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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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101/303

こうぼう

4つまとめてドーンだYO!

…時間に余裕のある時にどうぞ。

 話は工房を訪れた日まで戻る。


 別に書き忘れたわけではないですよ?

 話が長すぎてどう書こうか迷っていただけです。



 一旦外に出た私はただぼうと待つのも勿体無いので久しく瞑想に耽る。


 職人さんは今仕事の最中。

 世界を持っている彼女らの中に許可なく入るのは死の誕生を招くだけです。

 それに加え、この中で待つというのは水無しであにさまの稽古を受けるようなものです。

 面打ち五百、胴打ち五百、小手打ち五百、それから更に木剣で素振り千…。


 

 終わってからも熱が冷めるまで入るなと強く言われました。

 魔具なら兎も角、常人では話が終わるより先に倒れるのがおちと。

 その後も何か付け加えていたような気がしますが、魔力のない私では猶更ということですね。


 その中で長い時は丸一日以上籠る日も珍しくないという彼女の声掛けを待った。



「入っていいよぉ」


 その声に私は驚き目を開ける。

 長い時は半刻瞑想をすることもあるが、全身の感覚から始めて間もないと体は教える。

 剣を扱う以上、鍛冶場は何度も見学したことがある。

 それに朝からずっと籠っていたとは思えない喉越しの声は、世界の違いとは分かっていても驚愕させるには十分なものだった。



「失礼します…」


 身構え警戒しつつ中へと入る。


 先程までの熱波はどこへやら、6畳ほどの部屋は外気と変わりなく、半分近く占拠する炉はその力を失っている。

 いやむしろひんやりとする空気には覚えが…そうだクマさんの実験で使用した冷蔵の魔具、なるほどそういうことでしたか。

 その心地よさから目線を上げると、壁には剣、槍、他にも様々な武器群が室内装飾品のように飾られ、その名を冠した強者がこの世にいるのだと教えてくれる。


 それらを作ったのが…。


『気を付けてねー。彼女はこうげき――――』


 紫を薄めたようなと言えば良いのか…確か淡紅藤うすべにふじ?色の、ちょこんと小さく纏めた髪から襟足を覗かせ、やや下に向ければうなじには汗の跡すらなく、視線に気づき隠すように振り向いた――――


「えっと、初めましてだねぇ!何の用……あ、いや、こういう時は挨拶だっけ?籠ってるから人との付き合い方分からなくてねぇ!ごめんねぇ、お詫びに今度一緒にメシに行こう、そうしよう!」


 座っていても分かる背の低さ、姉ほどではないが、クキョさんの大剣を本当に彼女一人で作ったのかは疑問に思ってしまう体格。

 彼女ほどではないにしろ、筋肉自慢を想像していた私は二つの意味で面食らう。


「あ、あの…?」

「ああ、そうだったねぇ!名前だったねぇ。……うん?アンタの髪…マコウと同じだねぇ。初めて見たよ!あ、別に悪い意味じゃなくてね!ああ、こう、何か湧いてくるって言うかね!」


 あればと仮定の話ではありますが、お酒が入ると止まらない人のようにその口は動き続けているが、見た目の年齢的には飲める年ではない。

 兎も角、私と変わらない……あ、いえ、私も見た目より上に見られることがありましたね。

 声も金切声?犬がきゃんきゃん吠える感じ?ご近所の子供たち?

 今も工房内放送のように鳴り続けている。


「名前!名前だったねぇ!いい加減にしなさいとおかんにも言われてるんだったよ!いやね?アタイのこと変人っていうヤツが多いからね?アタイもそれでいっかなんてね?仕舞いには自分の名前忘れんじゃないのかなって」


 私もお姉ちゃんにいい加減にしなさいとまた言われそうなほど、どうにも勘違いをしていたようだ。

 一度引き締めた気を緩めてからもう一度引き締める。

 こういう人はどの学級にもいた。


「そう!名前!親が付けてくれた名前!好い名前だよ!変人以外でもいろんな呼ばれ方をするけどねぇ!シジカ!シジっておかんは呼んだりするよ!」


 ここまで引っ張って言う時はあっさりと、序にこの世界で始めてあだ名を聞いた。


 彼女が攻撃の――――ではなく、口撃のシジカ。

 それがクママさんから聞いていた彼女の二つ名……ん、二つ以上あるみたいだから通り名、異名かな?


