おでかけ
お気づきでしょうが、所々にネタが仕込まれております。
君はいくつ分かるかな!
『…はさ、も…に…たら…よ。』
夢を見ました。夢の内容はよく覚えてない。
「ふぁああああああ」
んー…、なんかまた同じ夢を見たような気がする。気のせいかな。
出かける支度をし、クキョさんとともに家を出る。その直後。
「わり、忘れもんだ」
慌てて戻るクキョさん。
あわてんぼうなとこもあるんだなぁ、ふふ。
長い。一向に戻る気配がない。忘れたものが見つからないのだろうか。
手伝いに戻ろうとすると…。
「待たせたな。さ、行くか」
クキョさんが戻ってきたが、手に何かを持っている感じはない。
忘れ物を取りに行ったんじゃ?
両目が?になっている私を置いてクキョさんが行ってしまう。
「今日はアイツが来るからな。時間に遅れるとうっせぇぞ」
アイツ…?この感じの『アイツ』はショトさんじゃない?なんとなく違う気がする。
慌ててクキョさんの後をついていくと、前方に見覚えのある小さな子が立っていた。
「あ、クマちゃ…さん」
クマさんは私を見て、ニヤリとしてみせた。
あ、危なかった。でもやっぱり、ショトさんじゃなかった。
ちょっとだけ違いが分かったのが嬉しかった。
「遅い」
「わりぃわりぃ、ちょっと、な」
そう言って頭を撫でるクキョさん。クマさんは目を細め気持ちよさそうにしている。彼女にしっぽがあったら無茶苦茶振ってそうな忠犬感。
ちょろい?
「ちょろくない!」
「おわっ!いきなりどした?」
なるほど、悪口っぽいのは危険なのね…。急ぎ話題を変えなくては。
「き、今日はショトさんはいないんですね」
何故か安心してしまう。
いい人だとは思うんだけど、ね。いい人だとは思うんだけど、ね!
「今日、行くとこは、説明おばさんだと、危険」
危険?危ないところに連れていかれるんだろうか?
「ん、行けば、分かる」
ちょっとだけ不安を感じながら、二人についていくのだった。
「ここは…」
何かのお店みたいだけど、何のかな。外観からだと何のお店か分からない。
「ここは久しぶりだな」
「必要、なさそうだし、ね」
「うっせぇ」
中に入ってみると、そこには。
服!
服!!
服!!!
服ばっかり。なるほど、服屋さんなのね。
「分かった?あのおばさんいたら、危険、なの」
確かにショトさんがいたら、あれやこれやと着させられたり、着替えを手伝ってきたり、きわどい服を買わされたり…。想像するだけで悪寒が…。
しかし、なんでだろ?ワクワクしない。普通女の子って服屋とかでキャピキャピ(死語)してる感じなのに…。ファッションとかに興味ない子だったのかな、私は?
展示してある服を見ても、特に何かを感じることはなかった。
入り口付近に展示してある服を見ていると、一人の店員さんが気づき近づいてくる。
「これはこれは、お嬢様。お久しぶりでございます」
そう言って、クキョさんに向けてお辞儀をする。それは上客を接待するときと同じものだった。
お嬢様?やっぱりお嬢様だったの?
「ちっ、そうやって言うなって言ったのを忘れたのか?」
店員さんを威嚇してるぅー。ちょ、無茶苦茶ビビってますよ?!
「し、失礼しました。それで今日は何用で?」
やりますねぇ、この人。
狼狽しながらも対応する。急いで話を逸らさないと危険だと察しているようだ。
クキョさんも、まぁいいといった感じで話を進める。
「コイツの服を見繕ってくれ。4,5着はもらう」
私は指を指され、それに驚く。目的が自分のものだとは全く思っていなかったからだ。
「え、私の、ですか?」
「その服だけだと、いろいろ不便だからな」
確かにレイセさんからもらったこの服だけでは…。…あれ?そういえばジャージはどこに…?あと靴…。
とにかく、お世話になってる以上甘えるわけには。そう言おうとしたが止められた。
「面倒見るって言ったろ」
クキョさんの笑顔と優しさに、私は甘えることにした。その優しさがすごくうれしかったから。
それに、クキョさんに服を借りようと思ってもサイズが合わないし。いろいろと…。
「では、こちらへどうぞ」
店員さんが奥へと招く。それと同時に他の店員さんがいっぱい出てきた。それはもう獲物を見つけたような感じでわらわらと。
何このVIP待遇みたいなのは?!
「オマエも着替えを手伝ってやれ。…いいか?髪は見られるなよ?」
「ん。任された」
クマさんがついてきた。
店員さんいっぱいいるから大丈夫なのでは?
「服選び、手伝う」
えっと、大丈夫なのかな。って、しまった…!
「失礼。ワタシは、すごい」
何がすごいのか突っ込みたいが危険なのでやめた。素直に任せよう。もしかしたら今、彼女が着てる外出用?の服は自分で選んだのかもしれないし。
「それじゃ、よろしくね!私良く分からないから、いろいろ教えてくれると嬉しいな」
彼女は任せろと、親指をグッと立てる。そしてトコトコと店員さんの後をついていく。私も彼女を追って店の奥へと消えた。
残った店員と二人になり、クキョは他の人間に聞かれないよう小さな声で話し始めた。
「で、アイツの服、何かわかったか?」
「それが、製造方法などはそんなに変わらないのですが、人の手で作ったものとは思えないほど、精巧な仕事がされていまして…。私どもでもこれほどの仕事はなかなか」
店員は初めて見たといった感じで興奮を隠さない。鼻息を荒くし止めなければ語り続けるのではないかと思うほどだ。
(同じ反応をだな。アイツが履いてたもん見せた時と。職人ってやつはみんな同じなんだな)
「で、他には?」
「素材ですが似たようなものは使われているものの、一切魔力は帯びておりません」
「…やっぱりか」
「あの服をどこで?」
出来れば仕入れたいのだろう。だが、店員の質問にクキョは答えなかった。
「あの服はワタシが預かる。あと、このことは他言無用だ。分かるな?」
「は、はいぃ、それは十二分に」
「助かるよ」
ちょうど話を終えたところで二人が戻ってくる。店員は助かったとばかりにホッと胸をなでおろしていた。
「お待たせしました。クマさんホントすごいんですね」
フフン、とクマさんはかなり自慢げだ。可愛い。
そんなクマさんについ手が伸びてしまった。しまった、とは思ったが彼女はそれを受け入れてくれた。
「お、いつの間に仲良くなったんだ」
それを見たクキョさんも嬉しそうだった。
「帰ろ」
そう言って、クマさんは私の手を握ってきた。そして、もう片方の手でクキョさんの手を握り、三人で笑いながら店を出るのだった。
いろいろ試しているので、編集が統一されていません。
申し訳ない。