表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実の神威 ~神々がチートだなんて誰が言った?~  作者: ことほぎ
第一章 堕ち神編
2/15

1話 烏(カラス)と少女と”のーとぱそこん”

なんということでしょう!


草原の中に、この~木なんの木きになる木~♪

その根本に、ビジネススーツを着込んだ男が狐と龍を両脇に従えるようにして呆然と立ち尽くす、このシュールな状況。


「ひ、ヒロシ様?・・・・」

狐、いやサクラが力の抜けた声で俺を呼ぶ。


「見渡す限り草原ですねぇ・・・・」

龍、いやタチバナが力なく呟く。


「さて、サクラさん、タチバナさん、どうしましょうかね?」

ほうけた顔のまま、そう聞いてみる。


「「ヒロシ様! 敬称はおやめください!」」


息ぴったりにハモるのねって、問題はそこか!

しかし、見渡す限りの、草、草、草。背後の”この木なんの木”

明らかに日本じゃないよなぁ。っていうか、地球なのかすらわからないよなぁ。

別宇宙とか試験的な世界とか、なんかそんなこと言ってたようなぁ・・・


「ヒロシ様、現地で落ち合う手はずになっているお手伝いさんの姿が見えませんねぇ・・・」


サクラがあたりを見回しながら呟く。


『お手伝いさんとは、いかにも無礼な物言いじゃのぉ』


あぁ、これ、この頭の中に直接響いてくるようなやつ、あぁ、ここでも面倒くさいのが来ちゃうのかぁ。


『だれが面倒くさいじゃと? 人の子の分際でバチでも当ててほしいのか・・・・』

『・・・・・・・』


いきなり目の前に、見た目12、3歳の碧色の黒髪が背中まで伸び澄んだ黒い瞳に少し大人びいた美しい少女が巫女姿で現れ俺をじっと見ている。・・・・・

胸のサイズは明らかに少女のそれではない。まさにグレート!アルティメット!ワンダフォー!


『・・・・・・・』


俺を見ている。じーっと見ている。じーっと、じーっと・・・・・あれ?

あ、サクラやタチバナがそうだったように、滝のような冷や汗をかき始めた。


「とんだ御無礼を!!!」


そう叫んだかと思うと後方に上空に退き、見事なジャンピング土下座。


この絵面、中年のおっさんが巫女服の少女虐待しているようにしか見えないと思う。

いや、傍から見れば、俺が少女にあんなことやこんなことを強制し許しを少女に追い打ちをかけようとする変態に見えるかもしれない。


「あ、ど、土下座はいいから。えっと、扶桑大です。ヒロシと呼んでください。さぁ、立って立って」


少女に出来る限りにこやかに歩みより、起立を促す俺。

優しく優しく、そっと肩に手を置こうと・・・・


「ヒィ!!!!!!! おーかーさーれーるー!!」


ガバっと顔を上げたかと思うと、恐怖にがにじむ形相で、まるで黒板を爪でひっかくような叫び声。


「ちょ! おま!」


犯されるって何? え、俺が性犯罪者? 

土下座する少女を優しく立たせようとしただけなのに、セクハラ? あぁ!これがセクハラなのかぁ!?


パシン!

こ気味いい小さな破裂音がする。


「いい加減しろ! このド変態巫女が!」


どこから現れたのか黒装束の・・・え?ニンジャ? ニンジャだよね? この黒髪の美青年。間違いなくニンジャだよね?

そのニンジャが、少女巫女の後頭部を・・・あれ? あれハリセンだよね?あの白い蛇腹状の扇。間違いなくハリセンだよね?


「だれが変態巫女じゃ!」

「変態巫女とは言ってない。ド変態巫女だと言たんだ。」


お互い怒気を顕にし対峙する。

今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうな雰囲気。


「あのぉ~」


恐る恐る声をかけてみる。

するとニンジャがシュタ!っとそれは見事に踵を返し片膝を立てて跪く。


「これは、とんだ失礼をヒロシ殿。自分は八咫烏(やたがらす)。ヤタと呼称してください。」


八咫烏? あのサッカーかなんかのモチーフになった三本足の烏だったっけ?


「はっ!その三本足の烏ではありますが自分の場合、陸上自衛隊中央情報隊のモチーフの八咫烏のほうが近いかと具申うるであります!」


あぁ心読んじゃうのねぇ・・・仕様なのねぇ・・・って、自分?具申? なんで陸上自衛隊?


