪部分に付属しているダイヤルをいじって、ヤマネ達が撮った景色の情報をその魔道具の傍に敷いてある羊皮紙に映した。

 黄ばんで何も描かれていないその紙から、ひとりでに高彩度の切り取った光景が表れる。


 「ふむふむ・・・・・・ダンジョン内部は、<ドーリア>方式を取っているのですね。

 生息している魔物らの種類は、まあありきたりですか。

 あはは、この写真は、何て微笑ましい・・・・・・集合写真ですね。おや・・・・・・?」


 タロッタービルァ町の冒険者ギルド支部前に撮った写真を見て、シャルルは違和感が生じた。

 別に三尸の益虫達が写っていたから驚いたわけではない。そいつらはタワラの召喚獣だということは、彼女も承知の内だ。

 問題は、ヤマネの方。


 「ヤマネさんの左肩に、おぼろげな黒い手が・・・・・・?」

 

 

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