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ケペシュ派? カタナ派?

 ※ケペシュ・・・・・・古代エジプトで使われたとされる鎌みたいな剣。


 

 「我も同行しよう」

 例の依頼書とレンズクリスタルの腕輪を預かったヤマネに、近くにいる男が声を掛ける。


 「ストゥムか・・・・・・依頼を承ったのは、ヤマネだ。

 このパーティーに加入したいのであれば、パーティーリーダーである彼女に許可を得るんだな」


 「リーダー!? あたしが!?」

 タワラの言葉に、ヤマネは素っ頓狂な声を上げる。


 「ああ、確かにそれが筋だというものだな。では、改めて申し上げよう。

 我も貴殿の冒険に同行しても良いか? 神殿の地下にあるダンジョンに興味がある」


 ヤマネは、 もちろんいいっす。 と承諾した。

 リーダーという甘美な言葉に、彼女は心地よく震えていた。


 「いいのか? パーティー人数を増やすことは、心強くなると思うかもしれないが、敵に発見されやすくなる危険性も増すし、何より依頼達成時に受け取る報酬が減るぞ。人数が多ければそれだけ報酬額が山分けで分散するからな」

 その言葉に、ヤマネはストゥム加入を認めた事に少し後悔した。

 (自分が金欠なのに・・・・・・やってしまった・・・・・・)


 それからヤマネは、シャルルに感謝を述べ、彼女率いるパーティーは、ギルド出入口に向かう。

 

 「おや、見知らぬ顔だ」

 ギルド入り口から見て真右側に位置する階段から、アフロの男が降りてきた。

 

 (あ、前日トイレの扉を何回もみっともなく叩いたアフロ野郎だ)

