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第三十四話 得意な魔法系統

身体を鍛え始めてから十日間ほどもすると、身体中の筋肉という筋肉が、大いなる刺激に耐えられてくるようになった。初日は一番初めのプログラムだけでヘロヘロになって、死を身近に感じていたのに、今では最後までプログラムをやりきっても、疲労感はあるが身体が動かないなんてことはなくなった。おかげでリータの授業の手伝いも今ではちゃんとできている。


と、まあ、身体がいい方向に変化していっているのを感じているが、じつはそれだけではなく、魔法の方も調子が良いのだ。なぜなのかは知らないが、魔法の「切れ」みたいなものが高まっているように感じる。あと、第四位魔法も安定して出せるようになっている。そのことをリータに話すと、


「たぶん、普通に体力がついて、今まで出せなかった魔力が出せるようになったんじゃないですかね」


「というと?」


「私が考えるところだと……そもそも人間が自分の魔力のすべてを効率よく使うには、ものすごく体力が必要です。カイトさんの身体には膨大な魔力が宿ってますけど、それを使いこなせるだけの体力は今までなかった。だけど、身体を鍛えて基礎体力をつけることで、使える魔力の量が単純んに増えた、ということだと思います。だから、今までと同じくらいの魔力量で放つ魔法に対しておまけで魔力が付いたから切れも良くなったんだと」


「なるほどね……つまり、体力ががあればあるほど魔法を使うのにも有利に働くってことか」


「そういうことです」


「いやー、そうだったんだな。全然知らなかった。ということは、超級魔術師って全員ムキムキだったりするの?」


「いや、たぶん違うと思いますけど……だけど、夜通し第五位魔法を打ち続けるくらいの体力はあるらしいですよ。戦闘魔術師同士の喧嘩話を集めた本に書いてありました」


「へー」


というか、戦闘魔術師同士の喧嘩話を集めた本って、なんだそれ。すごく気になる。やはり魔術師でも酒に酔った勢いで喧嘩とかするのだろうか?戦士がするならなんとなくわかるが、理性的なイメージの魔術師がそんなことをするのだろうか。それとも、僕の持つ魔術師のイメージがステレオタイプすぎるだけか?……喧嘩の様子はいったいどんな感じなのだろうか。戦闘魔術師は基本的に第四位魔法以上を使用できる中・上級魔術師からがなれるものだ。たぶん、喧嘩といっても、上位魔法の応酬で、すごいことになっているのだろう。


「で、それよりも、どうするんですか?カイトさん」


「え?ああ、そうだなぁ……まだ決めかねているんだけど」


「早めに決めておかないと、この先の練習に響きますよ?」


「それはわかってるんだけどさ……」


僕は今、どの系統の魔法を重点的に練習するのかを決めるのに迷っていた。中級以上の魔術師になると、それぞれ得意な系統の魔法を持っているらしい。しかも、第四位魔法からは魔法の数が膨大に増えるので、第二位魔法のように網羅的に習得することは限りなく不可能だと言われている。そこで、僕も得意な系統の魔法を作っておいた方が良いという話になったのだが……


「う~ん、正直よくわかんなくなっちゃったなぁ」


「でも、そうやって悩めるのがうらやましいですよ。それはつまり、どの系統の魔法も苦手ではないってことですから」


「リータはどうなの?」


「私は前も言いましたけど、治癒系の魔法が大の苦手で……それに、第四位魔法もたまにしか発動に成功してませんから」


「でも、もうちょっとで完全にマスターできると思うけどねぇ」


「って、自分でも思っているんですけど、これがなかなかどうして難しくて。でも、カイトさんがそう言ってくれるなら、なんだかいけそうな気がします」


なんだかいけそうな気がするとは言っているものの、顔には自信が見えない。けど、リータくらいのレベルなら、普通に使えるようになると思うんだけどな。第四位魔法くらい。リータは、どこか自分に自信を持てていないところがあるから、何か自分に自信を持てるようなことが起きれば、すんなりと行くかもしれない。


「うん。普通にできると思うよ。それより、もう一回第四位魔法からの系統を教えてくれないか?」


「え~、もう忘れたんですか!?」


「……お願い!」


僕が両手を合わせて懇願すると


「もう。わかりましたよ。これでちゃんと覚えてくださいね」


とため息交じりにリータが言う。良かった。本当に覚えてなかったから、助かった。いかんせん数が多いから覚えきれていないのだ。


「はーい」


「第四位魔法からは、第三位魔法までにあった汎用系、水系、炎系、雷系、治癒系のほかに、光系、闇系、幻影系、非汎用系、対魔法系、召喚系、変異系、怪奇系があります。第五位魔法もそれらがあり、最終位魔法にはそれらに加えて神変系があります。神変系を操れるのは超級の魔術師だけですが……」


「あれ?そんな多かったっけ?」


「はい」


スラスラと言いのけて見せたリータは、心なしかドヤ顔をしている。可愛らしい。


「で、どうするんですか?」


「いやー、リータの話聞いて思ったんだけどさ。僕、今のところ第三位魔法にもある系統しか使ってこなかったじゃない?だから、試しに全部の系統の魔法を試してみようかと思うんだけど……」


「え!?大丈夫ですか?」


「何が?」


「いや、中には毒の霧とかを発生させるものとかがあるので、ちゃんと対処できるようにしないと」


「え?そうなの?」


それって吸ったら死ぬ奴じゃないか?でも、第四位魔法なんだ。死んでもおかしくない。


「はい」


「……まあ、使う魔法は選ぶから、大丈夫だと思うけど」


「そうですか。なら大丈夫ですね」


真顔でリータは言う。その顔を見て、僕はなんだか急に不安になる。


「……心配だからやっぱり一緒についてきてもらって良い?」


「ふふっ!良いですよ!」


満面の笑みを見せるリータ。あれ?もしかしてリータ、第四位魔法を見たいがために脅しをかけたのか?……いや、まさかね。


とりあえず、僕はそれぞれの系統の本を借りて、どの魔法を試そうか吟味することにした。

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