「えっと、とりあえず心読むの禁止で。」

「!」


目が驚きの表情をあらわす。


「了解であります!」


「八咫烏のヤタさんでしたっけ、よろしくおねがいします。」

「敬称は要りません! ヤタと呼称ください!」


あぁ、この人?も敬称駄目な人なのねぇ・・・・


「で、そちらの美しい巫女さんは?」


あリアルで見ちゃったよ、瞬間湯沸かし器って言うんだっけ? 顔から耳の先まで真っ赤になってる。


「わ、わら、わら、わら、うつ、うつ、うつ・・・・・・」


あ、白目剥いて鼻血出して倒れた。


お、俺、何か言ってはいけないことを言ったのか?


サクラとタチバナがさっと近づき介抱を始めながらタチバナが話しだす。


「ヒロシ様、この方は、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)。”天女”と呼ばれるお方でございます。」


天女ねぇ・・・・


「タチバナさん。天女様って女神さんだっけ?」

「ですから、敬称はお止め・・・」

「俺がさん付けしたいんだから、いいでしょ? 呼び捨てとか、こっちが気を使う。あ、ヤタさんもそのつもりで。」


「かしこまりました。」

「・・・・・了解であります!」


タチバナとヤタさんが恭しく返事をする。

しかしヤタさん返事まで何故1拍の間? ”さん”付けそんなに嫌なの?


タチバナが天女について説明をはじめた。


「神籍の内なのですが厳密には神ではなく我々のような神使と、神の中間のようなお立場でございます。

八咫烏様もそのお立場でございます。」


しばらくするとサクラに介抱されていた少女巫女が目を覚まし、申し訳なさそうに傅いてきた。


「取り乱して申し訳ございませぬ。妾は天宇受賣(あめのうずめ)」 ウズメと及びください。」

「扶桑大です。ヒロシと呼んでください。」


「かしこまりましてございます。ヒロシ様。度重なるご無礼、平にご容赦を。」


ジャンピング土下座しようとクッと傅いた四肢に力を入れるウズメ。


「土下座禁止で!」


俺もう泣きそうです。いえ、すでに泣いてます。どういう状態なのよこれ。

えっと、狐と龍と少女に忍者? この面子で俺に何をどうしろと!

深い溜め息が出ると同時に、あれ?

三本足の八咫烏がなんでニンジャ?


「ヤタさん、烏ですよね?」

「はい。烏であります。三本足ですありますが正真正銘、烏であります。」

「でもその姿はニンジャ・・・・」

「諜報のためであります!」キリッ


烏が諜報って何それ。諜報ってスパイのことですよね? あの、ダンダラ~ダンダン ダンダン♪のBGMでお馴染みジェー○ズ・ボ○ドみたいな、あれのことですよね?


豊葦原(とよあしはら)瑞穂国(みずほのくに)では、諜報といえば烏。後にも先にも上にも下にも右にも左にも烏しか居ないのであります!

迷子のお世話から、潜入捜査、果ては健康的暗殺まで、サクッとこなすのであります!!」

「健康的暗殺って・・・・」


ちょっと俺の頬が引き攣る。


「で、その八咫烏のヤタさんが、なんでそんな姿に?」

「そんな姿とは・・・・あ、カラスの姿ではないのかと、お尋ねなのでありますね?

で、あれば、ドロン!」


ドロンって言ったよあの人。ドロンだよドロン。

今どきそんな事言う人いないよ。激しく厨ニ臭いんですが!


一瞬光りがパット広がり、目の前にはホバリングする烏。あ、地面に降り立ち、ドヤ顔っぽく、踵をこちらに向ける。


マジ脚三本でした!


「”化称(けしょう)”ですね。」


サクラが見事だと頷きながら続ける。


「神使もそうですが人の子からの見た目を変えることが出来るんです。あぁ、所謂”へーーーんしん”って感じですね。」


なんか違う。それなんか違うよサクラ。腰に風車のベルトも無いしバイクに乗ってないじゃない。

さらにサクラが続ける。


「私もタチバナも”化称”できますよっていうか、社ではずっとしてましたよ?」

「え?」俺

「え?」タチバナ

「え?」サクラ


俺がキョトンとするとサクラもタチバナもキョトンとする。


「じゃサクッと種明かししちゃいますね」 


コンッ!という鳴き声が聞こえたか気がした。

一瞬ぱっと光ると、そこにはものすごく見たことがある、いや、とてもよく知っている黒髪の人物が白いワンピースに真っ白いつば広の帽子をかぶってニコヤカに佇んでいる。


「えっと、ウチの櫻井さんですよね?巫女の?」

「はいっ」


この時俺の中で”サクラ”から”サクラさん”になった。


サクラさんがニコッと笑う、間違いなく櫻井さんだ。

物心ついたときから面倒見てくれて遊んでくれて、ずっときれいなお姉さんだなぁって・・・・あれ?