 「初めまして、自分ヤマネと申しますっす。新入りっすけどこれから一人前の冒険者になるためがんばりますっす」


 「初めまして。オレはボンバーバーボンってんだ」

 彼の名乗った名前に、ヤマネは吹き出しそうになる。


 「ヤマネちゃんとタワラちゃんとストゥム。これから依頼クエストか・・・・・・?」


 「ああ、北西にあるタロッタービルァにこれから向かう所だ」


 「奇遇だな。オレもそこの近くに寄るんだ。何なら、そこまで護衛してやろうか・・・・・・?」


 タワラが鍼先を彼に向ける。

 「お前がついてきたら、新人に経験を積ませられないだろう。さっさと失せろ昼行燈」

 彼女の無礼な態度に、ヤマネの背筋に緊張が走った。


 見かねたストゥムが「やめないか」とタワラを諫める。


 「やれやれ、昨晩のモンスター襲撃のことをまだ根に持ってんのかい。悪かったよ。あんとき腹を下して、それどころじゃなかったからな。

 それより・・・・・・」

 ボンバーバーボンが、いつの間にか持っている色紙と羽ペンで自分の名のサインを書いた。

 この後、それをヤマネに渡す。そして彼は別れの挨拶を述べた後、トイレへと向かった。

 「オレからのサインだ。大切にしなよ? まあ金に困ってんなら売っても良いけど」


 欲しがってもないサインを押し付けられて彼女は、少しの間呆然。


 正気に戻ったヤマネは、タワラ達と共にギルドから外出した。

 その際に、去る彼女らを見送ったウォールナッツは、呆れたように呟く。

 「イーストドレスのタワラとポンチョの新人と西端の民族衣装を着たストゥム・・・・・・なんだこの仮装パーティーは・・・・・・」


 その後、ヤマネは道具屋にてサインを売っ払い、その金で靴と魔物を嫌う黒いハーブを買った。


 「例のダンジョンに入る前に、魔物除けのハーブを焚くでない。今回の目的は、探索。調べる対象である魔物をこちらから遠ざけてどうする」


 「分かったっすタワラさん・・・・・・それより。

 あのサイン一枚で、銅貨二十枚ももらった。けっこう高値で売れるっすよね」


 「高値? ・・・・・・むしろ安すぎるぞ。

 冒険者どころかこの国の中で五指に入る程の実力者だからな。

 まああ奴は、けっこういろんな者共に自分のサインを配っておるのだ。故に貴重性が薄くて売ってもそんなに金にならん」


 「え・・・・・・あの変なアフロ。もしかして有名人!?」


 王都から出都したヤマネは、すぐに買ったばかりの黒いハーブ【3分の1】を焚いて自分と他のパーティーメンバーの体を燻した。


 しばらくの間、太陽に照らされながら林道を談笑しながら進むヤマネ達。


 「そういや、あたしが王都に向かう際、モンスターとかテロリストとかに出会ったすけど、盗賊の類は遭ってないっすよ」


 「お主の故郷は南西の村だったな。最近『アウル』の新入りが、そこら辺を根城にする賊達を討伐した噂があr」


 「つまり、王都から見て北西の地域であるここには、吾輩みたいな奴らが残っているってわけだな!!」


 タワラ、ストゥム、ヤマネに緊張が走る。


 「ヤマネ! 妾の傍から離れるな!!」

 タワラがそう叫び終わらないうちに、彼女達の周囲にある木々が一斉にこちらに向かって勢いよく倒れかかってくる。

 九本の大木が同時に地面に衝突したことによって、辺りに軽い振動と轟音が響いた。 


 ヤマネ達は、とっさに横に跳んで回避したため、大木の下敷きにならずに済んだのだ。


 怯んでいるヤマネの首に、

 「て、敵襲!? ぐふっ!!」

 何者かが緑の鎖で投げ縄の要領で巻き付け、強く引っ張る。


 それによってヤマネは引きずり回され、タワラ達と距離が離れてしまう事態に陥ってしまった。

 「ふふふふふ・・・・・・この美少女からは、良い匂いがする。ボクがムラムラするような煽情的な匂いがね・・・・・・」

 その鎖を扱っているのは、馬に乗っている血色の悪い男だ。


 「ロデオ! あんまり女を傷つけんなよ! 後でみんなで楽しんだ後、売り飛ばすんだからな!!」

 茂みから顔を出して怒鳴っているのは、無骨な斧を得物にしている低身長のおっさんだ。


 ヤマネを助けようと、タワラが自分のポーチからお札を取り出して飛ばすも、大木の枝上から青い雷が飛来して、彼女のそれを焦げさせて妨害する。

 その魔術の下手人は、刀を持った男だ。

 「和風美人のマドモアゼル。今すぐ投降すれば、禿げ男は別として貴方達を丁重に『保護』しますよ~。

 さあ、みんな出ておいで~」

 奴が発言した後、茂みの奥や木々の陰から次々に新手の賊が現れる。

 

 そんな奴らの半数が、

 「ん? なんだこの突風はっ!?

 うわぁあああああああああああああああああああっ!!」

 災害にも匹敵する程の威力を秘めた大風で、大質量の土砂ごと遥か森の向こうまであっけなく吹っ飛ばされた。

 他の半数は、木々にしがみ付いたりなどして難を逃れているが。

 

 突風を起こした正体は、ストゥム。

 小さな壺から、管に息を吹けば排出管から暴風が流れる効果を持つバクパイプ(血管が浮き出ている)を取り出していた。

 「我らは、Cランクの冒険者。ご存じか? このランクの戦士は、単体で数十人程の賊を殲滅できる力を有するのだぞ?

 貴様らには、エアドラゴンの肺胞から造り出したこの魔道具の実験体になってもらおう」


 長髪の男は、雷を纏ってニヤリと嗤う。

 「その基準が通用するのは、低レベルの賊だけだろう。シーフの中にも実力者がいるということを証明させて頂きます」


 ロデオと呼ばれた賊は、馬を丘の方へと向かわせる。自分の敵の兵力を分断させるつもりのようだ。


 タワラ「ヤマネ・・・・・・こいつらをすぐ片付けるから、どうか持ち堪えてくれ・・・・・・!!」



 ※視点をヤマネの方へと替えます。


 首に鎖を巻き付けられ、馬の走るままに引きずり回されるヤマネだが、それでも呪文を詠唱することに成功した。

 「雷属性魔術『雷獣の憤慨』っ!!

 存分に痺れやがれっ!!」

 彼女の体が帯電する・・・・・・が、金属製であるはずの鎖は、魔術の雷を通すことは無かった。全力でヤマネが魔術を発動したにもかかわらずにだ。


 「ふふふふ。まさか喉を圧迫されている状態で詠唱をできるとは・・・・・・!!

