ばんぶつるてん
13時を3時と間違え、更に確認をせずに実行ボタンを押すせっかちはどこのどいつだい?
そう、私です。(にし〇かイレ〇ナさん感)
前回ミスったー!ぬぅおおおおおおお!
子供らの変化が分かる朝でした。
お姉ちゃんを起こすのは自分がと、全員が早く起きて逆に困らせていました。その時の彼女は姉というよりもこの世では珍しい子沢山の母親のようで、どこか私の母の姿を思い起こさせました。
――母が亡くなってから随分と経ちました。母を覚えている子はもういません。
でもそれでいいのです。母もそう言っていました。
昔は昔、今は今、母の教えの通りです。その通りなのですが……。
「許してください。いずれ知ってしまうと分かっていても、私の口からは言えないことを…」
胸を締め付けるには十分な量、ほんの少しの寂しさを含んだ元気な声が反響し返ってくる。
私は窓越しに走り去っていく背に謝罪し、ここでいいからねと言われても、見送るために外に出ていった子供達、その中で最も背の高く頼もしくもありながらもまだ小さな背中を見守っていた。
子供たちに起こされる朝というのも悪くないですね!揉みくちゃにされなければ。
人気の少ない街中を走っていると、向こうでの生活を思い出します。その風景と重なっている様にすら見えます。
屋台の狼煙は煙突から漏れる朝食の準備、朝早くから手伝う子供は新聞配達の少年でしょうか。鶏の代わりにコ・ネコの声……は聞こえてきませんね。それに肌に刺さる冷たい――
(?!誰かに見られてる?!)
身を強張らせ周囲を探るも近場からは何も感じない。
クマさんから聞いた話だが敵意や殺気も自然と魔力に乗ったりするらしい。負の感情を纏った彼らを思い出せば理解は容易でした。
全てではなく漏れ出ると言えば良いか、すぐ側であれば私にも分かるが、距離が離れる程察知は難しくなる。
その筈なのだが、街行く人のものではなく別方向、見れば薄暗さが残る物陰が妙に不気味さを放っている。
喉を鳴らして一歩踏み出した時、何かが頭を掠めた。
(これは以前にも…それも最近?………いえ)
私はよく夢を見る方だ。内容を覚えているかは半々、直前まで覚えていても現実で活動を始めると忘れてしまうこともしばしば。思い出さないことがほとんどで、そんな訳で半々。
この嫌な感情を感じた視線は夢の中で?
現実と夢の狭間でどちらが幻か分からないほど混じる、重なる、得も言われぬ曖昧さ。
何となく覚えているのは同じ様な、おかっぱに似た頭をしたさくらが目に飛び込んできて、その目で爽やかな朝を迎えることができた。
(そうです、さくら!私にはやらなければならないことが山ほど。時間を無駄にしているわけには!)
消えているものを態々、それも危険かもしれないのに追う必要があるのか。懸念が消えるまで視線は動かさなかったが変化はない。私は身を翻し城へと急いだ。
「今日も変わりなし、こんなにも変化を望んだことはあったかな…?」
お世話終わりに漏らした息は大きな溜息へと変わる。
あの頃を思い出せば愚痴の様にクキョさんに話しかけていた。それは魔鉱の巨人にまで至った。
「……………」
戦いの話、それも新種の魔物であれば何かしらの反応を期待していたのだが、クキョさんの瞳は真っ白な天井を映すだけで、口も呼吸をするだけ。中身の無い意識しか感じなかった。
私は皺になってしまった敷き布を撫でるように伸ばした。
焦っては駄目です。無理はいけません、功を仕損じるというやつです。
それに私は、慣れていますからね。
「…慣れている、か。何にでしょうね?……うん、私は私に出来ることを」
空き時間に体力増強、精神の鍛え直しと、持ち込んだ刀で素振りをすることにしたのだった。
素振りを止めたのは扉の音に気付いてからだった。服を引っ張ると肌が漸く解放され、送り込まれた空気で熱が冷める。熱中していた余りクキョさんの様子見を忘れていたことを猛省した。
この後も人と会うことにしているので着替えないとと考えているとレイセさんが入ってくる。彼女は汗だくの私を見るなり、いつもの無表情を向けた。自由にしていいとは言ってくれたがこの状況は想定していなかったのだろう。
(そうですね、あなたの雰囲気の仰る通りです。何をしているのでしょう)
二人の間に流れる空気が心地良い汗を肌寒く感じさせる。どうせならそのまま気になることは済ませてしまおうと、私は話を切り出した。
「レイセさん。聞きたいことがいくつかありまして」
またも妙な沈黙に包まれる。その原因は私だけではなかった。
質問をした時、というよりもその言葉を出した瞬間、本当に僅かの変化だった。とてもいいものとは思えない雰囲気を纏ったレイセさんにそれ以上言葉が続かなかった。聞いてはならないと直感した。
しかしそれでは別の不安が生まれてしまう。どうしても知りたい、別の切り口を悩ませた結果の無言の間だった。
「…すまないね。それについてはよく知らないんだ。私よりも適任がいるだろう?彼女に聞いてくれ」
いつもの部下に押し付けには見えなかった。
確かにショトさんに聞くのが道理だろうが、態々嘘を吐く必要があるのだろうか?
