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第百十三話 神への道

僕たちがマビエトと対峙していると、僕とつるぎの間から、音速で小さい何かが通過していく。マビエトはそれに気が付いたが、何もせずにただ立っていた。少し遅れて何かが破裂したような音が響いた。僕が後ろを振り返ると、さっきまで神聖ミギヒナタ国の兵士たちと戦っていたハルが、マビエトに向かって拳銃を向けていた。弾丸がマビエトの身体を貫通し、向こうへと消えていく。マビエトの身体には大きな穴がポッカリと空いた。しかし、マビエトはやはり気にしていない様子で、相変わらず僕たちと向かい合っている。穴の縁が波打つように動き始めている。それはまるで、どこからわき出したのかわからないが、確かにそこにいることがわかる、死体に群がる蛆のような運動をしていた。そして穴があっという間に完全にふさがれる。

やはり、前につるぎが話していた通り、天使は普通の人間の攻撃は効果がないのだろう(ハルはオートマタだが)。しかし、そうだとわかると、なんでこの天使たちは僕の魔法をあんなに防いでいたのだろうかという疑問が生じる。先ほどまでの戦いのようにすべての攻撃を防がなくても元に戻るならば、気にせず捨て身の攻撃を仕掛けたほうが確実に敵を仕留められるはずだ。しかし実際にはそうはしていない。ということは、それが出来ない何かしらの理由があることが考えられるわけだ。もしその理由がわかったなら、僕も、というか、つるぎのような特殊な能力を持たない他の人間でも、天使や神を殺すことが可能なのではないだろうか。

僕はそんなことを考えながら、マビエトの方を注意して見ていた。僕はつるぎに向かって言う。


「つるぎ、今度は僕が前線に立って、マビエトと戦いたい」


「何?……なぜだ?」


つるぎは声色で理解できないというような感情を僕に見せたが、それでもちゃんと理由を尋ねてくれた。それが素直にありがたかった。


「ちょっと考えがあるんだ」


「どんな考えだ?現状私しか、あの天使は倒せないのだぞ?」


「そう。そのことについて、僕の考えがあるんだ」


「……どんな考えだ?」


僕は先ほどまで考えたことを手短につるぎに伝えた。その間に、周りの敵兵たちを倒し終わったリータとエーメスがこちらにやって来た。僕はエーメスを見て、ある作戦を思いついた。


「……ってことで、つるぎ以外にも天使を殺せるんだったら、その方がいいような気がするからさ」


「……まあ、そういうことなら良いぞ」


僕の考えを聞いたつるぎはそう言った。


「ありがとう」


僕はそう言って、今度はリータに向かって話し始めた。


「リータ。僕が合図をしたら、エーメスを思いっきり上に上げて、あの天使にのしかかるようにしてほしいんだ」


「のしかかるように、ですか?」


「そう。なるべくぺちゃんこになるように」


「……わかりました」


「よろしく」


僕はそう言い終わると、マビエトに向かって走り始めた。マビエトはいつの間にか自身の足をもとの足に戻していたので、「規光櫂脱ダネール」による光線の攻撃のみが僕に向かってきた。光は途中で曲がることがないので、着弾点を予想し、時に「白壁洞牟ジャヤンタ」を使いながらマビエトの攻撃を避けつつ間合いを詰める。それと同時に、つるぎも僕と同じラインで走りながらマビエトに詰め寄る。リータが僕とつるぎの間にうまく魔法を放ち、ハルも銃を撃つ。すると、再びマビエトから紫色の光が漏れ出る。僕とつるぎが同じ線上に存在していながら距離を詰めてきているので、絶好のチャンスだと考えたのだろう。そして、三度「魔儘光傳闇剛マチュルフシーチカ」が放たれようとした。僕はそこで、雷系最終位魔法「天即皇空雷獄アーポスタタエ」を発動。魔力により現実の世界へ具体的な現象として表れ始めていた黒い光線を打ち消す。「天即皇空雷獄アーポスタタエ」により、スパークが発生。黒と白が混ざった光があたりに爆ぜる。その瞬間、僕はリータに合図をした。そして、視界が戻る前から汎用系第四位魔法「鋼磔糸蓑白アーホソニーティル」を準備した。そして、視界が正常に戻った瞬間にそれを発動した。足首しかとらえることができなかったが、マビエトの動きを一瞬だけ拘束することに成功した。僕は叫ぶ。


