タンジー
よろしくお願いします。
最近改稿した時期は、2021年8月10日。
(冷たい・・・・・・地面が固い・・・・・・眠い・・・・・・)
「さあ、人の子よ・・・・・・目覚めるのです・・・・・・」
石畳の上で寝そべる浅間に、美しい女性の声が届いた。
彼は今のところ、起きる様子は無い。
一向に目覚めない彼に声を掛けた女性は、しばらく眺めていただけだったが、少し経った後しびれを切らして怒鳴り始めた。
「おい貴様っ! 今すぐ起きるが良いっ! さもなくば貴様は厄災に見舞われることになろうぞ・・・・・・っ!」
それでも、浅間は眠っている。ちなみに貸ボートにいた男から受けた裂傷は、完治している。
「起きんか、下郎っ!!」
女性が叫んで左人差し指を振った瞬間に、浅間の頭上にバケツ一杯分の熱湯が出現し、彼の顔目掛けてもろに降る。
「熱っちっちっちっちっ!! 何だ何じゃぁああああッ!!」
「ふん・・・・・・やっと目覚めたか、手間をかけさせおって」
「ここは・・・・・・っ?」
勢いよく起き上がった浅間は、ここは、自分が知らない場所だと気づき、左右を見渡す。
どうもここは、パルテノン神殿みたいなドリア式の石造建築物内だと彼は察した。
床も柱も大理石でできている。
そして、浅間の前には、小さな噴水の淵に座っている女性が一人いた。
彼女は、黄色くて丸い花の髪飾りを付け、緑色のキトンを着用し、黄金色の毛皮のコートを羽織っていた。
「やいてめぇか!? 俺に熱湯かけたのはっ!」
激怒した浅間は、女性の元に寄るも、彼女は、おもいっきり彼の頬にビンタした。
「痛ってぇ。俺が何したってんだ!」
「ふん。不遜な・・・・・・許可なく近づくな」
「ああくそっ・・・・・・ってか、ここどこだ? 俺は家に帰る」
「残念だが、帰れんぞ」
はっ・・・・・・? と声を漏らす浅間に、女性が語る。
「ここは人間で言うところの冥府という場所だ。貴様は死んだ。故に帰ることは出来ん。できたとしても許さんぞ」
「えっ・・・・・・俺死・・・・・・」
呆然とする浅間は、自分がボート上で見知らぬ男から殺されたことを思い出した。
「夢・・・・・・じゃなかったのかよ・・・・・・じゃああんたは・・・・・・」
「様ぐらいつけんか、無礼者が。我はタロット。人の魂を別の世界まで導く権能を有する女神だ。
さあ、好きに敬うがいい・・・・・・」
「女神・・・・・・」
呟いた浅間は、しばらく仁王立ちで項垂れた後・・・・・・。
「すげぇっ!! 本当に神様って、いたんだっ! なあ、いろんなことを教えてくれよっ!
小説の参考にしたいからさっ! ってか、あんたが着ている服って、キトンってやつだろ!? 生で見るの初めてだぞ! 他にも神様っていんのか? 冥界についても詳しく教えてくれよっ!」
目を輝かせ、言葉を早口にまくし立て、タロットの元へと急接近した。
この彼の行動に対し、呆れている女神は再びビンタで応ずる。
「痛ってぇっ!!」
「全く自分が死んだことによって絶望するかと思うたが、まさか喜ぶとはな・・・・・・それと、もう貴様の故郷である世界で、パソコンで小説など執筆なんぞできんぞ」
「そうか・・・・・・そうだった。俺、死んだんだっけ・・・・・・もう両親にも友人にも会えねぇ・・・・・・大好きだったカルボナーラ味のアイスも二度と喰えねえんだ・・・・・・」
タロットの言葉に、先程のテンションが嘘のように、落ち込み項垂れ膝をつく浅間。
「興奮したりしょげたり忙しい奴だな貴様・・・・・・ん? カルボナーラ味アイス!? なんだその吐き気を催すような物は!! コホンっ・・・・・・ときに貴様・・・・・・なぜ貴様は生前、トラックに執拗に追われ、挙句に別の人間に殺されたかわかるか・・・・・・?」
「え? いやそれって、まさか・・・・・・」
「そう、都内のトラックらも我が操った物だし、ビルの扉や窓に細工したのも我だ。
貸出ボートに乗っていた男も、我の眷属だ」
