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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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118/305

そこびえするよる

自らの願望を叶えられないことを謝罪します。

ぬわああああああん二日に一回上げたかったんだもおおおおおん

そんな訳でということではありませんが


久々の真剣子あります。


「なななななんですかかかかか、ああああれはははは!?だだだ駄目ですよ!?たたたタマ、ままままだここここをははは離れては…!?」


 恐怖で荒れ狂うコ・ネコ――アプテにはそう見え宥めているつもりだが、現状慌てふためいているのは揺れる大地よりも震えた声の彼女だけであった。 


 そんな主の情けない姿を見てしまったせいか、タマも形を変えていく魔物を遠目にどうしていいものかと悩み、まずは子を落ち着かせるためにざらざらした舌を這わす。


「おおおお落ち着いててて!?だだ大丈夫ぶぶぶ、だだだだ大丈夫だからららららら!?」


 お前が落ち着けとコ・ネコの心は彼女には伝わらなかった。





 人が足を伸ばして座ったように前面に移動する足部、と腰部。

 骨があるようには見えない、元より有機物に囚われない、魔力で繋がっていることからも関節の概念が無いということでしょうか。


 顕現した接続面は破目が濃淡を作り出していた。



「剣で駄目なら、胴体ですか……矢張りあなたは…」


 機械人形が変形したみたいですね、本当に大きな玩具です。


 人型であるが故に腕だと思っていましたが前肢だったとは…意味は同じですが、どちらにせよ比較にならない質量でしょう。


 問題はどう落としてくるのか。

 腕を曲げる?一旦持ち上げる?何にせよ…。


「それだけの体重を維持し、動かすには相当の力が必要ですよね?」


 言葉を発せないこの魔物が答えるわけもなく、代わりにと突き返された正解は肩部関節の切り離し、体が断頭台の刃のように落ちてくる。

 先に襲い掛かる空気圧、吹き飛ばすためのものではなく、その場に押し留める、押さえつけるもの。

 つまり本命は体による圧殺。


 迫りくる影を見上げながら私の頭にはかつての映像が流れていた。


 あれは確か祭典の……体操競技、吊り輪の技の格好に似ていますね。

 

「………お馬鹿さん」


 直後、その場を中心として爆風が発生した。



 圧縮された空気が突如弾け、直近の木々が風に靡く雑草のように薙ぎ払われ将棋倒しの如く寄り掛かる。

 水紋のように襲い掛かる風や他重に耐え切れなかった木々は連鎖反応的に倒れていった。



 支え合い、言い換えれば助けてと縋り付いているみたいに重なる木々の音、それに衝撃が連なって伝わり、庇うようにワタシはフコに抱きついていた。


「コホッ…ナタカは……?」


 今も濛々と土埃が舞い上がり戦況を確認できない。

 天高く聳える支柱に動きはない。


 鼓動が早い。呼吸もだ。

 大丈夫、大丈夫だって言い聞かせても治まらない。

 約束した、今も掴んでいるこれを返してもらいに来るんだって、約束した。


「ワタシは……ワタシに、出来ることを…!」


 取り出したマグを通して戦場を観察る。そうまだ戦いは終わってない。

 手を包む大きな光…に紛れて別の、小さな光があった。

 多分ナタカが持っている剣に反応しているのだと思うが、動きが無い。

 けど音は運ばれてくる。

 聞いたことのある……いやそんな曖昧じゃない、はっきり聞いたことがあると言える。

 

