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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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123/306

かえりみち

 行きとは違い、静かだけど生命の営みを感じる帰り道。

 何かに使えるかもと改良したという魔具に身を任せ互いに肩を預け合うリィダさん達を眺めていた。衣装を変える等、情景と一致させれば本当に修学旅行のようだ。

 しかし思い起こすほどに目は冷めていき、疲れているはずなのに私だけが眠れずにいた。


 昨夜が嘘みたいないつも通りの青い空を眇めて仰ぐ。

 眠気を我慢しての行動だったのかもしれない。

 私が望む答えは不変の空には書かれていないのだから。



 首を切り離され自壊とでも言うのか分解した魔物は他のものと違い、その体が消滅することは無かった。

 クマさんが調べた結果、通常の魔鉱と同程度の魔力しかなく、その巨体を維持することは不可能、彼女の見立てでは、自由自在に見えた変形もある程度制限があるとのことで、めいど服の少女によって切断された滑らかな鏡面は、関節としての役割は果たせないだろうと言っていた。

 しかしそれはあくまで現場の判断で、正体不明の物質を王都に持ち込むわけにはいかないと、欠片すらあの場に置いたままにしている。

 レイセさんを通じて上に報告し、後日調査隊が組まれるだろうとクマさんは放置を決めた。


 レイセさんは王都から出られない、あの子が出任せを言ったとは思えない。

 となれば、レイセさん抜きで調査隊が組まれることになる。

 私の心配を知ってかクマさんはたいちょうだけが強いわけじゃないと言った。

 確かに心配していないわけじゃない。けど今の私を掴まえて離さないのは別のことだった。


 だから私は眠れない。目を閉じてしまえばあの子が、意識を保っていなければ彼女が夢にも出てきそうだったから。


 でも私に頭を預ける姉はそんなことは知らない。

 疎ましいというわけではない。言葉でなければ伝わらない、そんなことは知っているから私が悪いのではあるが。


 クマさんには聞こえているのだろうか、私の心音が。心の揺れが。

 私には彼女の体温が心地いい。

 私の心音は心地いいものに聞こえているだろうか。


 すやすやと眠っているから何を考えているのか余計に分からない。

 ただ、いい夢を見ていてくれたらいいなと私は思う。


(クマさんはやはり強かったんですよ。私なんかとは違って…)


 ああやっぱり疲れているなと私もクマさんの頭に頬を預ける。

 こうなってしまうと最早抵抗は難しい。重い目蓋を何度も何度も持ち上げる羽目になる。

 タマちゃんの足は軽やかで早送りで景色が流れる、それすら眠気を増幅させる要因となる。

 うとうとと限界を迎えそうになった時、静かに願った。


 この世界に神は………ショトさんのお話に確か出てきましたね。

 世界の違う人間ですがどうか……。



 どうか、悪い夢を見ませんように――――





 小さな女の子がいる。

 肩にかからない、所謂おかっぱ頭で見た目、五、六歳といったところだろうか。

 前髪の影で目の辺りがよく見えないが、下の表情はその年頃の子のものではなく、妙に大人びたというべきか、仏頂面というのが正しいのだろうか。言ってしまえば生気を感じない人形のよう。

 相応の袴に身を通し、黄土色の、おそらく地面の上に草履で立っている。周囲は白く霞んでいて分かるのはそれくらいだろうか。

 少女は少し長めの木刀を手に素振りを行っていた。

 何時からそうしているのだろう、足元には点々と疲れが色濃く残っていた。


 そこからは離れているのだろうか、威勢の良い甲高く立体的な音声が響く。

 だがそれは少女が発するものとは違い、魂を感じない、その子等の意思を感じないものだった。


 少女は真一文字に口を結び、ただひたすらに木刀を振り続けていた。


 私はそれをすぐ側で見ていた。手を伸ばすが届くことは無かった。



 照明が少女にだけ当てられた以外は真っ暗で、別れの声の後、静かな時を迎える。

 地面にも朱が混じる頃、そんな暗闇から突如軽やかな音楽が聞こえてくる。

 耳を閉ざさずにいると心がワクワクする、それは少女も同じ様で、木刀を投げ出し暗闇の中に消えていった。


 残された木刀の柄にも点々と努力の跡が残っている。

 何をするでもなくただ佇み、ずっと見下ろしていた私の耳に声が届く。


『まじこちゃん、がんばれー!』


 底が紅天を仰ぐ、雑に脱ぎ捨てられた草履の先に、疲れを忘れ前のめりに魔法少女を一生懸命元気に応援する少女がいた。

 劣勢の展開に胸に不安を抱き、それでも諦めない魔法少女に憧れを抱く。

 キラキラと輝く瞳を持ったどこにでもいる女の子、年相応の――――


 

 そう、幼い頃の私です…。



 小さな背が上下に揺れ、視界一杯に広がっていく。


「真剣子ちゃん、頑張れ!」


 私は私と一緒に、画面から今にも飛び出してきそうな魔法少女を応援していた。

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