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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
最終章 邪神
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第84話 黒の獣

前話でマーガムが獣化している記述が抜けていたので追加しました。

 ~マーガム視点~

 邪神の眷族が首が3つある獣へと姿を変えた。

「この姿になるのも、いつぶりになるか…。」

 そう邪神の眷族が言うと、周囲の空間に亀裂がいくつも入り、亀裂からいくつもの武器が飛んで来る。


 僕は《防御範囲拡大》を使用して、自分の周りを囲むように半透明の壁を広げていく。

 武器が半透明の壁に阻まれて次々に地面に落ちていく。

 足場が武器で埋め尽くされていき、邪神の眷族による攻撃を受け流すことがやりにくくなってしまった。


 そして僕が受け流しを失敗してしまい、邪神の眷族の噛みつき攻撃を食らう瞬間、僕の右手に刻まれた紋章が輝き、邪神の眷族に向かって何かが飛んでいき、邪神の眷族を吹き飛ばしてしまう。


 そして、戻ってきた物は僕の大切な物だった。

 それは、マルムの霊魂石、今はいない妹の形見だ。

 その霊魂石が一際強く輝くと、僕に向かって飛んで来て、僕の胸に溶け込んでしまう。


 その直後だった。

 僕は黒い光に包まれた。


 黒い光に包まれた時、ミナさんと僕の主人と奴隷としての繋がりが、より強く、より大きくなった。

 強く、大きくなった繋がりを通って、ミナさんから力が流れてくる。

 ミナさんから流れてきた力は、とても暖かくて、とても大きな力だった。


 そして、黒い光が収まっていき、光の中からマーガムが黒い獣となって姿を現した。

 その獣は全身を黒い毛で覆われ、黒い毛の一部からは黒い光が放出されている。

 一部の毛は白色になっていて、白い毛はまるで稲光のような模様になるように生えていた。


 2匹の獣が同時に飛びかかる。

 邪神の眷族が、首の数の有利でマーガムに噛みつこうとするが、マーガムの黒い毛によって牙が阻まれる。

 それに対して、マーガムの牙は邪神の眷族の首の1つを噛み千切っていた。

 邪神の眷族はすぐさま失った首を生やそうと魔法を使用するが、首が生えることはなかった。

「何を…、した?」

 邪神の眷族が聞いてくるけど、それは僕にもわからない。


 今の僕は、黒い空間の中にいて、邪神の眷族との戦いを自分の視点の映像を見ている。

自分の体のはずなのに、自分が思ったようには動かせない。

 邪神の眷族の攻撃は激しさを増していくが、僕の体に傷付けることが出来ていない。

 そんな光景を眺めていると、不意に声をかけられたことで、驚いてひっくり返ってしまった。

 そして目に映ったのは、死んでしまったはずの(マルム)の姿だった。


「お兄さま、お久しぶりです。」

「マルム!会いたかった…。」

「私はミナ様とお兄さまの2人をずっと、霊魂石を通して見ていました。

 今回はミナ様が神になったことで、お兄さまとミナ様とだけ、会話が出来るようになりました。」

 ミナさんは遂に神になってしまったのか…。

 それでも僕の目標は変わらず、ミナさんを守れる騎士になること、だ。

 ミナさんと並び立てるようになるんだ!


「ちなみに、お兄さまもミナ様が神になったことで、神獣という形で神になりましたよ?

 今もミナ様は邪神と戦っています。

 お兄さまはどうしたいですか?」

「僕は…、ミナさんを守りたい…。

 一緒に並んで戦いたい!」

「では、まず、邪神の眷族を倒してしまいましょう。」

 どうやら僕は神獣になっていたようだ。

 邪神の眷族は僕にダメージを与えられないことを理解すると、空間を割って逃げようとした。


 その時、僕の体を動かせるようになったのだが、自分でも不思議なくらい自然に体が動き、《遠隔防御》と《防御範囲拡大》が使用された。

 僕と邪神の眷族を半透明の壁が囲んだ。

 すると邪神の眷族が開けた空間の裂目が急速に閉じていく。


 それは、概念 守護の効果が一段階解放されたから可能になったことだった。


 概念 守護

 守りたい思いの強さによって防御力が変化する

 さらに、自身の防御スキルが発動している周辺は自分自身と概念以外では何も傷付けることが出来なくなる

 そして、


 つまり、空間に与えるダメージが無効になることで、邪神の眷族の空間移動を封印することが出来たのだ。

 僕は邪神の眷族に向かって飛びかかり、後ろから押さえつけ、今度こそパイルバンカーを当てる為に、《防御範囲拡大》と《遠隔防御》で邪神の眷族が動けないように拘束する。


 僕は《時空間収納(アイテムボックス)》からパイルバンカーを取り出して、装備………。

 どうやって持とう…。

 手が………獣化している状態だと肉球があるため、パイルバンカーが持てない。


 手だけ人の手に戻らないかな…。

 そう思ったら手だけが人の手に戻った。

 僕はパイルバンカーを構えて、邪神の眷族に向かって撃ち放つ瞬間に、《防御力転換》を発動してすべての防御力を攻撃力に変換し、撃ち放たれた攻撃の威力をさらに上昇させる。

 そして防御力が0になったことで、邪神の眷族を拘束していた壁ごと撃ち抜ける。


 凄まじい音と共に、邪神の眷族の胴体が消し飛んだ。

 だが、頭だけが残ってしまった。

「面…白い…、主、の元に…、送ってやる…。」

 邪神の眷族がそう言うと僕の後ろの空間に裂目が開く。


 邪神の眷族の体から光が出始め、邪神の眷族がもうすぐ死ぬことを知らせる。

 僕は邪神の眷族の最後の言葉を信じて、空間の裂目に飛び込んでいった。

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