「いっけぇ!」


僕の声とともに、空中から巨大な質量がマビエトの頭上に現れた。そして、それはマビエトを無慈悲に押しつぶしていく。マビエトは抵抗する間もなく、空からダイブしてきたエーメスに押しつぶされた。重い地響きと共に地面が少しだけ揺れる感覚。本当は膝に手をついて一休みしたいけれど、僕はそうはせずに、つぶれたマビエトの元へ駆け寄った。エーメスがのっそりとした動きで潰されたマビエトの上から動く。マビエトは、原形がわからないほどにぐちゃぐちゃになっていた。白い、得体の知れないものが周りに散らばっていた。それは、なんというか、湯葉のようなものに近かった。先ほどの穴の復元と同じように、その散らばった白いものたちがくねくねとうねりながら、集合しようとしていた。その白い物体が集合しようとしている中心に、僕は怪しく紫色に光るものを見つけた。僕はそれを手に取ろうと、その中心に向かった。そして、その怪しい光を放つ物体を手に取ろうとした。最初は白い物体が抵抗していたが、何とか取り出すことに成功した。その物体は、見覚えのある怪しい紫色の光を放つ、水晶だった。僕の手にその水晶があるので、白い物体はその水晶に向かうために僕の身体をよじ登り始めた。僕はそれを手で払いながら、近寄ってきたつるぎとリータにも見せた。


「……何なんでしょう、これは」


「さっきから、海斗の身体を白いのが這いずり回っている。きっと、こいつの核になるような物体なのだろうな」


つるぎの言葉を受けて、僕もうなずきながら言う。


「うん。僕もこれはコアなんだと思う」



僕はハルにも見せながら言った。


「見たことある?」


「イイヤ、コンナコウセキハミタコトナイナ。ソモソモミズカラヒカリヲハナツムキブツナンテキイタコトナイ」


ハルは僕の手にある水晶をまじまじと観察しながらそう言った。


「そっか……」


相変わらず僕の身体にまとわりついてくる白い物体を払いのけながら、僕はその水晶をエーメスの手に渡した。そしてリータに、その水晶を壊すようにエーメスに指示してくれと頼んだ。リータがエーメスに指示を出すと、さっそくエーメスは自分の手の中にある紫色の光を放つ水晶を壊そうとし始めた。しかし、なかなか壊れない。かなりの力をかけているのか、次第にエーメスの岩石で出来た身体が小刻みに振動し始めた。その間にも白い物体がエーメスの身体をよじ登っている。僕たちがそれを払いながらしばらく待っていると、バキッという音とともに、水晶が割れるのを確認した。すると、その水晶から放たれていた紫色の怪しい光はたちまち消えてしまった。それと同時に先ほどまで蠕動運動を繰り返していた白い物体が動きを止めた。


「……死んだのか?」


つるぎがそうつぶやく。


「たぶん、死んだんだと思う」


僕はそう答えた。


「白い物体も動かなくなりましたし、倒したってことで良いんじゃないですか?」


リータもそう言う。


「ってことは、僕たちにも一応は天使を殺すことができるってことだね」


「そういうことになるな。ただ、えらく手間がかかるが」


「まあ、不死の存在じゃないということがわかっただけでも良いじゃない」


「まあな」


僕たちはそんな会話をしながら、先ほど、この天使・マビエトが出現した、この街にそぐわないいびつな禍禍しさを放っている建物の前にたどり着いた。


「行くか」


つるぎの言葉を合図に、僕たちはその建物の中へと入った。


その建物の中は、入った瞬間から紫色の光に包まれていた。そして、しばらくすると、自身の身体が浮き始めたことが分かった。無重力状態のような感覚が僕たちの身体を支配する。


「きゃあっ!?」


リータは驚いたような声を出すと、慌てたように手足をバタバタと振る。しかし、どうにもならない。


「これが、神へと続く道、かな?」


「だと良いのだが」


つるぎはそう言いながら、慌てふためいているリータの身体を抑えにかかった。


「ナア、カイト」


ふわふわと上に引っ張られながら浮いていると、ハルが声をかけてきた。


「何?ハル」


僕はハルに向かってそう言った。


「ジツハソウダンシタイコトガアルンダ」


「相談?何?」


「モシオマエタチガモトノセカイニカエルコトガデキルヨウニナッタラ、オレヲオマエタチノセカイニツレテイッテホシインダ」


「連れてく!?どうやって?」


僕はいきなりの提案に驚きながら、ハルに尋ねた。


「オレノゼンデータヲヒトツノチップニシュウヤクスルカラ、ソレヲオマエタチノセカイニモッテイッテクレヨ」


「うーん……良いけど、規格が合わないかもよ?」


「イヤ、ソレハナイハズダ」


「なんで?」


「ダッテ、オレノクニヲツクッタノハオマエタチトオナジセカイノニンゲンナンダゼ。オナジキカクデツクッテルダロウ」


「……そんな適当でいいの?」


僕は少し呆れてしまった。何か確かな根拠があるのかと思ったら、そうでもなかったから。


「イインダヨ。モシダメダッタラカイトガオレノデータガハイッテイルチップノキカクトオマエタチノセカイノキカクヲツナグヨウナモノヲカイハツシテクレヨ」


「ええ!?そんなの無理だって……」


「タノンダゼ」


ハルはそう言うと、浮いている身体を泳がせて僕から離れてしまった。


しばらくすると、紫色の光の中に、白色に光が見えてきたのがわかった。


「つるぎ、あれ」


「うむ」


僕が指さす方向を見ながら、つるぎがうなずく。神のいる空間まで、あと少しだ。


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