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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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ゆれるだいち

今更とある作品を読み始めました。

そのせいで筆が進みませんでした。(責任転嫁)

おいおい、面白過ぎかよ…。

 その存在に最初に気付いたのはタマだった。

 一仕事を終えた彼女は鉱山入り口を塞ぐように完全に横になって仮眠していた。

 良い夢でも見ているのだろうか、寝言のように口が動くが、それとは別に耳がぴくと反応する。

 夜行性の生物が日常生活を送っている、子猫こどもであればそちらに反応しただろう。

 しかし彼女は子に親離れを促すほどに成猫おとななのだ。

 遊び心はとっくに捨てていたのだ。

 であるなら、彼女が反応する音は空腹を満たしてくれる存在か客人、もしくは――――



 頭をがばと起こし、視線を周囲に送る。

 消えぬ不快に体を起こすと、全身に緊張まで伝わり皮膚を震わせ連動して毛が天を目指す。


 初めての感覚にタマは目を見開く。その眼球は水面に落ちた羽虫のように揺れていた。





 長かった議論はようやく終わりを迎え、静かな眠りが訪れていた。

 記憶を取り戻してから初めての夜間外泊、安心して眠れていたのは姉が手を繋いでくれていたのもあるが、今も激しくもありながら優しくもあるお星さまあってのことだ。


 だが、彼女はふとを目を開けた。



 荷台に乗っていた時の心地よい揺れとは違う、別の揺れを感じる。

 人によっては他人よりも敏感に感知できるという大地の震動。

 動物もそうなのか、聞き慣れた唸り声が聞こえてくればどんなに疲れていても目は覚めるというもの。


「…あ、リィダさん…?」

「あなたも目が覚めましたか。…どうも、異常事態のようです」


 実際に何度も起こされたことがありますからね。その情熱は好ましいですが、時と場合…常夜灯でも怖い私のことも考えてくれませんか?

 心細くも少しは頼りにしていたそれとは違い、影ができる程に明るい中、体を起こす。


 リィダさんは異常事態とは言ったが、誰かを思い出すほどに冷静な顔立ちをしている。

 が、すでに彼女は剣を握っていた。


 その手を思わず脱力させるのは幸せそうな声。


「ふ、ふへへへ。どう、おばさん?跪いて、泣けば、許してあげる。これ、ナタカには、ヒミツ、なんだよね?」


 一体どんな夢を…私をねたに脅すのはどうかと思いますよ?

 正直のところ、気持ち悪い顔になってます。


「……私は彼女らを起こします。代理をお願いします」


 逃げましたね?そんなところまで真似ないで…それどころではありませんね。



「シャァアアアアアアアアア!!」


 ズシンズシンと振動と連動した音が大きくなるにつれ、タマちゃんの警告音にも力が入る。

 であれば、私の摩る手にも当然力が入る。


「クマさん!起きてください!ショトさんを脅迫している場合じゃありませんよ!」




 クマさんの手を引いて坑道内を走る。

 揺れと音はさらに大きくなり、その影響からかぱらぱらと小石が落ちてくる。


「あた?!」

「目が覚めて丁度いいですね!……クマさん、隊長代理としての見せ場かもしれませんよ!」


「…しかし、気になりますね。地鳴りは続いているのに鳴き止んでいる…」




 再び外へ出ると、みんな一斉に辺りを見回す。


「代理!コ・ネコがいません!」

「タマちゃん!タマちゃぁぁあああん!」


 鍛えた肺活量で力の限り呼んでも反応が無い。

 あの巨体が隠れられるほど木々が拡散しているわけではない。

 私が考えられることは二つ、そのうちの一つは消えてしまったかもしれない……どちらにせよ、足を失ったということには変わりない。


「クマさん、どうしますか!?一度中に…」

「いえ、崩れる可能性もあります。そうなると閉じ込められてしまいます。今の状況だとそれは…」


 リィダさんが言葉を止め、一瞬こちらを見た。

 それはつまり、私に関係するこ…、これは何の音?

 体が浮き上がってしまいそうなほど揺れが大きく、それとは異なる震動が音になって伝わる。

 それは軋む音であったり、耐え切れず二つに割れてしまう音であったり。


「めき?めり…?それに何か倒れてる…?」

「あれを…!……木が倒れて……」


 同じ方向から聞こえ、その先を指で差したリィダさんが声を上げる。

 見れば、私達が通ってきた方角だった。


 人の背丈以上の幹を持つ木となればその根は相当なもの。

 それらが永遠の別れを告げるように悲鳴を上げていた。

 


 何かが近づいてきている。

 小柄なクマさんが体勢維持にあがき……もはや浮いてしまうほど。

 ここら一帯を支配していた逃げ惑う生物たちの阿鼻叫喚を掻き消す、地響きそのものが迫ってくるような感覚さえ覚える。


 兵士である彼女らでさえ時折体をふらつかせながら、それでも目を向けた先にそれは確認できた。


「なんだあれは…?影が……動いているのか?」


 燦燦と降り注ぐ星光を浴びても猶、それは黒々としていた。

 だから彼女は影と表現したが、影が光を弾くだろうか?