 実際に聞くことが無ければ良かったと思う、耳を塞ぎたくなる戦響おと……兵士になったばかりの頃、演習でよく聞いた…。


 魔物の肉を切り裂くものでも、金属同士のぶつかり合いでもない、けどそれに近いこの戦場に響く音。

 でも軽い、澄んでいるとも?それに何かを試すように、それでも効果は望めず、けれど諦めない。



 土の暗幕が下がる。

 ため息とともに現れた姿を見てクマは安堵した。



「斬鉄の極み……至らない私では断つことは出来ませんか」


 あにさまが見せてくれたことがある。

 鉄で鉄を断つ、音を立てず刃が欠けることもなく、豆腐を包丁で切ったような切り口。

 それが本当に人の手で可能なのかと、実際目にしても信じられなかった。


「魔力を帯びた刀なら、とも思いましたが、扱えない未熟者では、ということでしょう」


 太刀風で纏わりつく砂塵を振り払い、四つ肢の一つからゆっくりと勇み出る。

 驚愕でもしているのだろうか、魔物はピクリとも動かない。


「おやおや、どうしました?おねんねですか?私が立っていることが不思議ですか?…これを立てておいてそれはないでしょう?」


 試し斬りした腕を柄尻で叩く。

 中心にあった二本の柱は未だ健在であった。


「安全地帯を無くすために自ら安全地帯を作ってどうするのです?阿呆ですか?」


 種の有無に拘わらず奇術なんてものでは無い。明かすとすれば柱が私を守ってくれていた、ただそれだけ。


「空気圧で私をその場に留めようとしたところは及第点ですが、それだと自らの体も抵抗を受け遅くしてしまう。私が避ける、そう考え空気を早々に開放した結果、私は容易に姿を隠すことが出来た…」


 結果として周囲の被害は大きかったようですが。


「動かないのですか?私に魔力があれば達磨落としのようにこの腕切り落としていきますよ?」


 今度は強めに腕を叩く。

 返ってくる感触が有言不可だと教えてくれる。




「ナタカ!今のうち!みんな連れて離れる!」


 ハッと我に返ったような声の方を向けば、クマさんが部下さんに肩を貸し立たせている。

 彼女は確か…フコでしたか。

 それに対し私は目を細めて返す。


 

「何を言っているんです?まだこれからですよ?クキョさんならこの状況で逃げますか?」


 クマは首をふるふると横に振り、つっかえていた言葉を無理やり押し出す。


「何……言ってるの?ナタカ……どうしちゃったの?」


 ナタカは言葉では返さず、笑みで返すだけ、早々に目を魔物に向け直した。



「せっかく自由に動く関節を持ってこの程度…。曲芸師の方がもっと面白いことしますよ?」


 観衆もそれを楽しみに騒がしてますよと囁きかける。

 そこでやっと大地が震動する、動きを見せるようだ。


 まずは腕だか肢だか、それをそのままくっつけたように見える。

 ということは、肩と拳がその役割を入れ替えた。本当に関節は自由自在のようだ。


 そのまま滑らかな動きで腰部に沿って上半身が上に這い上がり、次は足部の上にと、段階的に関節部を移動させ、体を起き上がらせる。


「本当に変形しているみたいですね。子供たちが喜びそうです」


 最後に万歳したままの腕をだらりと下ろして起き上がりが終了した模様。

 子供向け番組を見ているかのように微笑ましく変形完了まで見ていた。

 


 先程までと違う点は肩の位置が低い、人でいう脇下…いえ腰辺りでしょうか。接地していた拳部分とつなぎ合わせたのですからそうなるのでしょうが。

 おまけに肩部と入れ替えたせいか、拳が前よりも拳らしくなったと言いますか、鎚のように見えるとも言いますか。


「より攻撃的になった、ということですね」


 肩部の位置が下がったことにより、対地有効範囲が増大したようですが、動きが変わらないことには…。

 

 魔物の拳が直接私目掛け飛んでくる。


「なるほど、剣を捨て格闘に変えたということですね」


 初めて見る動きなれど、速度はそこまで上がったわけではない。

 ましてや劇的に間合いが広まったわけでもないのだ。寸でとまでもいかず、私の体を捕らえるには至らない。

 だが…上半身と腰部を左右逆に動かすことによって、連続した正拳突きを放ち、徐々に速度も上がっていく。


「突きの機関銃……しかしそれでは砲台ですね」


 どうもその場から動けないようですね。

 間合いから離れればただの牽制にしかなりません。


 しかしそれだとただの時間稼ぎにしか……そういうことですか、多少の知恵はあるようですね。


 私は前へと進む、ただし今度は弧を描きながら。

 魔物も迎撃するかのように、私に照準を合わせ、軸を回転ずらす。


 少しずつ間合いも詰めるも無理はせず、魔物を中心として円を描くように仕向ける。


「…これはもう開いた口が塞がらないというやつですね。自分がどうなっているのかも分からないですか?」


 魔物は上半身と腰部を互い違いに捻ることで左右の連打を可能としていた。


 足部は固定された上に、捻りに新たに弧を描く動きが加わればどうなるのか。

 力の逃げる先は?

