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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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たんじょう

「おっ――――」

 健全な体に技が宿る。

 そして健康は内側から―――鍛えた肺活量をこの言霊に込める!

「はよぉぉぉおございまぁーす!」

 澄み渡る空のように爽やかにクマさん親子の目覚めを促す。

 うん、これも快活ですね!

「…ぅぅん?…ナタカ、どしたの?まだ、早い…」

 クマさんが言うように、空はまだ色付き始めたばかり。

 いつもならまだ布団から出ない時間。

「はい!おはようございます!」

 音を遮断しようとしていたクマさんの布団を剥ぎ取る。

 するといつもの目蓋よりも重く、1毛も開いてなさそうな目で睨みつけてきた。

「…おはよ。まだ、早い…」

「今日は姉妹(ふたり)が来ますからね!早め早めの行動です!」

 クマさんに話した理由は至極自分勝手なもののように思うが、あの二人が来ると何かと時間が取られてしまうのだから仕方がない。

 それに朝食はみんなで食べるものです!

 というわけで、揺さぶり攻撃開始です。

「クマさぁん、今日は魔法に関する私の知っていることを話しますからあ」

「分かった!起きる!」

 はやっ!




「おう!今日はやけに早かったな!なんかあったのか?顔もいつもと違うようだが…」

 後の問いには笑顔で返し、先の理由として話を持ち出す。

「バンさん、クキョさんの食事なんですけど、お肉入ってませんよね?」

 この世界の食卓に大抵並ぶもの、キモチ、そして肉。

 何のお肉かは未だに分かりませんが、牛とも豚とも違う味わいが口に広がります。

 単純な味故にクキョさんの大好物です。

「小さく切ったんじゃその味を生かせないだろう?それじゃ意味が無いと思ってな」

 栄養的なものは一切考慮しないらしい。

 魔力で動物の本能のようにどれを食べたら良いのか分かるようだから、そういったものを調べる人が現れないせいだ。

 それでもお肉入りを提案したのは、クキョさんも好きなものと一緒なら食べるのではと、向こうの子供たちが実証していたからです。

「長時間煮込むとお肉が歯で噛む必要が無いほど蕩けるように解れます。試してみるのはどうでしょうか?」

「ほぉ?」

 この世界での調理法は、焼くか茹でるかの二つしかない。

 生食かそれが不可だから火を通すか、可能となればそれ以上火を通すことは無いのです。

「骨はどうしてますか?」

「なんかよく分からんものを作るのに使ってるやつはいるな。…まさか料理に使うのか?」

 キモチの汁を食べて分かったのは出汁を取らないということ。

 茹でた際に出た成分が薄っすらとした味を付けているだけ。


「なるほどなぁ。そんなのもあるのか。」

 調味に関してはまだ今一分からない。

 でも私には宮本家の台所を任されていた自負がある。

 クキョさんの食事を豊かにするために調理法を伝えねばならぬのです!

 決して、無理やり食べさせる必要があるの?という疑問を吹き飛ばすためではないのです!


 あれ?バンさんが呆気に?

 いや目を丸くしていますが、口に出してしまっていたでしょうか?

「…いや、なんて言うか…別の方法を試すなんてやろうとしなかった…。戦場で戦い方を忘れちまってたみたいだな、オレは」

「いえ偉人の教えを伝えているだけです、私も。この世界の味付けも良く分からないですし」

「そっちはオレが教えてやるよ。…交換条件ってやつだな」

 必要ないのにとは思うが、彼にも料理人としての誇りがあるのだろう。

 時間は貴重と言ってもここでの生活は始まったばかり。

 少しずつでもここでの役割を増やすために、彼の手を取ったのだった。



「ですからして、明日から大好きなお肉が入りますからね。今日も頑張って食べていきましょうね」

 と、口に含む前に告げる。


 慣れ、余裕?ともあれ、私は普段通りにクキョさんと接することが出来ている。

 そこで注意深く観察することにした。

 僅かな変化がクキョさんを治す希望になるかもしれないから。

 

(というのも、ちょっと引っかかるものがあったんですよね…。うーん…)

 

 逃げてばかりではいけないので、過去の映像と重ね合わせていく。


(そういえばクキョさん…?)


 食事を終えたクキョさんの口元を拭いている時にそれは思い起こされた。






「で?何を、話す?」

 クマさんの機嫌が悪いです。

 朝早く起こしたせい?それとも昨日の?

 両方と言っているしかめっ面が私を更に困らせる。

(話すとは言ったものの、依然あれ以上の知識は持ち合わせてはいないのです…)

 それならば、何故そんなことを言ったのか?

 

 調理法でもそうだが、発想の面でも違いがあるようだ。

 そこに認識の違いも合わせると、良い化学反応を起こすのではないかと甘く考えていた次第でございますですはい。


 魔法……人ならざる者が使うような不思議な力。常人では出来ないような極まった芸を賞賛する際にも使われたりする。

 

 私からすれば魔力によるものは全てそうなんじゃないかと思ってしまう。

 私が前に話したことであったり、クマさんの魔具による補助の力であったり壁だったり…。

 転送の魔具だってそうだ。あれも向こうであれば魔法と呼ばれるものだろう。


 考え方を変えてみる?

 別の視点…。

 魔法と聞いて思い浮かぶもの…?


