わけ
「ふぇえええええええええええん」
どうしてくれるんですかぁ、これ最後の一着だったんですよお!
私が持ってきていた中身のぎっしりと詰まった袋は、今や空気の抜けた風船のようだった。今着ている服も、もはや服とは言えない状態である。
私がぐずっていると、クキョさんが自分の荷物から何かを取り出した。
「ホラよ。オマエのだ」
手渡されたものを見てみると、それは私が着ていたジャージだった。
クキョさんが持ってたんですね。でも、何故?というのはどうでもよかった。
私は羞恥心からか急いで着替えた。それはもう光の速さで!
なんだろう…、この実家のような安心感は。
安心もつかの間、クキョさんは新たなマモノを見つけていた。またスライムだ。
「よし、次だ!ナタカ!」
貴女が鬼か!この鬼畜!ロクデナシ!
「大丈夫だ、アタシを信じろ!」
私の言うことを無視して、さっさとやれと言ってくる。
クマさんも一緒になって親指を突き立ててる。
もう、こうなりゃヤケです!やってやる、やってやるぞ!
勢いに任せ刀を振るが、やはり弾かれてしまう。分かっていたことだが、それでニ撃目を躊躇ってしまった。そしてそこに隙が生まれる。
私はまた服が溶かされると思っていた。目を閉じ、裸族になる覚悟をした。しかし、スライムはそんな私を無視してどこかへ行ってしまった。
「やったな!初勝利だ!」
クキョさんは嬉しそうに背中をバンバン叩いてくるが、私はぜんっぜん嬉しくなかった。というか、無視されてどこか行っただけなので勝ったことにならないのでは…。
「その服なら、問題、ないね」
クマさんは確かめるようにジャージを触ってきた。
この瞬間から私の外出着が決まってしまった。
私はこれから、ジャージ女として生きてゆきます…。
その日の夜。
クマさんは早々に寝てしまった。
私も心の傷を治すため、早く寝よう…。
―――寝ようとしたのだがクキョさんが私の髪を触ってきて、気になって眠れない。
「オマエ、髪長くして戦いにくくないか?」
言われればそうだ。でも、これまで気にしたことはなかった。
「アタシが切ってやろうか?アタシみたいに短くしてやるよ」
クキョさんが?とも思ったが、髪は自分でやってるそうなので、素直にお願いすることにした。
クマさんの髪も切ったことあるって言ってたし、大丈夫だよね…?
「オマエの髪きれいだな」
髪をほめられたのが嬉しくて、ちょっと照れる。でもこの感覚、前にもどこかで…?
何かが一瞬頭をよぎったが、残ることなく消えていった。
気持ちいい…。私も撫でられるの好きなのかな?クマさんの気持ちが分かる…。
寝るところだったせいか、ウトウトと眠気が襲ってきていた。だけどクキョさんが私の髪を掴み、刃物を当て切ろうとした瞬間。
「ぃやっ?!」
私は無意識に拒絶していた。
クキョさんは呆気に取られている。私も何故拒絶したのか分からなかった。
慌てて謝ろうとするが…。
「いや、オマエにはオマエの考えがあるんだろ?」
アタシが悪かったと、長いままの私の髪を撫でてきた。
「まだまだ先は長いから、アタシらもさっさと寝ようぜ?」
私は、なかなか寝付けなかった…。




