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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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111/303

そくこう

「ナタカ、着いた。起きる」

「ん、ぅん……?」


 頬をぺちぺち叩かれ目を覚ます。

 気分は凄く良い。

 体を起こすとリィダさんたちは既に下車し縁の外側に金具で固定されていた鶴嘴やらを取り外していた。


「あ、私も何か手伝います」


 と言っても、残るのは刀と彼女らの剣のみ。

 他にないかと、今の部隊の隊長であるクマさんに目を向ける。


 しかし彼女は体を震わすばかりで下を向いて何やら耐えている。


 ははーんと原因がすぐ分かるのはお国柄というものでしょうか。

 悪い顔再び、彼女と同じ様に両膝を着いて近づき腕が手が指が勝手に伸びていく。


「~~~?!」


 さすがクマさん、声を上げないのは大したものです。

 部下さんがいる手前、変な声を出すわけにはいきませんからね。


 目尻に涙を貯め、抗議するかのように睨んでくるが、それが楽しくて堪らない。

 

 恩を仇で返すとはこのことで、私のさり気無い身体検査が止まらない。


「ここですか?ここが良いのですか?ほれほれ」

「~~?!やめ…?!」


 もう一人の姉の顔が浮かぶのは気持ちが分かってしまったから、でしょうか。

 なかなか頑張りますね?

 そうまで我慢されると逆に鳴かせたくなりますよ?



「それなら…」


 ゴンと額が荷台とこんにちは。

 おでこと頭部から白い煙が出ているような気がする。

 ついでではないですけど、痛いですごめんなさい。


「ふーふー」


 息の荒いクマさんが拳を震わせ、部下さん達は引いていたそうだ。






「ナタカは、そういうとこ、ある!」

「仰る通りでございます…」


 姿勢は違うものの頭に浮かぶはクキョさんが絞られていた場面。

 これがもう少し早く流れていたら止めようはあったんですがと心で言い訳し態度で謝罪する。


「度々、申し訳なく思います」


 クマさんをまっすぐ見つめて、そのまま後ろに下がって、両膝を地に着けて、両手でハの字を作って、そのまま地に着けたら、おでこは地面のすれすれ――超えてはならない一線を越えてしまった私は髪が汚れようがお構いなし伝統技能でお詫び申し上げる。

 

 汚れると困る恰好ですが致し方無し。

 度重なる不祥事に私はただただ頭を下げるのみ。

 背後から、それも遠巻きに部下さん達のこれはどうしたらいいのかと当惑の視線と計画に対する疑問すらビシバシ感じる。

 前門のクマさん、後門の冷視線…心が冷えっ冷えになりますね。


「わ、私達は先行します。ほら、お前たち。中に巣食っているマモノを殲滅するぞ、油断するなよ!…二人はごゆっくり…」


 リィダさん好い人…。

 自分でも調べてみると昨日彼女は言っていた。

 レイセさんとは別の方向性で頼りになります。

 でもどこか中間管理職のようにも見えますね…。


 防具の腰部に巻いた紐で輪を作り鍔を引っ掛け剣を携帯する。

 五人は鍔をカチャカチャ鳴らしながらぞろぞろと暗闇の中へ消えていった。




 彼女らを見届けたクマさんは私に聞こえるように息を吐く。

 冷静に考えれば彼女にとっては初めての指揮になるのではないだろうか?

 そう考えると、地面に額をごりごり擦り付けても足りない気がしてきた。


「ほっ――んとうにごめんなさい!クマさんは私の頭をずっと乗せてくれていたのに…!」

「…もう、いいから。おでこ、汚れる」

「いえ!何度も何度も何度も何度も!調子に乗って…ごめんなさい!」

「……ナタカが、甘えたい、のは、よく、分かった。でも、これ、終わってから、にする。だから、早く、立つ」

「あの…それはちょっと、違うのですが?」


「みんなを、追いかける、前に…」


 私の言葉は届かず、クマさんは何やら困り果てているタマちゃんに向き直る。


 私も合わせてそちらを向くと、クマさんがタマちゃんにすり寄って甘えている子猫に近付く。

 その気配を察したタマちゃんが子の首の後ろを優しく噛み、子猫は前脚を伸ばして伏せる。

 それでもクマさんの手は届かず頭まで下げた子猫の、私と同じ黒毛の頭部を優しく撫でていた。


「良い子は、褒める。誰かとは、違う」


 何も言えませぬ。

 私は立ち上がり、外出時…ここぞという時だけ着ろと言われていたじゃーじの土を掃う。

 


「ありがとうね」


 目を細める次代のタマちゃん(仮)に手を這わせ感謝する。

 巨体故に人の髪より一本一本が太く赤ちゃんとは違った毛並み…これはこれでもふもふ。


 猫って季節の変わり目、抜け毛がすごいですよね…。

 何かに使ってるのかな…?それとも季節が無いから抜けないとか?


