ピラミッド派? 古墳派?
最近改稿した時期は、2021年12月15日。
※ヤマネは、革の手袋をはめております。
夜間にて、ヤマネが、藁で自分の後ろ髪を結んで気を引き締める。
彼女達は今、封鎖範囲内であるタロッターチェア神殿に出現したダンジョン前に立っていた。
「では、今回の依頼について説明させて頂きますね。これから貴方達には、このダンジョン内に潜入してもらい、発生するモンスターの種類・階層数を始めとするおおまかなダンジョンの構造・内装形式・耐久度・設置された罠・そして残された貴重品や魔道具などを調査してもらいます」
ギルド嬢のハインリッヒが下敷きに固定されてる羊皮紙を持ちながらヤマネ達に説明している。
彼女の説明は続く。
「今回の依頼内容は調査のみ。つまりダンジョンにある物を無断で持ち帰っては、なりません。
違反した場合、国からの罰則が与えられる可能性もあります。ご注意を。
それと今回の依頼は、緊急性はあまりありません。できることなら深層まで隅々に調査してもらいたいのもこちらとしては確かですが、少しでも危険と判断した場合、即撤退して下さい」
「はい、分かったっす」
「あと、参考にもならない情報ですが、ここタロッターチェアは、年代も判明できてない太古の昔に女神タロットが、魔王を打ち倒さんとする勇者に加護を与えた場所であると伝承されています。
なぜこの神殿で女神が勇者に力を貸しえたかというと、一説によればタロットがいるとされる冥界に通じる扉が、この近くにあるとされているからで・・・・・・そして・・・・・・魔王証を・・・・・・関係ない話ですが、ここの神殿奥に最上位の怨霊を封印するための神具が・・・・・・」
それからしばらくハインリッヒの長演説が垂れ流された。
タワラ(こいつ無駄話を始めたぞ・・・・・・近衛騎士団長と同じ歴史オタクか。それとも神話オタク?)
「分かった。では、これから我らは、ダンジョン入り口を潜らせてもらおう」
ストゥムが、ハインリッヒの長演説を強引に遮るよう承知した。
その言葉により大人しく口を閉ざすハインリッヒだが、明らかに不貞腐れた。まだ喋り足りなかったらしい。
そしてヤマネ達は、ハインリッヒに感謝を述べて破壊された床の穴を潜り、ダンジョンへと続く石灰岩の地下階段を下りる。
「(ヒソヒソ)助かったぞストゥム」
「無駄話を延々聞かされても、体力気力が無意味に減らされるだけだ。多少相手方に不快にさせても大声を上げるなり中断させたほうが良い」
「よしっ!! 初めてのダンジョンだ!!」
一同が長い階段を下る途中、なんか彼女らの足元から亀裂が走る音が微かにしたかと思えば・・・・・・。
「はっ!?」 「何だと!!」 「幸先不安だな」
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああっ!!」
ヤマネ達を支えてた足場が広範囲に崩壊し、彼女らは空いてしまった穴・・・・・・もとい奈落の底めがけて闇に消えるよう落下する。
彼女達の絶叫と階段の崩落音が、壁に反響して地上まで鳴り響いていた。
終始眺めていたハインリッヒは、インク付き羽筆を胸ポケットから出したかと思えば羊皮紙に仕事内容を冷淡に書き込む。
「タロッターチェアのダンジョン。●老朽化は、かなり進んでいる模様」
※落下したヤマネサイド。
「ひぎゃぁああぁああああああああああああ死ぬぅうううううううううううっ!!」
空中に手足をバタバタして暴れるヤマネは、錯乱していた。
(どうする!? 前は大鷲と共に落下した時スライムを生成してクッション代わりにしたが、今回もこの方法が通用すんのか? いや、あたしのちゃっちな魔術じゃ例え発動成功してもこんな高低差激しいとこからじゃ落下衝撃を吸収しきれず死んじまう!! どうすれば・・・・・・ぐぇっ!?)
