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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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124/307

ゆめ やりたいこと

マウスの調子が悪くてストレスフル!

買って1年くらいなんですけどね…。


『ガッコウ……?』

『あっそうか…うーん……幼魔院みたいなとこかな。勉強をするとこだよ』


 艶やかな黒髪を前に垂らす、彼女の考え込む姿さえ自分の目を止めた。


『ベンキョウ……』

『それでね、沢山のお友達を作ってお話したり遊んだりして……楽しいの!』

『オトモダチ……』


 上の空にも見える、理解の足りない自分の反応を気にせず話を続ける彼女は本当に楽しそうだった。


 回を重ねる毎に新たな発見、自分が変化していることにも気付く。顔が今ままでしたことのない動きをしていることに、彼女よりは多少控えめだろうが。


 自分は知らなかった。この胸を満たすものを。

 いや――みんなも同じだったからオトモダチとやらはいなかったけど、あそこにいた時ももらっていたんだ。

 だけど自分は拒絶した。

 この力が知られてしまえば自分が自分では無くなってしまう。明日を奪われしまう、子供ながらにそう決めつけていた。

 今なら、彼女と出会えた今ならそんなことはしないって言えるのに。


 子供だからでは許されないけど、自分はあそこから逃げ出したんだ。


 あの人はずっと自分を探してくれていたと後に知った。亡くなった後に……。

 自分を嫌悪した。名前を知らなかったことにも。そしてまた逃げるように、あの人の娘に自己満足を続けた。

 子供らの為ではない、ずっと囁いている声を肯定し、また嫌悪に陥る、その輪から抜け出せなかった。



『子供たちがね、少しずつだけどお話を聞いてくれるようになったの!』


 たったそれだけで自分は救われた気がした。

 目頭が熱くなって知らない感情が溢れてきそうだった。

 前髪で隠れていて、いやそもそも話に夢中の彼女は気付かないだろうが、自分は目元が少し濡れているのには気付いていた。


 

 初めてやりたいことができた。

 彼女のために、それともう一つ。それを叶えるために今自分は旅をしている。


 そしてまた――――嫌悪が生まれる……。



 自分は他の人たちと違い一日二食、腹の減り具合からお昼はまだのようだが、どうやら随分と寝ていたようで漸く目を覚ます。

 出発の支度を整えて、夢と気持ちを胸の奥底深くに放り込む。


『私ね、大事な夢があったんだけど、それも忘れちゃってね』

『夢?寝た時に見る?』

『ああ、そっかぁ。通じないかぁ。夢っていうのはね……』


 …放り込んだはずなのにな。

 どうしても止められなかった。


「ナタカに………会いたいな」








「まじこ……ちゃぁ、ん……がんば、ぇえ…」

「ほら、ナタカ、起きる」

「まじこちゃん……後ろ、後ろですぅ……んぁ?」


 ぼんやりと目を開けると魔法少女と同じ髪色の後頭部が……。


「ほんもののまじこちゃんだぁ。可愛い……ぎゅー」


 言葉にも出してぎゅーと力を込めて抱く。

 しかし何かがおかしい。人形みたい。確か真剣子ちゃんは中学生でありながら私よりも背が高かったはずなのに……。


「あたっ?!」


 おでこにぺしっと衝撃が走る。それで意識が覚醒した。


「起きた?」

「はい、起きました。ところで真剣子ちゃんはどこでしょうか?」

「もう、一回、かな」

「ああー!ああーー!起きました!お目目ぱっちりです!はい!」


 痛そうな拳頭が見える。おかげで今度こそ意識がはっきりとしました。

 額を両手で塞いでいると、クマさんが覗き込んでくる。


「……いい夢、見た?」

「?夢ですか?」

「だらしない、顔、してた。よだれも」

「え?!」


 こんな事しても分かるわけないのに両手で化粧水を塗り込むように顔の形を確かめる。

 塗ったことはありませんけどね!

 

 口元を触ってみたところで、ふふっと慎み深さを滲ませながらもクマさんは意地悪く笑った。


「じょーだん、のじょーだん。…いい顔、してる」

「どっちなんですか?!もう!………久々に真剣子ちゃんを見た気がします。クマさんのあの恰好を見たからでしょうか?」


 最後に見たのはいつだったか思い出せないくらい…。


「見たかったら、いつでも、ヘンシン、する」

「………ぎゅー、は?」

「程度に、よる。……ん?覚えてた?」


 再び降り上がる拳。あの魔物よりも強そうなんですが……?

 咄嗟に腕で防御しようとすると。


「あの、代理。隊長への報告なのですが……」


 恐る恐るといった感じで聞こえたのだが、リィダさんの表情は真剣なものだ。


「ん?ちゃんと、みんな、のこと、言うよ?」

「いえ、そうではなくて……私が行っても?」


 その提案に何故かクマさんが私を見た。よく分からずに頷く。


「任せた」

「は、……はい!行ってまいります!」


 立てた親指、右手一つで一喜一憂させる女、その名をクマ。

 その喜ばせようは凄まじく、リィダさんの背中があっという間に見えなくなった。


「…頭、打って、おかしく、なった?」


 遠くから聞こえてきた奇声にクマさんは訝しんだ。



「残った、人で、あれを、運ぶ」


 クマさんが見ているのは別の荷台に乗せ換えられた鉱石の山。

 さすがに街中でコ・ネコに頼るわけにはいかないようだ。


 露骨に目を逸らしたのは四人。

 そんな彼女らに手を振ってめいど少女が立ち去ろうとしていた。


「どこいくん?!」

「そうこれも任務」

「逃げるのはいけないと思いますー」

「左右に同意せざるる」

 

 同時に放たれる息の合った言幕を、少女は巧みに掻い潜り反撃を行う。


「元々アタシは行く予定じゃなかった。ということは、だ。今日の食事の準備はアタシだろ?昼も夜も作らないといけないからな。そんくらいオマエらだけで十分だろ?」


 時間に敏感なところがあったために、体内時計は早々に馴染んでしまったようだ。

 今はまだお昼には早い頃、予定では昼遅くの帰都だった。

 疲れやら朝食抜きで帰ってきたので四人のお腹が同時に鳴る。ぐうの音を聞いて彼女は背を向けた。


「あ、あの!ありがとうございます。その……いろいろと…」


 彼女は呼び止めた私をじっと見ている。そうして再び背を向けた。

 また無視されるのかと彼女の足元が視界に入るが、中々動き出さない。

 目線だけ上げると、クキョさんの大剣が重そうに傾げていた。


「…オマエにオマエのやりたいことがあるように、アタシは自分のやりたいことをやった。それだけだ」


 そう言い残して去って行った。


「……ありがとうございます」


「いえいえー」

無問題むもんだい

「そのまま左に同じぃ」

「それではん」


 私のお礼を横耳にしながら抜き足差し足で彼女の後を追おうとする四人がいた。



「ほら、さっさと、運ぶ。そこまでが、任務、お仕事」


 クマさんに叱られながら荷台を引く四人を傍目に空を眺める。

 答えは書いてないけど、自分には回答がある。


「私の………やりたいことは…!」

命日が近づいてまいりました……。

嘘だって言ってよ!?

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