ふたりだけのひみつ
その日の夜、私の質問から話が始まった。
「魔法って無いんですか?」
二人は顔を見合わせていた。二人とも分かってないようだった。
「マホウってなんだよ?メイドの親戚か?」
何故そこでメイド?!クキョさんにとってメイドって何なの?!
そこで私は頑張って魔法について説明した。
「魔力を使って火の玉出してぶつけたり、風や氷で相手を切り刻んだり、とかかな?」
「無理。マグ、使っても、無理。使わなかったら、もっと、無理」
そっかー、無理かぁ。魔力と魔法って関係ないのかー。
私ががっかりしていると、クマさんは上を見上げ何かを考えているそぶりを見せる。
「でも、発想、面白い。帰ったら、ケンマと、研究、してみる」
もしかして、見られる日がくるのだろうか!なんか、ワクワクしてきた。
「オマエの話はホント分からんな。どっからそんな話が出てくるんだ?」
クキョさんは自分が理解できない話だと、途端に興味を失くす。今の話もつまらなそうに聞いていた。その姿は横になって出張ったお腹を掻き、煎餅を食べながらテレビを見ている胡獱こと50代専業主婦Aさんのソレだった。
それなのに、なぜメイドには食いついたんですか…。
んー…、それならば!
「クキョさんは必殺技とか無いんですか?」
これならどうよ?いけるんとちゃう?
「ヒッサ………って何だ?」
キター。食いついて キタ━(゜∀゜)━!
「ひっさつわざです。私のとこで、必ず殺す技って書くんです」
「…なんか、すげー物騒な感じだな?」
そんなこと言いながらも興味は津々してますねぇ。さっきと態度がまるで違う。
「ないなら、作りませんか?」
私の提案に、いかにも興味はねぇけどしょうがねぇなぁって顔して、大剣を用意するクキョさんなのであった。
クマさんに一緒にどうかと聞いたが、興味ないようで寝てしまった。
起こしちゃ悪いから場所を移すかと言われ、その場を離れる。道中マモノが出たら実験台にしてやるか、という悪い顔をしながら…。
星光が照らす開けた場所を見つけ、クキョさんは手にした大剣で地面をコンコンと叩いていた。
気分が乗って忘れていたが、夜間は危険なのだ。しかし彼女はさすがといったところで、魔物が隠れていないか確かめていたようだ。
「で、どうするんだ?」
豪快なクキョさんらしくなく、慎重に慎重を重ね調べた結果、とりあえずは安全だと判断したようだ。
そこまでしたのは私がいるからだろう。
好戦的で大雑把で単純で、無神経なところもあって――でもそこには彼女の優しさが込められていて……そんなクキョさんだからみんなも、私も――――
「どした?ヒッサツっての教えてくれんだろ?」
クキョさんは地面に突き刺した大剣に体を預け、くつろいでいるように見えながらも焦れていた。
「す、少しだけ、待ってくださいね…」
そうだなぁ…、と考え込む私。提案したもののノープランだった。
しかし、ある言葉が私に降ってきた!
『肉を切らせて骨を断つ』
何かクキョさんにぴったりな言葉じゃないですか?!
実際に肉を切らしちゃダメだから…、そこから考えて………。
クキョさんが毎晩話してくれたのを思い出しながら…。
「できました!」
クキョさんに技の概要を説明する。
大剣に魔力を集中させて、叩き切る。技としては単純だけど、これはかなりいいのでは?
「いつもやってんぞ?」
あっさりダメ出し食らった。
説明が悪かったのかもしれない。もう一回!
「えっと、全身の魔力を、全部ではなくて、限りなく多く大剣にまわしてですねえ…」
身振り手振りを交えて自分の考えを頑張って頑張って伝えた。
「なるほど?こういうことか?」
クキョさんは試しにやってみる。
私には魔力がないので良く分からないが、なんか雰囲気的にいい感じっぽい。
その日から私とクキョさんの特訓が始まった。
そして、明日はいよいよ王都帰還!な前日の夜。
「できたーーーーーーーーーーー!!」
クキョさんの目の前にある大きな岩は真っ二つに割れていた。それを見て、私は喜びを爆発させた。
「ふぅ」
一息つくクキョさん。やったぜ!って顔してる。
「見事に一刀両断ですね!」
「なんだ?そのイットー………って」
相変わらずわけわからない言葉は最初だけなクキョさん…。
一撃で真っ二つにする、ことかな。
なるほど、と岩を見て、クキョさんは納得する。
「では、必殺技の名前を決めましょう!」
なんで?って顔しましたね?
「必殺技を放つときは技名を叫ぶのが決まりなんです!」
鼻息を荒くしてクキョさんに迫る。
私の勢いに彼女は、わぁーた、わぁーったから!と困り顔だ。
そして二人して考え始める。
クキョさんのネーミングセンスだとすごいことになりそうなんだよね…。例えば…。
そう!ザワツサッヒ、とか…。
いや頭まで魔剣でできているかもしれない(クマさん談)彼女のことだから……ザヒとか、ヒザとか…。
余計なことを考えていたせいで、先に思いついたのはクキョさんだった。
人差し指を立て提案――ではなく、決定事項のようだ。
「さっきのアレでいこう」
アレって?
「イットー………何だっけ?」
一刀両断ですか?
「それだ、それ。イットーりょータン」
何故そこで、たん?!だん、です、だん!
「覚えた。大丈夫だ!」
本当かなぁ。
「……しかし、これはいざってときしか使えねぇな…」
クキョさんが何か言ったようだが、浮かれていた私には聞こえなかった…。
宿泊地に戻るとクマさんは静かに寝ていた。
相変わらず可愛い。prprしたい。
ハッ!いつの間にかショトさんの影響を受けてる…。出番無くても影響力があるのか…。
首をブンブンと横に振り、歪んだ妄想を振り切ろうとする。
そんな私を放置して、さぁアタシらも寝るか、とクキョさんは寝支度を整えていた。彼女に聞いてほしいことがあった私は、何とか妄想を振り切り、意を決して話し始めた。
「ありがとうございます、クキョさん」
いきなりの私からの感謝にクキョさんはきょとんとしていた。それに構わず私は話を続けた。
「クキョさんがどういうつもりでマモノと戦わせたのは分かりませんが…。」
彼女は黙って聞いている。
「…私は、ずっと負けちゃいけないって思ってたんです。だからクキョさんに負けたときはすごく悔しくて…。けどこの旅ではマモノにも負け続けて…。それも子供が勝てるような相手に」
私は呆れたようにハハハ、と笑う。
「なんだか、スッとしました。だから、ありがとうございます」
私の心からの感謝にクキョさんは照れているように見えた。そしてそれを隠すかのように頬を掻きながら…。
「なら、一つ約束しないか?」
約束?なんだろう?
「もし、記憶が戻ったら…、本当の名前を思い出したらアタシに一番に教えてくれ」
クキョさんと約束…。お礼の代わりということかな?
「アタシが名づけしたからな。それくらいいよな?」
私は、もちろん!と返すのだった。




