第52話 観光最終日
明日に国王との謁見を控えた私達は、ひとまずラフィスさんから逃亡し、薫の正装を買いに行こうとしたのだが、どこがいいのか迷っていると…。
肩をガシッと掴まれた。
恐る恐る振り向くと、とても怖い笑顔を浮かべたラフィスさんがそこにいた。
「な・ん・で!宿で待っててくれないんですか!」
「いや、ラフィスさんが変態過ぎて手に負えないんで、置いていきました。」
「…ストレート!ハァハァ」
ラフィスさんが急に上を向いて叫ぶ。
ちょっと!
街中だから!
皆こっち見てるから!
私達はラフィスさんを抱えてその場から逃亡した。
しばらく走ってようやく足を止める。
「お腹が激しく圧迫されて…はぅぅ!」
しまった、力を入れすぎた。
背中に背負…、やめた。
ラフィスさんの胸が押し付けられるなんて、血の涙が出そうだ。
いや、男性ならご褒美かも知れないけど、胸が小さい女性からすれば羨ましかったり、とかそんな感じだよ。
とりあえずラフィスさんを地面に下ろして、薫の正装を探していることを告げる。
するとラフィスさんが急に真面目モードに戻り、店に案内してくれた。
………ラフィスさんの真面目スイッチどこにあるんだろう。
…今までから考えると仕事とかかな?
どこかで確かめたいな。
店に入った私達は、薫の正装を皆で選んだ。
薫が着せ替え人形のように次々と服を取り替えられていく。
そしてしばらくすると、薫の正装はスーツに決まった。
スーツを来た薫は、なんか、うん、なんかなぁ、ビシッと決まって無いんだよなぁ…。
あ、スーツはビシッとしているけど、薫のやる気が無いからか。
うん、薫頑張って。
私達は店から出て、観光に向かった。
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ラフィスさんに案内されて着いたのは、雪が積もった平原だった。
「ここで、かまくらを作って貰います。」
そういうラフィスさんが雪をレンガみたいに固めて積んでいく。
私達はやることを理解して、作業に入った。
まず私は雪に《能力付与》を使うために、雪を武器と認識できるイメージを考える。
雪で攻撃とか思いつかなかったので、一旦雪を溶かしてから凍らせて氷に変えていく。
氷なら氷柱とか十分な凶器だからね。
氷に《能力付与》を使用して、圧縮していく。
なぜか六角形の形になったので、カノアとマーガムがそれを積んでいき、かまくら?を作っていく。
薫は《影分身》を使って食材などの買い出しに向かった。
ちなみに本体は雪の上で寝ている。
いや、起きてよ!
この状況でよく眠れるな!
『セイス!薫を起こして!』
『了解っす!』
昨日まで、宿で待機させられていたセイスはやる気に満ち溢れていた。
神獣も崇められるこの国では、セイスを連れていると自由に動けないから置いていくようにラフィスさんに言われて置いてきていたのだ。
セイスが薫の頭をつつく。
それが回数が増えていき、マシンガンのようなつつくスピードになった。
それでも薫は起きないので、私は薫の近くに“ファイアボール”を数発撃ち込む。
薫に“ファイアボール”がかすりそうになった時、ようやく薫が目を覚まして“ファイアボール”を避けた。
薫が目を覚ましたとほぼ同時にかまくら?が完成する。
そして、かまくら?の中に入ってしばらくすると、薫の分身がぞろぞろ帰ってくる。
薫の分身は荷物を置くと、薫の影にズブズブ入っていく。
………底なし沼のような感じだな。
私達は荷物を確認する。
よし、ちゃんと鍋とかレンガもあるね。
私達はラフィスさんと薫の調理班と、私とカノアとマーガムの食事班に別れ、私達はラフィスさんと薫が調理し終わるのを静かに待っていた。
10分ほどが経過し、次々に料理が並べられていく。
私達は美味しい食事を楽しみ、かまくら?から出て宿に戻る準備をし始めた。
宿に戻る準備が完了し、私はかまくら?から皆が出たことを確認してから、《能力付与》で与えた圧縮を維持するために流していた魔力を流さなくする。
すると、かまくら?が崩れて………、
「はぅ!?」
ラフィスさんが下敷きになった。
………?!
なんで下敷きになった?!
どうやら忘れ物があったらしい。
圧縮されていないただの雪に戻っているが、それでも重量はそこそこあるので、私達は急いでラフィスさんを雪から引っこ抜いた。
そのあと、興奮が収まらずにハァハァし続けるラフィスさんをギルドに送り届けてから宿に戻った私達は、明日の準備をしてからお風呂に入り、布団に入った。
明日の国王との謁見…、嫌だなぁー。
マーガムのケモミミをもふもふして、嫌な気持ちを晴らしていると、ゆっくりと眠りに落ちていった。




