エジプト神話派? 中国神話派?
次からの投稿は、遅くなるかもしれません。申し訳ございません。
丘の上の神殿の主な光源は、篝です。
祟りのアップデートについて書き直しました。
※第9話まで遡ります。
コヨーテが、自作した本の内容を、キビタキに背負われているヤマネに見せつける。
「どう? どう? 面白いでしょう。このページは、自分のお気に入りなんだよ!」
(ぐいぐい来るな・・・・・・でも、古代魔術か・・・・・・興味深いな)
黒曜石のページの隣に、自分が罹っている悪い状態を、標的に押し付ける術の詳細が記載されていた。
(しっかし、発動するために用意しなきゃならねぇものが面倒って、レベルじゃ済まねえぞ・・・・・・樽二つ分以上のアルコールとハイランクのゴブリンの遺体か遺物と聖なる木か・・・・・・)
※時間を現在まで戻して、丘上の神殿へと視点を変更します。
困惑と恐怖で支配されている一般人の集団に紛れているディオニュクレスは、頬を緩ませた。
ちなみに今の奴は、『薄板鎧柏』と『諸白槍白』を解除している。
(くくくこのまま持久戦といこうじゃねぇか・・・・・・きっと酒の雨を受けて酔っぱらっているぜ、あいつら。
もし奴らがオレェに攻撃を仕掛けた時ゃあ、近くの騎士に適当なこと言って助けてもらおう。
それでも、危機的状況が続くってんならぁな、弱そうな奴適当に見繕ってよぉお、人質にしてや・・・・・・)
「が・・・・・・?」
ディオニュクレスが、長考している時、何の前触れも無く呼吸困難に陥ってしまった。
それだけではない、吐き気・頭痛・耳鳴り・全身の筋肉痛・腹痛・眩暈・睡魔・魔力漏れが同時に襲ってきたのだ。
(な・・・・・・何が起きて)
突如うずくまったディオニュクレスを心配して、この場で待機していた騎士達が駆け寄って来た。
そんな彼らに、坂道の方から美しい女性の声が届く。
「離れて下さい! 彼は、この町に酒の雨を生み出し、洪水を起こした犯人です!」
ハインリッヒだ。彼女は、大きな声で奴の危険性を説明した。
騎士達が動揺する。
「まさかこいつがNWの・・・・・・!?」
彼らが何の証拠も無いハインリッヒの言葉を信用するあたり、この町の受付嬢の信頼度は高いようだ。
「くそがぁああああああああああぁあああああああっ!! オレェに、一体何をしたぁあっ!?」
実は、ハインリッヒ達がここに来る前に、まずタワラがヤマネの足裏に悪い状態異常を起こす効能を持つ経穴という経穴を指圧で突く。
次にヤマネは、レッドキャップの帽子とコヨーテから譲ってもらった聖なる樹のブーメラン、そしてディオニュクレスが生み出した酒の海を利用して太古魔術を発動し、今罹っている状態異常をそのままそっくり、奴に移したのだ。
憤ったディオニュクレスが、ふらつきながらも立ち上がり、近くで怯えている子どもめがけて迫るも、
「させるかってんだよっ!!」
ヤマネがブーメランを投げる。飛ばされたそれが、走るディオニュクレスの顔を掠って通り過ぎたことによって奴は驚き、立ち止まってしまった。
その隙に、足が竦んでいる子どもをその子の父がその場から慌てて連れ出す。
「おっ? まさかうまく飛ぶとか、やるじゃねえかあたし!」
ちなみに飛ばされたブーメランは、草の冠を被った若い女性の額に着弾した。
民間人の方は、起きた荒事に恐慌し、戦いの場からできるだけ離れようとする。
再び『薄板鎧柏』を発動しようとするディオニュクレス。
「どこまでも、ハァハァ、オレの邪魔しやがってっ!!」
しかし、奴が纏ったそれは、前回よりもかなり厚さが薄く質が低いものになっていた。その鎧の表面から酒粕が自然に剥がれ出している。面具も生成するのに失敗してしまった。
(何だ・・・・・・? なぜだ!? うまく発動しねぇえっ。)
「不思議がっているな・・・・・・教えてやる。貴様の左腕に貼り付けられた物を見よ」
タワラの言葉通りに、自分の左腕に纏っている酒粕を剥がし、取り付けられた緑の札を確認するディオニュクレス。
「あぁあっ!? これが、何だというんだよ!」
「その札には、徐々にだが貼り付けた者の魔力を吸い上げる呪いを、事前に付与しておいた。
剥がそうとしても無駄だぞ。それは、接着した皮膚にしっかり張り付いていて人力では、外すことはできない。
酒の雨を降らせて長期戦にでも持ち越そうとしたやもしれんが、そもそもの間違いだ。愚か者め」
自白したタワラの言葉に、ヤマネが抗議する。
「ちょっとタワラさん! そんな危険な物を、あたしに渡したんすか!?」
「いや勘違いしないで欲しいぞヤマネ! もしあの時【ダンジョン内で緑の札をヤマネめがけて飛ばした】にお主があ奴に回復の札を奪われなかったら、そもそも呪いを発動するつもりなんてなかったさ。信じてくれないか!」
怒って呼びかけるストゥム。
「何をごちゃごちゃ言っておる! 今が奴を叩く最大のチャンスでは、ないか!!」
騎士達含めてヤマネらに追い詰められたディオニュクレスは、回復札をそれに触れている部分の皮膚ごと引きちぎり、しばし黙った後、酒の雨の魔術を解除する。
(まあ皮くらい犠牲にするだろうな。それと、なんだ? 今更魔術を解いて投降でもする気か・・・・・・?)
