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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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105/303

れ ではなく へ

何故か後書きを追加。

真剣子ちゃんではありませんぬ。 

「クマさん、この街並みはずっと変わらないんですか?」

「ん…?」

 

 最近、いえ昨日の子離れ事件からですね。


 この、他の人が聞いたら聞こえなったから聞き直したのね、ともとれる返し。


 ですがそうではないのです。

 私には分かるようになりましたクマさんのことが!

 いつもよりも低音で発せられた『ん』繋がった手からもやや力が抜けたこの感じ…間違いない。


 どうしよう、妹が何言ってるか分からない。このままでは威厳やらが危ない。姉としてこれはまずい。ここは冷静になってもう一度聞いてみよう、です!


「それは、違う」


 外れだったみたいです。

 んー、声とか力の感じでは間違ってなかったと思うのですが。

 あと、心読まないでください照れてしまいます。


 そもそもの話、質問が悪いのでは?

 何が聞きたいのか分からない感じがします。

 これだと私がいない間に新しいお店できましたか?かもしれない。


 今向かっている施設は初めて行く場所の為、クマさんに案内してもらっている。

 兵士さんの方が円滑に事が運ぶとシジカさんも言っていたので、ふんす形態のおネーさんにお願いしたのだ。

 よって私は思考に偏る。


 というのもこの街、世界が違うというよりもお国が違うと勘違いするのも仕方のないほど、他国の街並みを再現した○○村感が出ているのです。

 黒瓦屋根が多かった近所では珍しい色鮮やかな建物も、通学路とは違う足音を鳴らす石畳で舗装された道も、そこを歩く人々のふりふりも……とこれは最近の流行りでしたね。

 記憶にはあるのは真剣子ちゃんとは別の少女漫画、他国の歴史に触れるものでしたが、それが残っていたからこそかつての私はそのような心象を抱いたのでしょうね。

 で、それが何故にという話ですね。


「多分、ここに、きたときから、変わらない」


 増やすことはあっても作り替えることは無い、だそうです。

 お仕置き街はその名残でしょうか。

 魔力で管理されているからこそ火事もなく、話の限りでは震災も無いのでしょうね。


 これ以上のことは聞いても出てこなさそうなので、どうして子供のころの唯一の娯楽と重なってしまうのか、疑問を深く考えることは無く奥底へと沈んでいった。


 …いや別の想いが消したのだ。

 それを静かに音に乗せる。


「…クママさんが無事で良かったですね」

「……ん」


 何気ないやり取りではあったと思うが、その声とやや痛みを覚えた左手に違和感を覚えた。

 だがそれもクマさんの鼻息で吹き飛ばされた。


「こっち。急が、ないと、借り、られない」






 未だ私服じゃーじの消臭魔具は創造には至らないため、白さが今日も眩しい恰好で二人並んで歩けば目立つものの注目には至らない。

 道行く先々で同じ服装の女性がお店の人と立ち話をしているからだ。

 そこで私の先を歩こうと頑張って歩幅を広げているクマさんに、もう少し気を緩めませんかと苦笑しながら話しかけた。


「クマさんもあの仕事してたんですか?」

「ん…?あれは、新人が、やる。マグは、少ないから、しない」

 