 頭の隅を掠めるように何かひらひらしたものが舞っている。

 思い起こそうとすればそれは鮮明に映像と化し、曲まで流れ始めた。


 そうだ、子供の時の…!


「クマさん、こういうのはどうでしょうか…?」




「それじゃー、やってみるわよー?」

 それぞれが壁を発動させ、新たな魔具の誕生を確信した面構えで、クママさんの手の先で今か今かと魔力を待ちわびる鉱石を見つめる。

 しかし私は内心不安だった。

 あの内容と説明で何故ここまで自信を漲らせるのかと。

(いえ、ここはクマさんの、おネーさんの感性を信じましょう…!)


 クママさんが娘から受け取った想像を魔力に乗せる。

 そうやって創造した魔具でシムとの戦いで勝利を収めたという。


 だから今回も上手くいくはず…!


 私に出来ることはもうない。

 だけど願うことは出来るし、手を繋ぐことだって出来る。

 それが意味のないことだとしても。


 結果は見てのお楽しみ、私は静かに目を閉じ、手のぬくもりに神経を集中させた。




(………?今何やら可愛いらしい音が…?)


 失敗した時と同じように三人がこほこほと咳き込んでいた。煙に巻かれているのだろう。

 ということは失敗?


 けどポンといつもとは違う音。

 空想童話的な?子供向け番組で聞けそうな愛らしい効果音のような?

 見たいような見たくないような葛藤を抱いたせいか、少しずつ視界を広げていく。


「………」

 親子はまだ咳き込んでいて、目を開けていないようだ。

 そのせいで自分たちがどうなっているのか気付いていない。

「…ナタカ?どう、なった…?」

「………」

 クマさんの問いに返すことが出来ない。

 自分から話しておいてその結果に絶句するのはどうかと思うが、どう言葉を発していいのか分からないのです。

 無言は肯定、三人の目が喜びに染まる。


「できた……」

「…!」

「これがそうなのねー?」


 喜びを体で表すためか、それを確かめるためか、体を振ったり両手を広げてみたりと、思い思いに堪能している。


 私は親子とは別の感想を抱いていた。


 これは…また別の世界に来てしまったのでしょうか?

 そうですね、この世界に名を付けるとしたら…。


「ぷりてーまじっくわぁるど…!」

「ぷ、ぷり…?それは、何?」


 現実を直視すると、三人の服装が変わっていました。

 めいど服のそれとは違う、ふりふりひらひらとした裾。

 これが噂の絶対領域というものでしょうか。

 この世界では女王様だけが身に付ける装飾品を髪やら服やらにもあしらい、背中には簡素化された白い天使様の羽。

 子供向け玩具として売り出されそうな形状が刀の杖まで…まさに。


『魔法少女という創作物があるんです。そこでまずは恰好から入ってみるのはどうでしょうか?』


 魔法少女(大人の男性含む)が誕生してしまいました…。



 めいどに続いて魔法少女まで…私はこの世界に持ち込んではいけない文化を彼らに伝えてしまったのではないでしょうか?

 いやめいど服は兎も角、魔法少女はこんな再現度が高くなるなんて微塵も思わなかったわけですよ。

 まさかこんな……子供のころ見た少女漫画『魔法少女マジガ真剣子マジコ!』の衣装を実物で見るなんて…。

 ああぁ…と顔面を覆いたくなる気持ちに素直に従う。


 どうしてですか?

 私には魔力は見えないはずではなかったのですか?

 精々魔力で形成された装飾品とか羽が生えるだけで、それを見たクマさん親子の魔法創造への希望を抱く顔が見られれば良かっただけなのに。

 どうして……動く真剣子ちゃんに憧れ、主題歌に合わせて踊る彼女の真似をする幼い私の姿が掌に浮かんでくるのですか?



 その手がくいくいと引かれました。

 おネーさんですね。分かります。逸らしてはいけませんよね?


「ナタカ、これ、違う?」

 ああ、似合ってます、似合ってますよ…クマさん。

 髪の色と相まって、変身後の真剣子ちゃんそっくりです…。


 クママさんは兎も角、シヨタさんは少し自重してください。

 それは女の子の服なんですよ…?

 好敵手のナギ 奈多子ナタコちゃんに似ているのが私に追い打ちをかけた。


 

 これもある種の魔法とはいえ、クキョさんの治療に役立つかと言えば、絶対にNO(のぉ)!としか言えませんし、言いたくはないですね。



 しかし魔法少女はいつだって奇跡を起こすのです。

私、武士真剣子(たけじまじこ!華の中学生です!

剣の道を究めんと日々精進していたある日、私の前に突如現れた凪奈多子。

彼女は言った。薙刀こそが女の道だと。

ぶつかり合う信念。手を取るという選択肢は全くなかった。

彼女との戦いは一進一退を繰り返す。

互いに引けぬ状況の中、間に割って入る二つの影。

「力が欲しいか?ならば我の手を――――」

「「女の戦いに割って入るんじゃあない!!」

残ったもう一つの影が恐る恐る呼び掛けてきた。

「君たちの助けが必要なんだ。どうか僕を助けてほしい」

キラッと光る歯が二人の戦いを止めた。

次回~裏切りの凪奈多子~

見ないと面打ち100セットです!



つづきますん。

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