 だが、ボクが使ってる得物は、絶縁体の樹脂をコーティングしていたのさっ。電気は効かないよ」


 (俺の金属アレルギーがなぜか発症しないなと思ったが、直接肌が鎖に触れてなかったからか。正直助かったぜ。

 雷が効かねぇなら次は、身体強化d)


 そう再び詠唱しようとするヤマネに、ロデオは、駆ける馬の勢いを利用して大木の幹に叩きつけた。


 「ぐはっ!!」

 血反吐を出してしまうヤマネ。


 「おお! フフフフいけないいけない。できるだけ怪我させちゃあいけなかったね」

 そう言った奴は、馬の手綱を引っ張って止まらせる。

 横たわって動かなくなった彼女の様子を数瞬観察して、馬から降りるロデオ。

 「さて、手足も拘束させて・・・・・・っ!?」


 馬からロデオが距離を離れたタイミングで、ヤマネは呪文を急いで詠唱した。

 身体強化魔術が成功。彼女は、自身の首に巻き付いている鎖を素手で引きちぎり、勢いよく立ち上がり、奴に向かって殴りかかる。


 「騎乗者が、そう簡単に馬から離れんなロデオっ!!」


 「ハハハハ、済まないヘルメイスさん」

 

 ヤマネの背後から斧使いの賊が怒鳴った瞬間に、ヤマネの右前方にいる大木の幹がひとりでに折れて彼女を圧し掛かろうとする。

 しかし身体強化で感覚が鋭敏になっている彼女は、すぐに身の危険を感じて後方に跳んで、次に敵達の方をちらちら確認しながら左に逃げる。

 (この短時間で木々が不自然に二回も折れてる・・・・・・恐らく斧使いの仕業だな・・・・・・?

 直接刃を入れずに木に干渉させる・・・・・・斬撃を飛ばす系の術の線もあるが!)


 ヘルメイスと呼ばれた賊は、斧を薙ぐよう何度も素振りする。

 それが条件と言わんばかりに、逃げているヤマネの前方にある数多の木々の幹が折れて、彼女めがけて倒れ掛かる・・・・・・も、身体強化した彼女の前では、回避され全て空振りに終わった。


 (大方術者から遠隔にある木々を斬り倒すってのが、自然だろ!!)

 倒れて獣道を塞ぐ太い木の幹を、ヤマネは高く跳んで超える。

 「どこか木々が生えてないところところ・・・・・・あった!」

 丁度いいタイミングで、彼女の視界の端に広大な原っぱを捉えた。


 「うぉぉおっ!! この小娘! 吾輩の術の弱点に気付きおったな!!」

 そう大声で語るヘルメイスは、追うのを何故かやめた。


 「木が生えてない場所では、てめぇは遠距離攻撃が出来ねぇだろっ!!」

 原っぱに到達したヤマネは、鞭を自分の革鎧から取り出しながら、元素系の魔術の詠唱を開始する。

 「土の象徴であるノームよ 我は命ずる 強固な岩の弾で圧し潰せ!

 方位は北極星 数は二つ 質量は膨大 精霊の猛威を 我が前にしm・・・・・・え?」

 

 唱えている途中に、ヤマネは、近くの丘の方から鋭い風切り音を耳にする。

 ハクビ戦の時に何回も聞いた音・・・・・・射られた矢そのものだ。

 こちらに迫り来る攻撃を、彼女は大きく横に跳んで無事回避。

 

 彼女の足元の地面に、丘の方から紙が矢柄に括りつけられている矢が突き刺さった。

 それを目にしたヤマネは、何年か前のデモクリの言葉を思い出す。

 

 『ヤマネよ、紙が括りつけられた矢を自分の近くまで飛ばされた場合、全速力でこの場から離れよ。

 なぜならその紙には・・・・・・』


 「魔方陣が描かれてあってそこを起点に放出系の魔術が発動されちまうっ!!」

 呪文詠唱を失敗したヤマネは、全力で幅跳びして原っぱから離脱する。


 瞬時、射られた矢の方から、大爆発が起きた。

 その威力と範囲・・・・・・鉄火グレネードシープの自爆よりもかなり高く広大。


 背中が軽く炙られ、苦悶の表情を浮かべるヤマネを追撃するよう、ヘルメイスが斧を勢いよく標的目掛けて振り落とす・・・・・・も、彼女は横転で回避。

 斧の刃に衝突した大地は、深い亀裂を生み出した。まさにその威力は、アズジョーレ村にいたメイス使いのアンデットの一撃を想起させる程である。

 

