第百六話 戦いの後
僕たちは冒険者ウーノンに訪れた。冒険者ウーノンは相変わらずあわただしい雰囲気が流れていた。僕たちはこの前受付をしてくれた女性の元へと向かった。なぜならその方が話が速いと思ったからだ。彼女は僕たちの顔を見ると、話しかけてきた。
「つるぎさん、大丈夫でしたか!?」
「ああ、問題ない。それで、私たちの状況なのだが……」
「はい。昨日の戦闘で、ミギヒナタ国の主戦力である生物兵器を一体倒したことは存じています」
「そうか。私たち以外の被害はどうなっている?」
「はい。実は……」
受付嬢の話によると、今はこうなっているらしい。「ゾゴバットの花」及び、「ラジウルス盾団」の両党は、党首であるヴィエリオールとジギルウォークを含めた党のトップクラスを誇る力の持ち主たちは死なずに済んだ。しかし、やはり過去二回やり合った中で一番の被害が出てしまったそうだ。「ラジウルス盾団」の党首であるジギルウォークは今日姿を見せたらしい。天使の最終位魔法をまともに身体で受け止めて生きているとか頭おかしい。しかも、その翌日には冒険者ウーノンい顔を出せるほど回復しているとか、やはり頭おかしい。また、副党首だったらしいライドウットもギリギリ生きているようだ。マストロヤンニの一撃をもろに喰らってもなお生きているというのは、やはり盾団の名に恥じない耐久力だと思った。うん、ライドウットも頭おかしいな。「ゾゴバットの花」の党首であるヴィエリオールはジギルウォークのようには姿を見せていないが、生きているそうだ。ミニッタとリチットも生きているらしい。僕はリチットが生きていると聞いて、妙に安心してしまった。あの時はミニッタにしか治癒魔法をかけることができずにいたので、重傷だったリチットにもかけてやればよかったと心の中で少し後悔していたからだ。他に、民間への被害が少しあったらしいが、大きな被害にはなっていないようだ。
「それと、ついに帝国側が神聖ミギヒナタ国に兵を送ることになりました」
「何!?それは本当か!?」
「ええ。その件についてもお話ししようと思って、よく調べてきたんですよ。そしてら、帝国兵団以外にも、上位の冒険者を連れていきたいみたいでした」
「そうか……ミギヒナタに進軍するのはいつだ?」
「それは今のところ未定ですが、そう遅くはないと思います。少なくとも二週間以内には進軍を開始するのではないかと思われます」
「私たちがその進軍に付いて行くことは可能なのか?」
「ええ。というか、むしろ帝国側からお話が来ると思いますよ。なんて言ったって、初めてあの神聖ミギヒナタ国の主戦力である生物兵器を倒したんですから」
「ふむ……」
つるぎはそれを聞くと黙ってしまった。
「あ、そうそう。これ……」
黙ったつるぎをしり目に受付嬢は話を進めていた。
「あの生物兵器を一体倒したということで、報酬が入っていますよ」
「あれ、そうなんだ」
僕はつるぎに代わって報酬の入った袋を受け取る。
「ちなみにこれって、いくらくらい?僕たちが借りたお金を少しでも返せる?」
「ええ、もちろん。というか、完済できますよ。完済出来て、なおかつおつりがくるくらいです」
「え、そんな入ってんの?」
「ええ」
「そっか……じゃあ、借金返しちゃおうよ。ね、つるぎ?」
「……うん、そうだな」
つるぎはどこか上の空で生返事をする。僕はその返事を受けて、とりあえず借りたお金を返すことにした。
「じゃあ、これで返済完了ってことで」
「はい。承知いたしました」
受付嬢はお金を受け取ると、奥の方へとそのお金を持っていった。そして、しばらくして書類を持ってきた。渡された書類に僕はしっかりと目を通して、そこにサインした。
「では、確かに貸し出したお金は返されました」
受付嬢がそう言うと、またしても僕がサインした書類を持って奥の方へと向かって行った。そしてすぐにこちらに戻ってくる。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
「あ、一つだけ」
今まで黙っていたつるぎが、口を開いた。
「はい、何でしょう」
「帝国側からのオファーが仮にあったとしたら、それはどこを通じて私たちの耳に入るのだ?」
「それは、もちろん冒険者ウーノンですよ」
「そうか。なら、心配ないな」
「ええ。ですから安心してください。依頼があればすぐにお知らせいたしますから」
「うむ。よろしく頼む」
そして僕たちは受付嬢にさよならを言って、冒険者ウーノンを後にした。
「進軍するってね」
冒険者ウーノンを出た後、僕たちは先ほど聞いた話を思い出しながら今後どうするかについて話し始めた。僕たちは最初、もうこのまま神聖ミギヒナタ国に侵入するつもりでいたので、それをどうするかどうか話した。
「どうする?」
「そうだな。私たちの当初の計画ではこのまますぐに神聖ミギヒナタに行こうという話だったが……」
「もし帝国側からオファーがあるとすれば、それに乗っていった方がいいような感じもするよね」
「うむ。というか、絶対にそっちの方が良いだろうな。私たちがミギヒナタのすべての戦力を引き受けなくて良いということになるからな。当初の予定では敵を全員なぎ倒していくというストロングスタイルをとるつもりだったから、これは一気に楽になったな」
「そうだね。じゃあ、帝国の進軍に便乗するってことで良いかな?」
「うむ。良いんじゃないか。ただ一つ心配なのは、もし私たちに帝国側からのオファーがなかったらどうするかということだ」
「別に気にしなくても良いんじゃないの、それは。だって、結局帝国兵団はミギヒナタに進軍するわけだし。それに勝手について行けばいいんじゃない?」
「……確かに、それもそうか……」
僕たちは、未だに状況をつかめていないリータを置き去りに、二人でああでもないこうでもないとその後も話しながら宿へと歩いた。




