第44話 セイス、その実力
翌朝、私達は宿の獣舎に泊めたセイスを迎えに向かった。
案の定セイスは機嫌が悪く、周りの動物達が怯えている。
「ご主人、ひどいっすよ!
ここ、臭いし、他の奴らが怯えてるせいで居心地すっごい悪かったっす!」
「ごめん、でもここの宿、人以外お断りだったんだよ…。
マーガムもごめんね…。」
泊まれる宿がここしか無かったのだ。
野宿にしようとしたら、マーガムとカノアに止められ、仕方なく泊まることにしたのだ。
なんでも、野宿は街の中の方が危険なんだとか。
起きたら身ぐるみ剥がされてた、とかそういうのが起こるらしい。
私はマーガムとセイスを他の宿のお風呂で洗って綺麗にする。
そして身だしなみを整えた私達は、ギルドに向かった。
ギルドにたどり着いた私達は、クエストを探し始める。
セイスの実力を測るために出来るだけ強いモンスターが討伐対象のクエストが望ましい。
なぜ強いモンスターかって?
それは、セイスのステータスを見ればわかる。
名前 セイス 召喚神獣《聖不死鳥》
Lv1 職業使い魔 1才 男
HP50000 MP50000 SP50000
攻撃力 50000
防御力 50000
魔法攻撃力 50000
魔法防御力 50000
素早さ 50000
スキル
不死鳥
纏身
職業スキル
意思伝達Lv1
主人強化Lv1
魔力ブーストLv1
魔法
聖魔法
概念
炎
まず、ステータスが壊れてる。
レベル1でカノアを越えている。
「そこまで主人に似なくてもいいのにのぅ」と言いつつ、カノアが目を輝かせていた。
戦闘狂は、今日も平常運転だった。
そしてスキルだけど、
《不死鳥》は、おそらく不死鳥と聞いて思い浮かぶ、灰から蘇るスキルだ。
セイスが言うには、灰なんて無くても再生するらしいけどね。
そして、《纏身》
これは何かにセイスを纏わせる、というスキルだ。
実際にマーガムに纏わせてみると、マントみたいな感じになった。
どうやら、ステータスが2倍に上昇しているようだ。
試しに私に纏わせたら、マフラーになった。
《意思伝達》は、テレパシーみたいに話さなくても言いたいことが伝わるスキルだった。
………超有能。
さらに、伝達するのは複数でも出来るし、指定も出来る。
………どう転んでも有能。
《主人強化》は主人のステータスを上げる者なんだけど、ステータス表示不可なので倍率とか、わからなかった。
《魔力ブースト》は、私が持っているのと同じスキルだろう。
そして魔法なんだけど、聖魔法とか聞いたことないんだけど?
試しにやってもらうと、光っただけだった。
なんでも、浄化や解呪などが主な効果らしく、ゾンビとかじゃない限りは効果が分かりにくいらしい。
概念 炎
これは、炎の概念を自在に扱えるというスキル?みたいだ。
セイス曰く、「神獣なら必ず1つ持ってるもんっすね。 あ、これ秘密っすよ?」ということらしい。
私達がクエストボードを見てみると、受付嬢がこちらに向かって走ってくる。
「すいません!
ミナさん、ギガントトロールの討伐を受けてくれませんか?」
「ギガントトロール?
どんなモンスターなんですか?」
「とても大きくて、とても力が強いモンスターです!
Sランク上位の魔物なので、討伐できる冒険者がミナさん達しか居ないんです!」
説明、抽象的すぎない?
まぁでも、セイスの実力を測るにはちょうどいいか。
「わかりました、それでギガントトロールはどこにいるんですか?」
「ありがとうございます!
ですが、近くの森を徘徊しているようなので詳しい場所はわかっていません。」
「近くの森ですね、今から行ってきます。」
そう告げてから私達はギガントトロールを討伐しに森へと向かった。
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そして森についてしばらくギガントトロールを探していると、
「見つけた。」
《剣域》がギガントトロールを捉えた。
ギガントトロールは想像よりも大きかった。
家屋くらいの大きさかと思ったら、なんと高層ビル程の大きさだったからだ。
見上げるが、頭が見えない。
驚きはしたが、セイスの初戦闘だ。
セイスがピンチにならない限りは見守る方針だ。
戦闘狂を止めつつ、私はセイスの戦闘を見守った。
「じゃあ、行くっすよ!」
セイスがギガントトロールに向かって体当たりする。
すると、ギガントトロールがよろけ、セイスがさらに追撃を加える。
しかし、セイスにギガントトロールの振り回した腕が当たってしまう。
セイスがそのまま吹き飛んで行くかと思ったのだが、実際は違った。
腕に当たった瞬間、セイスが炎に包まれてギガントトロールをも燃やし始めた。
ギガントトロールが炎を消そうともがき、湖に腕を入れて消火しようとするが、炎は消えることも、燃え移ることもなくギガントトロールのみを燃やし続ける。
やがてギガントトロールは動かなくなり、灰になった。
そしてセイスがギガントトロールの灰の中から、ひょっこりと顔を出していた。
「いやぁ、楽勝だったっすね!
他の神獣だと、炎で燃やしきる前に対処してくるっすからね。」
相手の基準が神獣とかね、でも今回でセイスの実力はわかったし、ラインの街に戻るとしよう。
「ご褒美にうまい肉が食べたいっすよー。」
「ギルドでの報告が終わったらね。」
私達は、ギルドに到着して直ぐに受付嬢に報告した。
「ありがとうございます!
あんな化け物を倒せるなんて、凄いですね!
やっぱりミナさんのパーティーは、化け物ですね!」
「おい、聞き捨てならんのぅ。
化け物なのはミナだけだのぅ。」
「ねぇ、なんてことを言ってくれるのかなぁ?」
私はカノアを凝視する。
「いや、だって…、そうだろう?」
「だっても、へちまもないの!
大体、普通の女の子に向かって化け物って失礼でしょ!」
その場が一瞬凍る。
そして、ミナとマーガムとセイス以外のみんなが思った。
『『『普通な訳無いだろ!!!! あと、へちまってなんだ!!!!』』』
しかし、絶対に口から出ることはなかった。
そして、へちまはこの世界にはないようだ。
そして、その場にいた1人の男がミナという名前に反応した。
しかし、ミナはその事に気が付かなかったのだった。