(しかも口にはしなかった。指示詞や代名詞が飛び交う世ではありますが、余りにも明け透けな…)
それならばとより一層決心が高まる。あの子には幸せになる権利があるのだから。
「…どこで聞いたんだい?やたら滅多に聞く名ではないんだけど?」
「それは……………言えません。ごめんなさい」
「困ったね、一応隊長なんだけど?」
「その隊長さんが言ったそうですよ?部下の面倒とか、要望がどうのこうのとか」
「…これは一つやられてしまったね。ハハッ」
話題を変えたい思いもあった。場がやや和んだのを機に別の質問をすることにした。
リィダさんの様子について、それとエニーという兵士さんについてだ。
残念ながらエニーさんについてはレイセさんも知らないようだが、リィダさんに関する話から浮かんだ仮定が私達の結論となった。
「ところで、彼女のことなんですが……」
そう言われてもレイセさんは首を傾げるほかない。彼女のことかなとクキョさんの方を見る始末。魔力の無い私が唐突に代名詞を出しても伝わらない。そう考えると、私の読み能力も中々では?
「赤橙色をした髪の方です。ええっと…」
他の特徴をと考えていると、レイセさんはそれだけで該当者が思い浮かんだようで、ああと合点する。そして顎に手を当て聊か考え込んだ後、答え合わせするように聞いてきた。
「彼女は君に名乗らなかったのかい?」
私は目を落とし頷くが、レイセさんは愉快そうで、どこか面倒臭そうな雰囲気も出してきた。
「君も彼女に気に入られちゃったんだねぇ。お互い大変だね」
いやむしろ逆でしょう?つっこみ待ちですか?
「……も?お互い?彼女も部下、ですよね?」
「ああ。彼女の母親の方にだよ。面倒事の一つさ」
後を継ぐのが基本の世界であるからして、兵士さんでしょうか。レイセさんのことだから仕事しろと口五月蝿い上司辺り?
と、他にも聞きたいことがあると、横道に逸れていたのを正道に戻すべく。
「彼女にクキョさんの大剣を託したのは何故です?」
少しでも仲良くなれたらとリィダさん達との会話に聞き耳立てていたのが良かった。どうして彼女が持っていたのか、だけは解決していた。自分でも思う、中々に抜け目が無いと。
「んー、それは彼女に聞けば良いんじゃないかな?」
「え、それって……?」
「ほらほら、君にも他の仕事があるんじゃないのかな?時間と魔力は無駄にしてはいけないのだよ?」
「いや、あの、私の話聞いてくれないから……聞いてくださいぃぃいい?!」
バタンと扉が閉じられ、廊下にはポツンと私一人。
強引に背中を押されて追い出された。
溜まっていく鬱憤その他諸々、私も纏めて追い出したかったので。
「もう!」
城中の者が聞いていたのではないか、部下の絶叫を聞きながらレイセは一人耽る。視線の先には物言わぬナタカの剣と部下がいる。
「相変わらずだね、私も。……マレン、か。今代は忙しくなりそうですよ、ナディ様。……おや?」
私は適度に仕事する方が凄いんだけどね、と愚痴めいたものを纏めて漏らしふと目を向けると敷き布に皺ができている。無意識に掴んでしまったんだろうかと手で伸ばしていると、コツッと骨と骨が当たる感触が伝わった。
2020大変な年となってしまいました。
お体にお気をつけて、良いお年を。
来年もマイペースで上げていきます。