「てめぇのせいかっ!? 俺が死んだのは・・・・・・!!」
勢いよく立ち上がる浅間。
「そう憤るな、見苦しい。貴様は、慈悲深い我に鉄槌を下さねばならぬ程の大罪を犯した。故に天罰を受けたのだ」
「大罪・・・・・・? 俺、殺される程酷いこと何かしたか」
顎に手を添え、長考する浅間・・・・・・だが、何も思い当たらない。
「そうか・・・・・・分からぬか。では、教えてしんぜよう」
しばらくの間、俯いて拳を握るタロット。
「よくも我のことを、小説投稿サイトにビッチでヒステリックでサイコパスで傲慢で身勝手で愚かで男に貢がせてるキャラとして登場させてくれたな貴様ぁああああああああああああっ!!」
そして声を引き絞るほど怒鳴り散らしたのだ。
「タロット・・・・・・ああ、俺が書いている小説に出てくる女神キャラか・・・・・・そういえば、設定と現実(?)が、かぶっているな。こんなことあるんだな。
って、そんな下らないことのために俺は、殺されたのか!? 納得できねぇよっ!!」
「黙れ! 神にとって、人間から舐められることは、何よりの屈辱なのだ。
よくもインターネットに、我のことをこれでもかと悪く書いたな・・・・・・」
「まっ・・・・・・待てよ。別にあの時、本当に神様が実在すると思って書いたわけでもねぇし。
あんたのこと意識して執筆してねぇよ。たまたまだ」
「たまたまであろうと、我の名に疵を付けたことに変わりはないぞ・・・・・・許さんぞ・・・・・・謝ってもらおう」
「わっ、悪かったよ許してくれ」
頭を下げる浅間。
(ってか、どうやって俺の小説のこと知ってんだ? 魔法か道具でも使ってこっそり見た? うわっ・・・・・・覗き見じゃねえか、神聖な女神が犯罪行為に勤しむなんて・・・・・・)
「貴様・・・・・・もしや心から謝罪していないな・・・・・・?
まあ、よい。我は寛大だ。許してやる。
それに、貴様もよく知る加護・・・・・・『特典』と呼んだ方が理解しやすいか?
それも大盤振る舞いで授けてやる。せいぜい我の徳の高さに、むぜひ泣きながら讃えるが良いわ」
タロットの言葉に、頭を上げ、眼を輝かせる浅間。
「加護? 特典? うわ~俺が読み漁った転生ファンタジー物の華じゃねーか!
それをまさか、俺自身で体験できるなんて・・・・・・もちろんチートの加護だよね? 敵達を無双できるスキルでオナシャス!!」
「まぁ、確かに規格外のものかもな。こちらに寄って少し屈め。
貴様が欲しがってた特典をくれてやる」
浅間は、タロットの言うとおりに従う。
彼女は、片膝をついてる彼の額に左人差し指をつけてぶつぶつ何かを呟く。
タロットの指先から淡い光が漏れる。神秘な力が、浅間に流れた。
「終わったぞ」
「え? もう終わり? 体に異変とか感じないが・・・・・・」
着いた片膝を上げ、額を触る浅間に、タロットは微笑する・・・・・・妖しく艶やかに。
彼は彼女に質問攻めする。
「なあ、『特典』の内容を知りたいんだけど。
ところで俺死んだから、転生するの? 記憶は無くなるのは、嫌だな・・・・・」
「まあ落ち着け。
貴様は冥界から去った後、我が管轄している異世界にて生まれ変わるのだ。本来生物が転生する際、そ奴の記憶を消すのがルールだが、例外として、貴様の記憶はそのままにしてやる。
そして『特典』についてだが。クククッ・・・・・・」
説明している最中、タロットは高笑いした。
人智の域を超える能力を使える! と高揚している浅間が、呆気にとられる。
「は・・・・・・え?」
「敵軍を一網打尽にできる能力でも手に入ると思うたか? 神々の寵愛を一身に受けられると期待していたのか? 間抜けめ。インターネットで我の事を侮った不遜者に誰が肩入れするか・・・・・・。
『特典』なぞ名ばかりだぞ・・・・・・貴様が得たのは『加護』ではなく、呪いと呼んで差支えの無い『祟り』だ!」
タロットは、恍惚そうに顔を浅間の面に至近距離まで近づける。
