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魔理  作者: 新戸kan
あなたとのひびと

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55/301

いっしょにいたいから

空白の後に後書きがあります。

そちらもお読みください。

 あの戦いから数か月後。



「久しぶりだね。君とこうやって話すのは。ハハッ」

 レイセさんと二人、城内をゆっくりと歩いていました。彼女より背の低い私に合わせてくれていたので。

 彼女は相変わらずのようです。でもここはそうではないようです。


 城内は初めて歩いた時と変わらず静かだ。しかし穏やかに流れる空気が心に安らぎを与えていた。戦争は終わったのだと実感する。

「…君は戻ってきて良かったのかい?もう帰れないかもしれないんだろう?」

「ここが私の居場所ですから。それにクキョさんとの約束もありますし」

「…そうか」

 レイセさんがそれ以上のことを聞いてくることはありませんでした。

 


「しかし、君も変わったねぇ?話し方なんてまるで別人だ」

「これが本当の私ですよ?」

「以前の君も今の君も、どっちが本当とかはないと思うよ?」

「そうですか…。そうですね!」

 二人顔を見合わせて笑う。レイセさんは雰囲気だけでしたが。

 ――本当に相変わらずのようです…。



「そういえば、ナディ様はまだ追いかけているんですか?」

「そうなんだ。困ってるんだよ。ハハッ」


 あの戦いの後、イェカはどこかへ行ってしまったらしい。彼もまた、自分の道を歩いているようです。

 その彼を探して、ナディ様はあちこち行ってるみたいです。つまり、今この国はトップが不在!

「…大丈夫なんですか?」

 そう聞かずにはいられませんでした。

「いやぁ、女王様はこうおっしゃられるんだよ」



「今この国にとって大事なことは(自主規制)なのじゃ。だから大丈夫じゃ、問題なしじゃ!」


 彼女がそう言っている姿が想像できてしまった。腰に手を当て胸を張り、何故か誇らしげな顔をして、高笑いをしている彼女の姿が。

 私は頭を抱えてしまいました。女王様だけならともかく下の者まで楽しそうな雰囲気を醸し出していて…。

 もうだめかもしれません、この国は。




「さて、私は失礼するよ」

 目的の部屋の扉の前で、レイセさんはそう言って背を向けました。

 私が一緒に、と言いましたが…。

「私は毎日会ってるからね。それに二人きりの方がいいだろう?」

 彼女はそう言って、例の半目うぃんくをして去っていきました。


 あの人だけは何も変わらないですね。

 クマさんはマホウを作るって今は研究施設に籠ってるのに。




「失礼します」

 そう言って部屋に入る。

 赤髪が風に揺られ、その顔がこっちを向いた。

「クキョさん。ただいま」

 返事は返ってこない。クキョさんの状態は改善していなかった。

 それはまるで、あの時から時が止まっているかのようだった。


(クキョさんも、まだ戦っているんですね…)


 ショトさんが魔書院に籠って、治療法を探していると聞いた。

 数か月経った今も変化がないことから、手掛かりすら見つかっていないのだろう。

 だけど彼女は諦めてはいない。最後に会った時に言っていた――――ワタシなりの戦い方をすると。

 クマさんもマホウで治すと言っていた。

 レイセさんもずっと面倒を見ている。

 みんなの戦いはまだ終わっていないのだ。



 私はクキョさんの傍の椅子に腰かけた。

 べっどの近くには色とりどりな花が活けてあった。それも同じ花が二つの花瓶に。

 きっとあの二人だろう。なんだかんだで仲が良いから。

 ふふっと笑みをこぼし、クキョさんへ向き直る。でも彼女の顔を見れず、目を伏せてしまう。

  

「…久しぶりに会ったらいろいろ話したいことがあったんですが…」

 言葉が続かなかった。何から話せば良いのか分からなかったから。


 しばしの間、静寂がこの場を包み込む。

 世界に二人だけ、そう思わせるような静けさの中、私は自身に問いかける。


 私はこの世界に戻ってきた。――――それは何のため?


 もちろん、それは――――


 クキョさんの顔を正面から見据え、彼女の目を見る。


「クキョさん、約束、覚えてますか?私はちゃんと覚えてたよ?」


 クキョさんの瞳に光は宿らない。

 だけど、顔はこちらを向き、その目線は私を捕まえていた。


「私の…、私の本当の名前は――――」



 窓際にも飾られている花が静かに揺れていた。誰かが開けたまま、そのままにしていたようだ。

 窓から涼しげな風が入り、その風が私に音を運んでくる。


「お、あ…え…、い……あ、あ、い。――――か」











ここまでが最初に書いたいちおの終わりとなります。

次回からは外伝?的なものをあげます。

その後は…ヒミツだ!

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