俺36だよ? 物心ついたときに二十歳そこいらだった美人な櫻井さん。

ずっと二十歳そこいら。あれ?


「えっと櫻井さん? ずっと二十歳?」

「はい。神威ですね。現世の矛盾は些末なことなので都度適当に。ウフッ永遠の二十歳です。」


いやいや、ずっと二十歳って絶対に皆怪しく・・・・思ってなかったよ。

思っていませんでしたよ!

それが至極当たり前でふつうのコトでしたよ!

違和感仕事しろ!!


「あぁ、そういうことにしておきます。ってか櫻井さんがサクラさんとか、因果律云々って話は・・・・あぁもういいです。何でもないです。」


深い溜め息を吐きながら、タチバナに視線を送る。

ぱっと光って・・・・・・あぁ、よく知ってる人だよ。イケメン・ロマンスグレーの権禰宜。橘さんだよ。


「ヒロシ様。タチバナでございます。」


このとき俺の中でタチバナがタチバナさんになった。

なにその執事風の格好。権禰宜だよね?神職だよね?袴はどうしたの?

そんな俺の思いを無視するようにタチバナが続ける。


「おや、この格好になにか問題でもございますでしょうか? いいですかヒロシ様。私は神使でございます。謂わば神の執事。これが正装でございます。」


いやそれおかしいでしょ。どうみても洋式。英国貴族あたりの執事スタイルですよね?

疲れた。あらゆる常識が音を立てて崩れていく。

神様とかその関係って、こんなに適当でいいの?

タチバナさんが遠くをみるような目をし何かを思い出すように語りだす。


「小さい折のヒロシ様の可愛かた事。私とサクラでオムツ替えもしていたのでございますぞ?

いやぁ、あのヒロシ様が、御神命を授かり事に当たるようになるとは、感無量にございます。」


あぁ・・・・・オムツね、

もうなにも言いません。ごめんなさい。許してください。


「さてヒロシ様。この地に権現(ごんげん)された訳ですが、これからどうします?」


サクラさんが嬉しさたっぷりの表情で聞いてきた。

どうしよう。草原のど真ん中で”この木なんの木”を背に白いワンピの美人なお嬢様、ナイスミドルな執事に、巫女服の巨乳少女とニンジャ、あ、今は三本足の烏かって・・・・・・

ありえないでしょ!

いや、そうこれが現実。突きつけられた現実。

こんなシチュエーションまさに神の理不尽!

心の中で号泣ですよ。草原のど真ん中で、ちぐはぐな集団が迷子ですよ!


迷子・・・・?


あれ?迷子? 確か専門家がいらっしゃったような・・・・

ヤタさんが、つぶらな烏の目で、じっとこっちを見ている。


居たじゃないか専門家!!


「えっとヤタさん。近くの街か何か探せますか?」

「sir Yes sir!」


俺はどこぞの軍曹じゃない!


「じゃお願いします。サクッと探してきてください。」

「現在は、07:30(まるひとさんまる) 08:00(まるはちまるまる)には帰還します! では!」


返事が早いかバサっと飛び上がり飛んでいった。

烏の姿でも口調は変わらないのねぇ・・・・


「そういえば、ウカ様から下賜された神具がございましたよね?」


橘さんが右目の丸メガネをクイと上げながら聞いてきた。


そういや、そんなこと言ってたな。えっと神具は・・・・見回してみる。

明らかにここですよ!

