しまい
いろいろとアレな回なため、書き直す可能性があることをご留意いただき、地元愛溢れる?本作品をごらんください。
朝から魔書院に行かなければいけない。それだけではクマさんは納得しなかった。
それどころか、ここでの仕事ぶりを見るように言われた。
姉の職場見学ということですか?そんなに妹が出来て嬉しいんですか?
ふんすーふんすーとクマさんの鼻息が荒い。
張り切っているのか、ショトさんのところに行かせたくないのか、どっちか分からない。
「その、ですね――――」
「失礼します」
諦めてきちんと理由を説明しようと口を開いたら、ガラガラガラと勢いよく扉を開ける音と初めて聞く声が聞こえてきた。
「今日も早いのねー」
「……」
「おいすー」
反射的に父娘が左手を上げて返事をする。
お椅子?
シヨタさんが隠れないということは…?
「ス!」
「おいすー」
入ってきたのは二人の女性。父娘とは逆に右手を上げている。
姉妹なのだろうか、二人とも同じ若葉のような緑の髪をしている。
向こうで色彩検定を取っておけばよかったでしょうか…?
そう考えるほど、この世界では髪が色鮮やかなのは普通のこと。なので注目すべきは服の方。
見た目は王国のものと同じだが色が違う。
かなり薄いが青というのは薄暗いこの研究所内でも分かる。
ということは、この人たちがショトさんの言っていた――――
「初めて見る方ですね。帝国からわざわざ来ました。ネーアです」
帝国の――――
「ちょ?!…し、失礼したっス。妹のイーマっス」
賢魔、さん…?
イーマと名乗った子がネーアって子の頭を無理やり下げさせている。
強調して『わざわざ』と言っていたからでしょう。
(なるほど、そういう人ということですね)
本音が出てしまう方なのでしょうね。
お姉さんの方は落ち着いた感じの話し方で、妹さんは明るくて元気な方と言った印象でしょうか。
お姉さんが本音が出てしまう以外は良い人なのでしょう。クマさん親子の反応を見る限りでは。本音が出てしまう以外は。
名前については最早つっこむまい…。そういうもの、そういうもの…。
私より少し背の高い二人が、つむじが見えるほど頭を下げている。
お姉さん?のネーアさんはクママさんのように髪が短いようだ。
反対に妹さんのイーマさんは毛先が見えない。私よりも長いのだろうか。
「いてっ?!スっスっス?!」
その髪を引っ張って顔を上げさせたのはネーアさん。そのまま吊り上がった左の目尻に眼を寄せた。
「離しなさい。ついでに私たちが来た目的を話しなさい」
…え?今のって…?
私の周囲だけ空気が凍り付いた。
「いちちーっス…。えっと、スねー。帝国には無いんで、仕方なくここに来たっス」
「あなたも何を言っているのよ。妹だけに、まいっか」
どうしてでしょうか?ぴしぴしっと氷にひびが入る音が聞こえる。
「それで、そっちは誰っスか?黒い髪初めて見たっス!」
「黒髪なんて信じんよ。新人だけに」
急激に体温が下がっていくようだ。
ああ、なんだかねむくなってきたよ…。
「…ス?いや、ちょっと待てっス。あれは確かっス…」
「ここまで出かかってるのよね。これは伝説のカツドンをかってくる必要があるわね。デカだけに」
この世界では聞くことが無い向こうの単語だったが、ナタカの頭には全く入ってこない。
すでに意識が飛びかけているのか、凍死しかかっているのかは分からない。
「妹の、ナタカ。今日から、ここで、ワタシと、いる」
「えぇ?!」
いきなりの仕事斡旋で急速解凍された。
気が動転して手が怪しい動きを繰り返している。
「……変な子っスね。あたしの勘違いっスかね」
「ぽん!あ、4つ目だったわね。カン違いしたわ」
この子たちは…いや特に姉の方は危険だ!クマさん以上に!
積み上げてきた世界観が崩壊していく――――誰かがそう言っている!
あれ?私は一体何を…?
なんか記憶が一瞬飛んで…?
春を思わせる4つの目が、こちらを窺いながらひそひそと何やら話している。
どうしてでしょうか?私一人だけが変な子扱いをされている気がするのですが?
クマさん親子は今のを普通に受け入れているし…。
下を向いて暗く考え込んでしまう。
そんな私の服をくいくいっと引っ張るのは頼りになるクマおネーさん。
さすがおネーさん。妹の危機を救ってくれるのですね?
「ナタカ。役割。ツッコム」
どうして今更設定を思い出したのですか?彼女たちにも対抗意識がめらめらしているのですか?
今朝見た暖かな日差しは良い天気を予感させていた。
しかし始まってみれば悪い一日になりそうだった。
「それじゃー。早速やりましょー」
クママさんが部屋の端の方へ行く。
昨日は気付かなかったが、端は出張っている。この暗さと煉瓦模様で目の錯覚でも起こしていたのだろう。
クママさんは少しだけ出ている石を外すと、中から何やら取り出した。
「それは…?」
「マグになる前の鉱石よー。知り合いに頼んで実験用に欠片を貰っているのよー」
なるほど、爆発で失われてしまうのならその方がえこというやつですね。
資源は大事です。
そして彼女が用意したものがもう一つ。
「んな?!」
私のじゃーじと下着…。
「ス?珍しい服っスね。あとこの布切れなんスか?なかなかそそる感じっスね」
イーマさんが肌着を摘まみ上げてじっくり見ている。
シヨタさんまでもが。
「ちょ、ちょ、ちょ?!やめ、やめて下さ――――」
「それは今日の実験で使うから乱暴に扱っちゃだめよー。あと、ナタカちゃんのだからー」
順序がおかしくないですか?実験優先ですか?