長考しているヤマネの腹部に唐突に縄で締め付けられるような感触がしたかと思えば、すぐに上めがけて彼女が引っ張られる。
恐る恐る自分を縛ってくる縄の先を夜目でたどれば、タワラがそれを右手で掴んでいた。
そして彼女の左手は、上下逆さまになっている巨大な肺の気管を握っているストゥムのもう片方の掌と繋いでいる。
実は、その巨大な肺は、ストゥムの魔道具で風船や気球みたいに強い浮力を持っているのだ。
「間に合ったようだな」
ストゥムが、ヤマネらの方を見下ろしてニヤリと笑った。
事の経緯として、まず落下してすぐにストゥムが、異空間に繋がっている自分の壺から魔物の改造した肺を取り出す。そして彼は近くにいるタワラの手を掴む。次にタワラが、植物属性の魔術で蔓の縄を生成し、遠くにいるヤマネを捕捉して自分の元まで引っ張って今に至る。
肺の魔道具のおかげでヤマネ達にかかる落下の勢いは格段に低下した。
しばらく彼女らは、ゆっくり宙に降りて、その後全員怪我無く地下通路に着地した。
「いやぁああ、助かったっす」
自分に巻き付いている蔓の縄をほどいたヤマネは、感謝を述べた。
タワラが金色の火を手の先に灯すも、
「明かりは・・・・・・どうも必要無いみたいだな」
一瞬でその手首を軽く振って消す。
「綺麗な光っすね。どういう原理で灯ってるっすか?」
ヤマネ達がいる通路の天井一面には、青の光を淡く発している水晶が、等間隔にはめられていた。
他にダンジョン通路の特徴を挙げるならば、大まかな高さは成人男三人分で幅は両腕広げた成人男性五人分程度。奥行きは、果てしなく広がっていた。
そしてここは、地上にある神殿に準拠するよう壁や床や天井まで大理石でできている。
気温は、少し肌寒い位。永らく放置されているはずのこの通路は、かび臭いこともなく、地上まで続く崩落箇所を除いてなぜか保存状態が良好であった。
彼女達の周囲に階段だった瓦礫が数多く転がっている。
(・・・・・・・・・・・・この感じは、懐かしい)
その場の雰囲気に覚えがあるヤマネ。しばし彼女は黙る。
(ああそうか。俺がこの世界に来る前に来た冥界と酷似してるんだ。ここは)
「ヤマネ殿。とりあえず辺りを『クリスタルレンズ』で撮っておくのだ」
巨大な肺の魔道具を壺に押し込むよう入れ戻しているストゥムが、指示した。
「そうだそうだそうっすね」
ヤマネは、詠唱を素早く唱えて光源の水晶や壁や天井の光景をその魔道具で収める。
『クリスタルレンズ』は、撮影する際、一瞬だけ閃光を放つ。・・・・・・つまり。
「・・・・・・来たぞ」
タワラの言葉に、ストゥムとヤマネは臨戦態勢をとった。
彼女らの視線先に、動き回る屍アンデット・生きている骸骨スケルトンの群れが闇の奥から現れる。
光源が設置されてる場所といってもダンジョン内は、薄暗いもの。そこに一点だけ強い光が放たれば、人の命を狙う魔物達が異常に気付いて群がってくるのは、当たり前である。
「ここの国によくいる屍や骸骨の魔物か・・・・・・私としては、キョンシーが相手だったら厄介だった」
「確かぴょんぴょん跳びまわる極東魔術師の使い魔だったかな? 我としては、どちらかと言うとマミーの方が強いと思うぞ。呪いを振りまく異能を持つ奴らは、一筋縄ではいかない」
「何だと? 桃の木の剣など明確な弱点も存在するが、ゾンビ種族の中で、群を抜いて実力を有するキョンシーの方が」
「何、敵前で東西自慢討論してんすか!?」
ヤマネの怒号に、一息咳払いして顔を赤らめるタワラ達。
「まずは、私から行こう・・・・・・下がってお・・・・・・れ?」