「思い出した!アンタだねぇ!あの武器の持ち主は!いやぁ会いたかったよ!是非とも話を聞きたくてねぇ!あともっかい見せてほしいんだよねぇ。ついでにバラしてみたいし」


 用件を言おうと口を開こうとすれば、間髪入れず彼女の口撃が飛んでくる。

 矢継ぎ早どころではなく、自動装填即ち機関銃……クママさんが言う注意とは時間を取られないように、ということでしょうか?

 兎に角どんどん口を挟まねば延々と向こうが喋り続ける気がする。


「か、刀はありません。多分この世…」

「えぇ!そりゃないよ!あれの解体楽しみにしてたんだよ?約束してたんだよ?ちょっといじって良いってさ。だから断魔の思いで手放したんだよ!」


 頬を膨らませる子供のように拗ねながらも、熟年井戸端会議のように口は止めず、幼い子がお菓子買ってと床に寝て駄々を捏ねる、全く同じことをし始めた。


「やだ、やだ!あれもっかい見せて!でないとアタイ、もう仕事しない!これは国の損失!つまりアンタのせい!あーこれはまずい。お仕置き街行き待ったなし!」


 何だろう……すごく幼い子を相手にしている気分になる。

 この子に頼もうとしているのが間違いなんだろうか?

 でもクママさんが言うには金属の扱いに於いて、彼女の創造を超える者はいないとか、翻訳するとこの世に右に出る者がいないということ。


 彼女が興味を持つ話題を提供するのが先でしょうか……そうすれば逸れる…。


 呼ばれたというわけはないが、そちらを見たのは偶然ではなかったように思う。

 それほどこの部屋の雰囲気に溶け込んでいた。

 壁に飾られた武器とは違い、それはただ立て掛けられているだけでその刃を光らせることもない。

 失敗作、でも処分はしない。彼女の意志だろうか。

 喚きながら背中で床掃除を続ける彼女を放って、その武器を手に取った。


「私の刀ですか、これは…?」


 彼女が模倣したものであろうそれは私の手に馴染む。


「…違いますね、これ」


 私が違和感なく持てるということはこれは魔鉱製ではない。

 仮にそうであれば、持った瞬間腕が負ける。

 それに違いは重量だけではない。


「…分かるんだ?さすがだね。見た目は同じなんだけどね。装飾もアタイなりに頑張ったんだけどね。中身がなんか違うんだよね。ああ、中身と言ってもね…」


 私は腕をやや開いて刀身を光らせ、手枕状態の彼女の口撃を止めた。

 この世のものには無い刃文も見ることが出来るが、見てくれだけだ。


「魂が宿っていません。形骸ですね」


 思わず出た必要以上に場を冷やす私の言葉を受けて、彼女が起き上がる。

 その時の勢い、爛々とした目、どうやら彼女も分かりやすい性質のようだ。


「…初めて聞いた。アンタ、イヨの者って話だったよな。実に興味深い。詳しく話が聞きたい」


 いよ?〇6歳教?とおふざけも程々に。

 人格の入れ替わり?場的に炉に火が入った?

 今までと雰囲気まで違う彼女の眼付は兵士のように鋭く、強ち攻撃のシジカというのも間違いではないなと気性にまで出ている。

 こちらの世でなければ試しの辻斬りになっていそうだ。


「私の話も聞いていただけますか?そのために来たのですから」


 扱う者として、剣士としての目を向け要求を出す。

 だが合わない。

 視線は交錯するも彼女が捉えるのは私の内……いや遥か遠く…?


 しばし睨み合いが続くも先に引いたのは彼女の方だった。


「ごめんねぇ。アタイ苦手でさぁ。名前覚えてないんだよね!必要ないし?好きに呼べばいいしね」


 元は豪放磊落なところもあるのだろう、他の人間が自分をどう思おうが気にしないと笑い飛ばす。

 しかし私はその意味も謝罪の意味も分からず戸惑いを浮かべる。


 喋り続けるのは得意だが、その意味を伝えることまでは苦手なのか、伝わらないことに困りあーあーと唸ること数えて18回目。


「けど、今回は必要だと思うんだよね、アタイ的に」


 獣の革製だろうか?分厚い手袋を外し、職人とは思えない綺麗な手を差し出してくる彼女は黒く汚れた顔を照れ笑いで染める。


「まずはそこからだと思うんだよね、アタイ達の関係は!」


 ここまで言われて意味が分からないと首を傾げるほど、脳筋ではありません。

 なるほど、クキョさんの知り合いでもあるのですから、類友とどこか似ているところもあるのですね。

 私はクスっと息を漏らしてしまうも、咳払いで誤魔化し手を取る。


「私はナタカです。これからよろしくお願いします」

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