しゅっぱつのまえに
マグ…。また聞いたことない言葉が…。説明お願いします!
↓修正しました。(3/29 10:00)
マグ…。そういえば前にお店で…。説明お願いします!
出発の日の前日、孤児院を訪れ、しばらく来れないことを伝えた。
子供たちはさみしそうにしていたが、土産話をたくさん持って帰ると言うと、みんな笑顔で送り出してくれた。
ただ…。
「「「「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様っ!!!!!!」」」」」」
その送り出し方はやめてほしかった…。
孤児院の帰り、いつも通り彼を待っていたが、夕暮れまで彼が来ることはなかった…。
そして翌日。
自分の準備を済ませ(といっても服を着替えただけだけど)下の階へ降りると、クキョさんが部下さんを集めていた。
「いいか、アタシがいないからってさぼるんじゃねぇぞ。特にアレはしっかりやっとけよ!」
アレって何だろう?暗号とかかな…?
気になって聞いてみたが、ヒミツだと言われた。残念。
クキョさんが腰に手を当て再度喝を入れているのを見ていたら、あの部下さんと目が合い睨まれてしまう。
私はまだまだ許されないようです…。
まだまだ掛かりそうだったので先に外に出ると、見覚えのある少女が目に入った。
「クマさん!見送りに…」
言い終わるよりも先に彼女が口を開いた。
「違う。ワタシも、一緒」
彼女の服装がこの前外出した時と違っていたので、そちらに目を取られ後ろの方まで回らなかった。袋の口を縛った紐を両肩にかけている。袋の大きさは正面から見ても隠しきれないものだった。
あんなに小さいのに。って、またやっちゃった。
案の定彼女が睨んでいる。その圧は戦闘時のクキョさんに匹敵する。(当社比)
クマさんがいるときは気をつけなきゃ。でも、クマさんがいるってことはショトさんも?
キョロキョロと注意深く辺りを探る。だが彼女以外は見当たらなかった。
「オバサンは、いない。戦闘じゃ、役にたたない」
ということは、夜は安全ね!…私もひどいな。
「というか、もう、出番ない」
ちょ?!また何言っちゃってんのこの子。出番あるから!きっとまだあるから!
クマさんの顔がニヤニヤしててすごく悪い顔になっている。初めて見たかも…
――って、あれ?ちょっと引っかかった。クマさんは戦闘できるの?
「ワタシ、マグ」
マグ…。そういえば前にお店で…。説明お願いします!
「ん」
【マグ(魔具)】
小石程の大きさの魔鉱に、様々な効果を持たせたものを魔具といい、それを使い戦闘などで補助を行う者たち。魔具の効果を最大限に発揮できる能力を持っている。
袋などに詰めた複数の魔具の中から状況に合わせたものを指先の魔力だけで探り当て、それを取り出し使う。瞬時の判断が求められる戦闘において、いかに速く適切な魔具を取り出し使用できるかが彼女らの腕の見せ所である。
使用の際には地面に置き、自身の魔力を送ることでそれぞれの効果が発動する。直接触れて魔力を送る必要はないので投げて設置するのが一般的。
「指先だけでどれがどれか分かるんですか。ちょっと見せてもらっていいですか?」
「ん」
クマさんは動く度にじゃらじゃらと音を立てていた袋の中から無造作に何個か取り出す。それを手のひらに置いて、どれにしようか迷っているようだった。
お気に入りとかでもあるんだろうか?それとも希少なものを見せたい収集家的なもの?
彼女が決めるまで、その姿を微笑ましく見ていた。
それでいくつか見せてもらったが全部同じに見える。鉱石そのものの黒色で新たに塗り分けられているわけでもなく、手触りが違うとかそんなこともない。種類ごとに大きさは決まってるようだけど、それでも数種類程度。相当な鍛錬が必要では?
「慣れたら、すぐ」
この子天才なのでは?
私の意味深な視線に気づいたのか…、クマさん、ムッチャドヤ顔しとる…。
その後、クキョさんがなかなか出てこないので、他にも魔具に関する話を聞いていた。…いや、聞かされていた。
あー、いるよね。こういう人…。一生懸命話してる姿が可愛いから良いけど。
可愛いは正義!




