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死ぬ気はない



 やはり奇襲が最高だ。真正面戦闘ってのはどうしようもない状態で仕方なく行う物だ。

 戦いは佳境、その熾烈さを増し、味方の損耗の度合いはこれまでの戦いと比べ物にならない。

 馬鹿正直に戦っていては最低限の目的すら果たせない。技術力が違うのだ。兵器が。

 こちらは血を流さず、敵にのみ出血を強いる。単純にして至上だ。言うのは簡単だが方法は限られる。

 それが不意打ち。一方的に敵を打ち据え、敵が反撃の体勢を整える前に余韻すら残さず撤退する。


 奇襲こそ最良の戦術。その最良の戦術を駆使して、シンクレア・選抜猟兵混成部隊は四度目の攻撃を行っていた。


 イオはチャージャーを隣に連れ、指定攻撃ポイントへの突入を待ちながら舌なめずり。


 「3カウント、……2、1、フラグアウト!」


 チャージャーの放り込んだプラズマグレネードが、ウィードランの設置したシールドの裏側で致命的な稲妻とショックウェーブを撒き散らす。


 イオはディフェンダーを展開し即座に突入。ハンドガンを握ったハーティーがその右肩を掴み、イオを盾にしながら追従する。


 『ウェンディゴ、アルファを援護する!』


 イオ達が攻撃を仕掛けた右手方向から別動隊が突入する。

 防衛体制の整わないウィードラン部隊は十字砲火に晒されてあっと言う間に射殺されていく。


 硝煙の臭いが濃い。弾けた泥と砂埃。イオは敵の悲鳴の只中で尚も耳を澄ませた。


 「オールクリア!」

 「ウェンディゴとそのチームは爆薬を。これで四機目だ。……作戦時間を鑑みて、これ以上欲を掻けば包囲されるだろうな」


 チャージャーは頭蓋を破壊されたウィードランの端末を剥ぎ取り、自分の端末と接続して何事かしている。

 周辺警戒を続けながらイオは鼻をひくつかせた。


 「敵の気配が近付いている。退避ルートは?」

 「来た道を戻る」

 「地下通路を追跡されるぞ」

 「封鎖の準備は出来ている。追ってくるなら生き埋めにするだけだ」


 愚問だったか。この男に手抜かりは無い。


 『ウェンディゴより各員へ。起爆する、注意しろ』


 少し離れた位置で敵対空兵器が吹き飛んだ。

 無力化するにしては威力があり過ぎる。


 『ツールを準備したのはどこのクソッタレだ?

