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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
最終章 邪神
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最終話 想い伝えるのは

 マーガムと私は、人間の国(ヒューゲン)に向かって移動を始めた。

 モンスターに襲われることもなかったので、比較的移動するのは楽だった。


 しかし、私は不安だった。

 翼と獣耳が出たままで、このまま戻ると何を言われるかわかったもんじゃない。

 特にホゾンのギルドマスターにだけは見せてはいけない。

 今までの噂はすべて、あの人が流した物なのだから。


 少し休憩することになり、マーガムは周囲の警戒をしてくれる。

 私は、なんとか体をぎこちなくだが動かせるくらいには回復したので、私は《時空間収納(アイテムボックス)》から布を取り出して、翼と獣耳が隠れるように覆った。

 それにしても、マーガムの体って私を背負えるくらいに成長してたんだね。

「ありがとう、マーガム。」

 そう、マーガムに聞こえないように呟いた。


 私は再びマーガムに背負ってもらい、私達は人間の国(ヒューゲン)に向かって出発した。


「ミナさん、僕、皆が集まったらミナさんに伝えたいことがあるんです。」

 …邪神と戦った後で良かった。

 マーガム、それは死亡フラグなんだよ?

「今じゃ駄目なの?」

「はい、皆がいる場で伝えたいことなんです。」

 なんだろう?

 凄く気になるぞ…。


 私が悶々としていると、頭上を見覚えのある赤い龍が通過した。

「カノアさーん!!」

 マーガムが必死で呼ぶと、カノアも気がついてくれたようで、Uターンして戻ってきた。


 カノアの上にはラフィスさん、薫、ディアスが乗っていたので、私達は全員の無事を喜んだ。

 私達は少しこの場に留まって、どんな敵でどんな戦いをしたのかを話すことにした。

 皆の戦いの話を聞いたあと、邪神との戦いで起きたことを話した。

「そうか、マルムはお主の中にいたとはのぅ。」

「うん、これからもずっと一緒だよ。」

「とりあえず、ギルドに報告に行きましょう、ご主人様。」

 私達はカノアに乗って、人間の国(ヒューゲン)へと向かった。


 私達が人間の国(ヒューゲン)にたどり着くと、人間の国(ヒューゲン)の国防壁は既に無くなっていた。

 邪神との戦いに勝ったことが国に伝わったのだろう。

 私達が門まで来ると、門番が顔パスで通してくれた。


 そして、国に入った私達を待っていたのは、割れんばかりの歓声だった。

 歓声の中には、私達を神殺しだとか、神とか呼ぶ声も混じっている。

 いや、神に関しては当たってるし…。

 私達は足早にギルドへと向かった。


 ギルドに到着すると、またしても歓声が上がる。

 ギルドマスターが飛び出てきた。

 って、うわっ!

 なんでホゾンのギルドマスターがいるの?!

 ここ、王国なんだけど?


 まるで私の考えを読んでいるかのように、ホゾンのギルドマスターが答えた。

「俺がなぜここにいるかだが、ギルドマスターが全員召集されてるんだよ。

 それより、お前さんはなんで背負われてるんだ?」

「邪神は倒しました。

 それにより、邪神のいた空間はすべて崩壊しました。

 これは邪神を倒したときに使ったスキルによるものです。」

「お前さんは、邪神すらも倒しちまったか!

 これで脅威は去ったって訳だ!」


 よし、ギルドへの報告も終わったし、[食事処 平等謳う精霊亭]で祝勝会でもやろう。

 そう思ってマーガムに[食事処 平等謳う精霊亭]に向かうように言うと、ホゾンのギルドマスターに肩をがっちり掴まれた。

「お前さん、どこに行くつもりだ?

 今からギルド主催の祝勝会をやるんだぞ?

 主役が居なくてどうするんだ?」

 ………え?

 聞いてないんですが?

 結局、私達は祝勝会に参加することになってしまった。


 祝勝会が始まり、国王の挨拶が始まった。

 ………長い、長すぎる。

 挨拶は実に30分の時間をかけ、ようやく終わった。

 そして何故か、私が壇上に立たせられた。

どうやら、邪神を倒した私を披露する意味合いもあるのだろう。


 だが、まずいことになった。

 壇上に立つとなると、布を取らなければならない。

 翼や獣耳が出ると、少なからずパニックになると思うんだよね。

 いろいろと試してみたけど、収納が出来たり消える気配はなかったので、おそらくこのままなのだろう。


 私は布で体を包みマーガムに背負ってもらったまま、壇上に立った。

 会場がざわつくが、誰も布を取れとは言ってこない。

 私もあまり長居したくないので、簡潔に話を終えることにする。

「えー、今回邪神を倒しました、ミナです。」

 会場の一部がざわつくと思ったら、勇者達だった。

 そういえば、自己紹介してなかったな。

 まぁでも、今は無視しよう。


「今回邪神を倒せたのは、私の仲間や、皆さんの協力あってこそのものです。

 ありがとう、では、長く話をする気もないので、乾杯!」

 いきなり始めてしまったが、まぁいいかな?

 私はすぐに皆と合流した。


 皆と話していると、勇者達が話をしようと寄ってくる。

 私は名乗ったことに若干の後悔を覚えながら、祝勝会の会場をマーガムに背負ってもらい、忙しなく移動していた。

 が、しばらくすると、勇者による包囲網が敷かれそうになったので、マーガムに祝勝会の会場からの脱出をしてもらうことにした。


 私達が会場から脱出すると、カノアや薫、ラフィスさんにディアスもついてきた。

「皆、残っててもいいんだよ?」

「あいつらの質問攻めに会いたくない。」

 そういった薫は私達を迎えにくる前に今夜の宿を取っていたらしく、宿に向かって走り出したので、私達は薫についていった。


 宿にたどり着くと、マーガムが真剣な表情で私の前に立った。

「ミナさん、大事な話を今、話します。」

「うん、ちゃんと聞くよ。」

 ただならぬ雰囲気を察知した他の皆が集まってくる。


「ミナさん、僕は、ミナさんが……大好きです!」

「私も好きだよ?皆家族みたいなものだからね。」

「ミナさん、僕はミナさんを、男として好きなんです。

 だから、結婚してください!」

「………えっ?」

 カノアとラフィスさんは楽しそうにこちらを見ている。

 薫は驚いて固まってるし、ディアスはあまりわかっていない様子だ。


「あ、えっと…、その、」

 私はあまりの事態にパニックになっていた。

 だって、弟のように思っていたマーガムに告白されたのだ。

 パニックにならない方がおかしいと思う。


「マーガム、気持ちは嬉しいよ?

 でも、いきなり結婚は、ちょっと無理だよ。ごめん。」

 その答えを聞いてマーガムは肩を落としてしまう。

「だから、まずお付き合いから始めよう?

 もっとお互いのことを知ってからでも遅くはないから………ね?」

「………!はい!

 お願いします!」

 よほど嬉しかったのだろう、マーガムは泣いてしまった。


「まさか、このパーティーからカップルが出来るとはのぅ。

 まぁ、わしらも一緒にいるがのぅ。」

「ご主人様、おめでとうございます。」

「おねぇ、おめでとう?」

 皆がお祝いの言葉をくれる。

 薫の方を見てみると、魂が抜けたかのように口を開けて、上を向いていた。


 きっと私達は、これからも仲良く楽しく冒険が出来る。

 私はそう確信した。



 勇者から逃げだした聖剣

 ~完~

これで完結です!

毎日更新で時折やらかすこともありましたが、書ききることが出来ました!

ありがとうございます。

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ケモショタ育成物語? 剣だから性別なしと油断しました
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