第49話 天の国
カノアに乗って天の国に向かうこと、約半日が経過した。
私が風魔法を使い続けるだけで快適な旅が出来るので、ずっと風魔法を維持していた。
といっても、風魔法の“風避け”に《魔力ブースト》を使うだけだけどね。
“風避け”は、魔力を使う量によって効果時間が変えられる魔法なんだけど、効果時間が最大でも4時間しかないので、最初に魔力ブーストを使っておき、2発目は魔力消費だけで発動していたのでちょうどいい時間で効果が切れた。
私達は地面に降りてから天の国に向かった。
天の国の門でギルドタグを見せた私達は門番に拘束されていた。
なんでも、SSランクになるためには国王に会う必要があるのでその手続きの為に拘束させてもらっているとのこと。
………国王に会いたくないなぁ…。
Sランクでも、何かあったときの緊急召集には強制参加させられるし、結局国王との謁見とか断れないから、別にSSランクと違いって無いと思う。
でも、逃げるとギルドに指名手配されて追われ続けることになる。
今の私達なら逃げ続けることも可能なんだけど、食糧の問題もあるからやらないけどね。
SSランクになる利点とは何かと聞かれると、
1つ、土地が貰えて国が作れる。
2つ、各国の宝物庫から1つずつ、欲しいものが貰える。
そのぐらいしかない。
土地が貰えて国が作れるに関しては、別に定住する気が今のところ無いので必要ない。
宝物庫から1つずつ何かを貰えるのも、人間の国の宝物庫を見た感じ欲しいものは無かったはずなので、あまり魅力を感じない。
しかし、マーガム達の地位向上とか、そういう意味ではいいことだと思っているのだが、やっぱりSSランクにはなりたくないかな。
そう思っていると、カノアが、
「お主、どれだけSSランクになりたくないのかのぅ?
SSランクといえば最高の冒険者であり、歴史に名を遺す程の存在なんだがのぅ。」
「いや、面倒事の方が多そうだなと思ってさ?」
「まぁ、モンスターの討伐依頼とかは増えそうだのぅ。
あ、それとちゃんとフードを被って髪を隠しておいた方がいいのぅ。」
「えっ? なんで?」
「まぁ、被らなければすぐにわかるが、お主が嫌そうなことが起こるのは確かだのぅ。」
忠告に従い、フードを被り直す。
私達はようやく門番から解放されて、天の国に入国した。
天の国はやっぱり、天使族の人が大多数を占めている。
とゆうか、他の種族の人がほとんどいない。
排他的な種族ゆえだろう。
おそらく魔の国も同じ感じだろう。
私達は、門番に言われた通りにギルドに向かおうとした、その時だった。
突如正面から強烈な風が吹いて、私のフードがめくれて、髪が外に晒される。
すると、それを見た天使達が一斉に平伏し始めた。
それは、瞬時に伝播し、祈る人まで出始めた。
「………なにこれ?」
「お主の髪の色だのぅ。
この国では、白銀色の髪を持つ者は、神のしもべとか、そういう感じの扱いになるんだのぅ。」
………なるほど?
だから、こんなことになっているのか。
とゆうか、理由も説明してくれてればこんなことになってないでしょ。
………もう、ダンジョンクリアしたらすぐに魔の国に行きたくなってきた。
「ちなみに、魔の国に行くとお主は見知らぬ奴から物を投げられるくらいには、嫌われることになるのぅ。」
「なんで?!」
もはや、いじめではないか。
「そりゃお主、天の国と魔の国は犬猿の仲だからのぅ。
信仰する神も違うし、髪の色もあっちだと黒が好まれるからのぅ。」
つまり魔の国では、薫が今の私みたいな目に会うのか。
そして今、物を投げられるくらいには嫌われているはずの薫が物を投げられていないということは、私も薫と一緒にいれば物を投げられないのではないのか、と思ったが、実際になってみないとわからないので、頭の片隅に追いやった。
平伏する人達が道を開けてくれるので、迷う心配はないのだが、ギルドへの道以外は通れなくなっているので、迷惑になってるのでは?と思いながらも、ギルドに到着した。
私達は国王との謁見の日を伝えられて、その日まで国を出ないことと、ダンジョンに入らないことを言い渡された。
仕方ないので、その日がくるまでの間は、みんなで天の国の街を観光することにした。
とりあえず今日はもう暗くなり始めているので、宿を探しに向かったのであった。
宿は案外すぐに見つかった。
道行く人に宿を紹介してもらおうとしたのだが、髪の毛のおかげでかなりいろんな情報が聞けた。
私達は紹介された宿に泊まり、私は国王との謁見までの3日間の観光をすごく楽しみにしつつ、マーガムとカノアと一緒に寝たのであった。
尚、薫は別の部屋である。