 タン…タン…。

 

 その音だけで体がビクッと反応する。

 何とかの犬……なんでしたっけ?


「あ、あはははは。私達も行きましょうか…?」



 

 子猫を見送った後、改めて鉱山の入口へと体を向ける。

 想像してたものとは違い、切り立った壁に穴がぽっかり空いているだけ、坑木…地盤の支持材が見られない。

 鉱山というよりも自然にできた洞穴のようだけど…?


「…?自分たちで、掘るの?」


 クマさんの反応から察するとこの世界ではそれで正解のようだ。

 だけど採掘による落盤の危険とか無いんだろうか?


 自然と絶壁を追っていく。

 視線が頂まで至ると、何か違和感を感じた。


 タン…タン…。


 高さはそれほどもないことから周囲同様木でも生えているのかと思ったら雑草ばかり。


 タンタンタン。


 いやよく見たら雑草じゃなくて葉っぱ?上の方でも倒れたのかな?


 タンタンタンタンダンダンダンダンダァン。

 

 音が変わってようやく我に返りました。

 この悪い癖は早急に治さねばなりません。

 …自分を抑える精神修養に励んでいたはずですがどうしたというのでしょう?


「クマさん!こ、こ、怖いので手を繋いで…」


 もちろん暗いからという意味です、他意はございません。


「……」


 目が!目が怖いです!


 プイっと顔を背け、中は絶対真っ暗だよねと口を開けている鉱山入り口に足を進めるクマさん。


 慌てて追いかけようとしたが愛くるしい視線を感じ振り返れば、背を丸めて私たちを見送るタマちゃん。

 柔軟性に富んだ鞍が付いたままだが、人が乗っていないことは分かるようだ。なんて賢い。

 思わずほっこり……何か忘れてますね?


「ああ!?クマさん、置いていかないでくださいぃぃぃ!?私が悪かったですから、一人にしないでぇえぇぇぇえぇえええ!?」


 騒々しい客を見送った後、タマは欠伸をし顔を洗い始めた。

 別世界では寝て過ごす時間の方が多いと彼女は知らず、客が戻ってくるまで仮眠に入るのだった。




「く、クマさん?魔灯は使わないんですか?…まだ怒ってますか?」


 入ってすぐに追いつけた。

 クマさんが待ってくれていたのだが明かりを手にしていない。

 リィダさん達も松明やらの照明を持っていなかった。


「もう少し、したら、分かる」


 そう言ってどんどん進んでいくクマさんのすぐ背後をついていく。

 歩を進めるにつれ後ろからの明かりが弱くなっていくのを感じ目を閉じたい衝動に駆られる。

 暗い…黒い?クマさんの足音を頼りにして視覚は閉ざしてしまっていた。


 時々石を蹴飛ばしたような感覚、響く音にびくびくしながらそれでも進んでいるとドンとぶつかる。

 だけど恐怖が足まで伝わっていたからかそれほどでもない衝撃。


「く、クマさんですか?!クマさんですよね?!」


 返事が返ってこない。

 魔物の可能性が無くはないが目を開けるのを拒む。


「いいから、目、開ける」


 痺れを切らしたクマさんがぺちと頬を叩いた。

 私のせいかもしれませんが最近暴力的ではないでしょうか?


 闇から明へ慣れない目を慣らすようにゆっくりと瞼を上げる。

 僅かに開いただけで感じる不思議な明かりに残りは重量挙げの如く一気に持ち上げた。


「…これ、なんですか?周りが星の無い夜空のように輝いていますが…?」

「ここでだけ、見られる、光を、放つ、岩。これを、調べる、人が、いた、らしい」

「……すごく、綺麗ですね。神秘的とも、言いましょうか…」


 水族館の深海魚展示場のような…私でも落ち着ける明暗に詠嘆する。


「それで魔灯が必要ないんですね。……この欠片とか代わりに使えないんですか?」

「下を、見る」

「下、ですか…?」


 夜空を反転、空が輝き星が黒ずんでいる。

 しかしよく見れば、その星は不揃いで歪な形をしている。

 拾い上げてみると、そこらの石と変わらない…というかそのもの?


「塊、だから、光る。小さいと、ダメ。持ち運べない」

「……そういうとこも含めて調べてたのでしょうか?」

「きれい、だから、みんなにも、見せたかった、のかも」


 反駁する人は相当のひねくれものだろう。

 クマさんも初めて見るという自然の天像儀に魅入っていた。

投稿日現在、絶賛放送中のアニメより引用。

宣伝ではないですぞ。

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