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第十八話 初めての治癒魔法発動

僕とリータが家に帰ると、そこには机に突っ伏したつるぎの姿があった。


「おい、つるぎ、大丈夫か?」


「……おお、海斗か……リータも……おかえり……どこに言ってたんだ?」


「昨日と同じで、塔で魔法を習得してたけど、つるぎは何してたんだ?というか、大丈夫か?」


つるぎは顔を上げずに僕たちの方を向いている。その顔には疲労が色濃く表れている。


「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば、極めて大丈夫ではないな……死ぬほど疲れている。体のいたるところが痛いし、痛いし痛い。とにかく私の体力ゲージは一だ。もう動くことすらできない」


言葉通り微動だにせず、つるぎは言う。


「あんな訓練を毎日しているから彼らはバカみたいに筋肉が発達しているのだということを、私の体をもって痛感させられたよ……なんなら剣道部の夏季合宿よりもしんどい。あの時は吐くまで練習していたが、今回は吐くのを通り越して、口から魂が抜けそうだ……」


「その割には口は動かすんだな」


「まあ、私は産まれた時に口から先に出てきたとおばあさまに聞かされたことがあるくらいだからな」


「産道に居ながらにして産声を上げたのか?」


「いや、産声をあげたのではなく『天上天下唯我独尊』と言ったのだがな」


「産道でそんなこと言ってたら釈迦より上の存在じゃねーか」


僕とつるぎがそんなことを話していると、リータが僕に


「カイトさん、今が今日の成果を生かすチャンスですよ!」


と言ってきた。


「うん?どういうことだ?」


僕はリータに聞き返す。


「今日、カイトさんは治癒魔法を習得したじゃあないですか!その魔法をつるぎさんに発動するんですよ」


「ええ……できるかな、そんなこと」


「大丈夫です!出来ますよ!」


「何をこそこそと話しているんだ?」


つるぎが相変わらず突っ伏したまま、ふくれっ面でこちらを見る。


「カイトさんが、今日治癒魔法を習得したんですよ!」


かくかくしかじかとリータはつるぎに説明する。


「ほほう。ということは、私のこの体中の痛みを和らげることが出来るというのか!?」


「そうです!」


「ではやってくれたまえ!今すぐ!」


妙な気迫と共に叫ぶつるぎ。本当に苦しいのだろう。まあ、僕もつるぎのためになるのであれば、やぶさかではない。


「出来るかどうかわかんないけど……」


と前置きしつつ、つるぎのそばに立つ。


「どこが痛いの?」


「全部だ」


「じゃあ腕も?」


「無論」


僕はつるぎの痛いという腕をとる。


「痛っっ!もうちょっと優しく扱ってくれたっていいじゃあないか!私だって女の子なんだぞ!」


つるぎが抗議の声を上げる。どうやら本当に痛いらしい。


「悪かったって。もう少し丁寧に扱うから……」


僕はなるべく優しくつるぎの腕に触れる。そして、唱えた。


深癒痛ルムヤ


僕の掌が白く光る。その光がつるぎの腕を包み込んでいく。


「あー……腕が軽くなったな……」


つるぎが右腕を動かす。すると、先ほどまで全く動いていなかった腕が元気に動いている。


「おお!軽いぞ!」


つるぎは嬉しそうに言う。しかし、まだ体は机に突っ伏したままだ。


「カイトさん、『癒癒傷ターミエ』も忘れちゃだめですよ!」


リータが僕に言う。


「え?そうなのか?でも、どこもケガしてなさそうだけど……」


僕はつるぎを見る。見た感じどこも怪我をしているようには思えないが、どういうことだろうか?


「まあ、確かに目に見えるような怪我はしていないが、筋肉が炎症していることは間違いないな」


つるぎが言う。


「その通りです。だから、ちゃんと『癒癒傷ターミエ』も発動しないと、明日の朝つるぎさんが動けなくなっちゃいますよ」


「なるほどなぁ……」


僕は「癒癒傷ターミエ」を発動した。先ほどと同じように光がつるぎの腕を包む。


「ほい、右腕は出来た」


「じゃあ、その調子で全身頼む」


「全身はさすがに無茶だろ……」


「無茶なことはないだろう。頼む!やってくれ!」


「いや、でも……」


それだとつるぎは裸にならないといけないのではないかという疑問を言えないでいると、


「服の上からでもちゃんと効果はありますから心配しないでも大丈夫ですよ、カイトさん」


とリータが言った。


「なんだ、そんなことを心配していたのか君は……安心しろ。私の身体は見られても恥ずかしくないプロポーションをしているぞ?」


つるぎがニヤニヤしながら僕に向かって言う。


「お前は見られても恥ずかしくないかもしれないけど、僕は見て恥ずかしいの」


僕はつるぎの左腕を持ちながら言う。こうして、僕はつるぎの身体に治癒魔法をかけ続けた。



つるぎの全身に魔法をかけ終え、夕飯を済ませた後。リータは自分の家に帰ってしまった。どうやら明日の授業の準備をするらしく、やはり熱心だなぁと思った。


「かいと~!ベッドまで運んでくれ~!」


つるぎがまた机の上に突っ伏しながら、甘えた声で僕に言う。


「さっきの魔法で痛みはなくなったんだろう?じゃあ、自分で行けよ」


「冷たいやつだな、君は。体は確かに痛くないが、本当に体力が今ないから動けないんだ。そんなに私を運ぶのが嫌なら体力も魔法で回復させてくれ」


つるぎは少し怒ったように言う。


「いや、それはできないけど……」


「じゃあ、運んでくれたっていいじゃあないか!」


「はいはい、わかったよ。運べばいいんだろ、運べば」


「その通りだ。お姫様抱っこで頼むな」


「無茶言うなよ……」


「頑張って男を見せてくれ」


「……へいへい」


結局言われた通り、僕はつるぎをなんとかお姫様抱っこすることに成功し、階段を上る。そして、つるぎの部屋に入り、つるぎをベッドに横たわらせる。


「はい、ベッドに着いたぞ」


「うむ、ご苦労」


つるぎは満足そうにベッドに寝ころぶと、一度大きく伸びをした。


「本当に疲れた……今日はもう寝る」


「さいですか」


つるぎが寝るというので僕は部屋から出ていこうとした。すると、つるぎが僕の腕をつかんだ。


「どうした?」


「いや、別に……おやすみ、海斗」


「うん、おやすみ。つるぎ」


つるぎが僕の手を放す。そして、あっという間に寝息を立てて寝てしまった。


「お休み三秒って本当にあるんだな……というか、確かお休み三秒って医学的には気絶してるのと同じなんじゃあなかったっけ?」


僕はつるぎに毛布を掛けて、部屋を後にする。そろそろ僕も寝ることにしようとするか。僕は、自分の部屋に入ってベッドに横たわった。ふう、今日もすごい一日だったな……明日も頑張らないと……

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