タワラが思案した事が甘かった。ディオニュクレスは、自身から酒の刃を四方八方に乱れるよう矢継ぎ早に飛ばした。
「こうなりゃぁあ、皆殺しだぁあああああぁあああああああぁあああああっ!!」
そう、ディオニュクレスが酒の雨を解いた理由は、余計な魔力消費を抑え、攻撃に徹したからだ。
確かに奴が飛ばす刃は、神殿の太い柱をいとも簡単に斬り落とす程の威力と切れ味を有していたが、奴が弱っていたせいで最初に繰り出したモノと比べてスピードが格段に落ちている。
そのおかげで剣を構える騎士達でも全弾叩き落とすことができたのだ。
斬り落とされた酒の刃を見て、術者であるディオニュクレスは、さすがに焦り出す。
「くそっ! よくもやりやがったな女狐共! 卑怯だぞ!!
『最上大吟醸 酒彗星(ラウ゛ジョイ)』っ!!」
奴の元まで接近したヤマネは、術名を叫んでいる奴の口に、自身の片手首を突っ込む。
「ふがふがふがっ!?」
そして奴のとっておきの術は、魔力不足によって不発に終わった。
「今からあたしは、『自爆』を発動させる!
死にたくねぇ奴は、さっさと逃げろやっ!!」
その言葉を耳にした、タワラ達と騎士達は、急いでこの場から離れる。
「ふごっふがふごふがっ!!」
「ははは、いくら表皮を固めても、内部は無理だろぅなっ!!」
言葉にならないディオニュクレスの罵詈雑言を、ヤマネは、無視して呪文を詠唱し術を発動させる。
鋭い閃光と轟く爆音と激しい衝撃波が、この場を支配した。
その術を繰り出す前のヤマネには、体力と魔力がかなり残っていたために、その威力は凄まじく丘の上の神殿を半壊させるほどのものである。
民間人達はというと、爆風をある程度浴びたが、全員命に別状は無い。
そしてヤマネとディオニュクレスの方はというと。
クレーターの底にいる二人は、体と服がボロボロで満身創痍は、間違いない。
お互い、もう魔力どころか体力すらも尽きている。
しかし彼女らは、気を失ってなかった。
(ちくしょぉおっ! 口内を爆破してもまだ耐えてやがる。恐らく、喉・・・・・・だけでなく胃や腸にまで酒粕を生成して覆ってダメージを軽減したな? そりゃ、そうか酒粕はもともと食品だから腹に入っても大丈夫!!)
「くそがぁあああぁあああああああああぁああああああああぁあああっ」
自分の首元から、今にも千切れそうなウコンを模した木製のネックレスを手にしたディオニュクレスが、最後の力を振り絞ってそれをヤマネめがけて振り下ろす。
(やべぇ、あいつには、まだ上戸の弱点である魔道具を持っていた!)
焦って身をよじるヤマネだが、奴の歯は、彼女の手を離さない。
その頃、ハインリッヒとタワラ・騎士達の方は、隠密能力を発揮しながらここまで忍び寄った般若蛸の群れに襲われてる。
ストゥムの方は、自前の壺がそいつに占領されていたせいで実質戦力外になっている。
般若蛸らの対処に精一杯のせいで、彼らがヤマネをサポートするのが難しくなった。
(くそくそくそどうするどうするっ・・・・・・痛ぇえ!?)
