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第六十七話 いざ、帝都へ

「まあ、これで大体の準備は整ったな」


つるぎがそう言いながら、荷物を詰めた荷物を背中に背負う。


「ガルティアーゾでもらった野営セットが軽くて良かったよ。街で売ってた冒険者用のセットはすごく重かったもん」


「ガルティアーゾのは骨組みに竜の骨とかが使われてるんじゃないか?」


「なんで?軽いから?」


「いや、知らないが」


「あ、そう」


僕たちは、ここアニゴベから北にある帝都・リグディルーベに向かうための準備をしていた。ここからリグディルーベは、アルモンドの持っていた地図を見た限りでは結構距離が離れていたように見えた。なので、僕たちは何があってもいいように旅の準備をする必要があった。


「さて、では行くか」


「あ、その前に、一応ダカリットさんに挨拶だけしておいた方が良いんじゃない?」


「ふむ……そうだな。では、挨拶していくか」


「うん」


大方の準備を済ませて、出発することが出来るようになった僕たちは最後ということで、世話になった討伐課のダカリットにお別れの挨拶をすることにした。いつものように、市役所の正面玄関を開け左側に位置している討伐課の方へと足を向ける。まだ午前中だというのに、冒険者の数が多い。なんとなくあわただしい雰囲気がこの場を包み込んでいる。この前の黒竜の後処理なんかが大変なんだろうか。確かに、僕たちは街に被害が出ないように戦ったわけではないが、そこまでひどいような状態ではなかったと思う。いったいどうしてこんな雰囲気何だろう。僕はそう思いながら、受付に並ぶ。しばらくして僕たちの番になると、わかってますよと言わんばかりの顔で僕たちを奥の部屋に案内してくれる。僕たちは一瞬顔を見合わせた後、案内に従って奥へと入っていった。僕たちが部屋の中に入るとすぐにダカリットがこちらにやってくる。


「ああ、どうも」


「おはようございます……で、今日は……」


ダカリットは何の用かと待ち構えている。僕は、今からここを出発して帝都に向かうつもりなん緒で、その挨拶に伺ったということをダカリットに伝えた。


「ああ、そうですか。リグディルーベに向かわれるのですね……あ、それなら」


僕たちの話を聞いて、ダカリットは何かを思い出したように席から立ち上がると、机がある方へと向かう。そして、しばらくごそごそと何かを探した後一枚の紙を持ってきながら言う。


「いやいやすいません。じつはですね。今日これから、例の事件で先日発見した黒竜の卵を帝都に届けるようになっているんです。それで、護衛の冒険者を雇おうと思っていたんですけど……」


ダカリットはそこで一度言葉を区切り、僕たちを見つめる。僕はつるぎの方を見る。つるぎは一度頷いた。


「良いですよ。僕たちやりますよ」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


少しわざとらしいような声のトーンでダカリットはそう言いながら、僕の手をつかむとブンブンと振ってくる。少しして、ダカリットが僕の手を離すと、話を再開する。


「卵を運ぶためにマクラレを使用するのですが、お二人の分も手配しておきましょう。あと、野営セットなんかもこちらで用意できますが……」


「あ、それは大丈夫です。僕たち自前のがありますから」


「そうですか。では、マクラレの手配だけでよさそうですね……行程ですが、大体帝都まで六日間ほどを予定しています。ですので、その間の護衛を依頼するという形でよろしいですかね」


「そう、ですね。それで大丈夫だと思います」


「他に何か質問はございますか?あ、一応、この書類を渡しておきますので、リグディルーベに到着された際は、討伐課にその書類を持っていってください。そうすると、報酬の方がもらえますので」


「ああ、そうですか……質問は特にないですかね。ねえ、つるぎ?」


「うむ……あ、道のりの途中で、気を付けておいた方が良い生物なんかはいるのか?」


「一応安全とされている道を進んでいくので大丈夫だとは思いますが、夜中に卵を狙ってくる野生生物なんかは出ると思います。しかし、竜を倒されるお二人ですから、どうってことはないと思いますよ」


「なるほど」


「では、他に何か?」


「いや、特にはないです」


「そうですか」


ダカリットはそう言うと、僕に書類を渡してきた。


「一応出発は午後三時の予定なので、それまでに市役所の前まで来ていただければと思います」


「はい、わかりました」


「では、よろしくお願いします。旅のご無事をお祈りしております」


ダカリットはそう言って、また机の並んでいる方へと向かっていってしまった。僕たちは無言で席を立つと、部屋を出る。受付嬢に軽く頭を下げ、市役所を出る。


「またしても良いように使われたな」


市役所を出てしばらくして、つるぎが口を開いた。


「今回はそうだね。完璧に良いように使われたね」


「向こうからしてみれば鴨がネギ背負ってやってきたようなもんだろう。『まさか向こうから来てくれるとは!?』と驚いただろうな、ダカリットは」


「そうだね。でもまあ、一応僕たちにもメリットはあるから良いんじゃないの?」


「確かに。何も考えなくても帝都に着けるのは楽だな」


「だからまあ、良いんじゃない?」


「うむ……さて、私たちは三時まで暇になってしまったわけだが、どうしようか」


「そこらへんで時間潰すしかないよね。もう宿は出ちゃったし」


「酒場で時間をつぶすか」


「うん」


僕たちは、市役所の近くにある、よく冒険者の集まる店「モジュール」で昼食を済ませ、飲み物を飲みながら集合時間まで時間をつぶした。


「さて、そろそろ時間だ」


つるぎの掛け声で、僕たちは「モジュール」を後にした。そして、市役所の前に行く。市役所の前にはもうすでに荷物引き用のマクラレがスタンバイしていた。そして、運搬係の人が二人、何かを話している。僕はその人たちに話しかけた。


「あの、すいません。今回行きの護衛をつとめます海斗です。それで、こっちがつるぎです。どうぞ、よろしくお願いします」


「ああ、話は聞いてるよ。最高位冒険者なんだって?心強いね。こちらこそよろしく頼むよ」


「あ、はい」


どうやら、運搬係の二人は人のよさそうな男の人たちだった。僕とつるぎは後ろのマクラレの荷車に自分たちの荷物を入れ、自らの身体もそこに入れる。


「じゃ、出発するぞ」


男の人の合図を皮切りに、マクラレが進む。僕たちの帝都への旅も始まった。


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