第85話 終の一撃
私は邪神の氷の礫による攻撃を打ち落としつつ、後ろに出来た空間の穴を《剣神》で認識して、邪神の眷族による攻撃に対応出来るようにしている。
空間の裂目は邪神の眷族しか、使っているのを見たことがない。
そしてマーガムを追っていった邪神の眷族が戻ってくるということは、マーガム達がやられてしまったということになる。
しかし、空間の裂目から現れたのは、私の予想を越えて、黒い獣、だった。
一瞬、新手かと思い警戒を強めるが、すぐに黒い獣がマーガムだとわかったので、邪神の相手に集中することにした。
セイスが気を利かせて《意思伝達》で私とマーガムを繋いでくれた。
『マーガム!その姿、大丈夫なの?』
『はい、どうやらミナさんが神になったことで奴隷の僕も神獣になったみたいです。』
『おいらと同じッスね。』
神獣ということは、邪神とも戦えるということだろうか?
『ミナさん、僕も邪神と戦います。
今度はミナさんと一緒に、戦います。
もう、ミナさんだけに責任は負わせません。』
マーガムの決意が伝わってくる。
『ごめん、ありがとう。
私が邪神の動きを止めたら、そのまま拘束できる?』
『やります。
ミナさんを守る為にも、絶対に!』
マーガムに後ろでその時を待ってもらい、私は邪神に攻撃を仕掛けていく。
私は《武器創改造》を使い、神剣を量産してから、《剣神》と《過程省略》を併用して、邪神に攻撃していく。
認識すらできない結果のみの攻撃が邪神に牙を向く。
しかし、邪神に結果が届くことは無かった。
《剣神》ですら認識出来ない概念…?
いや、これはただの技量なのか…?
しばらく繰り返して、ようやく理解出来た。
邪神は与えられる結果自体を崩壊させているのだ。
私が結果を与えたという事実が無かったことにされることで、攻撃が無効になっていたのだ。
《剣神》で認識出来なかったのは、崩壊の概念がこの場に満ちているからだ。
私はなんとかして邪神の動きを止めるために、《限界突破》を発動する。
《限界突破》なら、私の概念 加速でデメリットの時間も極僅かに出来るはずだ。
《限界突破》によってステータスが2倍になり、邪神の攻撃を跳ね返せるようになる。
邪神に猛攻を仕掛けていき、私の攻撃を邪神がギリギリで防御するようになり、邪神に余裕がなくなっていく。
『ミナさん!拘束します!』
私が瞬間的に後ろに《過程省略》で移動すると、邪神の周りに結界が張られる。
邪神が結界を破ろうとするが、邪神の攻撃が弾かれる。
マーガムの防御力は邪神の攻撃力を越えているのかもしれない。
私はマーガムが作ってくれた時間を無駄にしないために、刀と剣を合体させて大剣にしてから、刀の部分に《限界突破》と《極限突破》を使ったことで上限値が増えたMPと、《魔帝》にストックした分を含むすべての魔力を注ぎ込む。
刀に付与した魔力放出が作動して、大剣が光を纏い、その光が巨大な剣を形成し始める。
そして剣に付与した魔力吸収が形成された巨大な光の剣を吸収していく。
吸収された魔力は一切のロスなく、刀の方へと流れていく。
イメージするなら、とんでもない密度、量の魔力がチェーンソーのように刀から出て、剣に入っていく。
さらに私は《極限突破》を発動して、邪神を確実に倒すために私のすべてを賭けた一撃を構える。
そして、概念 絆の効果が更新され、みんなの魔力が私の元に集まる。
みんなから貰った魔力もすべて一撃に注ぎ込む。
私は邪神に向かって走り出す。
そして、マーガムの結界越しに、邪神の前に立った。
「これで、終わり!!」
私はそう言って、邪神を真っ二つに斬るように、神剣を振り下ろす。
マーガムが張った結界にぶつかることなく、通り抜けて神剣は邪神に向かっていった。
すると、邪神は戦斧で防御しようとするが、邪神の戦斧はまるでバターのように真っ二つになり、剣の勢いは止まらず邪神も真っ二つにした。
だが、邪神の体のほとんどが魔力で切られた為に、もはや、原形も留めていない。
そして、邪神の残った部位が淡い光に包まれて、私は邪神に勝ったことを確信した。
「ありがとうマーガム、あなたのおかげで邪神を倒すことが出来たよ。」
私がそう言った時、持ち主を失った世界が光となって消えていく。
「マーガム、急いで脱出しよう!」
私はマーガムの手を取って、全力でみんなのいる世界に戻れる空間の裂目の場所に向かって走るのだった。