  さっきから調合の比率は出鱈目だし、品質も安定していない』

 「ウェンディゴ、そんな場合じゃない。目標は達成した、撤退する」

 『チャージャー、愚痴くらい言わせてくれ。不良品を掴まされて死ぬのは俺達だ』

 「後で聞いてやる。敵が来るぞ」


 破壊を終えたウェンディゴのチームが合流する。遠くでトカゲの咆哮が聞こえた。


 『エージェント・イオ、周辺のデータ流動が活発化。

  敵快速部隊です。接敵まで30秒』

 「チャージャー、サイプス部隊が接近中! 後30秒!」


 即座に走り始めるシンクレア・アサルトチーム。

 何名かが背負っていた一抱え程のボックスを設置する。黒塗りのそれが開かれ、中から飛び出したのは青白い装甲を持ったマンボウのような造形の攻撃ドローンだった。


 ドローンは索敵モードに入り、周辺を監視し始める。


 「足止めにはなる。撤退するぞ」


 イオはシンクレアの全てが攻撃ポイントから脱出するのを見届けて、最後尾を走り始めた。

 律儀にもイオを待っていたハーティーが隣を走る。後方からはサイプスがローラーダッシュを使用するときの甲高い駆動音が聞こえている。


 走りながらイオは怒鳴った。


 「追い付かれるなよ!」

 「貴方こそ!」

 「……砲声!」


 直ぐ傍、僅か10メートルあるかないかの距離で地面が爆ぜた。

 轟音と振動。ハーティーが姿勢を崩す程の。

 砲撃だ。ウィードランにとっては友軍を巻き込みかねない距離の筈。敵は相当お怒りのようだ。


 後方で攻撃ドローンが自動戦闘に入る。敵追撃部隊を足止めしている。

 だが、進行方向に4機のサイプスが回り込んでいた。チャージャーがウィードランの設置していたらしいバリケードの装甲板を力任せに引き剥がし、突進した。


 「止せ、チャージャー!」


 サイプスの機関砲弾を受け止めるチャージャー。

 散開するシンクレア。ウェンディゴがグレネードランチャーをありったけ発射する。


 爆発に吹き飛ばされるサイプス。二機。生き延びている

全力疾走から急停止したイオはSOD7に手をやった。


 「ゴブレット!」

 『貴方に勝利を』


 いつもの感覚。世界がどろりと遅くなり、引き伸ばされていく。

 サイプスの弱点は熟知している。イオは二機の腰部中枢ユニットを即座に撃ち抜いた。


 「チャージャー、生きてるな?!」


 装甲板ごと機関砲弾で薙ぎ倒されたチャージャーを助け起こす。この男は死ぬような目にあっても平然としている。

 イオは肩を貸し、彼を引き摺った。


 「隊に被害は?」

 「アンタだけだ、馬鹿野郎! もう二度とやるな!」


 イオの反対側からチャージャーを支えたウェンディゴが後方を睨み付けながら返した。



 敵の追撃をいなしながら走り続け、オクサヌーン地下交通網の隠し通路に辿り着く。

 小さなハッチだ。土と人工芝で偽装されている。チャージャーは即座に指示を出し、隊員達は予め決められた順番にそのハッチの中へと飛び込んでいく。


 「円周防御!」


 他と比べて重装備のシンクレア隊員達が何かのツールを結合させ、それを地面に設置した。

 小型のディフェンダーだ。個人携行装備とするにはまだまだ大きいが、それでも段階的に小型化に成功しているのは間違いない。

 山岳の塹壕戦でリーパーが使用していた物よりも更に小さいのだ。


 「来い、もっとだ!」


 ここでもイオは八面六臂の戦いぶりだった。トカゲを殺す為に此処にいるのだ。

 サイプス快速部隊など何の問題にもならない。ディフェンダーごと厚さ12㎜の装甲をも貫通するSOD7の特殊弾薬があれば、今激しい突撃を仕掛けている無数のサイプスの群れ如き。


 トカゲの兵器をただの屑鉄に変える内、シンクレアの退避が終わった。

 チャージャーが叫んでいる。


 「イオ、来い!」

 「先に行け!」


 チャージャーは何の疑問も持たない。即座にハッチの中へと飛び込む。


 『砲撃、来ます。即座に退避を』


 待っていたとばかりにハーティーが。最後にイオもその後に続く。

 水泳の飛び込みのような姿勢でハッチへ。直後、猛烈な熱が背を襲う。

 べしゃりと地面に叩き付けられながら荒い呼吸を静める。


 ギリギリのタイミングだった。


 「封鎖準備! 工兵を待避させろ! 足の用意は出来ているか?!」


 チャージャーが怒鳴れば待機していた工兵部隊が慌ただしく動き始める。

 地下交通網を走る為の物資運搬用貨物列車が準備されていた。


 「シンクレア、速く行け。敵はこちら側に戦力を集中させ始めている」

 「何?」

 「なんだ? 俺は別に不思議に思わないね。スカルエンブレムの部隊とダイヤモンドフレームが揃ってるんだぞ。敵を誘惑するには十分だ」

 「だとすれば、好機だな」


 工兵部隊の隊長がふてぶてしく笑って敬礼する。イオ達が列車に搭乗すると、申し訳程度のガードレールしか備えていないそれはすぐさま動き始めた。


 黴臭い空気。イオは嫌いではない。

 照明の落とされた真っ暗闇のトンネルの中をひた走る。


 「プランを変更するぞ!」

 「具体的には?!」

 「メインストリームを経由して30㎞南の秘密通路からもう一度強襲を仕掛ける!