 自ら説明役を称するのに相変わらず言葉が足りない。

 シジカさんみたいに余計なことはいりませんが、せめてもう少し欲しいですね。

 自称説明役さんが言うには魔具は人材的に不足なので他の方が優先的にこの仕事に回されるのですね。


 労働の対価は労働、信用信頼で成立といえど悪いことを考える人は世界が違っても変わらないのか、兵士さんがその調査をする。

 兵士一人につき三十人、一日一人で月一回。

 月三十日固定はその為でもあるのだとか。


 ……自称なんて言ったのは謝りますから骨が悲鳴を上げそうなほど力を込めるのは止めていただけないでしょうか?痛いです。


 二人立ち止まってその様子を見れば、他にも色々と考えてしまうようで。

 兵士さんとお店の若い男性は、何やらいい雰囲気、こちらの視線も何のその、二人だけの世界を展開する。


「クマさん、仕事中ですけど良いんですか?あれ」


 こそっと耳打ち。

 邪魔をする気はないけれどそれで怒られてしまっては可愛そうだ。


「ん、あの子たちは、見回りが、仕事。それ、やってれば、話、問題、ない」

「なるほど、なるほど。こういう出会いもあるんですね」


 二人の顔を見ればどういう関係かは分かる。

 頭を掻く、口に手を当てると仕草は違っても隠したい感情は同じ。

 波動を感じますね。

 おかげで私もちょっと熱い(ごちそうさま)ですね。


「ん。楽しいは、いい。兵士が、街に、溶け込んでいる、証」

「それもそうですけど、それだけは無いでしょう?」


 ああ、意を決して男性が手を取りましたよ。

 進展ですか、未来さきへと進むのですか。新婚旅行は帝国ですか。子供は10人、新設部隊作りますですか。


 工房並みに熱を貯め、口と口が重なる寸前で次回へ続く、とされたように胸が早鐘を打つ。

 見届けたい、けれど無情にも手が引っ張られる。


「早く、行く。まだ、遠い」

「ああ、そんな……もう少し…あーーれぇーーーー」

 

 クマさんはまだ興味のないお年頃なのかなと考えつつ、次回予告に期待し二人の物語を凝視し続けた。

 

 今日も今日とて街ゆく人々の感情を音で表現する石畳、空を引き裂く客争奪戦の平和な咆哮、歓天喜地とはこのことか。

 そこへ投げつけられた古風で悲痛な叫びは図らずも注目を集めることとなった。

 




 王都には出入り口とされるものが二か所ある。

 今日も帝都との繋がりが多くの人を生み出す正門、そしてもう一つがクキョさんが言っていた乗りモンの家だそうです。


 何故に家と思っていたら、まさにその通りでした。


「犬……小屋…?」


 近所に犬を飼っていた方が多くいたので見間違いようがありません。

 三角の屋根に直線と半円を組み合わせた玄関、ですが…。


「大きすぎませんか?!」


 今までの大きさ順位は以下の通りです。

 クキョさん邸>その他の名家>お店>一般家庭の順になります。

 それが一躍先頭に躍り出たのが目の前にある犬小屋……いや。


「見たことのある簡素化された標章……間違いなくあれは」


 楕円にピンと立った三角の耳、左右合わせて6本の髭、差別化のために犬であれば耳は垂らすはず。


「ねこ……小屋ですか…?」


 表札の代わりに取り付けられた標章から今にもにゃあと聞こえてきそうだ。

 見続けていれば首を痛めそうなほどであるが、街並み以上に見慣れた標章から目を離すことが出来ず、いやどうしてと疑問が口を開けたまま私をその場に固定する。


「…ナタカ?どうしたの?怖くないよ?」


 お化け屋敷の外観を見ただけで躊躇している様にでも見えたのだろうか、姉はこういう時に限って妹の心知らず、くいくいと腕を引き、反応が無いと分かれば強引に引こうとする。

 鍛えられた体といえど意思が伴わねば脆いもので、前へと上体が傾き強制的に視線を下ろす。


「ちょ、ちょっと、クマさ……え?――きゃ?!」


 一瞬だけだが視界の隅に映ったものに気を取られ転びそうになるも手は繋がったまま。

 そうはならないでしょうと叫びたくなる気持ちをそっちのけにして天地は逆転し、目に入るのはいつもと同じ青。

 服を汚してならないと地面から30度の体勢を維持したまま、姉に手を引かれて玄関横の受付へと向かう。

 手と脚、空と天井、状況は違えど私が倒れた時と変わらない姉の力強さは、感謝と同時に今後起こるかもしれないもう一人の姉との面倒事(とうそう)を予感させる。


 いやもう第一次闘争は起こりましたけどね?

過去に実際にあった告白例。

「オレのキモチを毎日食ってくれないか?それと…専用のマケンをオレのために作ってくれ!」

これで二人は結ばれた模様。

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