一緒に車に乗っていたのは
どうやら病院らしい、あの後記憶はないが電話で助けを呼べたのか、誰かが通報してくれたのか分からないが、命は助かったよだ。
僕は、辺りを見回そうと首を動かそうとするがその瞬間、全身に痛みが走る。
「っ痛!!」
どうやら、重症らしい骨も折れているのか足は包帯で吊るされていた。
すると、看護婦さんらしい人が病室に入ってきた。
「あら、気がついたのね良かったわ」
「ここは…」
「ここは、木下病院よ貴方、事故にあって大怪我したの」
その言葉を聞いて夢じゃないと確信した。あの夜急にハンドルが効かなくなって、気がついたらガードレールと壁に激突していた。
「もう2日以上意識が戻らなかったから心配したわ、もうすぐ先生も来られるから、もう安心よ」
2日も…、僕は…、あれ?僕は一体何をしてたんだっけ、意識がはっきりしないせいか、思い出せない。車で事故にあったのは覚えてるけど、その日僕達は何処かに行った気がする。
僕達?……、そうだ涼太は!?あの時一緒に乗っていた。
「あの、涼太…!!っ!!」
「駄目よ無理しちゃ、全身打撲に骨も痛めてるんだから」
「でも、あの…」
その時、病室のドアが開き初老の人が入ってきた。
「どうだい、気分は、もう大丈夫、心配いらないよ」
どうやら医者らしい、僕の体をチェックすると、笑顔で話しかけてくる。
「あの、一緒に乗っていた友達は、どうなりましたか?」
「友達?」
「はい、同い年の、金髪で助手席に乗ってたんですけど、事故にあっちゃって、僕自分のことしか分からなくて、気付いたらベットの上で」
「まぁまぁ、落ち着きなさいもう大丈夫だから。今は治療に専念するんだ」
そう言いながら優しい話し方で僕をなだめてくれる。しかし、その後の言葉で僕は一気に恐怖心を覚えた。
「車に乗っていたのは君一人だけだったそうだよ、その友達というのは誰のことか分からないがね」
医者は、しばらく僕の体をチェックすると病室を出ていった。
車に乗っていたのは僕だけだったって?そんな訳ない、確かにあの時一緒に車に乗り込んで急いで出たんだ!!間違いなく涼太は助手席に乗っていた。
何が何だか分からず、友達の安否を確認したいそう思うのだったが、体は言う事をきかず、ただ痛みだけが伝わってくる。
ダメだ、涼太の事は心配だけど、今は治療に専念した方が良さそうだ。僕はゆっくりと目を閉じると深い眠りについた。
どれくらい寝ただろうか、気がつくと夜になっていた。窓から外を見ると満月の明かりだけが病室を照らしていた。その月に見とれていると不意に振動が伝わった。
ブーーー、ブーーー
目で辺りを確認してみると、どうやらベットの横にある机の上の携帯がなっているようだった。
ブーーー、ブーーー
取りたいのはやまやまだったが、今の僕は身動きが取れない状況だ。それはしばらくすると止まった。
それから1週間が過ぎて僕の容態も次第に回復し始めていた。看護婦さんからも。
「この調子ならもうすぐ退院できるわね」
そう言われた。
そこで、ふとテーブルにあった自分の携帯に気がつく。手に取ってみると画面にはヒビが入っており、所々かけている。電源を入れようとしてみるが、壊れているのかもしくは電池が切れたのか反応がない。そもそもここは病院なので携帯は使えないのだが。
そう思い、携帯を置くと再び横になる。
涼太どうしただろう、医者は運び込まれたのは僕だけだって言ってたけど。
あの時、廃病院から急いで車まで逃げ帰って、それで涼太に突如後ろから声かけられて…、あれ、待てよ?
ボクはもう一度思い返してみる。
廃病院を出て涼太より先に車まで戻った。そこまでは間違いない、そこで振り返ったら誰もいなくて涼太に電話を掛けた。なのになんで涼太は僕の後ろから声を掛けれたんだ?僕を追い越して車で待ってたとか…、いやそんなはずは無い、あの時は無我夢中だったけど、僕の前に人はいなかった。ならなんで涼太は後ろから声を掛けてきたんだ…。
僕はその瞬間恐怖に襲われる。そして、先生の言葉を思い出す。
「車に乗っていたのは君一人だけだった」
嘘だ、なら僕は一体誰と車に乗っていたんだ!!涼太の安否を確認しなければ。
そう思いなんとか動くようになった体を起こし、松葉杖をつきながら固定電話のある場所へと向かった。