 いや問題はそこじゃない、少しでも落ち着きを取り戻せば分かる。

 人は遠くの存在の全長を測ろうとすれば何を目安にするのか。

 少数意見であれば申し訳ないが、手っ取り早いのはすぐ側にあるものを比較対象とすることではないだろうか。

 巨木であれば近くで見上げている人からその長大さが目に分かる。

 であれば、その巨木と肩を並べる存在は如何ほどのものか?

 障害にもならないと易々と倒しながら迫ってくる存在とは?


 その世界のことはその世界の人間に聞け、ではあるが、私も含めて口は開いているものの沈黙を保ち、それはほんのちょっとの鎮静の結果というわけではなく、むしろ書き換えられ、驚愕が答えになる。


 震えはそれが齎す震動か恐れか、顔と思われる部位に自然と顔が向き、動かぬ体がいつの間にか見上げていた。


「…巨人……?!」


 とは言ったが、人と同様に頭胴手足で構成され二足歩行していれば、そう見えるだけで、同じように、


「止まった…?……いえ、こちらを見ている?」


 点が3つ集まった図形は顔に見える現象があると聞いた。

 今それを実感している。

 私達が見つめている部位には3つの赤い点……いや点というには横に鋭く縦に細いとあればそうは言わないのではないだろうか。

 兎に角、その赤目が下方向へ移動して口と思わしき部分が上に行き入れ替わりを果たし、そして動きが止まった。


 しかしリィダさんは剣を構え、他四名も剣を取る、その勢いで紐を切った。


「赤光…!マモノです、代理!」


 彼女はそう言って魔具を取り出す。魔物と言った存在の魔力量を調べるためだ。


「……ない。ワタシは――――ない……」

「クマさん…?どうしまし――――」


 私はその存在を確かめるために前に出た。

 だがクマさんは立ち止まってしまっていた。

 だから彼女の手を離してしまっていた。

 それにか細過ぎる声は感情までは届けてくれなかった。

 何かを落とした音までも。


 直接確かめようと振り向こうとしたが、リィダさんの声で阻まれた。


「…光らない?!魔力が感知できない…と?……いや、明るすぎるのか?!」


 彼女は天を見上げるが、応えは目を細めさせるほどに輝くだけだった。


「…代理!こいつは危険です!………代理?」


 先程から無言に徹するクマさんを不審に思い、一斉に振り返る。

 そこには体を震わせるだけのただの少女がいた…。



 動きを止めてからそれまで微動だにしなかった魔物が動きを見せた。

 赤い光が形を変える、ニコッとした目のような口、ニヤッと笑ったように弧を描く二つの目、それは合図だったのかもしれない。

 腕…というには余りにも長い、そのまま地面を撫でれそうなほどのそれをゆったりとした動きで持ち上げていく。


 人と同じ関節であれば不可能な、一つ一つの部位が独立して曲線を描くようにしなやかに空へと向かう。

 不快を感じる程ではない、金属が擦れるような音に気付いたリィダさんはそちらに目を向けると、慌てながらも指示を飛ばす。


 天を目指したはずの腕が後ろに撓っていた。


「皆、散開!動きは遅い!回避後、各個攻撃開始だ!」


 彼女が声を上げた時にはその腕は大地に向け振り下ろされようとしていた。

 

 その巨体のためか速度はそれほどでもなく彼女らは皆散らばり、落下点には誰もいない。

 それでも衝撃の大きさは予想できる故に重心を後ろに置き、備える。すぐさま反撃に映るために。


 だが、誰も予想だにしないことが起こる。

 胴体と比べると剛腕とは言い難い腕が、風を切り裂くどころか味方につけたのだ。

 その風圧が彼女らを襲う。


「なッ?!…ぁぁああぁああああ?!」


 クマさんを庇うように抱き着いていた私はその惨状を目の当たりにする。

 台風によって使えなくなった傘のように彼女らは無残に飛ばされ大地に木に叩きつけられ、唯一耐えていたリィダさんも遅れて飛んできた衝撃に耐えられずその身が宙に舞った。


「………っ」


 呼吸のためか体は動いている。

 しかし衝突の瞬間まで握られていた剣を再び手に取ることは無かった。

巨人戦開始。

このエピの中で時系列がごちゃごちゃしてしまうかもしれませんが許してください。

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