右袖を巻くって、炎の魔術を噴出しようと意気込むタワラが、唖然としてしまった。
冒険者新人であるはずのヤマネが、身体強化の呪文を唱えながら我先に敵陣に突っ込んだからだ。
次に彼女は、革鎧のポケットから鞭を右手で取り出す。
それに呼応するようスケルトン達は、各々装備している剣を構え、アンデット達が両手を突き出してヤマネと距離を詰める。
まずヤマネは、敵陣の先頭にいるスケルトンの片方の膝の皿を鞭で巻き付け引っこ抜く。
その事により態勢が崩れて屈んでしまったそいつの髑髏を彼女は、上段跳び蹴りで畳みかける。
蹴り飛ばされた髑髏は、後方にいるアンデットの顎にクリーンヒット。そのままアンデットの方は倒れてしまった。
頭部が無くなったことで動きが鈍くなった先頭のスケルトンの剣をそいつの腕の骨ごと力任せに引きちぎって奪うヤマネ。今の彼女は、右手に鞭、左手に骨付き剣を構えている。
鞭に巻き付けられている膝の皿を鞭を振るうことによって投げ飛ばし、襲ってくる別のスケルトンに命中・・・・・・この場合は、攻撃を受けた相手は全然効かなかったが。
次から次に襲ってくる敵をヤマネは、ある時は鞭で相手の足を巻き付け掬って相手の隙を生み出し剣でナマス斬りにし、ある時は強化した筋肉に任せて回し蹴りやら跳び蹴りやらで蹴散らしたり、ある時は鋭利な黒曜石を取り出しクナイや手裏剣みたいに投げて牽制したり、ある時は氷の魔術で敵の足元を凍らせて動きを鈍らせてた後に炎の魔術で焦がした。
防御面もヤマネに隙は無かった。抱き着こうとするアンデットに対し、顔面目掛けてハイキックでカウンターをとり、彼女の死角からスケルトンが剣を振り下ろす時はこちらも相手が狙う先に剣を構えて凶刃を受け止め、相手が人数に任せで彼女を取り囲んで押さえつけようとする際は、高く跳んで回避する。
「ふははっは! 偽門番が操ってたアンデットより弱いんじゃねぇの・・・・・・?」
そして少し経った後、砕けた骨の残骸と屍の山がヤマネの傍に積みあがっていた。もちろん全部敵の方。
「ふむ・・・・・・戦闘経験は、若年であるにもかかわらず豊富そうだな。ラティス殿と同じタイプか」
不思議がるタワラ。
「なんでわざわざ魔術を発動させる前に、詠唱をするのだ? それも全て。貴様程の実力があれば、高位魔術でもない限り呪文など必要無く問題無しに魔術を扱えると思うのだが・・・・・・」
彼女の問いに、冷や汗を流して髪の毛を掻くヤマネ。
「あはははは・・・・・・呪文詠唱って、発動時に魔術を安定させるために口にするものっすよね。
肝心な時に呪文を唱えずに魔術が暴発でもしたら元も子もないから余裕がある時は、面倒だけどそれをするんすよ。
初心忘れるべからずってね」
(祟りについては、黙っておこう。女神から押し付けられました~なんて言っても信じてもらえないし、自分が不利になる情報を流したくない。タワラさん達に真実を打ち明けても大丈夫だと信じたいけど念のため)
相手方に怪しまれないよう罪悪感を出しながら言葉を取り繕うヤマネ。そんな彼女は今、脳をフル回転させながら喋っていた。油断していた。
「危険だ!! この場から離れろ! ヤマネ殿!!」
ストゥムが呼びかけた途端、ヤマネの傍にあったアンデット達の腹部が異様に瞬時に膨らみ、スケルトン共の骨がひとりでに砂状になった。
「え?」
次の瞬間、膨張した奴らの腹が破裂し、そこから金属片がまき散らされ、大量の骨の砂の方は、風も吹いてないのに宙に拡散されるよう舞う。
(や・・・・・・べ)
唐突な脅威にとっさに両腕を面前に構え、目を瞑り、息を止めるヤマネ。
金属片が床に散らばる音が鳴った。