背筋が凍り混乱状態になっているヤマネの首に、針に刺されるような痛みが生じる。
いや実際刺されたのだ。
タワラがとっさにヤマネの『念動発の脈』という特殊な経穴を狙って、鍼を一本飛ばしたからだ。
なぜ彼女が自分の首にその経穴を突かなかったかというと、般若蛸の一個体が、彼女の首を絞めつけていたから、そもそもできなかったのだ。
ちなみに『念動発の脈』を突かれた者は一時的にだが・・・・・・。
「ヤマネ! 念じろ! 今のお主は念動能力者になっている!! 目前の敵を捻じるよう殺気を飛ばせ!!」
「何か良く分かんねぇけどガン飛ばしゃぁあいいんだろっ!?」
よく理解しないままヤマネは、土壇場でこちらに迫り来るウコンのネックレスに向かって睨む。
すると、うまくいったのかディオニュクレスの動きが見えない力で封じられた。
(これが・・・・・・エスパー!? 頭の中が引き絞れるような感覚が出るな!!)
「ぐおぉおおぉおおおおぉおおおおおおおおおおおっ!!」
「うぉぉおおおおおぉおおおおおおぉおおおおおおっ!!」
まさしく念力と膂力との戦い。
お互いの力が拮抗している中、ヤマネの首筋に刺された鍼を中心に、皮膚に酷い炎症が起きた。
「か、痒ぃいいいいいいいぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
「ぐっ!?」
痒みに侵されたことによって、集中力が切れて念力が弱体化・・・・・・することは、なく。
逆に、彼女の念力が爆発的に上昇した。
「ぐ・・・・・・ぐぉおっ!?」
ヤマネのサイコキネシスに押されて、圧し掛かれたディオニュクレスの全身の筋肉がズタズタになり、そして奴は、とうとう・・・・・・。
「あ、あ奴が、倒れた・・・・・・」
軍配が上がったのは、ヤマネ。
精神力を使い果たしたのか、それとも彼女の持つ祟り⑦超能力を始めとした魔術以外の特殊能力を行使した後、必ず地球基準で2分程度対象者が失神するというものが発動したせいなのか、ヤマネは地面に倒れて気絶してしまった。
ディオニュクレスが敗れたことによって、奴が繰り出した酒の海の水位は、徐々にだが引いていき巨大蛸全軍は、元の場所へと転送された。
丘の上に歓声が沸いた。
急いでヤマネの元まで駆け寄るタワラ達。
「よくやったヤマネ! 不甲斐ない妾達の代わりに倒してくれるとは! あとはもう任せて十分に休・・・・・・ヤマネ? ヤマネ!? どうしたその肌の酷い炎症はっ!」
今の彼女は、タワラの針を受けたことにより、金属アレルギーが発症してしまったのだ。
「呼吸も乱れている。もしかして・・・・・・ヤマネは、金属アレルギーを持っていたのか!?」
その事実を知ったタワラが、ショックを受けて自責の念にかられてしまったのだ。
「わ・・・・・・私のせいだ・・・・・・私が鍼を投げたばっかりに・・・・・・」
ヤマネの首に刺さっている針を取り除くストゥム。
「泣いている場合か! 今すぐ医者を呼ばねば!
誰か! 誰か医者はいないかっ!!」
(くそっ! 今の我は、アレルギーを無力化する魔道具や薬など持っていないっ!!
一刻を争う状況なのだがっ!!)