 万全な状態であるならまだしも、体力まりょくを消耗した状態でやればどうなるのか。

 いやそこまで考えるに至らなかったのか。


「答えは自らの体で知りなさい」


 制御しきれなくなった魔物の上半身が離れ落ちる。

 またも盛大な閉幕音を上げ万歳した格好で天を見上げていた。



 魔力量を変化させることが出来る人間はイェカだけだ。

 魔物もそれが出来るという話は聞いたことが無い。


 最大量は変わらない……けどそれを最大限に生かすことは?


 力を発揮するには体力がいるように、魔力にも何らかの力がいる。

 常に万全の状態を維持できるわけではないのだ。


 初めて戦った時、息切れしたのが相当悔しかったのか、クキョさんとはこういった話もしましたからね。


「あなたにとって今の動きはそれほど消耗が大きいものではなかったのかもしれない」


 だから時間を稼いでその何かを回復させようとした。 


「でも…そうやって体を戻すにも魔力が必要でしょう?」


 多少遠隔操作も可能なのか、一度腕を切り離し、元の肩部を移動させ再接続をし起き上がる。


「今度は拳でも飛ばしてくるのですか?本当に機械人形みたいですね。ふふっ」


 今何を考えているのかは知りませんが、ボケっと突っ立っている魔物に笑みを送る。

 感情は分からない、けどその赤光が形を変えていた。

 弧ではなく直線、意味は違うでしょうが、最初に遭遇した時と同じものだった。


「振出しに戻ってしまいましたね。次はどうやって私を楽しませてくれるのですか?」


 魔物は手を合わせるように腕先を合わせ振り上げる。

 それを見て心底がっかりしたような息を吐く。


「一本で駄目なら二本……万策尽きたってことですか?」


 一足す一がニにはならなかった。

 精々五割増した程度、こちらからは為す術もないというのに、それでも腕を振り下ろす。

 お互いに時間を稼ぎたいと以心伝心しませんでしたか。


 弱々しくさえ感じる鳴動、飛んでくる石つぶても打者の手元で落下する球のように元気が無いですね。

 そして腕を伸ばしたまま蹲るように動かなくなる魔物、まるで土下座しながら休憩しているようです。




「ナタカ!?」

「あのバカ!何考えてやがる!?」



 この時私は支配されていたのでしょう。

 何も考えず、一歩を踏み出し駆けていました。



 私は魔物の肩の上で高笑いをしていたのです。


「近所の神社…心臓破りの百階段に比べたら大したことのない、何とも平坦なうでですね」


 そう、私が駆けていたのは魔物の腕の上でした。

「君にも普段の生活があるだろうから姿を偽るんだ。その、綺麗な黒髪も、ね」

そうして私は自らも偽り、彼の為に世界を正す。

これまでを捨て、これから先を彼と共に、魔法の言葉を胸に、薙刀を杖に変えて。

「地に闇満つる時、天は光を持ちて、其を照らす。その力我と共に!」


収穫祭でもないのに仮装して暴れまくっている変質者がいると通報があった。

「盗聴した結果、まず間違いなく兄……奴の配下の仕業だろう。すぐにぶひぃ!?」

「やはり貴方の方が悪だわ。ここで介錯して差し上げます!さあ!さあさあさあ!」

「わ、我よりも戦うべき相手がいるだろう!?間違いなくあの娘もうっぼ!?」

悪魔死男あく ましおは地に平伏し許しを請う。

「こんな事をしている場合ではありませんでした。彼女を止めなければ!」

真剣子が魔法の言葉を呟く。

かたなとこしえを、(想い)を久遠に。――――、抜刀!」


次回~二回戦 刀VS魔法~

あくまですお言うなし!見ればいいし!泣いてもないし!

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