  イオ、もう一働きしてもらう!」


 列車は走る。チャージャーの果敢な作戦行動の裏には何者かの献身がある筈だ。

 敵の正確な配置情報無くしてこうも立て続けに攻撃が成功する筈はない。どうやってそれを手に入れたのか。


 「お前を疑うつもりは無いが、どうしてここまで敵の動きが読める?!」


 きーきーと車輪が金切り声で叫ぶ。限界速度ギリギリで走る列車は火花すら上げていた。

 激しい轟音にかき消されないよう声を張る。


 「超高高度ステルス偵察機!」

 「そんな物があるのならもっと早く出すべきだったな!」

 「10分前、最後の情報を送ってきた後撃墜された! 我々にとっても切り札だった!

  優れた兵器も、先進技術も、よく練られた作戦も、単純な手段によって無効化される事がある!」

 「……そりゃ最低だ!」

 「それ以外には優秀なスカウトチーム! 彼らは大きな被害を出しながら要求に答えてくれた!

  後は難しくない! トカゲの気持ちになればいい!」

 「トカゲの気持ちだと?!」


 ハーティーが冗談だろ、と鼻で笑った。残酷で野蛮な爬虫類の気持ちなど分かる訳が無い。

 イオもハーティーとほぼ同意見だったが、少なくともチャージャーの能力は信頼している。


 「ならチャージャー、奴らは今どんな気持ちでいるんだ?!」

 「ふ、俺達と何も変わらんさ!」


 やる気満々って事かよ。イオの呟きを他所に列車が加速する。


 「おい、脱線するぞ!」

 「まぁ見てろ!」


 大きなカーブで車体が激しく揺れる。心なしか浮遊感すらあった。

 怯えるハーティーは慌てて怒鳴ったが、白い巨人を象ったペイントをアーマーに施した隊員、ウェンディゴは、ハーティーを相手にもしなかった。


 「(多才な奴だ)」


 操縦用インターフェースに噛り付くウェンディゴを見遣る。

 これまで作戦を共にする事はあったが言葉を交わす機会は無かった。

 奴は突入や偵察だけでなく、潜入、破壊、専門的な機械知識、プログラム知識、化学知識にまで優れる。

 この上、列車の運転までこなすのか。探せばいるもんだな、こんな人材が。

 こういう奴が長生きしてくれると助かるんだが……。


 イオは首を振った。


 「チャージャー、ブーマーやリーパーの容体はどうだ?!」


 チャージャーは暫し沈黙してイオの方を向いた。ヘルメット、フェイスガードの向こう側、イオを見詰めているのか。

 激しい振動と慣性。吹き付ける風と火花の中、チャージャーは漸く答える。


 「……リーパーは別口で脱出させた!

  今頃は海上で友軍の回収部隊を待っている筈だ!」

 「ブーマーは?!」

 「奴はカプセルベッドに縛り付けて運ぼうとした軍医達を殴って脱走したらしい!