「はいはい、我が医者ですよ」
彼の呼びかけに、白衣を着たタロットがこちらに歩み寄ってきた。
医者が来たことで喜ぶタワラ達。
床に転がっているヤマネの患部を触りながら診断するタロット。
「ふんふんふん成程成程・・・・・・よし、これでOKねっ!」
タワラが尋ねる。
「どうでしょうか。治ります?」
それに対し、タロットは、冷酷に吐き捨てた。
「は? なぜ我が神に仇なした痴れ者のアレルギーを治さねば、ならぬのだ?」
さっきと言っていることが真逆な彼女の言葉に、一同が息を呑んだ。
「・・・・・・貴方、医者ですよね? なぜ治さないんですか!?」
「だって我医者じゃないし。嘘ついたのよ。本来の目的は、痴れ者であるヤマネに祟りの設定を上書きすること。変更された祟りの内容は、こう。
①対象者から発される食人動物や食人魔物の食欲を刺激させるような匂いは 他の臭いや香りに誤魔化される事はない【例:黒いハーブ】
⑤対象者が有する金属アレルギーは たとえ着衣を肌で隠そうとも関係なく金属の感触を受けただけで発症する
及び金属片が取り付けられた非金属製道具を扱うことも含まれる
⑩対象者が20歳の誕生日を迎えるまでに 魔王を倒さなければ、対象者の生前・生後の両親・・・・・・だけでなく対象者にとって大切な友人や恋人含めて死亡する
〇植物系魔物【例:ドライアド】にとってストレスがかかる香りを 対象者から発される
〇対象者が何かしらの封印された場所に、地球基準で10m程度接近した場合、自動で封印が解除される。
こんなところね・・・・・・。あとヤマネを憎んでいる全員が、いつ・どこでもヤマネの居場所を把握できる能力を付与する祟りも付け加えたかったんだけど、それを今やったら、さすがに無理ゲーになって、つまんなさそうだから『絶好のタイミング時』に発動する時限式にしといたわ。
ちゃ~んとおねんねしているヤマネに後でこの事を、話しておきなさい。
我は、用事が済んだから帰るね。ば~い」
さんざん好き勝手な事を言って踵を返しこの場から離れようとするタロットに、タワラの腹が煮えくり返り、お灸を生成し、彼女の背後を狙って飛ばそうとするも。
その事に対し、タロットは振り向かずに顎で制止する。
「止めておきなさい、獣風情が。本当に貴方が倒すべき相手は、我では無い。もっと別の身近な人じゃなくって?」
「誰が獣ふぜ・・・・・・い」
顔だけ振り向いたタロットの鋭い眼光に、タワラは、今まで生きてて感じたことの無い位のどうしようもない怖気が体の奥の奥から湧き出した。そして攻撃の手を止める彼女。
「・・・・・・・・・・・・」
「ふ~ん、思った以上にお利口さんね。後でこちらまで来る相手は、本物の医療器具を持った信用できる相手だから。ちゃんと素直に聞くのよ?
あ~あ。本来は、タロッターチェア神殿のダンジョンで待ってたんだけど、あんたらが余計なことするから、我が直々に迎えなきゃいけなくなったじゃないの」
そう言葉を残したタロットは、去っていった。
「お取込み中すみませんね」
代わりに、中東の恰好をした恰幅が良い男がこちらに来る。
タロットは、見覚えがあった・・・・・・この町に来る直前に、巨大ゴーレムに接触していた観光客だ。【第21話参照】
マリード エバレット ヘイル
「お主は確か・・・・・・」
「おいらのことを、覚えてくれてたんですか。うれしいですね。
おいらは、残念ながら医者じゃないですけどね、代わりに機器を造るのが得意なんですけどね、ええ。
今、アレルギー発症を抑えるポリフェノールの注射を持っているんですけどね」
「それは、本当か!?」
注射を見せつけるマリード。
「失礼ながら無断で聞き耳立ててたことをお詫び申し上げますよ。
安心下さい。針の部分も金属ではなくガラスで出来ておりますからね」
「頼む! ヤマネにそれを打ってくれないか? いくら払えばいい」
「銀貨一枚程度で」
そう言いながらマリードは、相手側の承諾も得ずに勝手にヤマネの手首に注射を打った。
ストゥムが、ため息つきながら自分の財布から、銀貨一枚を取り出す。
「あくまで貸しだがな。それより貴殿は、本当に信用できるのか?
さっきの謎の女性同様、何か企んでいないのか?」
「それは、症状にかかっているお嬢さんを見れば、一目瞭然ですよ?」
マリードの言った通りに、緩やかなスピードではあるが、ヤマネの皮膚炎症は治まってくる。
彼女の祟りそのものは、消せないが、発症してしまったアレルギーを緩和させることについては、できる。
頭を下げて涙を流すタワラ。
「ありがとうありがとう。本当に助かった! 何とお礼を申し上げればよいか・・・・・・」
「おいらは、医療は専門外でね。一応後で、ちゃんとした医者に診断を受ける様に。
それじゃあ、ここいらで失礼するね」
そう言ったマリードは、銀貨を受け取り、この場から去った。
ハインリッヒが、頬を緩めながら語る。