この世界では服と肌着は一体型。分けてあるのは、かなり珍しいものらしい。
それ故にシヨタさんがじっと見ていたのは単なる興味。性的な興味ではないのです。
だからクママさんが怒ることが無かったんですね。
ちなみに服は背中部分が開くようになっているので、そこから着ます。今着ているのもそうですね。
お手洗いでは、下着の下の部分が開くようになっているので、自分で広げて――――
「って!何言わせるんですか!!」
「ス?!」
「急に怒鳴るなんて、無用な心配しちゃうわね、それも2回も。杞憂二度なるってね」
すごいですね。すぐに冷静さを取り戻せましたよ。
しかし興奮している方もいた。
初めて見せる仕草でそれが分かる。
「……」
「見事、な品。素晴らしい、職人の、技。あれほどの、ものは、見たことない」
なんでそうやって顔が赤くなること言うんですか?!
そんな分析いいですから!
シヨタさんは娘と同じようにふんすーと鼻息を荒くし、なまけもののようなゆったりとした動きではなく、まるで普通の人のように慌ただしく手を動かしていた。
これなら素直に説明して、さっさとショトさんのところに行った方が良かったかもしれない。
この場で始まる前から疲れているのは私だけだった。
「始めますよー。いいかなー?」
「いいともっス!」
「いいですとも。彼女が嫌らしいけど、魔力をその布切れに。いやらしいけど」
こっちをチラチラ見ながら言うのを止めてくれませんか?
もしかして反応してくれるのが私だけってことじゃないよね?
そうよ、あなただけよと肯定するようにネーアさんと目が合った。
それに加え、すごくいい顔をしている。
「……始めてください、今すぐに!」
クママさんは部屋の中央に無造作にじゃーじと下着を置く。
その上に鉱石を一つだけ乗せた。
「で、何するんスか?」
「それはナニよ、ナニ。地元のぷろれすらー。しょぉ~〇ゅーりきぃ~」
何故だろう。彼女の言葉が自然に入ってくる。
ああ、そうか。通過駅なんだ。ただ通り過ぎるだけ。
なあんだ、そっかあ。あははは。
他者から見れば、私の眼は光を宿していないだろう。
それはこの部屋のせいだ。
照明を隙間から入り込む光だけで補っているから。
つまり私の眼がそれを証明しているんですよ。あはははは。
「…そう、この服には既存のマグでは効果が無いの!つまり私たちは挑戦されているのよ!さすがネーアちゃんね!」
「それは簡単よ。臭いもの!匂う、匂うのよ!か〇うもこれにはア〇ックするしかないわ!キュ〇ュット言わせるまではね!」
この人は好き放題言ってくれますね。
汗にまみれた防具とかも気にせず着ていましたが、私も女の子なんですよ?
「――って、また?!」
「スス?匂うっスか?――ス!確かに何やら甘美な匂いが…」
「……」
イーマさんとシヨタさんが犬のように下着の匂いを嗅いでいる。
これにはさすがのクママさんも…。
「なるほどー。匂いを先に確かめるのは重要ねー。さすがイーマちゃん!」
止めないんですか?!
人の羞恥心を煽る新手のいじりとかですか?!
4人が私成分を含んだ同胞たちに鼻を向けていた。
ああ、まただ。
体が熱くなる。
止められない自分が出てきてしまう。
体が震えていた。
これは何?怒り?
それとも別の――――
「そこまでに、する」
みんなをまとめようと立ち上がったのはクマおネーさん。
その姿はまるで後光が射しているかのようだった。
「んー。なんか違うわねー」
「……」
「そっスね。それもありじゃないっスかね。しかしたまらんスねー」
「形がかわってるからよね。とらんすふぉーむ(変態)ってね」
しかし誰も聞いていない。
じゃーじを摘まんで食い入るように見たり、嗅ぎ比べてみたりと、検査に余念がない。
クマさんはため息をつきながら私と並んで、彼女らを同じ目で見つめる。
「いつも、こう。あの、二人の、ときは、特に」
「え?…ああ、いいんですよ。みなさん、私の悩みを解決しようとしてくれてるんだから」
口から勝手に出た言葉。そこにどれほどの思いが込められているのか。
力無く、今にも重力に負けそうな目蓋は普段のおネーさんにそっくりだ。
違う点は、眼がこの部屋の微かな明かりを集めようとしないことだろうか。
もみくちゃにされるあの子たちはここから無事に帰ってこれないかもしれない。
最後の別れを曇りしかない眼に焼き付けていた。
「でも、ここから、新しい、マグが、生まれる」
おネーさんは微かな希望を私に残してくれた。
彼女の言うことは信じたいと思いつつも、目の前で繰り広げられる光景が、素直に受け入れさせなかった。
考えたら問題発言されてる方は前からいらっしゃいますね?
なんだ、書き直す必要ないのか。