  今はウィードラン降下部隊への攻撃作戦に参加している!」

 「あー……あぁ? それは何と言うか……。

  まぁ、ブーマーが元気そうでよかった!」

 「二人から名前を聞いたらしいな!」

 「大丈夫だ、漏らしたりしない!」

 「伝えたいのは、そういう事じゃ無い!」


 じゃあなんだよ。イオは列車上にべたりと座り込んだまま肩をすくめる。


 「信頼の証だ! 奴らを裏切るなよ、イオ!」

 「”俺達は”仲間を裏切らない!」


 珍しく感傷的なチャージャーの言葉。



 その後、北から南へ。それに飽き足らず、東へ西へ。

 イオとハーティー、シンクレア・アサルトは立て続けの奇襲、強襲を敢行した。



――



 遅延戦闘は続いた。無限の地獄のようだった。

 出鼻は挫いたし後方攪乱もやった。敵浸透部隊を根こそぎ排除し、窮地にある友軍は軒並み救援した。


 それは結局、攻勢には繋がらない。戦力のほぼ全てをアウダーに送り出したカラフ方面軍に出来るのはひたすらの防御だ。

 ウィードランの攻撃は執拗だったが、全く焦っていなかった。トカゲの軍団は予定調和のようにじりじりとオクサヌーンを追い詰めた。


 だが予定調和なのはこちらも同じだ。


 『諸君の奮戦に敬意を表す。全ては計画通りに推移している』


 がらがらにしゃがれたユアリスの声が響く。彼は嘘は言っていなかった。

 目を覆いたくなる程の戦死者数、目を覆いたくなる程の損耗。

 全て覚悟の上だ。船を逃がす為の。


 『今また、方面軍の誇るダイヤモンドフレームが敵前衛に痛打を与え、悠々と補給に戻った。

  諸君らは作戦プランに従い後退を繰り返すも、“通さない”と決めた場面では必ず敵を食い止めて来た。

  疑いようもない。ここに踏み止まる者達全て、シタルスキア連合軍の誇りだ』


 味方の築いた集積所で壁に凭れ掛かるイオ。拉げてしまったアーマーの代替品を痛烈に切望している所だ。

 隣で座り込むハーティーは弾も爆薬も使い果たした後だ。こちらはこちらで、特殊部隊にのみ支給されるツールやグレネードを要求して頑と譲らない。


 「だ、そうだが?」


 皮肉気にイオが言えば、ハーティーは顰め面で応えた。


 「あぁどこまでだって食い止めてやるとも。

  補給さえ万全ならな」


 言いながらアーマーのユーティリティポーチからツールを取り出し、放り投げる。

 何かの出力装置だ。完全に壊れてしまっている。補給の宛てもない。


 「トカゲどもは狡猾だ。これまで奴らは本気じゃなかった。

  防衛ポイントはどこも悲鳴を上げている。敵は矢継ぎ早に戦力を繰り出し、しかもその温存の仕方が巧妙だ。

  貴方が居なければこの防衛戦はとっくに瓦解している。……この補給陣地も瞬く間に陥落しただろうよ」

 「頼られるのは気分が良い。……だが、それも程度によるな」

 「脱出の進捗を聞いたか?」

 「いや」

 「残り約3割。だが問題も発生している。

  沿岸部を迂回してきたと思われるウィードラン部隊に超長距離砲が確認された。

  直ぐに脱出艦隊を射程に収めるだろう」

 「次はそいつを叩けと?」

 「いいや、そんな命令は来ていない。シンクレアのリーダーには何か作戦があるらしい。

  任せておけばいいさ」

 「奴も大した働き者だ」


 言い捨てたイオは走り回る兵站将校やその部下達の中、はっきりとこちらに視線を合わせ、歩いてくる男を見つけた。


 「どうやら、休憩も終わりらしい」


 その男は引き摺っていた物資箱をイオ達の前に乱暴に放り出す。


 「お待たせしました。お望みの物を揃えましたよ。……可能な限り」


 ハーティーが箱を開いて満足気に頷く。


 「本当だ。エナジーグレネード、カウンターバグ、……ディフェンダーの予備バッテリーまであるぞ。

  どこから持ってきた?」

 「鹵獲物保管庫でかっぱらってきました。アンタ達に使ってもらった方が良いと思ってね。

  ご安心を。この期に及んで誰も気にしやしませんよ」

 「お前に一杯奢ってやりたい気分だ」

 「生きて帰れたら、頼みます」


 そんな事欠片も思っちゃいないだろうに、男は皮肉気に笑った。


 イオとハーティーは野良犬がゴミ捨て場を漁るような勢いで物資箱にかぶりつく。

 弾薬は元より回復剤、活性剤、特殊なツール、通信補助システムから超小型ドローンまで。


 使い果たした装備を再充填。ずっしり重たくなった身体に満足した時には、これを届けてくれた男は足早に次の任務に向かった後だった。


