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勇者から逃げだした聖剣  作者: 黒一忍
第六章 ラインの街
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第48話 あのときの不可能を可能に

5/22修正

 魔法陣によって転移した私達が見たのは、他のダンジョンの最終階層と同じ風景、ではなく、同じ風景に所々から木が生えている光景だった。

 今回は何故か、光の案内も無いので、宮殿まで自力で向かう。


 そして、宮殿の扉を無理矢理抉じ開けて中に入ると、手足を木で拘束された少女と、その横に、邪神の眷族が生み出した悪魔がいた。

 あのときの悪魔とまったく同じに見えるが、あのときの悪魔は倒したので違う個体なのだろう。


 私は薫を地面に下ろしてから、《縮地》を使用して一気に距離を詰めると同時に、《神速抜刀》を発動して悪魔の胴体に存在するコアを斬る。

 ………はずだった一撃は、何故か位置がずれて首を刎ねてしまう。


 この現象には覚えがある。

 ついさっき見たのだから。

「薫、どうして…?」

 薫を見ると、薫は気絶していた。


 すると、地面に落ちた悪魔の首が喋り始めた。

「ギギッ、ソイツノ深層意識ニ入リ込ンデ、操ッテイルノサ。」

 なるほど、薫が裏切った訳じゃないのか。

 なら、薫の妨害に関してはマーガムとセイスに任せよう。

 カノアもようやく戦闘に参加する。


 私は、《縮地》と《神速抜刀》を連続で使用して、悪魔を攻撃していく。

 どれも薫のスキルによって致命傷にはならないが、少しずつ削っていく。

 カノアも悪魔に殴りかかるが、やはり攻撃位置がずれているので攻撃が当たらない。

 そしてセイスが薫を燃やしてスキルの発動を妨害しようとしたが、あまり効果は無いようだ。


 私は、目を閉じて集中する。

 もしかすると、目で見るからこそずれているのではないか、そう思ったので《剣域》で認識をしてから、《縮地》と《神速抜刀》を発動させた。

 すると、悪魔のコアのある場所を僅かにずれて斬ることに成功した。

 悪魔が避けて僅かにずれたが、どうやら思った通りに攻撃出来たようだ。


 悪魔が空間に穴を開けて腕を入れようとする。

 開いた先の空間はマーガムのすぐ後ろだった。


「同じことが、通じると思わないで!」

 《神速抜刀》で腕を上から斬りつける。

 悪魔の体が硬いため、斬り落とすまではいかず、それでも穴に腕を入れることは阻止できた。


 しかし、悪魔は諦めずに魔法を穴に向かって撃ち込んだ。

 《剣域》で穴の位置はわかっているので、あらかじめ指示を出しておいた。

 マーガムにセイスを纏わせてから《獣化》させた上で《身体強化》と《強化防御》を使用してもらい、魔法防御力にすべて振り分けてもらっていたのだ。


 マーガムに魔法が当たるが、極振りした魔法防御力を上回ることは無く、無傷で魔法を受けきった。

 もちろん悪魔が魔法を撃っている間、眺めている訳もなく、悪魔に止めを刺した。


 あのときは出来なかったことが出来た。

 私はみんなの成長を感じて思わず涙が出てきた。


「助、けてー…。」

 ………あ、そういえば拘束された少女がいたの忘れてた。

 私は、少女を木から引き剥がしてから事情を聞くことにした。


「いやー、参っちゃいますよねー。

 邪神の眷族が出てきたと思ったら、いきなり木に拘束されたんですよー。

 試練の内容が書き換えられるわで、大変なんです。」

 ということは、私達はダンジョンを突破したことにならないかもしれないのかな?


「あ、でもあなた達はクリアしてますよー。

 そこで気絶してる人は、クリアしてませんけどねー。」

 薫以外はクリアしたのか。

「なんで薫はクリアした扱いにならないの?」

「それは秘密なんですよー。

 ただ、私が決めた基準には、到達していなかった。

 それだけですー。」


 意識を取り戻したら、薫が文句言いそうだな。

「では、クリア報酬を渡したいと思います。

 スキルは、《相転移》です。

 効果は、自分と他のものの位置を入れ換えることが出来ます。

 では、渡します“贈与(ギフト)”」


 私の右手の甲に紋章が刻まれる。

 これで残りのダンジョンは2つだ。


 私達は、ダンジョンから転移でラインの街に戻ってきた。

 薫はギルドの職員に任せて、私達は街に天の国(エンシ)に向かう準備をするために買い物をすることにした。


 しかし、ギルドを出ると問題に気が付いた。

 辺りが真っ暗だった、時間が深夜である。

 どこの店も閉まっていたので、明日また買い物をすることした。


 翌朝買い物を済ませてから、天の国(エンシ)に向かって出発しようと門から出てきた私達の前に、薫が立ち塞がる。

「海那、俺も連れていってくれ。」

「………いいよ。

 でも、条件があるけどね。

 まず、私達のことは他言しないこと。

 2つ目に、パーティー内は仲良くすること。

 最後に、絶対に死なないこと。

 この条件は絶対に承諾してもらうよ。」

「わかった。

 その条件で大丈夫だ。」


 こうして、薫がパーティーに加入したのだった。


 私達は、龍に姿を変えたカノアに乗って天の国(エンシ)へと向かった。

累計PVが30000を突破しました!

SSを活動報告のほうに上げていますので、良ければご一読ください。


実は勇者から逃げだした聖剣は、

話的には半分ぐらい進んでいるので、

このままの更新ペースで最後まで行きたいですね。

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