と存在感を増したビジネスバッグが、木の根元に鎮座してるではありませんか。


そっと手を伸ばし開けてみる。


「これか?」


オフ・ブラックの”ソレ”を掴み、バッグから引き出してみる。

うん。ノート・パソコンだ。どう見ても、ソレ以外の何物でもない。

ただ気になるのは、折り畳まれた筐体表面の真ん中に、龍と狐のエンブレム。

その下に”MANNOKURA”の記載。


こんなメーカー・・・・無いよねぇ・・・・・ないです。


胡座をかき、膝にソレを載せてゆっくりとディスプレーを起こす。

いかにも電源スイッチですとキーボード右上の銀色の丸いボタンがキラキラと違和感バリバリに光ってる。

スーッと静かに息を吸い、思い切ってパタン!とディスプレーを閉めてみる。

瞬間


『押さんのかい!』


あぁまたこれか。今度はノートパソコンからですよ。

明らかに文句言ってますよこれ。


ふぅとため息を吐きジト目でノートパソコンを見ながら嫌々ディスプレーを引き起こす。

スイッチが先程以上に、これでもか!ってくらい輝いてる。

パタン! 閉じてみる。


『お、押さんのかい!!』


こんなやり取りを四、五回


『ハァハァハァ・・・・』


ふっと息を止め覚悟を決める。


どうせ押さにゃならんのだ。

神具を使えなきゃ困ることになるかもしれない。


ゴクリと唾を飲み右手人差し指で・・・


「ポチッとな!」


あぁ・・・・年がバレる・・・

そんな俺の思いを無視するようにノートパソコンが起動音を立てる。

最初は静かに、そして徐々に大きく・・・

スー、キーーン ギーーーン ズゴー!!!


ジェットエンジンかよ!!


ゴゴゴゴゴゴ、カシュ、カシュ、カカカカカカカカ、ディスプレーに文字が現れる。

BIOS表示が・・・え?


----------------

BIOS OMOIKANE Ver1.0 ed.01


 Primary Master : TAKAMAGAHARA-MemoryDriveーType0001

  Primary slave : TAKAMAGAHARA-OMOIKANEーNetworkDrive 

Secondaly Master : TAKAMAGAHARA-Stick.ROM.DriveーType0001

 Secondaly slave : None


----------------


なんじゃこれ?


一度画面がブラック・アウトしてOSの読み込みが始まった・・・・・

黒い画面の真ん中でご存知”窓マーク”じゃない! 釣り鐘?マークが明滅している。

そのロゴ?の下に・・・・・Rindowsって・・・


おい! まんまパクリですよねこれ!パクリですよね?


ログイン画面に切り替わる。

サクラさん、タチバナさん、ウズメが俺の背後から興味深そうに覗き込んでる。


「ほぉ。これがウカ様が言っていた”のーとぱそこん”というやつかの?」


ウズメの感嘆するような声。

パスワードの入力が必要なのか。

とりあえず普段使用している俺のパソコンのパスワードを入れてOKボタンをクリック。


・・・・・・・・・


《正しいIDもしくはパスワードを入力してください。》


はぁ?パスワード教えてもらってないしIDってなに?そんな入力項目無いんですが?


画面右下で明滅する”へるぷ”のボタン。”HELP”じゃない”へるぷ”。


悪い予感しかしねぇ・・・・


しかし、このままじゃどうにもならない。とりあえず、覚悟を決めて”へるぷ”をクリック。

《へるむをご所望ですか?》 YES NO ボタン

YESをクリック。

《本当にへるぷぅをご所望ですか?》 YES NO ボタン


”へるぷぅ”ってなんだよ”へるぷぅ”って!


仕方なくYESをクリック。


「ご用件をお聞するでっしゅ」

「おぺれーてぃんぐしすてむ OMOIKANE 音声ユーザー・インターフェイス オモイノタケでっしゅ!」


オモイノタケって、俺が思いの丈を叫びたいわぁ!!

しかも幼女声。「でっしゅ」ってなんだよ「でっしゅ」って!!


怒り、苛立ち、あらゆる感情をねじ伏せて、静かに聞いてみた。


「パスワードを教えて。」


ちょっとした沈黙。神使の皆さんは俺の背中越しに画面をじーっと覗き込んでる。


「・・・・・パスワード。ただの様式美でっしゅ。入力不要でっしゅ」


様式美? はぁ?今、様式美と言ったか? 言い放ったか?


「よ、様式美?」

「この”のーとぱそこん”は、使用者ひろし様以外使用できませんでっしゅ。よってセキュリティー万全でっしゅ。”ぱすわーど”は様式美でっしゅ。何も入力せずOKをクリックしてくださいなのでっしゅ。」


理不尽だぁ、あぁどこまでも理不尽だぁ、この人の心を逆なでするの、なんとかならないのか!

俺は疲れた心を引きずるようにOKボタンをクリックした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