つみ
ドール救出作戦が始まった。帝国の進行を防ぐため、今頃は大規模な戦闘が行われているだろう。
そんな中、ナディは護衛を連れて先代女王である母の元を訪ねようとしていた。
女王は子に王位を譲り渡すと、その後は一般人として生活をする。これは初代女王からの王家の伝統である。
そのため、国民は親愛の情を持って接する。
「ナディ様、お相手見つかりました?」
「ナディ様!いつご結婚されるんですか?」
余計なお世話!と思いながらも印象を悪くしないよう笑顔で応える。親しみを持たれるのも良いことばかりではないのだ。
これは混乱を招かないよう帝国侵攻の報を国民に伝えていないことも裏目に出ていたのかもしれない。何も知らない人々は日常を満喫しているようだ。
ナディは後悔していた。最もそれを決めたのは彼女自身であるが…。
(早く終わらせなければ…!そして、イェカ様と(自主規制)…!でも、その前に…)
ナディの頭の中は卑猥な妄想で染まりかけていたが、完全に染まることはなかった。
やましいことが無ければ隠す必要はない、毎朝お付きの者に手入れさせている自慢のキラキラと光輝く髪。身内の人間を除けばこの王国でただ一人の金色の髪のナディはどこへ行っても目立つ。代わる代わる話しかけてくる人々に愛想を振りまきながら、一般家庭街にある母の家へと急ぐ。
その頭の一部には母への疑心と怒りがあった。
「むぅ…、アレはどこにいったのじゃ?」
ナディは物が散乱してる自身の私室で悪戦苦闘していた。汚部屋と呼ばれてもしょうがないほど散らかっていたからだ。
何故女王である彼女の私室がそれほど汚れているのかというと…。
『自分の部屋は自分で片付けろ!』
という、初代女王からの謎の掟が存在していたからだ。そのため、ナディも幼いころから両親に厳しく躾けられた。自身の手で娘を立派に育て上げること――これも掟の一つだ。
だが、王位を継承し、安心した両親が城を出てからは勝手気ままな生活が始まった。ナディが許可を出さなければ、彼女の私室には何人たりとも入れない。それを悪用し好き放題していたのだ。
その結果がこれだ。しかし、彼女は後悔しない。何故なら今後もこの部屋に誰も入れる気はないからだ。
そのためにムフフ部屋を作った。全てはイェカとの(自主規制)のために…。
「いたた」
妄想に励んでいたナディの頭に何か落ちてきた。それは奇しくも彼女が探していた書であった。
「こんなところにあったんじゃな。ずいぶん探したぞぃ」
落ちてきたのだから目の前に積んでいた書の中にあったわけだが…、そんなことはどうでもいい。見つかったことが大事なのだ。
ナディはさっそくその書に目を通し始めた。子供のころよく読んでいたのでパラパラと捲っていく。
「今更これを読んでどうしろというんじゃ?」
しばらく捲っていくと何も書かれていない頁にたどり着いた。子供のころから何も変わっていない頁。
しかし、彼女が手を触れた途端、髪と同じ金色の文字が浮かび上がっていった。
『この時が来てしまったのですね…』
この一文から始まり、徐々に白紙だった頁に字が埋まっていく。そして数頁にわたり、文字が羅列された。
ナディは顔を照らす輝きに導かれるように、それを読み始めた。
「………これは…?!」
「…どういうことですか?!お母様!」
ナディはその感情のままに机を叩く。彼女は母の前で自分を偽らず、問い詰めていた。
衛兵は席を外しておりこの場には二人だけ。包み隠さずすべてを話してほしいというナディの想いであった。
書には母の懺悔が記されてあった。その内容にナディは我が目を疑った。だから、直接母に尋ねに来たのだ。
ナディの鬼気迫る表情に圧され、彼女は少しずつ話し始めた。そして…。
「…そうです。彼は、貴女の――――」




