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魔理  作者: 新戸kan
にぶ

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しゅぎょうはじめてました

 それから向こうで言う一週間が経ちました。

 私に出来ることは全て終え、後は完成の報告を待つばかりとなりました。


 しかしただ寝て待つばかりではいけないのです。


 クキョさんの容体に変化はないのですから、私の日常が変わるわけではありません。

 でも全く変わらないわけでは……いえかなり変わりましたね。




 4人での目覚めも朝食も変わらねど場所は変わりと朝からその兆しを見せる。


 望んだ変化は訪れず、クキョさんのお世話を終えた後はドリーさんの元へ、そこで修行します。


 お洗濯を習う話が何故修行に変化したかというと…。


「違う違う!そうじゃないよ!!」

 鬼のような、ではなく鬼そのものの形相で指導をするドリーさん。

 その姿は田中さんを忘れさせ、あにさまを思い出させる。

 手取り足取り、そんな生易しい言葉は彼女の辞書には無く、今まで逃げ出した人の多さがそのまま人手不足へと陥ってしまっているお城洗濯部隊。

 しかしそんなこと何の問題ですかと、代々お城の洗濯事情を任されてきた名家の出は、一人でも卒なく仕事を終える。

 そしてそれは魔具があるから、というだけではないと私は知る。

「もう一度だけ言うよ。これはね、生きてるんだよ。マグとは違ってね。それを生かすのは魔力じゃない、あんたの腕さ」

 ドリーさんが見つめる先は、思ったようにいかず私が睨んでいる木製の洗濯板。

 見た目では向こうのものと変わらないが、鼻を近づければ違いが分かる。

 香木―――こちらでは匂いを楽しむためではなく、消すために使われていたようだ。

 それに水を張った桶に散在する香草、クキョさんの下着にも織り込まれているそれらが昔ながらの洗濯方法ということだ。


「あんたは使い方を知っているようだが、それはあくまであんたの世での話だ。同じようにすればいいってもんじゃない」

 修業を始めた際とりあえずやってみてと言われて、昔取った杵柄という程ではないが、洗濯機導入まで毎日やっていた腕前を披露したのだが、若者であれば折れてしまうほどにお叱りを受けました。全くなっていないと。

 

 私も若輩ではありますが、精神はそれなりに鍛えてきたので、修行面であれば耐えれます。

 しかしドリーさんの鞭はその他の面まで鍛えてくれそうな痛みを私に与えてくれました。

 そうです、私は強くなったのです。

 例えば……夜ふと目を覚ましてしまった時、それまででしたら布団を被って目をギュッと閉じていましたが、今ではキュッで済みます。

 意味が分かりませんか?大丈夫です、私も分かりません。

 ともかく強くなったのです。


「何にやけた面してるんだい!手が動いてないよ!そんなんじゃ次代のドリーは名乗れないよ!」

 にやけていませんし、継ぐ気もないのですが…。

「はい、申し訳ありません、師匠!」

「師匠じゃない!先生だ!」

「はい、先生!」


 偶にくれる糖分控えめの飴を舐めながら、今日も精神に鞭打つドリーさん(せんせい)の洗濯愛を受けるのだった。




 お昼、それは戦場。

 戦いこそ経験なれ、ということでバンさんのお手伝い。

 といっても、私に出来ることは多くありません。と言いますか少ないです。

「汁入れといてくれ!それ終わったらこっちの盛り付けな!」

 火加減に魔具を使う以上、簡単な炒め物は出来ても、微妙な加減が必要な焼きは出来ません。

 ですが仕上げくらいは出来るのです。それが私のここでの役目です。


 そう、私でなくてはならない、けれど以前までは必要ないことでもありました。

 盛り付け()です。

 服でもそうですが、食でも食べられればいいとただ盛るだけでした。

 私がバンさんに教えた結果、彼も勉強を兼ねて私に盛り付けを頼むようになったのです。

「今日も美味しそうですね」

 兵士さんのその言葉は仕切り台越しには聞かなかった言葉だ。

 見ただけでそう言わせるのは、料理は見た目も大事とバンさんに言って来たことへの証明である。

 私はバンさんにニッと歯を見せ、次の仕上げに取り掛かった。



 

 昼食を済ませた後は2択。

 孤児院へ行くか、今日のようにそのまま食堂に残り、バンさんにこの世界の料理を習うかのどちらかだ。


「んー…何と言うか、独特だよな、お前さんは。けどな、残念だが、オレたちの口には合わないんだ」

 バンさんはその風貌とは違い、教え方が非常に優しい。

 娘が後を継いでくれると喜び丁寧に教えてくれる――――家とは全く逆の教え方。

 しかし彼の教え方はとても不器用で、時々うぐっ…と心が抉られる。

 けれど下手ながらも努力して何とか伝えようとする様は彼の娘であったならこういう気持ちになるんだろうかと微笑ましく思う。

「イイことあったか?顔が笑ってるぞ?」

「何でもないですよ、師匠」

 そう言いながらもふふっと笑ってみせると、上腕二頭筋にぶら下がり子供10人余裕でした何なら大人もいけますと、その体躯に見合わず師匠は恥ずかしがる。

「師匠はやめろと…」

「満更でもないって顔してますよ、師匠?それなのに照れちゃって。まんでれですか?」

「…なんだそれは。いいから続けるぞ!」

 異なる父親像に父様の姿を重ねながらも、はーいと家では絶対に言わなかった軽返事をしバンさん(ししょう)の料理愛を学ぶのだった。




 夜は朝同様魔研ではなくクママさんが一日を過ごす部屋に家族が集まる。

 親が子離れを望んでも親心子知らずではなく、歩けない親を子が心配に思うのは当然のことで、それならみんなで寝ましょーとクママさんが言い出すのも当然な訳で。

 一日の始まりと終わりはこの部屋でということで、片隅には畳まれた布団が置いてある。

 彼女の子離れが済むことは無いのかなと苦笑しながら、クマさんの今日分の日記に耳を傾ける。


 クマさんは最初クママさんのお世話をすると言っていたが、その背じゃねと始まりそうな親子喧嘩を回避し、シヨタさんのお手伝いをしている。

 賢魔ではなく魔具として、けれど二人の娘として、あの戦いはこの世の当り前を壊すものだった。

 その結果、魔法が誕生するのも近いだろう。

 既存の魔具を超える―――二人を治療する魔具だって。


 クマさんの話が一区切りを終えると、今度は私の番。

 話題は尽きることなく、部屋の明かりが自然に消えるまで、静寂は訪れさせない。



 そうして更に一週間、色々なことがあり、私達は旅に出たのです。





 それなのにどうして今私達は迷子になっているのでしょうか?

 三人もいてですよ?


 私にクキョさんとクマさん、それにもう一人―――相も変わらず睨んでくる彼女もいたのに。

100近かったのでこのような形となりました。(後付け)

話が追加されたらズレるのでは?

いぐざくとりー。

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