 「できるだけ傷つけずにあたしを捕まえるんじゃなかったのかよ!?」


 「フフフフ・・・・・・隙だらけですよ~」

 高速に走る馬に騎乗しているロデオが、装備している有刺鉄線で括りつけた木材を引きずり、スピードの勢いを利用する形でヤマネめがけて追突させようとする。

 まあ彼女は、鞭の連撃で奴を怯ませた後、木材衝突を横転で回避するのだが。

 

 「てめぇの馬、どんなパワーしてんだ!? 普通あれが重くて思うように走れなくなるだろ!!」


 「痛てててて・・・・・・単純な話ですよ~。この馬に対して身体強化の魔術を付与しただけです。フフフフ」


 (こいつらの戦術はおおまかに分析すれば・・・・・・。

 ヘルメイスのおっさんが森林地区にて木々をどんどん切り落とす→伐採されて木材になった大木をロデオが鎖や鉄線で括って武器にする→敵を見晴らしが良い場所まで誘導し、別の賊が弓矢で攻撃・・・・・・こんなところか。

 とにかく・・・・・・)


 逃げているヤマネが、丘の方に方向転換する。


 ヘルメイス(小娘め・・・・・・高い攻撃力を有するアイスマンを先に狙う気だな・・・・・・?

 させるか!!)

 奴が走りながら斧を何度も素振りするも、彼女はひょいひょいとステップ気味に迫り来る大木らを蛇行で避けて避けて避けまくる。


 しかしロデオの馬は、ヤマネよりも移動速度が少し速い。このままでは彼女は、追いつかれてしまう。

 彼女は、全速力で駆け抜けながら呪文を詠唱した。

 『土の象徴であるノームよ 我は命ずる 柔き沼にて敵の道を阻め!

 方位は緑月 範囲は広大 深度は低 精霊の猛威を我が前に示せ!!』

 「土属性魔術『沼地スワンプ』っ!!」

 彼女が唱え終えた後すぐに、ロデオの馬とヘルメイスの前方に、広範囲な沼が出現する。


 「・・・・・・飛び越えるのは、ハハハハ無理そうですね・・・・・・迂回しますか」

 

 すぐにヤマネは、目的地の丘の麓にたどり着き、スピードをあまり落とさないよう急こう配の坂を一気に登る。

 (これで時間が稼げr・・・・・・)


 「ハハハハ・・・・・・! 追いつきましたよ!」

 有刺鉄線を頭上に水平に振り回しているロデオが、ヤマネの背後まで馬で迫り来る。


 「早すぎだろっ!?」


 「簡単な話です! さっきボクが引きずっていた木材を沼に架け、橋代わりにしたまでですよ!!」

 

 「逃がさんぞ小娘っ!!」

 そしてロデオに続くようヘルメイスも続いてヤマネの方に向かってくる。

 奴は、斧を虚空に薙ぐ動作をする。


 ヤマネの目前にある巨大な樹の幹が一瞬で折れ、奴の標的である彼女に向かってゆっくり倒れ掛かる。


 「やべ・・・・・・今まで一番太ふっといのが来やがった・・・・・・!」


 「フフフフ。残念でね~せっかくの上物を生け捕りできないなんて・・・・・・まあ死姦も嫌いでは、ないですがね・・・・・・は?」

 有刺鉄線を振り回している方のロデオの腕に、彼女の鞭が巻き付いてきた。

 