おそるおそるまぶたを開けるヤマネ。どうやら自分に怪我は負ってないようだ。
「・・・・・・え?」
それもそのはず彼女の周囲に光の膜の立方体が展開され、それが飛び散る金属片と骨の砂から彼女を守ったからだ。
ちなみにその立方体は半透明で、それの四方の面には、漢字が書かれた札が四方に貼られていた。
「結界が間に合ったようだな・・・・・・コンコンっ」
もちろんタワラが繰り出した術。
彼女が、ヤマネの周囲を包んでいる立方体についている札を一枚剥がす。するとそれは空気に溶けるよう消滅した。後は三枚の札が床に散らばる。
「ケホッケホッ。ありがとうございますっす」
「骨の砂が残っているみたいだな」
自分の壺から魔道具であるバグパイプを取り出したストゥムが、宙に漂う砂をそれを行使し吹き飛ばして晴らした。
ちなみに奇襲とも言える金属片の攻撃は、タワラとストゥムの場合は、難なく回避していた。
「ケホッケホッ。スケルトンの方はともかく、アンデットの肉片は残ってるっすね。どうします? レンズクリスタルで撮りますか?」
「コンコン・・・・・・ヤマネ。咳が酷いぞ大丈夫か?」
「タワラもな。どうやら骨の砂を吸い込んでしまったのが原因の様だな。体調はどうだ? もしやそれには人体に害がある成分も含んであるやもしれん」
ストゥムの質問に、ヤマネがガラガラ声で答える。
「特に発熱とか気怠さとか無さそうっすね・・・・・・」
(あ~もうこれじゃあ、呪文の詠唱が上手くできないかもしれない。どうしよう)
「そんなしわがれた声で言われても説得力がな・・・・・・気分が悪くなったらすぐに言うのだぞ」
「はいっす」
アンデットの死肉を魔道具で撮って記録するヤマネ。
「かなりショッキング・・・・・・。シャルルは、後でこの映像を見るんですよね? 大丈夫っすか?」
「大丈夫だ。ギルド嬢の方々は、討伐した魔物の死体を引き取るのも仕事の内の一つだから、生々しい血肉の光景には慣れているはず。
ヤマネ。ダンジョンの内装も忘れず撮影しておけ」
了解したヤマネは、タンジーやユリが柱頭に彫刻されている大理石の柱や光源である水晶等記録に収めた。ちなみに魔力切れを恐れた彼女は、身体強化を解除する。
それからヤマネ達は、通路を進む。
十字路前まで着いた時、タワラが片腕を伸ばして後ろに進んでいるヤマネらを制止する。
「唸り声が微かに聞こえる。ここは、私が」
その言葉に、ヤマネらは大人しく従い立ち止まる。
タワラが数歩進んですぐ十字路の左右の道から鋭い鉄の牙を有する狼の群れが飛び出し、彼女を襲う。
それに対しタワラは臆せず涼しい顔で虚空にお灸を大量に生成し、敵陣に散弾銃の様に飛ばす。
射られた矢よりも速く飛ばされた大量のお灸は、全ての狼の左前脚の付け根に命中。
そいつらはしばらく元気に走っていたが、途端に立ち止まり、床に倒れて泡を吹き、そして一匹残らず気絶した。
「おおっすげぇっ! ゲホゲホッ」
「しばらく起きないだろう。呼吸器官機能が一時的に著しく低下する効能を持つ経穴を突いたからな。
ヤマネ。そ奴らも撮っておけ」
映像を残すヤマネを余所に、ストゥムがダウンした狼を見下ろしながら尋ねる。
「とどめは刺さぬのか?」
「今回の依頼は、調査。むやみに魔物を殺してしまえばダンジョン内の生態系は崩れてしまうだろう。 後に潜るだろう別の冒険者らのために今回は、ダンジョンの環境をできるかぎり荒らさない方が良いと判断した」
頭を掻いて「いつも、貴殿は甘いな」と言おうとするストゥムの言葉に蓋をするようヤマネが興奮気味に叫ぶ。
「優しいんですね! タワラさん!!
