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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第八章 魔の国
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幕間 国王の悩み

 人間の国(ヒューゲン)の国王は最近の勇者達に頭を抱えていた。


 勇者達は成長が早く、ステータスも普通の人間より高いので、人間の国(ヒューゲン)の周囲に現れたモンスターの討伐をしてもらう為に異世界から召喚したのだ。

 今回の召喚は、前回勇者を召喚した時よりも人数が多く、これだけいれば人間の国(ヒューゲン)はしばらく安泰だ、そう思ったのだ。


 しかし、勇者タクトがSランク冒険者の殺害をしようとしてから、歯車が狂い始めた。

 いや、聖剣を紛失した時点で既に狂っていたのかもしれない。


 聖剣があった頃は、周囲のモンスター(主にゴブリン、オーク、オーガ)の討伐も楽に出来ていたし、勇者達のレベル差もほとんど無かった。

 しかし聖剣を失ってからは、モンスターの討伐はさすがにゴブリン等には苦戦しないが、オーガ相手になると苦戦をするようになった。

 おそらくは変異種オーガとの戦いでの恐怖が残っているのだろう。


 それでも、周囲の街でモンスターを討伐していく内に、レベルが上昇してステータスも上がったことで勇者達は恐怖を克服して、オーガとも戦えるようになっていった。

 それはギルドの実績にも表れ、勇者達は次々にA~Sランクのモンスターを討伐していった。


 しかし、勇者タクトが起こしたSランク冒険者のダンジョン内での殺害未遂が発覚してから、ギルドでの勇者タクトの評価は地に落ちた。

 他の勇者達は無関係だと被害者の勇者が言ったことで、勇者タクト以外の冒険者達の評価が落ちることはなかった。


 わしは、勇者タクトの送還を決めた。

 送還は、勇者を元の世界に送り返すことが出来る唯一の方法だ。

 さらに送還は勇者の能力や記憶をリセットして送ることが出来るので、問題を起こした勇者は出来る限りリセットして元の世界に送り返すことになっている。

 王城にある魔法陣でしか、召喚と送還が出来ないので勇者タクトを捕縛する必要があるのだが、勇者タクトはSSランクに到達できる程に実力を身に付けているため、なんとかここに連れて来なければならない。


 しかし、勇者タクトは消えてしまった。

 と同時に勇者タクトと交わした契約も破棄されてしまう。

 今までの勇者達ですら起きなかったことが起きた。


 わしは重大な何かが起こっていると思い、ギルドへと勇者タクトの捕縛を依頼した。

 もちろん、SSランクの冒険者のみで出来れば捕縛、出来なければ討伐しても良い。という依頼内容だ。


 他の勇者達は、モンスターの討伐を行ってくれているが、そのペースは勇者タクトが消える前よりも落ちた。

 それに伴い勇者達の評価も、B~Sランクの冒険者という範囲で固定された。


 それはタクト以外の勇者達にも問題があったからだ。

 今の勇者達は、攻撃系の職業(クラス)と防御や支援系の職業(クラス)のレベル差が問題になっている。

 さらに、技能を伸ばすことをしなかった者が大半なので、ステータスによるゴリ押しになってしまい、技能で上の者には勝てないのも問題だった。


 国王は思う。

 タクトの殺害未遂の被害者の冒険者は勇者よりも短い期間で頭角を表した。

 その冒険者と一緒にダンジョンをクリアした勇者の少女は、技能もしっかりと鍛えて一流の冒険者でも勝てない程に実力を身に付けた。

 ならば、その冒険者に勇者達の指導をしてもらえないだろうかと。


 もちろん、受けてもらえるとは思っていない。

 自分達を殺そうとした人間がいたグループを鍛えようと思う人間など、よっぽどの状況でないかぎり存在しないだろう。


 その時、国王は思っていなかった。

 そのよっぽどの状況がすぐそこまで迫っていることに…。

いただいた感想を元に書いてみました。

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