 いつの間にか、ユアリスの演説は終わっていた。


 「寒気がするな。……どいつもこいつも、最後にはくたばるんだと思うと」

 「そうか」


 首筋に投薬用のツールガンを押し当てるハーティー。

 彼は体内に取り込んだ活性剤の冷たさに息を漏らす。


 「好きな奴も嫌いな奴も、助けた奴も助けられた奴も、さっきの奴も。当然俺達も、だが」

 「言っとくが」


 レイヴンにマガジンを叩きこんで準備を終えたイオは、全くいつもと変わらない声音で言った。


 「俺は死ぬ気はない。

  ガキどもは逃がし、命令には従い、船の脱出を見届けて、後はそうだな……。

  まぁ、どうにかしてトカゲどもを振り切るさ」


 ハーティーはイオの言葉に苦笑するしかなかったようだ。


 「……あぁそうだな。貴方ならその通りに出来るかも知れない。俺もそれを願う」

 「疲れてるのか。まだ戦闘開始から4時間しか経ってないぞ」

 「俺は貴方のようにタフにはなれない」


 イオはハーティーの肩を叩いて歩き始める。

 数十メートルの距離に臨時の前線指揮所があった。上級将校たちが今も必死の形相で情報を集め、分析している筈だ。


 ブルー・ゴブレットが寄り添う。


 『作戦完了後の備えとして脱出ルートを策定し、状況を随時更新します』

 「(……へぇ? 一応、俺を生き延びさせるつもりがあるらしいな)」

 『……発言の意図を理解できません。何故、そのような事を言うのですか?

  今の貴方のそれは、ただのジョークや皮肉では無かったと、ブルー・ゴブレットは考えます』


 ゴブレットは何時ものように無表情、無感動だったが、声音にどこか責めるような響きを秘めている。

 情緒と言う奴かよ。イオは何とも言えない感覚に唸る。自分でも、何故こんな言い方をしてしまったのか疑問だ。


 疲れてるのはハーティーだけじゃないって訳か。


 「(……すまん、不適切なジョークだった)」

 『ジョークなのですか。ジョークならば構いません』

 「(俺の女神様は、何時も平然と無理難題を仰るんでね。少しばかり泣かせたくもなる)」

 『我が同士は、その無理難題の極致で尚、窮地を好む難しい気質の持ち主でしたので』

 「“我が同士”か。ははっ」


 思わずイオは笑った。ゴブレットの言葉遊びの遣り方も、最近は上達目覚ましい。

 唐突なイオの笑い声にハーティーは一瞬視線をやったが、直ぐにどうでもいい事だと前を向いた。常軌を逸したクレイジーな兵士の言動に一々驚いていたら体力が持たない。


 『エージェント・イオ。ブルー・ゴブレットは、貴方を死なせません。

  ブルー・ゴブレットは貴方の喪失を複数の意味で許容できません』

 「(“高効率に管理”はやめといてくれよ)」

 『…………………………ブルー・ゴブレットは貴方のストレスを大幅に軽減出来ます。

  貴方のパフォーマンス向上の為に多くのリソースを投入する事を約束しますが?』

 「(凄味が増したな、お前。以前は言い募りはしなかった)」


 面の皮が厚くなったとも言う。

 約束しますが? ではない。ナビゲートAIらしからぬ長考の後に懐柔策を持ち出すとは。


 だが、面白みがある。どうやってこの青い女神様の申し出をいなそうかと考えたが、先に話題を転換したのは彼女の方だった。


 『エージェント・イオ、ユアリス・バーレイの極めて秘匿性の高い通信から、重要と思われる作戦行動の情報を得ました』

 「(奴の秘匿通信? 内容は)」

 『ユアリス・バーレイの作戦プランの一部が破綻したようです。

  そのリカバリーを貴方に求めようとしています』


 イオは立ち止まり、ハーティーを見た。


 「ハーティー、どうやら俺達をご指名らしいぞ」

 「今更だな。今オクサヌーンにいる兵士の中で、貴方の力を借りたくない奴が居ると思うか?

  ……で、契約金を支払ってくれるゲストは誰だ」


 イオのリトル・レディに呼び出しが掛ったのは直後だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブレットちゃんに言い寄られるなんて…罪な男や
[一言] もうね、なんて言うかこういうの本当にたまらん。
[良い点] 男臭く骨太で分厚い筋肉を感じさせる言い回し。むせる。そしてやはりテンポの良さ。 [気になる点] 戦闘の合間の、キャラクターも読み手も一息つく休憩中の描写にもう少し周囲の雰囲気が分かるような…
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