確かに凶暴な魔物でも、動物だからできるだけ傷つけたくないのは、こちらも同意見。分かります分かります」
顔を真っ赤にするタワラ。
「誰が優しいだと!? わらわは、冷酷で残忍無比な冒険者だ! 勘違いも甚だしい。
ダンジョンの環境を思っての行動だと申したはずだぞ! 誰が犬畜生に情けをかけるか!!」
「またまた照れちゃって~」
からかうヤマネに対し、照れ隠しで背を向けるタワラを、黙って眺めるストゥム。
(タワラだけでなくヤマネ殿も甘いな。まぁ・・・・・・こ奴らはまるで仲が良い師弟か姉妹みたいだな)
ヤマネに背中をつつかれているタワラが、少しの間喋らず考え、そして背を向けたまま重いトーンで語る。
「そう、私は優しくない・・・・・・本当に優しいのは、あのお方だ」
「え・・・・・・」
自身の身の上話をタワラは、長々と話す。
それに対し、ヤマネとストゥムは口を挟むことなく黙って聴いた。
「私事だが話そう。極東にいた頃私は、水干着の集団に追われていたのだ。
自分の故郷から離れるのは、嫌だったが極東に逃げ隠れしながら住むのにも限界を感じ、遂には、数少ない同士と共に船で逃亡した。
大海原を漂う船旅を長く経て、私らはここトガルポルへと着いた。
待ち受けていたのは、武器を構えた騎士達。そう国側は、私達を密入国犯と断じたのだ。
騎士達に捕らえられた私達は、処刑を待つのみ。牢屋で私が項垂れていた時、あの方が私達を牢から解放してくれて助けてくれたのだ」
「あのお方って・・・・・・?」
ヤマネの問いにタワラでなくストゥムが答える。
「辺境伯の爵位を持つウィリアム殿ですな。確か北東の危険区域手前の土地を管理する貴族」
「ああ。ウィリアムさんが私達を密入国犯としてでなく保護対象である亡命者として匿ってくれた。
あのお方の優しさは、それだけに留まらず亜人差別や奴隷制度を撤廃するため、彼は王に進言したことも何度もあった。そのせいで王族や他の高位貴族から煙たがれてしまったのだがな・・・・・・」
「へぇ、かっこいいっすね」
(タワラさんが、誰かの事さん付けすんの、違和感が・・・・・・)
「ある日、ウィリアムさんが王都から自分の領地に帰ろうとする時に事故が起こった。
彼が乗っている馬車が崖際の狭い道を通る際、崩落事故が起きてしまいそれに馬車が巻き込まれ、危険区域である崖下まで転落してしまったのだ・・・・・・」
「え・・・・・・」
「彼の訃報は、亡命した私達だけでなく多くの魔術師達も悲しんだ。
実は、彼は優秀な魔術師でもあったからな。
騎士達は、危険区域内で彼の遺体を捜索するも、とうとう発見できずに切り上げた・・・・・・。
諦めきれなかった私は、冒険者となり、Bランクを目指して今に至る。
そう、危険区域を合法的に入るため、ウィリアムさんの遺体を持ち帰るために・・・・・・」
タワラの長話を聞き、目元に雫が溜まったヤマネ。
「そんなことが、あったんすね・・・・・・」
「聞いてくれてありがとう」
呆れるストゥム。
「何でもいいが、ここから離れぬか? うかうかしてたら狼共が目を覚ますぞ」
彼の言葉を受け入れたヤマネらは、この場から離れる。
少し進んだ後、天井と床の高低差が通路と比べてだいぶ開けて閉塞感が薄い大広間にヤマネらは、たどり着いた。
「広いっすね~ゴホゴホ通路より薄暗いっすけど」