「特別に教えてやろう。『特典』の内容をな・・・・・・」
そして彼女は、浅間にかけた祟りについて嬉しそうに言葉を並べた。
※浅間の転生先【ヤマネ】のことを、対象者と呼ぶこととする。
①常に対象者から、食人動物や食人魔物にとって食欲を刺激させるような匂いを発する。
②常に対象者から、性病を持つ男性を対象者に魅惑・欲情させるフェロモンを発する。
③常に対象者から、遠隔操作・自律式ゴーレム関係なく対象者を狙って攻撃させるような電波を発する。
④常に対象者から、凶悪なゴースト系モンスターが心地良いと感じさせる霊気を発する。
※①~④の祟りは、16歳になった瞬間から、活性化する。
⑤極度に悪質な金属アレルギーを有する。
⑥魔術を行使する際は、特定の詠唱を唱える、又は魔法陣を始めとする特定の記号の羅列を記載しなければならない。
⑦超能力を始めとした魔術以外の特殊能力を行使した後、必ず地球の時間基準で2分程対象者が失神する。
※①~⑦の祟り自体は、神器・魔道具を始めとしたどのような規格外の道具を使用しても無効化されることはない。
⑧死亡した対象者を他者が蘇生する際、魔術・アイテムを始めとするいかなる手段を用いても、タロットが認めない限り、絶対に失敗する。
※ただし仮死状態は除く。
⑨対象者又は対象者の味方が、敵対者を殺害した場合、タロットの任意のタイミングで、殺害された敵対者が完治された状態でその者にとっての自陣にて蘇生される。蘇生された者は、半永久的に筋力・魔力・精神力が格段に飛躍する。
※1 ⑨の祟りは、例えば対象者が味方を殺害した場合、味方が蘇生されることはない。
※2 敵対者が蘇生される際、周りに対象者を始めとした脅威が無い場合のみ、場所移動されずこのまま蘇生される。
⑩対象者が20歳の誕生日を迎えるまでに、魔王を倒さなければ、対象者の生前・生後の両親が死亡する。対象者が死亡し、タロットに見限られた場合でも同じである。
※魔王の定義は、人間側に敵対している徒党の王であり、絶大な戦闘能力を有する者。
長ったらしい説明を聞いて、浅間はあまりの絶望的状況に開いた口が塞がらず、タロットの方は、これ以上ないくらい楽しそうに軽く鼻歌を歌った。
「こんな・・・・・・こんな祟り持ちながら、魔王討伐なんてできる訳ねぇだろっ!!
ってか、両親は関係ねえだろぉ!! 何無関係な奴巻き込んでんだよふざけんなっ!!」
「できないじゃない、やるのだ。女神に見捨てられた貴様には、それしか選択肢は無い。
まあ、勝手に諦めるのもいいだろう。その際は、無実の肉親が四人も死ぬことになるのだがな・・・・・・・ああ、憐れな人の子らよ。自身の子どものせいで死んでしまうとは」
彼女のその発言で充分だった。浅間が、これ以上ないくらい激昂させる理由としては・・・・・。
「てめぇえええええぇええええええええええええええええええええっ!!」
浅間が腕の筋肉が引き絞る程強く拳を握り、一気に憎悪の対象であるタロットまで距離を詰め、殴りかかる。
それに対し、彼女は呆れのため息一つ。
「・・・・・・ぐっ!? 何か見えない壁が・・・・・・」
「本当に貴様は、救いようのない間抜けだな? 我は女神だぞ。凡夫の攻撃なぞ毛ほども脅威も無い」
浅間の渾身のパンチは、タロットが自身の正面に展開した透明の障壁の魔術によって防がれてしまったのだ。
「いつまでも人間の相手などしてられぬわ。さっさと往け」
タロットが左指を鳴らした瞬間、浅間が現在立っている地面に、深い穴が出現する。
「えっ、ちょ・・・・・・ぎゃぁああああぁあああああああああああっ!?」
その落とし穴に吸い込まれた彼は、闇の中へと溶ける様に消えて見えなくなった。
それを見下ろすよう覗いたタロットは、笑顔で軽く手を振って、皮肉気味に呟く。
「剣と魔術の世界の冒険・・・・・・おもいっきり楽しんでいってね?」
※祟りの内容は、変更・追加するかもしれません。
その場合、前書きに記載させて頂きます。