「これで一件落着で・・・・・・」
「ぐ・・・・・・」
ディオニュクレスから声が漏れた。
この場にいる一同に、緊張が再び走る。
まあ、すぐにハインリッヒが質量を持つ特殊な闇のロープを生成して、奴の体全体を縛って拘束したのだが。
目を覚ますディオニュクレス。
「・・・・・・そうか、オレェはぁあ、敗けたのか・・・・・・」
見ろして睨むタワラ。
「ふん! まだ生きていたか・・・・・・」
ディオニュクレスは、昔の事を思い出す。
とある酒場でのこと。
『ヘパイスのエロジジイ。なんだ杖なんかついて。足でも怪我してんのか?』
『ディオニュクレスか・・・・・・。攫った女のガキから反撃を受けて逃げられてしまった。
惜しいことをした。あれ以上の上等な娘は、未だ他に見たことが無い。
その時に、片足に大きな裂傷を受けてしまった。不覚だ』
『へぇ~。オレェより強ぇえあんたがか。こりゃあ良い酒の席のネタになりそうだねぇえ』
(くくく・・・・・・自身の弱点をばらすなんてアホだねぇ。作戦練った後ぶっ殺すか。せいぜい今のうちに酒の味を楽しみな。不細工エロジジイ)
干渉に浸るのをやめたディオニュクレスは、いやらしくにやける。
「何だ? まだここから脱出できる算段でも持ち合わせているのか?」
「いや? もう流石にオレェは、助からねぇってことは、重々承知よ。
どうせ、騎士様に捕まって縛り首だろうな・・・・・・ただ死ぬってだけでもつまらねぇえ。
せっかくオレェを倒したことだ。褒美に、特別な情報を垂れ流してやる。
信じるも信じねぇえもテメェの勝手。
賊四天王の一人、SWのヘパイスの事なんだがな・・・・・・弱点は・・・・・・」
「あ~まだ下手人倒してなかったのかよ」
いきなり背後から知人の声がしたことで驚くタワラとストゥム。
「ボンバーバンボー・・・・・・なぜ貴様がここに・・・・・・?」
振り向いたタワラ達の視線先には、アフロの男がこちらに歩み寄ってきていた。
首を傾げて肩をすくめるボンバーバンボー。
「え? いやいやさあ。ギルドであんたらが外出する前にオレ言ったよね?
この町近くに寄るって・・・・・・さっき依頼を終わらせてきたの」
「ボ・・・・・・ボンバーバンボーっ!?」
いきなりのSランク冒険者の登場に、奥歯をガタガタ鳴らして慄くディオニュクレス。
「手柄は、もちろんお前らのものだ。た・だ、とどめは、オレにやらせろよ。暴れ足りないんだ。
ほい。『断熱結界』か~ら~の『電離気体攻撃』」
「ま・・・・・・待て!」
タワラの制止も虚しく、ボンバーバンボーの魔術が発動された。
まず倒れているディオニュクレスを囲むよう立方体で半透明なバリアが瞬時に発生したかと思えば、すぐにディオニュクレスが断末魔を叫ぶ暇を与えずに雷のような紫色の光が、バリア内に満たされた。
それが輝いた時間は、たった0・5秒ほど。しかし彼の攻撃を受けたディオニュクレスの体は、塵の一つも残らず焼き切れる。
ボンバーバンボーが扱う魔術のプラズマの温度は、約100万スチームヒート。
彼が繰り出したバリアは、熱をほとんど遮断するので、そのバリア内の常軌を逸した熱が外気へと一気に漏れることは、無い。
年単位で、このバリアは、残り続けたまま、少しずつ熱を逃がした後、自然に消えるよう彼が設定してある。
「はい、終わり」
片手間でディオニュクレスを焼失させたボンバーバンボーに、他の人達は呆然とした。
タワラは両拳を握り、彼に怒鳴り散らした。
「この昼行燈がぁああぁああああああああああああっ!!
せっかくあ奴から貴重な情報を聞き出せると思ったのに、余計な事をしてくれて、今度こそ灸殺してやろうかぁああああああああああああああああああああああっ!!」
※その頃、マリードの方に視点を移します。
「おや、マリードさん。もうあたしの頼み事を終わらせたのかにゃ?」
酒の海の被害を受けていない宿の二階の一室にて、男装しているケットシーの女性が、戻って来たマリードに話し掛ける。
「エリファス陛下。確かにヤマネさんの体に、注射で測位魔道具【陶器製】をポリフェノールごと埋め込みました。
これで、いつでも彼女の現在地を魔水晶で把握できますね」
「いやあタロット様からの情報では、ヤマネさんが金属アレルギーだと知らされた時は、利用できると判断しました。いやはやこうなんでもうまくいくと、逆に不安になってしまいますね」
「ええ・・・・・・その事なんですが・・・・・・」
「どうしたのかにゃ?」
「そのタロット様に直接邂逅したんですよ、おいら。ええ、彼女が仰るには、ヤマネをいくらでも追い詰めたり利用したするのは、構わないけど、攫って自分の国で庇護でもして甘やかしたら、自分は、見放して加護を与えるのをやめるとの事・・・・・・どうしましょう・・・・・・」
「・・・・・・う~ん、直接その場で殺される手しかないかもだにゃ~」
〇温度の単位 1スチームヒート=摂氏100度