「さてこれからどうする? もっと深層に進むか、とりあえず脱出経路を把握するため上階を目指すか・・・・・・どっちだ? ヤマネ殿」
「え!? あたしが!」
「今回の依頼は、貴様がリーダーだろう。私達メンバーはそれに従う」
腕を組み、唸るヤマネ。
「う~ん。大事を取って出入口を探そうよ。ここからもっと奥に下りるのは、後にしてでも遅くない」
(ってか、無茶して奥まで行ってピンチになったりでもしたら、俺のせいになるじゃねぇか)
「分かった。私も賛成だ。それより休まないか。後々敵襲に遭う可能性が高い。体力を温存した方が得策だ。」
タワラの案にヤマネらは、乗っかった。
彼女らは、床に直に座り込む。
タワラが質問する。
「先程私が冒険者になった理由を話したな。今度は、ヤマネが申してくれないか。差し支えない範囲で。言いたくないことは、無理して言わなくていい」
「あ、はい。あたしもタワラさんと同じく北東の危険区域に入るため。
なんでそこを目指すかというと、その場所にいるとされる魔王を・・・・・・」
「うえ~い。みんら飲んれますか~?」
ヤマネの言葉を遮るよう、彼女らが先程通った入り口から、ろれつが回ってない声が響いた。
その言葉を耳にした途端、緊張が走り、勢いよく立ち上がって臨戦態勢をとるヤマネら。
彼女らは、入り口を注意深く凝視・・・・・・そこから・・・・・・。
「・・・・・・『梟』の騎士? なぜここに!?」
顔を真っ赤にし、千鳥足になっている女性が現れたのだ。
彼女の特徴は、髪型は紫のボブカットで、胸元に梟の紋章が刺繍されてる綿製隊服を着ていてかぎづめを装備している。
ヒキョウ チャイニー
ヤマネの尾行の任を持つ氷使いの騎士だ。
どうやら彼女は今、泥酔状態の様だ。
しばらくふらふらしてうわ言を宣っているヒキョウだったが、遂には仰向けに盛大に倒れ、顔色を赤から青に変え、そして動かなくなった。
「・・・・・・死んでいる・・・・・・」
自分達以外誰もいないはずのダンジョン奥でいきなり酔っぱらいが現れたかと思えば、アルコール中毒でそいつが勝手に倒れたことによって、ヤマネらはこれ以上無い位戸惑ってしまった。
「はぁ~弱いな。オレぁ酒の席ですぐ潰れる下戸は嫌いだな~・・・・・・でももっと嫌いなのは」
続けて広間の入り口から一人の男が出てきてヤマネらに姿を見せる。
「こ奴は・・・・・・!!」
奴の顔にヤマネらは、見覚えがあった。
そう、タロッタービルァ町で早めの夕食をヤマネらが取った後出会った、床に寝ころんでいた壮年の男だ。
ディオニュクレス チチャウェイター
そいつの特徴は、金髪の髪と髭を携え、緑のケープと灰色の麻の服と長ズボンと長いブーツを着用していた。顔は酩酊してるからか真っ赤。酒瓶を持ち込んでいる。
そして首元には、ウコンをモチーフにしている木製のネックレスを身に着けていた。
「オレェの手駒である部下を倒す奴さぁあっ!!」
「こ奴! もしや『NWのデビルフィッシュ』の頭領か!?」
『NWのデビルフィッシュ』の頭領 ディオニュクレス
奴の強さのランクは、コヨーテとコモドと同じA-!!
※①今ヤマネらがいる階層は、地下3階です。
※②テンプレ設定よろしくこの異世界ラノベも、冒険者ギルド受付嬢が受ける仕事の一つに、素材になる魔物の死体を冒険者から引き取るものがあります。




