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昔話

作者: 名波 香歩

昔書いた話をアップしています。

かれこれ…10年前くらいかなぁ…

今日落ち込んでいたあの子・・・


「今日ね、かなり落ち込んでるんだ・・・

眠れなかったくらいに・・・」


苦笑い

少し目の下にクマができていた。


「どうしたのよ?」


「Hさんが、入院しちゃったの・・・」


最近よく聞く名前・・・

友達だと思っていたけど、少し違うみたい。


「癌なんだって・・・


もう長くなさそうって周りが言ってるって・・・」


少し泣きそうに言った。

いつも元気なあの子のこんな表情初めて見た気がする。


「体の調子が悪いって言ってたの。

だから、病院に行きなって言ってたんだけど・・・

仕事が忙しかったのか、動けなくなるまで頑張っちゃって…」


相手のHさんとは妻子(?)がいる相手

いつも優しい人で周りの人に気が配れる人。


「一月の半ばに、○○駅に来てって言われてさ・・・

私って食い意地張ってるでしょ??

美味しいもの買ったからってって行ったの」


その子は美味しい食べ物に目がない。

何か食べさせてくれると言われればついて言ってしまうかも・・・

大げさに言うとそんな子。


「でもね、その日寒くて行きたくないって私行ったの。

それでも着てよって言われて行ったの」


雪が降るかと思うくらい寒かったあの日


「迎えに行って、少し話をして入院するって言われた。

心配だったけど、Hさんは検査入院だって笑って言ってた」


それがもう今日は2月半ば・・・


「もう退院したのかもって思いながら、連絡待ってたら

最近連絡がきて、肝臓癌で何処からか転移したって言ってた」


声がどんどん沈んで行く

Hさんの連絡は、この子だけにしかしていないようだった・・・


「Hさんはもうダメかもって言ってた・・・

変な予感はしてたんだって…

だから、入院する前に会いたかったってあの時・・・言われた、電話口で・・・」


落ち込んだと言うより悲しんでいるよう

今にも泣きそうなあの子・・・

Hさんはどうなるのだろう・・・コレから・・・





---------------------------------




今日は、届けものがあったから彼女の自宅に向かった。

行く前に電話した時、違和感があったから少し気になっていた。



「お邪魔します」



「……」


案の定だった。


落ち込んでいたのだ。

電話の時は、無理に元気に見せていたよう…



「…振られちゃった……」


第一声はこれだった。


「えーっと、何が?」


最初、何に振られたのかわからなかった。


「Hさんにね…」


下を向いたまま、呟いた。

あんなに、優しい人とか近くいれて嬉しいとか

一緒にいた話しか聞かなかったのに…

毎日電話かけてくれるんだ~って、嬉しそうに話ていたのに…


どうしたら振られるのだろう?



「前に、Hさん入院してるって話したよね?」


少し辛そうだが、話してくれるようだ。


「今ね、面会謝絶になっちゃったんだけど…

私には本人から全く情報が入ってこなかったの…」


入院してからも、電話がきてたのにどうしてだろうと思った。


「いつも、周りから少し後になってから教えてもらってた

聞くのが辛いのに…

本人から聞きたかったのに…」


今にも泣きそう…

やっぱり、聞くのは本人から聞きたいだろう、誰でも。


「Hさんも言いたくなかったみたい…ね…」





少し話が途切れた…

別れ話から話がそれてしまったようだ。





「入院してからも、電話はくれてたの

毎日は無理だったけど…」


また、ボソボソと話し始めた。


「それがね…15日にね…」


きっかけは、15日のよう。


「電話がかかってきて…


  ありがとう


って一言で切ったっきり、

いくらかけても電話に出てくれないの」



入院してからの電話は、連日の検索や強い薬の為か…

どんどん声が弱っていったって言ってた。

辛そうで可哀相って。


「諦めるしかないのかな…」


何も言えなかった…



今日の彼女は、少し混乱していたのかもしれない。

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