 次に彼女は、ロデオの真横目掛けて水平態勢で思いっきり跳び下りながら怪力に任せて筋肉を引き絞る程強く鞭を横に振りかぶった。

 鞭に釣られるよう奴は、バランスを崩し、乗っている馬ごと横転。

 ロデオが投げられた場所は、たった今ヤマネがいた場所にいる。


 「ハハハハ・・・・・・やってくれましたね」


 「ロデオっ!! 後ろだ逃げろ!! 早く!!」


 つまり。


 「ハハハハハ・・・・・・ハ?」

 ロデオは、もたれかかった巨大な樹の下敷きになってしまったのだ。

 その樹と地面の隙間から少量の血が流れるのが見えた。


 馬の方は無事で、土埃まみれになりながらも自分で起きている。


 「ロデオ・・・・・・仇は取ってやるぞ!!」

 斧を乱れる様に何度も何度も素振りするヘルメイス。


 辺り中の木々が、特異な力によりへし折られ、転んでいるヤマネめがけて倒れ掛かってくる。

 すぐに起きた彼女は、急いで詠唱を唱えながら迷彩柄のバッグからコヨーテからもらった武器を取り出す。


 「この土壇場において取り出したのが、・・・・・・木製のブーメラン?

 吾輩共を舐め腐るのも大概にしろ小娘!!」

 ヤマネの命を狙うため、斧を振り回して突進するヘルメイス。


 「付加魔術『武器ウェポン強化ストレングス』っ!!」

 詠唱を終えたヤマネは、ブーメランを力いっぱい垂直で投げた。


 しかしやはり癖の強い投擲武器は、練習が必要だった。

 残念ながらヤマネが飛ばしたそれの軌道は、お互いの予想に反し、奴の真横すれすれを通り越した。


 「くそっ!! やはりダメだったかっ・・・・・・!!」


 「ふははははっ!! 外れたなざまあみろっ」


 ヘルメイスの斧の間合いが、ヤマネに入る寸前に、そのブーメランは、倒れ掛かってくる大木に衝突し、飛来方向がガラリと変わる。

 そして再びお互いの予想に反して、鋼鉄の強度を誇り高速に自転するその武器が、見事ヘルメイスの後頭部に激突した。

 「ぐはっ!?」

 そして奴は、白目を剥いてダウンする。


 そのブーメランを投げた本人であるはずのヤマネも、この出来事に唖然とする。

 「え? こんなことってある? って、危ね!!」

 すぐに彼女は、もたれ掛かる木々を避けるのだが。


 息を乱しながら、奴の近くに転がるブーメランをヤマネは拾った。

 「とりあえず二人撃h」

 と、彼女が言い終わらないうちに。


 「まだだぁあああああああああああぁあああああああああああああああああっ!!」

 自分自身に魔術で身体強化したロデオが、素手で自分の体を圧し潰していた巨大な木材を木っ端みじんにしてヤマネの前に、立ちはだかる。


 「いや、しつけぇなてめぇええっ!!」


 「もうこの女を斃するのに武器も馬もいらね・・・・・・」

 ロデオに尻を向けている馬が、後ろ脚で自分の主人である奴の脇腹を、容赦なく蹴り飛ばした。

 吐血をまき散らかすロデオは、今度こそやっと地に転がる。

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 やられた敵二人を、しばらく見下ろしたヤマネは、その後山を登ることを再開。

 (まだ顔も知らねえ矢文野郎が残っているはず・・・・・・もう逃げたか?

 原っぱの時以降に、奴からの攻撃が一度も無いし)

 

 そしてヤマネは、見晴らしが良い場所にいた矢文使いと邂逅した。


 しかし、アイスマンと呼ばれているそいつの心臓は、もう今は、止まっている。

 なぜかそいつの体全体が、氷漬けされているからだ。

 そいつは、背中に矢が十数本程収められている矢筒を背負っているので、ヤマネを襲った矢文使いでとりあえず間違いないはず。


 「・・・・・・仲間割れ? それとも・・・・・・」

 

 



 ヤマネの近距離に生えてある大木の枝上にて、彼女を追跡している『アウル』の女騎士 ヒキョー が、ヤマネを見下ろしてため息一つ。


「危険思想を持つ平民を助けるつもりも無かったんですが、逃げようとする賊を見逃すようなまねも、職業柄故できませんな」

 


 

 

 ※この小説において、紙に魔方陣を描いて矢柄に括り、弓でそれを放つ矢文戦法は、属性魔術は使えるが、それを魔術で放出するのが苦手な魔導士やアーチャーに採用されることが多いです。

 ハクビは、なぜその戦法をらなかったかというと、そもそも属性魔術攻撃が苦手だからです。

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