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第百八話 神聖ミギヒナタ国への進軍

それから約二日間、ひたすら僕たちは山脈を登り続けた。リグディルーベよりも北に位置しているこの山脈は、位置的な関係と高度の関係でとても寒かった。僕はこの世界で初めて雪を見た。この世界の雪も変わらず白かった。その白さは都内の排気ガスを含んだすすけたような白さではなく、何と言えばいいのか、白らしい白だった。高度が高くなるにつれて積雪が高くなっていく。今回は大人数での進軍のためできるだけ山を登らないようなルートを通っているらしいが、それでも雪は積もっていく。こんなに寒くなるんだったらもう一枚上に着るものでも買っておけばよかったと思った。進軍の行列は、高度が上がるたびに士気が下がっているような感じがした。まあ、これだけの人数で、生物にとって過酷な環境を進軍しなければならないというのは辛いものだ。ただ、兵隊たちと違い、冒険者たちの顔色は日に日によくなっていっているように見えた。「野人」ことオケーノなんかは雪を見てテンションが上がり続けている。他の英雄たちも、なぜか知らないがわくわくしているように見えた。この後に待ち構えているのは戦闘だけなのに、どうしてそんなに楽しそうな顔をしているのだろうか。僕は普通にそう思ってから、はたと気が付いた。ああ、そうだった。この人たちは最高位冒険者で自分の力に絶対の自信があり戦闘狂だ。この後に控えている戦いに心を躍らせているのだ。僕はそれに気が付いてから、自分たちのことだけを考えることにした。


僕たちは今、神聖ミギヒナタ国に向かっているが、そこについてからどうするのかという話を一切していなかった。それは、別に意識してそうしようとしているのではなくて、ただ単純に僕たちの真の目的が他の人たちに聞かれると面倒くさいからしなかっただけだった。だから僕は、一人で考えた。神聖ミギヒナタ国に入って、どのようにして神のいるあの世界に行こうかということを。僕の個人的な見解としては、きっとどこかに神のいる場所に通じている通路のようなものがあるだろうと踏んでいる。それはなぜかというと、「天使」という存在がこの世界に物体として存在しているということは、向こうの世界からこちらの世界に来るための方法がなければおかしいからだ。そして、その方法は、前に天使が見せた移動魔法ではないと思う。もし、移動魔法によって向こうの世界とこちらの世界を行き来しているのであれば、天使が来なくても良いからだ。つまり、わざわざ不完全な天使を送り出す必要が神の側にはなく、神自身がこちに来ればすべての問題を解決できるからだ。まあ、神がものすごくものぐさな性格だったら、それも考えられなくはないが。しかし、そんなことはないのだろう。神話にも書いてあったが、神は巫女の反乱を機に巫女のような紙にあだ名す力を持つものが発生していないかつぶさに観察しているらしい。そんなバイタリティを持つ奴がわざわざ天使を送るかと言われれば、僕はそんなことはせず、みずから出向いてくるのではないかと思ってしまう。だから、神にはこちらの世界に来れない何らかの事情があって、その代わりに天使を送っている。そして、その天使を送るための方法があるはずだと僕は思っているのだ。その方法が、こちらの世界と向こうの世界をつなぐ通路の存在として発現しているのではないかと考えている。よく思い出してみれば、僕たちが神のいた空間からこの世界に来た時、無限にも思える空間を通ってきた。途中から意識がなくなって覚えていないが、確かにそんな空間があった。だとすると、僕が今考えていることもあながち間違いではないのかもしれない。問題は、もしそうだったとして、どうやってその通り道を見つけるのかと、どうやってそこを通っていくかというものだある。一番重要なのはどうやってそれを見つけるかだ。たぶん、それを見つけてしまえば、それをどうやって使えばいいのかということは自然にわかってくるような気がする。僕が知る中では天使は四体この世界に来ていたことになる。ということは、少なくとも四体はその通り道を使えたわけだ。四体が使えるということは、それは使いやすい親切設計になっている可能性が高い。スマホみたいに。ただ、天使にとっての親切設計な可能性も十分にあるので、そこは何とも言えない感じではある。いずれにせよ、神聖ミギヒナタ国に入って戦闘がおこった時、僕たちは他の冒険者及び兵隊に任せて、神のいる場所へと向かう方法を探さなければいけないということは最重要課題であるということは頭の中に入れておかなければならない。


そもそも、神聖ミギヒナタ国はどのようなつくりになっているのだろう。確か、レーレン公国から領地を奪って作りあげた宗教国家だという話は聞いている。いったい、そこにはどのくらいの規模の人間や生物がすんでいるのだろうか。建物の形や町の形状はどうなっているのだろう。僕たちはいまだに何も知らない。きっと、もう向こうの奴らは僕たちが攻めてきているということを知っているだろう。そうした場合、僕たちの向かう場所が、どこかの城下町みたいに攻められても大丈夫な安心設計の街だったらこちらが不利になるだろう。そこら辺の情報がどのようになっているのか、僕はわからない。まあ、進軍しているということはきっと大丈夫なのだろう。わざわざ負けるために帝国がこれだけの軍隊を進軍させるとも思えないし。


山を登り始めてから二日目の夕方に、ようやく僕たちは山脈を登りきって、下りへと向かった。下りを抜けるとついに神聖ミギヒナタ国へと入る。神聖ミギヒナタ国への進軍は、山を下り切ってから次の日に決行されるという話が、三日目の途中でなされた。そして、山を下りきった夜。僕はつるぎとリータ、ハルを集めて短い間話し合いをした。話した内容は、神のいる場所に行く方法を探し出すことを優先に行動しようということだ。三人はそれぞれそれを了承してくれた。


「いよいよだな」


話し合いが終わって、僕が火の番をしていると、つるぎが僕の隣に座ってきた。


「そうだね……」


「しかし、どうなるかわからないからな。もしかしたら、何の手掛かりもつかめないかもしれない」


「……それは嫌だね」


「……私もだ」


つるぎがぎゅっと僕の左手を握る。僕はその手を握り返し、じっと目の前の火を見つめた。

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