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クラウド・ワン  作者: Syun
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0 a few years ago《少し前のお話》

 この世界には、僕たちが感じるのとは少し別の風が吹いてる。すべてを切り裂くような風が。

 それは誰かの嘆き。蹴られ、踏みつぶされ、奪われた人の。

 でも、風はあくまでただの風。世界にさほど影響は与えないし、人に何かをもたらすことはない。けれど、叫びを聞く意志のある者に対しては別だ。そういう人間にはそれがちゃんと叫びに聞こえる。

 聞こえる人間には、それに応える責任がある。戦う責務がある。それを還してやる義務がある。

 ――――とまあ、そういうのが奪われた人の考え方だよね。力のない私の代わりに戦ってくれって。勧善懲悪結構。悪はすべからく滅ぶべきだというのは否定しない。といっても、感情だけで法を超越するのもどうかと思うけどね。

 ただ、世の中そんなに単純じゃない。考えてみてほしい。正義の味方って呼ばれる人たちは、なにも失っていないのかって。なにも失わないのかって。

 正義の味方って呼ばれる人たちは、「ずっと失い続けてる」んじゃないかって考えたりはしないかな?

 たとえばそうだな。奪われたり奪われなかったりする、「ごく当たり前の生き方」ってヤツとかさ。人が受け取るはずの幸せを、なにもかも受け取れないような生き方をしなきゃいけないかもしれない。

 もしそうだとしたら、君は正義の味方になりたいって思うかな? 君の周りのすべてを引き替えにして、悪を懲らしめる力を持ちたいって思うかな?

 イエスだとしたら、君はちょっと危険かもね。なにもかもを引き替えにしていけば、君は最後にはなにも守らなくなってしまうかもしれない。自分さえもね。

 ノーだけどなりたいなら、君はものすごく強くならなければいけない。なにもかも奪われないよう、世界のすべてを守ることができるか変えてしまえるくらいにね。

 ふむふむ。わからないけどなりたい? そうか、君はまだ普通の感覚を持ってるね。じゃあ、それを大事にして正義の味方になろう。そうすれば少なくとも、本当に大事なものは守れるかもしれないからね。

 はは、ちょっと難しかったかな? ただね。奪われる奪われないという以前に奪われることのないようにしなさいっていう話だよ、本当に大事なものはね。それが、ならないって答えなかった君へのちょっとした贈り物だよ。

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